小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第1120回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

無線ステレオペアでお風呂も快適!「JBL GO 4」と「MAGSPEAKER DUO」を試す

手前が「JBL GO 4」、奥が「MAGSPEAKER DUO」

小型スピーカーをペアで

最近オーディオ製品が元気だ。ハイレゾの定着や空間オーディオのコンテンツ増加といったソフト面の充実、ながら聴きイヤフォンや小型サウンドバーなど日常にちょっとしたリッチを持ち込むハードウェアの手頃感が、いい具合に多様性を生んでいるという事だろう。

今回はBluetoothスピーカーだが、そんな多様性の中でちょっと変わった使い方ができる2モデルをお借りした。ひとつは4月11日発売予定の「JBL GO 4」で、防水防滴仕様のコンパクトモデルだ。価格はオープンプライスで、直販価格は7,700円。もう1台用意する事で、ステレオペアにできる。

もう1つはリズムの防水ポータブルスピーカー「MAGSPEAKER DUO」だ。これは最初から2スピーカーがセットの商品。一般発売はだいぶ先で今年7月中旬の予定だが、5月よりMakuakeにて先行発売を予定している。店頭予想価格は15,800円前後。

どちらも完全ワイヤレスでステレオペアになり、お風呂でも使えるスピーカーという事になる。今回はリラックスタイムに最適な音響空間を提供する2モデルをお借りしたので、テストした。

ブランドのポップ化を進める「JBL GO 4」

JBLは米国の老舗スピーカーブランドで、どちらかといえば業務用でよく使われてきたが、昨今はコンシューマ製品が好調だ。Bluetoothスピーカーはもちろん、最近ではワイヤレスイヤフォンやマイクなども製品化し、ゲームユーザーをターゲットにポップなイメージ戦略が当たっている。昔のJBLを知らない若い人達には、新進気鋭のオーディオメーカーに見えている事だろう。

Bluetoothスピーカーとしては、すでに多くの製品を防水仕様でリリースしている。その中でもGOシリーズは、四角い形を特徴としたモノラルの小型シリーズだった。ラインナップ中で最も低価格というところから、その立ち位置はお分かり頂けるだろう。

最終的には9色展開となる「JBL GO 4」

カラーは9色展開で、ブラック、レッド、ブルー、ホワイト、スクワッド、スウォッシュピンク、パープルが4月11日発売予定。残りのウィンブルドングリーン、ファンキーブラックは5月9日発売予定となっている。今回はパープルとホワイトをお借りしている。

表面はファブリック素材とシリコン素材で作られており、正面に大きなJBLロゴが配置されている。サイズとしては94×42×76mm(幅×奥行き×高さ)で、日本風にいうならば石けん箱ぐらいのサイズ感だ。重量は約192gで、見た目より軽い。

左サイドに電源やペアリング用のボタン、再生/停止とボリュームボタンがある。右サイドにはUSB-Cの充電端子。そして、右肩にファブリック素材のリングを配置し、どこにでもぶら下げられるようになっている

右サイドと上部に操作ボタン
USB端子にキャップはないので、充電は乾いてから行なうよう記されている

内蔵ドライバは45mmで、周波数特性は90Hz~20kHz。ロゴのほうに向かって音が出る。バッテリーによる連続再生時間は約7時間で、充電時間は3時間。防水防塵性能はIP67となっており、ほぼあらゆる場面に対応できる。

背面と底部に「足」がある

ポイントは、同じスピーカー同士でステレオペアとして使えたり、「Auracast」機能を使って対応する複数のJBL製スピーカーを同時に鳴らすという機能がある。すでに同様の機能は他メーカーも搭載しており、今さら珍しいものではないが、低価格なので2個買っても15,400円。簡単に複数台買えてステレオペアにするのも現実的である。

発想が新しすぎる!「MAGSPEAKER DUO」

リズムと聞いてもピンと来ないかもしれないが、時計とかアラーム、タイマーとかの……といえば「ああ、あの!」と思い出す人も多いだろう。1950年創業の老舗企業である。筆者も学生時代、目覚まし時計でお世話になった。元々は精密部品や精密金型メーカーとして業界でもよく知られているが、最近はコンシューマ製品でもファンやアロマディフーザーなど、ひと味違う製品を出している。「MAGSPEAKER DUO」も、そんなひと味違う製品のひとつだ。

最初から2台のスピーカーがペアになった製品で、底部にマグネットが付けられており、お風呂の壁にペタッとくっつけてステレオで鳴らすという製品だ。もちろんお風呂限定というわけではなく、どこでも使える。カラーはホワイトとブラックがあり、今回はホワイトでテストする。

2台のスピーカーと充電スタンド

充電クレードルも付属しており、スピーカーを両方からマグネットでくっつけて一体化できるようになっている。そのまま鳴らしてもいいし、左右を離して鳴らしてもいいようになっている。

充電クレードルとはマグネットで一体化できる
クレードル背面のUSB-C端子から2台同時に充電する
クレードルと一体化した状態でも再生できる

左右のスピーカーは同じ作りだ。高さ95mm、直径75mmの円筒形で、青ペアリングボタンが点灯する方が左になり、右は左に対してペアリングするというイメージだ。

2台のスピーカーは全く同じ作り

上向きにスピーカーを備えた円筒形で、底部にはリング状のLEDがある。また周囲を囲むようにボタンがあり、電源、ペアリング、再生/停止、ボリューム、LEDモードとなっている。左右スピーカーのボタンは連動しており、どちらを操作しても両方が同じ動きになる。特にコントロール用のアプリなどは提供されないので、本体ですべて操作するスタイルだ。

リングライトも装備。グレーの部分に操作ボタンがある

上向きのドライバは50mm径のフルレンジで、底部にはパッシブラジエータを備える。防塵防滴性能はIP67相当となる。バッテリーによる連続再生時間は約20.5時間で、充電時間は約2.5時間。

底部のLEDは落ち着いたクリームイエローで、音に合わせて瞬くモードのほか、強・弱・切がある。

それぞれの音質は?

では早速音を聞いてみよう。まずJBL GO 4からだ。元々は単品のスピーカーなので、単品のパフォーマンスからみていく。

小型のボディからすると、ラジオみたいな音を想像されるかもしれないが、最近のスピーカー技術はすごい。腹をえぐるような重低音は無理だが、音楽的においしい部分を逃さない程度の低音はドッコンドッコン出る。また高域にさらりとした抜けがあり、明瞭感の高い音だ。

スピーカーは、顔のほうに向けた時と、平置きして天井を向けた時で若干傾向が違う。正面から聞くと求心性のあるサウンドだが、若干中音域の若干クセを感じる。一方平置きにすると、中域が引っ込んで高域がばらける感じになるので、拡散感も強く感じる。

設定用アプリとして、新たにポータブルスピーカー用の「JBL Portable」がリリースされている。EQはJBLシグネチャーというモードがデフォルトになっており、そのほかCHILL、ENERGETIC、VOCALといったプリセットがある。5バンドのカスタムEQも可能だ。

操作アプリのJBL Portable

再生時間を伸ばす「Playtime Boost」というモードもある。これをONにすると低域が大幅にカットされ、高域が持ち上がった派手な音になる。おそらくこれが素の特性なのだろう。このモードではEQは無効になるので、音がいじれないのは残念だ。

ステレオ化は、アプリから指定することもできるし、両本体の三角マーク「Auracast」を押すとステレオペアとなる。このステレオモードは強力だ。音の広がりが出るのは当然だが、低域の量感も2倍になるので、実際は石けん箱ぐらいなのにブックシェルフぐらいのスピーカーが鳴っているかのようなサウンドになる。ボディが小さいので、置き場所に困らないのもポイントだ。電波が届く範囲ならどこまでも左右を離して置くことができる。

簡単にステレオ化できる

一方ステレオペアで使う際には、EQはJBLシグネチャー固定となり、変更はできない。またPlaytime Boostも無効になる。とはいえ音質的には十分なJBLサウンドなので、特に不満はないだろう。難点としては、一度電源を切るとステレオペア設定が切れてしまうので、再度使う際には毎回ステレオペアリングのアクションをしないとペアにならない、というところである。

「MAGSPEAKER DUO」は、電源を入れるだけで何もしなくても最初からステレオペアで鳴るように設計されている。音は中高域の抜けがいい明るいサウンドだが、ドライバー径はGO 4より大きい割には低域の出力が大人しめだ。ある程度音量を上げるとパッシブドライバが効いてくるので低域も出てくるが、小音量では物足りなさがある。

こちらもデスクにおくときには上向き、壁に貼り付けることで正面向きのスピーカー方向となる。上向きでは高域が抑えられたバランスのよい音だが、正面を向けると直進性の高い高音が直接届いてくるので、非常に派手な音になる。EQなしに2タイプの音が楽しめるといえばそうなのだが、上級者向けにEQが使えればもっと良かった。

またバッテリーが20時間持つのは魅力だ。寝る際に頭の左右において音楽をかけておいたが、小音量で音の広がりが大きく、非常に快適に寝ることができた。朝起きてもまだ全然バッテリーは余裕で、そのまま日中も使用できるのは強い。

お風呂で聴くと評価が逆転

どちらもIP67ということで、お風呂に設置しても大丈夫というのがひとつのポイントである。さっそくお風呂に持ち込んで両スピーカーを聴いてみた。

筆者宅は普通の旧式なマンションなので、お風呂も一般的なユニットバスである。壁は樹脂製かと思っていたら、「MAGSPEAKER DUO」をくっつける事ができた。背後に鉄板が入っているようだ。以前戸建てに住んでいた時は、お風呂の壁はタイル張りだったので、磁石による貼り付けはできなかっただろう。

「MAGSPEAKER DUO」はユニットバスの壁面にくっつけられる

まず「MAGSPEAKER DUO」だが、普通の部屋での音楽再生では低域が物足りなかったのに対し、風呂場という狭い空間で聴くと、上手い具合に低域が回り、非常にバランス良く鳴るということがわかった。むしろお風呂空間に合わせてチューニングされているのかと思わせるようなサウンドだ。

壁に貼り付くということは、置き方は自由ということである。最初正面の壁に貼り付けて聴いていたのだが、逆に顔の横に貼り付けてみた。すると、音がどこから鳴っているのかわからないが音像が拡がるという不思議な体験をすることができた。真横からの音と、正面の壁から跳ね返ってくる音がミックスされて、独特の音場空間が生まれるのだろう。

今度はスマートフォンで動画を再生してみたが、元々音楽のように常時低音が鳴ってるわけではないので、低音の不足感も気にならない。むしろセリフに明瞭感があり、聴きやすい音だ。

一方「JBL GO 4」は、普通の部屋では低音の出に特徴があったわけだが、お風呂の中では反射があることで音にぼわつきがでてしまい、音楽再生では明瞭感に欠ける結果となった。シャワーなどの音に負けずにドコドコ鳴るという点ではいいのだが、湯船に浸かっている時には若干Too Much感がある。

「JBL GO 4」はバスタブの縁に立てかけた

動画再生については、セリフも低域に引っぱられるのか若干重めだ。低音が魅力の声優さんならOKだが、明瞭感という点では「MAGSPEAKER DUO」の聴きやすさに軍配が上がる。

もっと広いお風呂ならJBLの勝ちだっただろう。アメリカならこれでいいのだろうが、JBLには日本のお風呂は狭すぎるということなのかもしれない。

総論

今回のテストで、改めて小型スピーカーの能力の高さを見直す事となった。「JBL GO 4」は低価格スピーカーの代名詞のようなモデルだが、低音の張り出しも十分だ。用途としては海辺やプールサイドなど、水回りのアウトドアが想定されているのだろうが、場所を取らないという点でデスクトップスピーカーとしても十分使えるのではないかと思う。このサイズ感なら、机が広く使えるだろう。

ステレオペアも、使い始めに毎回操作が必要とはいえ、確実に安定して繋がるので、それほど負担にはならない。なにより左右を離すほど大きなサウンドフィールドが得られるというメリットがあり、非常にコスパのよいシステムである。

「MAGSPEAKER DUO」は、最初からステレオペアでワンセット商品で、充電クレードルを軸に1つにまとめられるというのがおもしろい。また底部の磁石により、お風呂場はもちろん、冷蔵庫やスチール製ロッカーなどいろんなところに貼り付けられることから、置き場所も大きく拡がる。もちろん床にポンと置いても問題ないし、落ち着きのあるLEDでナイトライトの代わりにもなる。

連続再生時間も長く、まさにあちこち持っていって1日中使えるという、お手軽スピーカーの決定版のような作りである。難点は専用アプリがなく、音質がカスタマイズできないということぐらいだろうか。ただ逆に本体L側とスマホをペアリングするだけで他になにも設定がないので、使い方は非常に簡単だ。細かい設定が苦手な人へのプレゼントにもいいだろう。

Bluetoothスピーカーのブームはもう10年前の話だが、小型スピーカー用のドライバやボディ設計はここ2〜3年で飛躍的に進化した。小型ながら大きなサウンドフィールドが得られる完全ワイヤレスのステレオスピーカーは、今後サウンドバーに続く注目株に成長するポテンシャルがある。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田のマンデーランチビュッフェ」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。