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AVファン待望の新ユニバーサルディスクプレーヤー“MAGNETAR”が要注目の理由

左からミッドレンジ向け「UDP800」、ハイエンド機「UDP900」

エミライが19日、高品位なユニバーサルディスクプレーヤーを手掛ける中国のブランド・MAGNETAR(マグネター)の日本での取り扱いを発表した。ハイエンド機「UDP900」とミッドレンジ向け「UDP800」を3月1日に発売する。価格などの詳細は後日発表されるが、この2製品は、Ultra HD Blu-rayやSACDといったディスクメディアを楽しんでいるAVファンにとっては、今後かなり重要な製品になると思われる。その理由を、エミライによる説明会のレポートと合わせて解説する。

ハイエンド機「UDP900」

OPPO Digitalとタッグを組んでいたエミライが、新たに扱うユニバーサルディスクプレーヤー

今から約6年前、UHD BDやSACDが再生できるユニバーサルディスクプレーヤーの、AVファン向け定番モデルを手掛けていたOPPO Digitalが、突如、新製品の企画・開発を終了した。今後、映像ストリーミングサービスが隆盛し、主流になる見通しであったため、ディスクプレーヤーから撤退するとOPPO Digitalが決断したわけだ。

当時、OPPOのユニバーサルディスクプレーヤーは人気が高かったため、「時代の流れとして仕方がないのはわかるが、もう辞めてしまうのか」と驚いた人も多かっただろう。

OPPO DigitalのUltra HD Blu-rayプレーヤー「UDP-205」

そして2024年現在、OPPO Digitalの見通し通り映像配信サービスは大きく普及し、パッケージメディアの利用率は直近では17.4%まで減少しているという調査結果もある。だが、逆に言えば“17.4%の人たちはまだディスクメディアを愛用”しており、オークションサイトなどではOPPOのプレーヤーが高値で取引されているという現状もある。

しかし、OPPO Digitalの開発終了後も、日本で取り扱っていたエミライがアフターサービスを実施していたが、保守用部品の供給が停止されてから時間が経過したことで在庫が払底。2023年9月で修理等のアフターサービス業務は全て終了している。

こうした状況の中で、新たにエミライが扱い、日本市場に登場するユニバーサルディスクプレーヤーが、MAGNETARの「UDP900」と「UDP800」となる。

UDP900とUDP800はどこが違うのか

左からミッドレンジ向け「UDP800」、ハイエンド機「UDP900」

UDP900とUDP800に共通するポイントは、ディスクドライブメカにSACD対応のソニー製メカを採用している事。心臓部となるSoCは、MediaTek製のクアッドコア・プロセッサー「MT8581」をどちらのモデルも使っており、映像/音声の分離出力が可能な2系統のHDMI出力を備えているのも共通だ。

徹底的に使用感にこだわったという独自の日本語対応OSD(オンスクリーンディスプレイ)を備えているのも、共通点となる。

使用感にこだわったという独自の日本語対応OSD
UDP900

UDP900とUDP800の違いは、上位機のUDP900は7.1chアナログ出力を装備。DACチップも、2ch出力用にESSの「ES9038PRO」、7.1chアナログ出力用に「ES9028PRO」を搭載する。さらに、PCM 768kHz/DSD 512対応のUSB DAC機能も備えている。

筐体には物量を投入し、振動・ノイズ対策を徹底。メインボードとオーディオ回路で独立した電源供給を行なうデュアルパワーサプライ構造も上位機ならではの特徴。

UDP900の主な特徴

UDP800は、左右独立構成の2chアナログオーディオ出力を備えているが、7.1chアナログ出力は非搭載。電源供給は60Wのローノイズトランスを採用している。

UDP800
UDP800の主な特徴

「高品位なユニバーサルディスクプレーヤーを製造できるメーカーは少ない」

ユニバーサルディスクプレーヤーのコアとなるパーツは、SACDやUHD BDが再生できるディスクドライブメカと、心臓部となるSoCだが、これらのパーツを取り巻く環境にも厳しいものがある。

エミライの取締役、マーケティングディレクターの島幸太郎氏は、「現在、SACDのような高音質な再生に特化したディスクが再生でき、UHD BDも再生できるというドライブメカ自体が非常に少なく、ほぼソニーさんだけだと思われる」という。

エミライの取締役、マーケティングディレクターの島幸太郎氏

MediaTekのディスクプレーヤー用のSoCも、例えばスマートフォン用のSoCなどと比べて需要が少ないため、ディスクプレーヤー用としては新しい製品は作られていないそうだ。

とはいえ、ドライブメカとSoCはまだ生産されているため、ユニバーサルディスクプレーヤーを作る事自体は可能ではある。ただし、“高品位なユニバーサルディスクプレーヤー”となると、話は別だ。

島氏は、高品位なユニバーサルディスクプレーヤーの場合、「映像メディアのプレーヤーなので、色々なライセンスや認証を取得しなければならない。コストがかかるため、メーカーの立場からすると、一定の規模でビジネスを展開できる状況が必要不可欠」だという。

さらに、高品位なユニバーサルディスクプレーヤーという趣味性の高い領域に投入する製品であるため、「ものづくりへのこだわりや、チャレンジ精神を持った作り手であるかどうか」、そして「将来にかけて作り付けられる企業体力と専門分野へのこだわりを兼ね備えているか」という点も重要となる。「高品位なユニバーサルディスクプレーヤーの製造が可能なメーカーはそう多くない」(島氏)という。

自社ビルの写真。左下がMAGNETARの入口だ

MAGNETARは、Magnetar Technology Shenzhenという、グループ全体として20年以上ハイエンドオーディオやビデオ製品の研究開発・OEMを手掛けてきた企業が、2021年に中国・深圳で設立した初の自社ブランドだ。

主力事業としては、MAXMADE AUTO名義で車載機器のOEM事業を、さらにMAXMADE名義で日系メーカーのDVDディスクプレーヤーのOEM事業も手掛けている。

グループ会社の生産管理、品質管理、アフターサービスは全て共有化されており、敷地10,000平米に4つのグループ会社を持つ。自社ビル6棟(内製造工場は2棟)を保有し、従業員は合計約3,000人。

MAGNETARブランド自体は2021年設立だが、前述のように新興企業ではなく、グループとしては長い歴史や実績があり、高い技術力や企業体力も持っているという。

エミライがMAGNETAR製品の取り扱いを決めたのは「プライドと意欲」

島氏によれば、OPPO Digitalのユニバーサルディスクプレーヤーを扱っていたエミライには、OPPO Digitalの撤退後、新たなユニバーサルディスクプレーヤーを求めるユーザーからの要望が数多く届いていたという。

しかし、新たなメーカーはなかなか見つからなかった。「他のメーカーも検討したのですが、いずれもOEM、ODMで手掛けるところばかりで、自社ブランドで作ろうというメーカーは無かった」(島氏)という。

エミライが“自社ブランドの製品かどうか”にこだわるのは、OPPO Digitalとタッグを組み、ユニバーサルディスクプレーヤーを定番モデルに育てた経験からだという。

例えば、日本でしか売っていない映画のディスクがあり、それをプレーヤーで再生すると、相性が悪くて不具合が発生したとする。改善するためには、メーカーが日本からそのディスクを検証用として取り寄せ、実際に再生し、エラーログをチェックしながらバグを修正する……というような地道な作業が必要になる。

エミライはかつて、そうした問題をユーザーから集めてOPPO Digitalに報告。OPPO Digitalの社内に、検証用ディスクが山積みになっていたそうだ。

不具合修正だけではない。高品位なユニバーサルディスクプレーヤーは、当然ながら価格も相応になるため、表示されるUIや動作なども洗練されている事が望ましい。OPPO Digitalのプレーヤーでは、エミライがメニューの翻訳やフォントデータの作成を行ない、レイアウトなども細かく協議し、ローカライズの質を高めていった事も、定番モデルになった背景にある

つまり、単にユニバーサルディスクプレーヤーを作れる技術力があるだけでなく、AVファンから支持される新たな定番プレーヤーになるためには、各国のユーザーから寄せられる要望に応え、ファームアップで改善を重ねるといった地道な作業に、しっかり取り組む意欲が必要。そのために、自社ブランドの製品としてプライドを持って作る必要がある、というわけだ。

「ディスクプレーヤー関連で高い技術力を有するMAGNETARは、市場トレンドや開発環境の変化などの困難に向き合いながらも、自社開発・自社生産によるブランドの確立を目指して投資を継続する企業としての体力や開発力に優位性がある。そこで、エミライがこれまで培ってきたユニバーサルディスクプレーヤー製品取り扱いのノウハウや、販売網を再活用し、メーカーと協力して、日本市場のニーズを汲んだ製品開発に取り組む事を決めました」(島氏)という。

AV機器の歴史では、これまで様々なメディアが登場して消えていった。その結果、メディアが手元にあっても、再生できるプレーヤーが無いという苦労は、多くのAVファンが体験している。

「配信が主流になっても、ディスクメディアには、例えばUHD BDの最大108Mbpsをフルに活用した映像美のような魅力がある。その魅力を多くの人に届ける事がディスクプレーヤーの役目。ユニバーサルディスクプレーヤーを作るには高い技術力が必要だからこそ、途絶えさせてはいけない、プレーヤーを残していきたいという気持ちで取り組んでいます」(島氏)。

UDP900
山崎健太郎