小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1089回
見た目チャラいが低音ゴリゴリ、鳴らして楽しいライトアップスピーカー「EDIFIER QD35」
2023年8月25日 08:00
多彩な製品展開のEDIFIER
知る人ぞ知るといった存在であった中国のオーディオメーカーEDIFIER。AV Watchで調べてみると、恐らく初出は2002年のモニタースピーカーの記事のようだ。日本ではどちらかといえばPC周辺機器のオーディオメーカーとして知る人ぞ知るといった格好だったが、2021年に当時ソニー以外では珍しかったLDAC対応イヤフォンをリリースし、評判となった。
昨今は日本市場をかなり重要視しており、この6月以降だけでみても、ハイレゾヘッドフォン、防水BTスピーカー、木製エンクロージャスピーカーなど、あらゆるジャンルの製品を投入してきている。
そしてこの7月20日より発売されるのが、ライトアップ機能を内蔵したハイレゾスピーカー「QD35」だ。一応くくりとしてはデスクトップスピーカーということにはなるだろうが、これまでのEDIFIER製品とは方向性がガラリと違ったスピーカーになっている。
価格は27,280円で、現在は楽天の直営店のみの販売となっている。また、新発売セールとして20% OFFの2,1824円になるクーポンも配布中。クーポンの有効期間は9月11日までだそうだ(※編集部注※先着999個まで、上限に達した場合は早期に終了)。
すでに海外では発売されており、英語ではレビューも出ているところだが、日本ではまだほとんど情報がないQD35を、早速聴いてみよう。
メカニカルなルックス
まず外寸だが、277.8×141.7×164.8mm(幅×奥行き×高さ)で、ブックシェルフ型スピーカーを横倒しにしたようなサイズだ。上部には貨物コンテナのような溝があり、EDIFIERのロゴが大きくプリントされている。カラーはブラックとホワイトがあり、今回はブラックをお借りしている。
正面はアクリルパネルになっており、その奥には鏡面の配管のようなデザインパネルがある。そこに円形と直線のLEDライトが埋め込まれている。また下段に時計表示部もある。
スピーカーとしては、中央にアルミニウム合金ダイアフラム採用の3インチ25Wミッド・ウーファーと、右肩にシルクドームの1インチ15Wのツイーターの、合計40Wモノラルシステムだ。背面には2箇所のバスレフポートがあり、周波数特性は60~40kHz。Hi-Res Audioおよび Hi-Res Audio Wireless対応となっている。
アンプはTI製クローズドループデジタルアンプで、DSPにより高域と中低域に分離したのち、2系統のアンプでそれぞれのスピーカーをドライブする。
入力はBluetooth、USBオーディオ、アナログAUXと3系統。BluetoothはLDAC対応となっている。電源は背面にメガネケーブルを直刺しするタイプで、電源スイッチもある。
右側には入力切り替えスイッチ、ボリューム、ライトエフェクト用のノブがある。それぞれがマルチファンクションになっており、入力切り替えボタンを長押しすると、スタンバイモードとなる。ボリュームノブは1度押すと音楽の再生・停止、長押しでBluetoothペアリング、2回押しでEQの切り替え。ライトエフェクトノブは、押し込むとエフェクトの変更、つまみを回すと輝度調整となる。
左側には、USB-AとUSB-C端子があり、デバイスの充電ポートとなっている。横に35Wという表示があるが、これはUSBポートの最大出力で、スピーカーの出力数ではない。スイッチ部に窒化ガリウム(GaN)を採用しており、USB-Cのみを使った場合最大35W、USB-Aのみの場合最大18W、両方同時に使った場合は両方とも最大18W出力できる。
サイズ感に似合わぬ低音
なにはともあれ、まずは音が気になる。今回は再生にPixel 6aを使用し、LDACでBluetooth接続して試聴してみる。
まずはいつものドナルド・フェイゲン「Morph the cat」だが、イントロのベースとキックのユニゾンからすでに本機の素性がわかる。ミッドウーファーは3インチしかないが、低音の沈み込みが素晴らしい。周波数特性的には下は60Hzだが、スピーカーのストローク幅が大きく、背面のバスレフ設計の上手さもあって、十分な低音のパンチ力を確保している。印象としては、「フルレンジが出るサブウーファー」である。
ただ、惜しいのはモノラルスピーカーだということだ。Bluetoothスピーカーは小型のものはモノラルのものが多いが、最近はAmazon Echoが小型ながらステレオスピーカーへとシフトしたことにより、徐々にステレオ化の流れが来ているように思う。このぐらいのサイズでモノラルスピーカーは、むしろ珍しい部類に入る。
低音から高域までクセなく鳴るが、解像感と言う面ではステレオ音像によってもたらされる部分も大きく、その点では十分とは言えない。観賞用というよりは、作業のBGM用スピーカーとして使うのがいいだろう。最大音量にすると、若干中音域が歪みっぽく聴こえる。音量は16段階だが、14以下で聴く方がいいようだ。
それほど大きくもないスピーカーだが、広い部屋で離れて聴くと、見た目のチャラさに反してゴリゴリした低音のドライブ感があるので、ギャップがすごい。とりあえずこれ一発あればリビングは十分である。
またベッドサイドなどニアフィールドで小音量で聴くと、音量を絞っても低音が痩せないため、こうした使い方も良好だ。充電用ポートもあるため、スマホの充電も一緒にセットして寝るといった使い方もできる。
プリセットEQは、「Music」、「Game」、「Movie」、「DIY」の4タイプがある。DIYはいわゆるマニュアルEQで、スマホアプリ「Edifier Connect」で設定する。EQの可変範囲がそれほど大きくないのか、モードを切り替えても大して違わないというのが正直なところだ。DIYではマニュアル設定ができるが、プラスマイナス3dBしか動かせないので、それほど大きく音を変えることはできない。
音楽を楽しくするライトエフェクト
QD35のポイントはやはり、正面にカラーLEDを仕込んだライトエフェクトである。ボディ右側のノブでエフェクトが変えられるが、スマホアプリ「Edifier Connect」でかなり細かく設定できる。
プリセットされているのは6種類で、単色でじわーっと光るものから、サウンドに合わせてレベルメーター的に光るものなど、気分に合わせてパターンと色を選べる。さらに「Light Library」では、プリセット以外のパターンをロードさせることができる。現時点では4種類が提供されており、合計10パターンから選べることになる。
レベルメーター的なもの以外のパターンでは、音楽を再生していない時もそのまま光り続ける。部屋のアクセントとしてもライティングインテリア的に使えるわけだ。またノブを最小にひねれば消灯もできる。寝る時にはまぶしいという時には、絞ってしまえばいい。ただ時刻とEDIFIERのロゴの部分は消灯しない。
動画でライティングのパターンをご紹介しておく。
総論
ライトアップ可能なスピーカーは、日本ではそれほど多くは販売されておらず、過去本連載で取り上げたことがあるのは、ソニーのXBシリーズや「EXTRA BASS」ぐらいである。ただ米国ではそこそこ人気があるようで、日本では発売されていないパーティ用の大型スピーカーでイルミネーション内蔵のシリーズがある。
一方EDIFIERのQD35は、パーティ用というよりはもうちょっとインテリアっぽい、ネオンサイン的な立ち位置である。スピーカーであることもまたカッコイイので、今後はドラマのセット内に小道具として目にすることがあるかもしれない。
サイズ的にもブックシェルフ1台分でそれほど場所をとらないが、音はデカいのも魅力だ。スペースパフォーマンスがいいとでも言うべきか。モノラルなのが惜しいところだが、ド迫力の低音でそれをカバーする。「細かいことは全て筋肉で解決」みたいな豪快さを感じさせる商品である。
ラインナップを見る限り、ライトアップできるスピーカーはEDIFIER初のようだ。今後シリーズ化するなら、ぜひステレオモデルも検討していただきたいところである。