プレイバック2014

ソニーVPL-VW500ESから始まった4K“沼”の至福 by 鳥居一豊

 今年は4K試験放送「Channel 4K」がスタートするなど、4Kテレビの本格的な普及が始まった年と言える。僕にとっても今年は「4K」が大きなキーワードだった。1月に入ってすぐに待望の4KプロジェクタであるソニーのVPL-VW500ESを手に入れた。120インチの画面サイズで見る4K解像度の映像はきわめてインパクトが大きく、圧倒的な情報量が大画面で迫ってくる臨場感に夢中になってしまった。

天井吊りで設置したVPL-VW500ES。上位機に比べて低価格化とコンパクト化を果たし、使いやすさを向上。まさに4K一色となったこの1年を象徴するモデル

 カメラの世界では、レンズをあれこれ集めたくなってしまう習性を「レンズ沼」というらしいが、筆者にとってVW500ESの購入がきっかけで、4Kの世界にどっぷりと浸かることとなった。

 視聴コンテンツが地デジやBDソフトといったフルHDソースだとしても、4Kにアップコンバートすることで今までは気付かなかった微細な部分に気付くようになる。映画のように作り込まれた作品ならば、「こんなところにまで気を配っていたのか!」と驚かされるし、まさに別世界を体験しているような感動がある。4Kテレビや4Kプロジェクタでは、この4Kアップコンバートが当然重要で、各社ともに超解像技術などを駆使し、フルHDの映像からネイティブ4Kに迫るディテールを蘇らせてくれる。個人的には、積極的に情報を掘り起こして精細感の高い映像を追求した東芝が印象的だった。Z9Xシリーズでは、高精細だけでなく高色域やハイダイナミックレンジ復元などの技術も盛り込み、4K映像としての質を大きく高めてきている。最新のZ10Xシリーズでは、それらをさらに熟成するとともに、4K化でノイズが目立ちやすくなる地デジ放送では、ノイズ感と精細感のバランスの取れた再現も手に入れ、完成度を高めている。

 4Kテレビと言えば、価格的にも身近な40型サイズが登場したことも特筆しておきたい。4Kの迫力や臨場感は大画面ほど効果的で、薄型テレビでも50型以上は欲しいというのが基本であるのは確か。だが、比較的コンパクトな40型にはパーソナル用4Kという新しい価値がある。個室に置く一人用のテレビならば40型は十分に大きいし、PCのモニターとして4Kの広大なデスクトップを活用できるのも魅力的だ。

 そして、4Kプロジェクタを手に入れた僕は、さらなる高品位な映像の再現と4K/60pアップコンバートに期待して、パナソニックのDMR-BZT9600を手に入れた。BDレコーダではパナソニックが4Kに積極的に力を注いでおり、下位モデルでも4K/24pでのアップコンバート機能を備えたモデルを投入。秋に登場したDMR-BRZ2000などは、4K動画の取り込みなどにも対応するなど、さらに充実度を高めている。こうした動きはまだ他社のBDレコーダでは見られないが、4K BDの登場も噂される来年にはより本格的な4K対応が進むだろう。また、BDプレーヤーやAVアンプなどでも4Kへの対応は進んでいて、4Kアップコンバート機能の採用も中高級機ならば当然といった状況だ。

優れた4Kアップコンバート機能やBDプレーヤーに迫る高画質・高音質を実現したDMR-BZT9600は映画鑑賞やテレビ視聴には欠かせない存在。上は4KチューナーFMP-X7。すべての番組を録る勢いで貴重なコンテンツを蓄積中

 次はいよいよネイティブ4Kコンテンツだ。ソニーは昨年に4K/60p撮影が可能なハイエンドモデル、FDR-AX10を発売していたが、続いて3月には4K/24p、30p撮影に対応しサイズも比較的使いやすいコンパクト化を果たしたFDR-AX100を発売。「ネイティブ4Kの映像がないなら、自分で撮ろう!」とばかりに、自分も手に入れた。もともと旅行先で美しい自然や建築物を撮るのが好きだったが、4K映像は高精細静止画に迫る情報量で映像を残せる。この喜びは格別のもの。4Kはビデオカメラでも大きなトレンドで、パナソニックからも、4K対応のビデオカメラが登場。より主観的な映像を撮れるウェアラブルカメラのHX-A500も実にユニークで実際かなり気になった製品だ。こんな4K対応のビデオカメラもますますラインナップが充実してくるはず。

扱いやすいサイズで4K映像を撮影できるFDR-AX100。旅行へ出掛ける楽しさを倍増させてくれた

 そして、夏には待望の4K試験放送「Channel 4K」が開始。試験放送の開始とほぼ同時にシャープから4KレコーダのTU-UD1000が登場。秋にはソニーからFMP-X7が発売された。HDMI出力2系統を備えた点が4Kプロジェクタを使う僕にはぴったりで、僕はソニーを購入。ついに待望のネイティブ4Kコンテンツを自宅で楽しめるようになった。コンサートやさまざまなドキュメント、スポーツなど、そのジャンルも幅広く、どれも従来の放送にはなかった楽しさがある。コンサートやスポーツでは客席に目が行くし、ドキュメントでも被写体だけでなく遠景の景色の美しさに気付く。主役であるステージのアーティストや競技をする選手達ばかりでなく、その場所のさまざまな部分を実際に足を踏み入れたような感覚で味わえる。これは4Kならではの面白さだと感じた。

 ついでに、大好きなゲームもPCでの4K/60p出力を実現。よりテクスチャー表現が緻密になった4K解像度表示では、リアルを究めた3DCGが映画に近い臨場感を味わわせてくれた。自分でインタラクティブに操作できるゲームで、映像がここまでリアルになるとその没入度はケタ違いだ。

 このように、4Kを楽しむ環境が急速に整い、それを思い切り楽しんできたのが、僕のこの1年だった。4K環境は来年以降ますます充実していくはず。この先の展開も実に楽しみだ。

ゲームの世界へ引きずり込む魔性の機械(笑)。4K/60pの高負荷でも高画質を追求し、最終的にはNVIDIAのGTX TITAN BLACKの3way SLI接続へと至った

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。