プレイバック2016
マイワイフを動かした「Chromecast Audio」。Ultraは4Kじゃなくて“速さ”がイイ! by 日沼諭史
2016年12月28日 08:00
スマートデバイスやオンラインサービスの映像・音声をAV機器にキャストするデバイスは、ずいぶんと種類が増え、わりと一般的な視聴スタイルになった。Chromecastに端を発する、というか、その前からMiracastとかAirPlayとかの似たような技術はあったけれど、テレビなどの大画面にコンテンツを映し出して楽しむデバイスは、2016年にChromecast Audioという音声特化の姉妹機に派生し、11月には性能を大幅にアップしたChromecast Ultraへと発展するに至った。
日沼家では、2016年、まさにこのChromecastシリーズ2台が大活躍し、それまで使っていたAV機器の一部を不要にするほどのアップデートを実現。自宅の動画・音楽試聴のスタイルがほぼ確立されたのだった。
マイワイフも満足の「Chromecast Audio」
ネット配信の音楽やラジオ番組をいかに手軽に、リビングのスピーカーから気持ちよく聴けるようにするかは、日沼家の長年の課題であった。オーディオ環境は、アナログ入出力しか備えないプリメインアンプに、ネットワークレシーバー(AirPlay対応)と2チャンネルスピーカーというわりとレガシーな構成だ。
この環境で例えばラジオを聴こうとすると、PC(Mac)のWebブラウザーでradiko.jpにアクセスして放送を受信した後、ネットワークレシーバーの電源を入れてAirPlayで音声を飛ばし、アンプの電源も入れて入力をネットワークレシーバーに切り替える、というしち面倒くさい手間が必要になっていた。
または、電話としては使っていない古いiPhoneをリビングに常に置いてあるので、それでradiko.jpアプリを使い、同じくAirPlayで再生するという方法もあった。が、ここまで聴き始めるまでの手順が多いと、もう音質はどうでもいいからPCのスピーカーで聴くわ、なんてことになり、結局リビングのオーディオが活用されなくなっていたのだ。
しかし2016年4月に登場したChromecast Audioの導入で、この状況が一変した。最初こそ、PCやスマートフォンなどのデバイス上からキャスト設定するための手間が依然あり、それまでのAirPlayを使う方法と大差ないように感じていたのだが、以前の手順で間に挟まっていたネットワークレシーバーの操作が不要になったことが、精神的な負担をも減らした気がする。リモコンを持ち替える回数が減り、Chromecast Audioは常に電源をオンにしているおかげもあるかもしれない。
以前は面倒な手順を覚えるのを諦めてPCのスピーカーでラジオを聴いていた妻が、気付いたらリビングのスピーカーで聴くようになっていたのが、そのなによりの証拠と言える。筆者としては、スマートフォン内の音楽ライブラリの再生を、音質的にも満足できるレベルで簡単にスピーカー出力できるだけでも大きな進化で、Spotifyのような定額制音楽配信サービスも家族で楽しみやすくなったのもうれしいポイントだった。
Chromecast Audioはそのデバイスの形から、“すわり”が非常に良くないのが唯一の難点といえば難点なのだが、これについてはいずれ自作のAVボードにさらに手を加えてChromecast Audio専用ホルダー的なものをこさえたいと思っている。ちなみにこのChromecast Audioのおかげで、3年ほど使ったネットワークレシーバーはお役御免となった。
動画再生がサクサクサクサクサークサクな「Chromecast Ultra」
2016年10月に発表され、先に米国で発売されたのを横目に、今か今かと待ち続けながらようやく11月22日、発売が開始された「Chromecast Ultra」。それまでの初代やカラフルになった2代目よりもなぜだか注目度が低いような気がしていたのと、9,720円というわりといい値段がすることも手伝ってどうしようか悩んだのだが、結局日本での発売日当日に購入してしまった。
初代Chromecastを所有し、4Kテレビもまだ導入されていない日沼家としては、その機能だけを見れば新しいChromecast Ultraを導入する意味はあまりない。が、Chromecast Ultraの最大の特徴とも言える4K対応やHDR対応よりも、筆者としてはどちらかというと処理性能と通信の高速化に惹かれたのだった。なにしろ初代Chromecastは動作が不安定で時々電源ケーブルを抜き差しする必要があったり、コンテンツのローディングが辛抱ならないほど遅かったりして、それが少しでも改善するならありがたい、と思ったのだ。
果たしてChromecast Ultraは、その思いを期待以上にかなえてくれた。まず、初期設定が一発で成功したところで大喜びである。初代はこの初期設定の段階から不安定で、何度も繰り返してやっと設定が完了するのが当たり前だった。もしかしたら個体の問題なのかもしれないが……。そして、電源ケーブルを常に接続したままで、抜き差しが必要になるような不安定さにも、今までのところ一度も遭遇していない。
なかでも感動したのが、動画コンテンツ再生時の快適さ。例えばスマートフォンの「dアニメストア」アプリで、コンテンツの再生を始めるまでの速度とシークのレスポンスは、劇的にアップした。タイムを計って比べてみると以下のような差である。
Chromecast Ultra | Chromecast(初代) | |
---|---|---|
「キャストの準備が完了しました」 までの時間 | 7.1秒 | 9.0秒 |
「視聴する」ボタン押下から 再生開始までの時間 | 2.8秒 | 13.4秒 |
再生中のシークにかかる時間 | 1.8秒 | 5.3秒 |
※3回ずつ計測して平均を算出。いずれもWi-Fi接続
Chromecast(初代)では「キャストの準備が完了しました」という表示が出た後すぐにコンテンツの再生を開始しても、エラーになって再生が始まらないことがあったりする。逆にChromecast Ultraの場合は「キャストの準備が完了しました」の表示前に再生を始めても問題なくすぐに視聴できたりするので、実際の快適さは数字以上だ。
それまではエラーや処理遅延との戦いで無駄な時間を過ごしていたため、その分コンテンツの視聴時間が削られていたわけだけれど、Chromecast Ultraはあまりにもサクサクなものだから、「もう1話見てもいいよね」という気持ちになってついつい以前よりだらだら見続けがちである。おかげでdアニメやNetflixなどの視聴は大変はかどるが、仕事がピンチだ。
Chromecast Ultraは、先述のとおり4KとHDRへの対応がキモ。HDR対応4Kテレビを導入した際には、その性能をいかんなく発揮してくれるだろう、という楽しみも残っている。これらChromecastシリーズは、2016年だけでなく、2017年以降もますます日沼家の動画・音楽ライフを充実させる存在になってくれるに違いない。