小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第653回:地デジ派には必要にして十分! 誰でも買える全録
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第653回:地デジ派には必要にして十分! 誰でも買える全録
5万円以下の東芝「D-M430」。改編シーズン前に急げ!
(2014/3/5 10:00)
ついに全録がこの価格
昨年10月に、10万円を切る衝撃価格で登場した東芝の全録レコーダ「D-M470」。Blu-rayドライブを省いて低価格化した事で、いよいよ全録当たり前の時代に突入かと思ったものだが、そこからわずか3カ月で新モデルが追加投入となった。
それが「D-M470」よりもさらにお手軽価格を実現した、「D-M430」である。店頭予想価格は驚きの55,000円前後だが、さらに驚くのはネット通販ではすでに4万円も切り始めていることである。全録のエントリーモデルという位置づけとはいえ、もはや完全に通常のレコーダと同じ値頃感になってきた。
もちろん、低価格・エントリーモデルであるからには、機能的は上位モデルと同じとはいかない。だがユーザーが全録に期待するものと合致すれば、十分満足のいく機能を持っているはずだ。
衝撃の価格で登場した東芝「D-M430」を、さっそくテストしてみよう。
割り切りのスペック
まずボディだが、上位モデル「D-M470」と基本的には同じで、奥行きがやや短い程度。具体的には361×211×50mm(幅×奥行き×高さ/突起部含む)だ。フロントパネルのロゴの位置は、M470はセンターに「REGZA」と書いてあったが、今回は左側に寄せてある。見分け方としてはそこぐらいなので、店頭では結構紛らわしい事になっているかもしれない。
内蔵HDDは1TBで、チューナは地デジのみ6ch。BDドライブは搭載していない。M70のHDDは2TBなので、HDD容量が半分になり、BS/110度CSデジタルチューナが省かれたところが、上位M470との最大の違いといえる。内蔵HDDは、全録(タイムシフトマシン)に使えるのは875GBで、残りの125GBは保存用領域となる。内蔵だけなら最大でも約3.5日分しか保存できないが、外付けHDDも併用できるので、そうがっかりしたものでもない。
背面も見てみよう。今回奥行きが多少短いのは、Wi-Fiのアンテナがないからである。Wi-Fiを使いたい場合は、専用の無線LANアダプタ「D-WL1」を別途購入する必要がある。これが実売で4~5,000円するので、Wi-Fiでしか置けない方には若干コストがかかる。背面にはD-WL1専用のUSB端子がある。
地デジチューナしかないので、B-CASカードはminiカードが1枚だけだ。出力としてはHDMI端子のほか、アナログAV端子もある。タイムシフト用外付けHDD用に、専用USB 3.0端子がある。
接続するHDDがUSB 3.0対応なら3チューナ分をタイムシフトに割り付けできるが、2.0止まりだと2チューナ分しか割り付けできない。ここは奮発してUSB 3.0のHDDを繋ぎたいところだ。接続可能なのは1台のみで、複数台の分配接続はできない。接続可能な最大容量は4TBまでだ。
番組保存用HDDを接続するUSBポートは別にある。こちらも4TBのHDDまで利用可能で、USBハブを使って最大4台まで同時接続できる。また登録だけなら8台まで可能だ。
リモコンも見ておこう。寸法はやや短くなった新リモコンで、機能的にはM470用のものと近い。ただチューナが地デジしかないので、放送波切り換えボタンが字幕や音声切り換えといったボタンに割り当てられている。
シンプルながら十分な機能
ではさっそく設定してみよう。まずタイムシフトマシンの設定だが、5チャンネルをタイムシフトして1チャンネルを自由に視聴できるようにするか、それとも6チャンネル全部をタイムシフトするかを選択できる。
自由に視聴というのは、例えばアナログ波しか入らない古いテレビやモニターに繋いで、M430を地デジチューナ代わりにしたいといった使い方が想定される。M430は、個別指定での番組録画はできず、全録しかできない。ここもM470との違いだ。従って地上波放送が6チャンネル以上受かる地域であれば、全チャンネルをタイムシフトに利用するほうがリーズナブルだ。ただ全チャンネル指定すると、電源ONしたときにはいつも6番目のチューナーで指定した放送局が表示されることになる。
録画先としては、内蔵HDDかUSB HDDに割り付けることができる。今回はUSB 2.0の400GBのHDDしか用意できなかったので2チューナしか割り当てられないが、USB 3.0対応HDDなら3チューナを割り付けできる。
今回も録画可能日数シミュレーションが公開されているので、皆さんも購入前に確認できるが、代表的な設定例をいくつか見てみよう。まず内蔵HDDのみで6ch録画した場合、AVC低画質モードでも約3.5日だが、録画時間を1日中ではなく12時間に絞った場合、約7.5日となる。
一方最近では外付けHDDも2TBぐらいなら2万円以下で買えるので、それを繋いだとすると、3チューナ分だけは12時間録画、低画質で最長34.5日保存できることになる。全チャンネル24時間とはいかないが、少なくとも1カ月分の番組が確保できるのは大きい。
画質モードは3種類ある。ビットレートなどは公開されていないが、画質モードと録画可能日数は以下のような関係になっている。これは6chを全時間録画した場合だ。メンテナンス時間が必ず1時間必要になるので、実質23時間程度ということだろう。
録画モード | 録画可能日数 (6ch全時間) |
AVC高画質 | 約1.5日 |
AVC中画質 | 約2日 |
AVC低画質 | 約3.5日 |
内蔵HDD容量は少ないので、長期間タイムシフトを利用したいと思えば必然的にAVC低画質を選択するしかない。実際にこのモードで番組を録画してみたが、番組を楽しむには十分な画質だ。本機では個別の録画指定もできないし、BDドライブも載ってないので、ピンポイントで高画質の番組を保存するのがメインの用途にはなり得ない。あくまでも「見逃さない」ところに重点を置いた運用が望ましい。
なかなか使える「ざんまいプレイ」
録画設定が完了すれば、あとは番組が貯まるのを待つだけである。メインメニューはコントラストの効いたタイル状の配置で、個別録画機能がないぶん、本体設定と放送受信設定が分かれてメインメニューに載っている。簡単モードに切り換えれば設定画面が隠れるので、子供に使わせるときなどにはいいだろう。
タイムシフトで録画された番組は、「タイムシフト過去番組表」から一覧できる。昨夜あんな番組があったはずといった、すでに番組情報がわかっている場合に便利だ。
また通常の番組表、つまりこれから放送される番組表も表示できる。しかしそれがわかったからといって個別録画できるわけでもないので、眺めてふーんと言って終わりである。
リモコン上では、「タイムシフト」ボタンで過去番組表が、「番組表」ボタンで未来の番組表が表示される。ただ本機に限って言えば、未来の番組表をそんなにフィーチャーする意味はなかったのではないかという気がする。
日常的にタイムシフトでレギュラー番組を見ていると、そもそも何曜日の何時に放送されているのかはだんだん意識しなくなってくる。そこで便利なのが、「ざんまいプレイ」である。
これはあらかじめプリセットされたジャンルや、自分で指定したキーワードで番組を集めてくれる機能だ。音楽、スポーツ、ドラマ、ニュースなど、EPGデータにあるジャンルから選択できる。バラエティのように番組数が多いものは、サブジャンルまで指定して自分でプリセットを作ることもできる。
またこの機能は番組情報だけでなく、字幕情報も検索できる。対象を「シーン」にしておくと、字幕情報の中から指定したキーワードが出てきた番組の、まさにその時間にジャンプして視聴できる。これはテンポラリ的にも非常に使い出のある機能だ。
なお、リモコンにある「字幕シーン検索」ボタンを押すと、再生している番組から抽出されたキーワードが最大4個まで表示され、その中から好きなものを選ぶと、全録画番組の字幕情報を検索、同じキーワードにマッチした別番組を、マッチしたシーンから再生する事も可能だ。ただこの機能は、自分でキーワードが選べるわけではなく、抽出されたものから選ぶだけだ。もっと積極的に、自分で入力したワードですぐに検索できる機能をフィーチャーしてもよかったのではないか。
そのほか「急上昇ワード」も面白い。他のユーザーがどんなことが気になって検索しているのかがわかる。今週はパラリンピックや、ヤンキースに移籍した田中将大選手の話題が気になっている人が多いようだ。
「ほかにもこんな番組」は、現在ライブ視聴中の番組に関連する番組を自動で検索してくれる。ただ6ch録画していると、現在視聴中の番組が6つめのチューナの放送局に固定されてしまうので、あまり役に立たなくなるのが残念だ。またステーションブレイク(番組と番組の間)は、該当する番組が見つからなくなってしまう。これはまあ当然ではあるのだが、ユーザーとしてはなにも見つからないよりは、直前に終わった番組を表示してもよかったのではないか。それが「見逃しをカバー」という事だろう。
もちろんホームネットワークにも対応
もちろん全録レコーダは単体で使うだけでは勿体ない。タブレットやスマートフォンなどのモバイルデバイスでの視聴も、積極的に活用したいところだ。
東芝のREGZAタブレットやdynabookであれば、専用のRZプレーヤー、RZライブ、RZポーターといったアプリを使って番組視聴や持ち出しなどができる。それ以外のタブレットでは、「Twonky Beam」の利用が推奨されている。また、「Media Link Player for DTV」では上位モデル「D-M470」が動作確認済みとなっていたので、M430でも使えるか試してみたところ、ストリーミング視聴や番組持ちだしが可能だった。そこで、今回はiPad版「Media Link Player for DTV」でテストしてみた。
まずストリーミング視聴だが、サーバーでD-M430を選ぶと、HDDかタイムシフトマシンのフォルダが見える。ストリーミング視聴の場合はタイムシフトマシンを選び、チャンネルか日付のフォルダから番組を選択、視聴できる。
番組選択から10秒ほどで番組再生が始まる。番組をスクラブすると、10秒ほど待たされるが、そのポイントから再生が始まる。モバイル端末で視聴する場合は、本体でのタイムシフトマシン再生は停止しておかなければならないため、家族で同時に使うというのは厳しい。
番組の持ち出しは、多少手順が必要だ。タイムシフトマシンで録画された状態から直接持ち出しすることはできないため、いったん番組をHDDの保存領域に保存する必要がある。これは「マジックチャプター」を改めて付けると等倍速変換だが、利用しなければ高速ダビングが可能だ。
だがここからさらに本体のダビング機能を使って、持ち出し用に解像度やビットレートなどを変換しなければならない。これには変換に実時間かかる。番組変換は一度に10番組ずつ指定はできるのだが、それなりに時間はかかるので、計画的な準備が必要だ。またモバイル機器側で再生可能な解像度やビットレートなどを、あらかじめ調べておく必要がある。よくわからない場合は、「標準画質」に変換すれば大抵は再生できるだろう。
Media Link Player for DTV側からの番組持ち出しは、タイムシフト領域ではなく保存領域のHDDを選び、「持ち出し番組」の中から番組を選んでムーブする。ムーブなので、変換後の番組はM430からは消されることになる。
総論
全録機としてはそれほど多機能というわけではないが、実売4~5万円の6chレコーダというのはなかなか衝撃的だ。増設用HDDなども、ユーザーがどれぐらいコストがかけられるかに合わせて、自分で拡張できるあたりも、いかにも東芝らしいアプローチである。つまりD-M430単体は、入門機として最低限の機能を持った全録機であると同時に、わかってる人が自分で拡張していくプラットフォームでもある、ということである。
テレビ業界では4月からの番組改編に向けて、3月中は最終回や特番で時間を延長する、イレギュラーな編成となる。そういう編成に対応できるレコーダならいいが、いつもの番組が半分しか録れてない、特番に気がつかず見逃したといった悲惨なことになりがちである。
そんな時、とにかく全部録っている全録は強力な武器となる。ネットで話題になった番組も、知った後から悠々と視聴できるゼイタクは、全録機保持者ならではの特権だ。
ワンセグを8チャンネル録画できるガラポン参号機を筆者宅では導入しているが、D-M430は価格的にはほぼ並んでしまっている。もちろんワンセグなら低コストで24時間1カ月録画が可能だし、キーワード検索が強力なので、テレビ番組の傾向調査といった使い方には大変便利だ。ただ番組を楽しむという視点では、画質的にシンドイのは仕方がないところである。
フルセグで6ch、拡張は自分次第という低価格全録機が出てきた今年、いよいよテレビ録画文化は大きな転換期を迎えたと言っても過言ではないだろう。
東芝 D-M430 |
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