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米国が生んだ日本限定イヤフォン「Westone30」はどんな音? J-POPやアニソン研究も
(2015/12/18 17:18)
米Westone Laboratoriesの“日本限定”イヤフォンとして、12月26日にテックウインドから発売される「Westone30」。日本のユーザー向けにサウンドデザインしたという3ウェイ3ドライバのモデルだが、どうしてこの仕様になったのか、“日本人好みのサウンド”とはどんなものを想定したのか、来日したWestoneのメンバーに、開発の背景や音質の特徴などを聞いた。
Westone30は、サウンドエンジニアであるカール・カートライト氏が日本のユーザー向けにサウンドデザイン。高域/中域/低域用に各1基のバランスド・アーマチュア(BA)ドライバを搭載している。12月3日より予約を受け付ける。12月19日と20日に開催されるe☆イヤホンのイベント「ポータブルオーディオフェスティバル 2015(ポタフェス)」でも展示される。
新モデルの発表に合わせて、Westoneのインターナショナルセールスディレクターのハンク・ネザートン氏、マーケティングディレクターのブレーク・ゲイザー氏が来日。「日本向け」であることが大きくアピールされているが、具体的にはどんな特徴なのか気になる部分も多い。
デザインは、かつての「Westone3」や「Westone4」シリーズを思わせるピアノブラックのシェルに、シンプルな「30」のロゴを、Westoneオレンジで配置。「一から音を作り、日本のユーザーのためだけに開発した特別なモデル」としている。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は49,800円前後(税込)。
なぜ「日本向け」? Westoneに、熱いアニメファンの存在も
これまで何度も日本を訪れているネザートン氏によれば、「Westoneは、この数年で日本の皆さんにも広く認知され、日本で人気のモデルも分かってきた」という。そうした中、昨年に日本の販売店を訪問し、日本のヘッドフォンやイヤフォンの傾向、カルチャーなどについて意見交換を行なう機会があったという。その場所で「日本の皆さんへのご愛顧に感謝を込めて、日本限定モデルを作ってみようということになった。ユーザーが増えるにしたがって声を聴く機会が多くなり、これまでのイベントなどで、日本のファンの熱気も感じています」(ネザートン氏)。こうした地域限定モデルは、今回の日本向けが初めてだという。
開発にあたり、ネザートン氏や同社エンジニアらが日本で人気の様々なイヤフォンを試聴。中高域が特に効いている傾向のものや、いわゆる“ドンシャリ”なものなど様々なモデルを試し、その中にはFitEar「Aya」や、JH Audio「Layla」なども含まれていたという。「単に真似するという目的では無く、日本ではどういった音が好まれているのかを学びました」とのこと。
特に、日本ならではの音として、J-POPやアニメソングなども数多く試聴。“Westoneの生みの親”としても知られるエンジニアのカール・カートライト氏も、日本を理解するためにアニソンやロックなど、流行している曲を聴いてイメージを膨らませたという。
彼らはJ-POPやアニソンという音楽についてどのように感じているのだろうか? 「ジャンルの一つとしてとてもユニークだととらえています。自身がミュージシャンでもあるカールは、高/中/低音を分析するように聴いていましたね」(ゲイザー氏)。「様々なタイプの音楽を聴くのはとても意味のあること。(ベテランであるカール氏が)あの年齢で初めてこうした曲を聴くのは、彼にもいい経験になったのでは」とネザートン氏は笑う。
さらに、実はWestoneにも、iPhoneに数多くのアニソンを入れて楽しむほど、日本のアニメをこよなく愛するメンバーがいるとのこと。「彼の存在も(カール氏の)助けになったのでは」と教えてくれた。
製品化が決まったWestone30は、BAの3ウェイ3ドライバという構成だが、これが決まった背景には、日本では'08年に発売され、その後のWestone人気の広がりにもつながった「Westone3」の存在があった。同社にとっても重要なモデルと位置付けており、Westone30において3ドライバ構成や、ピアノブラックのシンプルなシェルにオレンジで製品名の「30」をデザインしている点も、Westone3の思想を継承している。そこから、今年の夏ごろに音質の仕様が完成し、デザインを含めて現在のモデルが仕上がったという。
夏に試作したという、最終的な音質に近いサンプル機も見せてもらった。カートライト氏が手作りで組み立てており、ハウジングは既存のUMシリーズのものを使用しているが、試作機としては異例という、鮮やかなピンクのカラーが目立つ。ハウジングのカラーについても、様々な検討を経て、現在のシンプルなデザインに決まったという。
発表時の情報では、外見も基本仕様も、かなりWestone3に近いが、3ドライバになったのは単に過去モデルへのオマージュだけではないという。
「ドライバが増えるほど構造が複雑になり、高価にもなっていきます。3ドライバ構成は、ユニットをハウジングに入れた後に音を適正なものへ仕上げていく過程において、よりシンプルに、安定した形で、目的に近い音にしやすい」とゲイザー氏は語る。「価格帯的にも、なるべく購入しやすいものになりました」(ネザートン氏)と自信を見せる。
今回のWestone30における“目的の音”として、具体的に挙げているのは「中高域の表現」だという。ゲイザー氏は「Westone3の高域/中域の良さを継承しつつ、不快にならないバランスで強調した。既存のドライバを使うのではなく、周波数特性のグラフを見ながらBAドライバそのものの音質を検討し、よりクリアな音を出すために時間を掛けた」と説明。ネザートン氏は、Westone3について「元気で低音が効いた“やんちゃ”な音としても人気だった。それをもう一度見直し、より自然でクリアな音へリファインした」と説明している。
“日本人向けの音”をさっそく試聴
発売間近のWestone30を、ハイレゾプレーヤーの「AK380」に接続してアニソンなどを中心に試聴した。中高域の繊細さがやはり特徴的で、fhana(ファナ/最初のaの上に「'」)などの女性ボーカルがクリアに伸び、存在感がより明確に感じられる。“輪郭がカリカリ”になるというよりは、中~高域にかけて艶があり、滑らかなつながりが心地よいという印象。一方、低域は“おとなしめ”なのかと思いきや、よく聴いていくと上品ながらも力強さが随所で感じられ、ドラムやベースが、伸びやかなボーカルをバランス良くサポートしている。一口に「日本人」といっても好みはいろいろあるだろうが、帯域を問わずに全体で感じられる“繊細さ”が、海外でウケそうなイヤフォンとは違う一つのポイントなのではと感じた。
ネザートン氏によれば、Westone30への日本ユーザーの反応を見ながら、他地域での限定モデルや、新たな音質のモデルなどの試みは続けていくとしている。Westone30はユニバーサルモデルだが、カスタムイヤフォンでの限定モデルについても、今回の反響次第ではあるが可能性はあるという。開発したエンジニアのカール・カートライト氏は、来日はかなわなかったものの、日本のファンの声を楽しみにしているとのこと。12月19日~20日の「ポタフェス」に来場する場合は、試聴した感想や要望などをネザートン氏らに伝えてみると、何らかの形で今後の同社製品に活かされていくかも知れない。