トピック
スマホ接続で手軽にハイレゾ! Astell&Kern「AK HC2」を音楽家TAKU INOUEが聴く
- 提供:
- アユート
2023年3月23日 16:00
サブスク型音楽配信の普及や、YouTubeなどの動画SNSの人気など、スマートフォン/タブレットで音を楽しむ機会は増えている。一方で、スマホ内蔵スピーカーの音質は低く、イヤフォンジャックすら無い機種がほとんどだ。そんな今、注目を集めているのが、スマホに接続して高音質を楽しめる“スティック型DACアンプ”。今やハイレゾ対応も当たり前で、出番が減っていた有線イヤフォンを復活させるアイテムとしても人気となっている。
では、音楽の制作者側は、スティック型DACアンプについてどのように感じ、評価しているのだろうか。今回は、数々のゲーム/アニメに楽曲を提供するサウンドプロデューサー、コンポーザー、そしてDJであり、Astell&KernのUSB DACアンプ「AK HC2」を使っているというTAKU INOUE氏に、自身の音楽活動とスティック型DACアンプへの評価を聞いた。
人生を変えた、1本のゲームソフト
TAKU INOUE氏は、2009年にバンダイナムコに入社。リッジレーサーシリーズや鉄拳シリーズ、アイドルマスターシリーズなどの作品を手が掛けてきた。2018年にフリーとして独立、トイズファクトリーのVIAレーベルに所属し、アーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュース/リミックス、アニメの劇伴に至るまで幅広く活躍している。
そんなINOUE氏と音楽の関わりは、学生時代のバンド活動に遡る。X JAPANに憧れて小学生の頃からギターに親しみ、中学では既にバンド活動を始めていたとのこと。担当パートはギターボーカル。中学校では理解のある先生のサポートもあり、学園祭の最後に演奏も披露。高校生の頃にはライブハウスにも出始めたという。
「(中学の学園祭では)先生の間でもいろいろあったんでしょうね。なんと舞台の幕の“裏側”で演奏したんです(笑)。同じクラス3人のスリーピースバンドでしたから、観客もみんな僕らが演奏しているってわかるんですよ。最初は“なんで幕の裏で?”と思いましたが、ステージは盛り上がりましたね。演奏させてくれた担任の先生にはとても感謝しています」。
作曲は、中学1、2年頃からコードやメロディーを書いていたそうだ。LUNA SEAのSUGIZO氏が薦めていたクラブミュージックにハマったことで、DTMも始める。父親のPCにプリインストールされていたCakewalk Expressにバンドスコアを打ち込んでいたそうだ。Windows 95や98が普及し始めた当時、少年時代から、PC上のシーケンサーで打ち込みをしていたとは恐れ入る。
大学では打ち込みのバンドを友人4人と結成。音楽の仕事も開始しており、ライブを見た企業から声を掛けられ、音楽フェスへ出演したり、アーティストのリミックスなどを手掛けるようになる。
「データを作って納品するという手順は学生時代に経験することができたので、いわゆる“音楽で仕事をする”というイメージは持てていました。当時やっていたバンドがもっと人気を得ていたらどうなったかはわからないですが、“このバンドで食べていく”って感じでもなかったので、就職を選びました。バンダイナムコに入れたのは、当時作っていたクラブミュージック的な音楽から、自分の強みを買ってもらえたのかもしれないですね」。
筑波大学大学院の図書館情報メディア研究科に在籍していたINOUE氏。大学院まで行ったのに音楽で食べていくことへの躊躇もあり、就職活動では楽器メーカーの営業職などを受けていたが、“会社員として音楽を仕事にする”道があることに気付き、バンダイナムコの門を叩く。キッカケとなったのは、1本のゲームソフトだ。
「実は、ナムコの『塊魂』が大好きで、音楽的にも特に印象深い作品でした。日本語で歌モノがBGMになるのが当時は衝撃的で、突拍子もない歌詞もすごかったし、これが作れるナムコは楽しそうな会社だなって思って、試験を受けてみることにしたんです」。そこから、数々のゲーム音楽を手掛けていく。
その一方で、INOUE氏の最近ホットなお仕事と言えば、大人気VTuber・星街すいせいとの活動だ。星街すいせいを知るキッカケとなったのは、INOUE氏の楽曲「Hotel Moonside」を彼女が配信でカバーしたこと。その歌唱力にINOUE氏が驚き、また、彼女自身もINOUE氏の曲が好きだと公言していたこともあり、いつかは仕事をしたいと思っていたそうだ。
INOUE氏が独立後にリリースした『ALIENS EP』内の「3時12分」は、彼女にボーカルを依頼した初の楽曲。同時期に星街すいせいの1stアルバム『Still Still Stellar』のリード曲「Stellar Stellar」の作編曲を手掛けている。この共作がきっかけで音楽プロジェクトMidnight Grand Orchestra、通称“ミドグラ”が生まれることとなる。
「3時12分」のレコーディングで初めて対面。「配信で見ていたイメージそのままで、とても話しやすかった」という。そんな彼女の、シンガーとしての実力について、率直に尋ねてみた。
「音楽的な勘所がとても優れている方だと思います。『3時12分』のときは、デモテープを送ると、1~2日で仮歌を送ってきて下さって。聴いてみたら、既に“こういう感じで歌ってほしい”と思っていた事が形になっているんです。また、僕の中で“違うな”と思う部分があったとしても、現場でディスカッションして、必要ならすぐに変えてくれる対応力もありますし、理解力やセンスも素晴らしいと思います。ミドグラでも、彼女の作ってきてくれたアイデアそのままで気持ちよくOKテイクにできることが多かったですね」
2人の歌に関する好みが近かったのも、良い作品作りに繋がったそうだ。
ミュージシャンも評価するAK HC2サウンド
そんなマルチに活躍しているINOUE氏は、Astell&Kernのハイレゾ対応ポータブルUSB-DAC「AK HC2」のユーザーでもある。ちなみに、2月に発売されたばかりの限定カラーモデル「AK HC2 Midnight Blue」(29,700円)は、偶然にも星街すいせいのイメージカラーと同じ青色だ。
手のひらサイズのAK HC2だが、中にはCirrus Logic製「Master HIFI DAC CS43198」をデュアルDAC構成で搭載し、最大PCM 384KHz/32bit、DSD256(DSD 11.2MHz)までのネイティブ再生に対応。出力は4.4mmの5極(GND接続あり)バランス出力を備える。コンパクトだがハイスペックなDACアンプだ。
USBバスパワーでありながら消費電流を最小限に抑えつつ、4Vrmsの高出力(無負荷時)を実現。鳴らしにくいイヤフォン/ヘッドフォンもパワフルにドライブできる。
スマホとの接続はUSB-Cだが、Lightning変換アダプター付属でiPhoneでも使える。細かな音量調整がAndroidスマホでもできるように、専用アプリ「AK HC」を用意するなど、使い勝手にもこだわっている。
――INOUEさんは、サブスクの音楽配信サービスは何を使っていますか? また普段はどんな機器で聴いているのでしょう。
INOUE氏(以下敬称略):Apple MusicとSpotifyです。日常使用は、ほぼSpotifyですね。オーディオインターフェース経由でモニターヘッドフォンをメインに聴いていますが、たまにモニタースピーカーでも聴きます。外では、自分もチューニングに参加させていただいたANIMAの「ANW01」をメインにしていますが、利用者が多いデバイスにも耳を慣らしておきたいので、AirPodsも使いますね。
――オーディオへのご興味はあったのですか。
INOUE:実は、昔はオーディオそのものには、あまり興味はありませんでした。音楽を作る上で必要な機材は買いましたが、学生時代はお金も限られてますから。ヘッドフォンも、とりあえず手元にあるものを使っていました。
ヘッドフォンは消耗品ですし、1~2万円くらいの機種でも高価という感覚でした。会社に入ってからは、恵まれた環境でいろんな機材を試せましたね。アユートさんとのご縁が生まれてからは、それまでノータッチだった高級イヤフォンの世界にも触れることが出来ました。
――AK HC2は使ってみていかがでしたか。
INOUE:実は、バランス接続のイヤフォン/ヘッドフォンをこれまで真剣に試したことがなかったんです。実際に聴いてみたら、バランスとアンバランスの違いに驚きました。一番違うのは、ステレオ感だと思います。バランスと比べると、アンバランスは幕が一枚掛かっている気がしますね。クロストークの有る無しでこんなにも違うんだなって感動しました。
バランスにするとアンバランスで低域がぼやけているのが、とてもクリアになるんですよ。PCに繋いでミドグラの音源を聴き比べもしたんですが、同じ曲で96kHz、48kHz、44.1kHzと聴いていくと、48kHzと44.1kHzの違いが思ったより出ていて驚きました。高域の感じとか。アンバランスでも96kHzと48kHzは違いが分かりやすいですが、バランスだと48kHzと44.1kHzの違いまでありありと聴き取れます。原音の再現性が非常に高いのだと思います。低域の解像度の高さも気に入りましたね。
――ミドグラの楽曲は、96kHz/24bitでもリリースされており、ストリーミングでもハイレゾのまま配信されています。この辺りの経緯を教えてください。
INOUE:ミドグラは、去年の2月くらいに制作していました。以前は、48kHzで録ることが多かったんです。というのも、たとえ96kHzで作っても、マスタリングで44.1kHzになったときの差が大き過ぎて……だったら48kHzで作って44.1kHzとの差を少なくしたいなって思いがあったんですね。
ただ、ミドグラをやるにあたって、ストリングスを使うっていうのと、星街すいせいの声をしっかり出したいというのもあって96kHzでやってみることにしました。ちょうど信頼できるマスタリングエンジニアがいたというのもありました。青葉台スタジオの澤本哲朗さんは、44.1kHzのクオリティも納得のいくものが帰ってくるので、最近はずっとお願いしています。
96kHzでやったら、音の情報量は格段に上がりましたね。生音の再現性、ストリングスの艶っぽさもそうですが、クラブミュージックにはホワイトノイズ的な音の壁があって、そういうところは如実に違いが出ます。リバーブの掛かり方も変わるので、クラブミュージックだからハイレゾに向いていないなんて決してないと思います。上から下まで帯域を使いますから。
それに96kHzは、音場を広く使えるのが楽しいです。元から空間は広く使いたい性分だったので、96kHzになって、やりたいことがより形にできるようになったと思います。リスナーの方には、そんな音の魅力を余すことなく聴いてほしいということでストリーミングでもハイレゾのまま届けています。
――逆に、ハイレゾになって新たに気を付けることはありましたか?
INOUE:ありますね。高域の情報が増えることで、低域や歌がそれに負けちゃうなと感じることも多いんです。だから、ミックスにおいて高域とのバランスが取れるよう、低域・中域の処理にもっと気を遣うようになりました。その辺りは、ミックスの工程だけでなく、理解していただけるマスタリングエンジニアさんにお願いすることも重要で、仕上がりのクオリティに大きく関わってきます。
――ハイレゾに限らず、INOUEさんが楽曲を作る上での音へのこだわりについても教えてください。
INOUE:良い音にするのは大前提として、一般の方が聴くデバイスでどう聞こえるか? を常々意識しています。自分が持ってるプロ用デバイスでよく聴こえても、一般的なイヤフォンやスピーカーで聴いたら低音が聴こえない……なんてこともありますので。
より多くの人に意図通りに聴いてもらいたいので、昔のApple純正・有線イヤフォンを使ったりもします。音楽リスニングとしては厳しい環境ですが、外に出て、AirPodsで聴く事もあります。マスタリングは、1日では終わらないので、完成したと思っても、翌日ちゃんと耳を“冷まして”リセットしてからもう一回チェックします。耳を何回リセットできるかが勝負です。フラットな状態で聞いて、判断したいですから。
――AK HC2でINOUEさんの楽曲を聴く場合、ここに注目してほしいというポイントはありますか。
INOUE:AK HC2の良さが分かり易かったのは、ミドグラ2ndシングルの「Moonlightspeed」ですね。この楽曲は上から下まで帯域が広いので、ハイレゾとCDクオリティやロッシー配信との比較をしてもらうと面白いと思います。
まず、質感が違います。特に曲が盛り上がってる部分でハイが出ているところとか。低域のアタック感も、とてもソリッドに聴こえてカッコいいです。声を張るところより、静かめに歌っているところはハイレゾだと、より空気感が出て、口元感も生々しくなりますよ。
――Midnight Grand Orchestra(ミドグラ)は、INOUEさんにとっては初めてのVTuberとの音楽ユニットとなった訳ですが、これまでの音楽活動と変化したことや意識したことはあったのでしょうか。
INOUE:実はあまり“VTuberと一緒にユニット”という意識は強くなくて。星街すいせいという素晴らしいシンガーと音楽をやっていきたいというのが、そもそも根本にあります。とはいえ、VTuberという面白い属性はありますから、それを音楽的、視覚的に活かすためにどうするかは日々考えますね。
1stライブをやるに当たって、普段のステージとは違うハードルはありましたが、楽曲制作に関してはVTuberだからと言ってそんなに変わらないと思いますね。
――その昨年8月に開催された 1st LIVE『Overture』ですが、冒頭10分を視聴しただけでも、その規模感やクオリティに圧倒されます。いよいよBlu-rayの発売も決まったわけですが、実際にミュージシャンとしても出演されたINOUEさんは、ライブをやり終えてどのような感想を持たれましたか?
INOUE:音源の制作の段階からなんですが、VTuberがボーカルにいる“いちバンド”だと思って作っていきました。配信ライブをやるならああいう形かなと。準備は大変でしたが、納得のいくものにはなりました。
ぶっちゃけ配信ライブを見る時、僕の場合は冒頭10分で飽きちゃう事もあるんです。自分が関わるなら、そうはならないようにしたいという思いはありました。
音についてはライブの生音には敵わないので、ビジュアル面をどうしたものかと試行錯誤しましたね。ステージが稼働するギミックなどを使って、配信ならではの楽しさを提示できたと思います。
次は生のライブに、あの感動を持っていきたいという思いはあります。配信ライブで感じてもらった雰囲気を、リアル会場でやるとしたらどうするか? を最近は考えています。
――AK HC2を普段、サブスクの聴き放題サービスと使ってみて、相性はどう感じましたか。
INOUE:この大きさなら繋いでいても苦にならないし、取り回しやすいから、持ち歩いても邪魔じゃなかったですね。ハイレゾで制作してストリーミングでも配信している身としては、このくらいの高音質で聞いてくれたら御の字です。ハイレゾの情報量に見合った音は聞ける製品だと思いますよ。
ぜひ、スマートフォンやパソコンのイヤフォンジャックからの音と比べてほしいです。そもそもスマートフォンからイヤフォンジャックが無くなってきているので、有線イヤフォンいいですよって改めて言いたいですね(笑)。
3.5mmジャックの「AK HC3(実売約30,980円)」もいいですね。自分の持っているイヤフォン/ヘッドフォンを1台でいろいろ試せますから。
――バランス接続のヘッドフォンで音決めのチェックをするプロの方も増えていると聞きます。AK HC2は、バランス接続におけるマスターチェックツールとして有用でしょうか。
INOUE:はい、これからはAK HC2でもチェックしようと思ってます。一般の方がバランス接続のイヤフォン/ヘッドフォンを多く使っているかというと、そうではない訳ですが、ステレオ感とかは明らかに分かりやすいので、チェックツールとしては有用です。そのチェックの結果を納品物にどう反映させるかは、今後試行錯誤していきたいですね。
音質的には、周波数バランスなど特に気になるクセもなく、解像度も高いからチェック用のデバイスとして実用に耐える製品です。このくらいの価格と、バスパワータイプのDACでこれだけ音が変わるなら、据置きの製品になったらどうなるんだって興味も深まってます(笑)。
――最後にINOUEさんが思うAK HC2の魅力をお願いします。
INOUE:バランス接続とハイレゾの入門編としては、とても良い1台だと思いました。音楽を作っている側としても、音楽を余すことなく楽しんでもらえると思います。こういう機材で聴いてくれたらとても嬉しいことです。推しの声は、もっといい音で聴いてほしいですしね。
AK HC2はデュアルDAC仕様で4.4mmバランス接続を備えるなど、コンパクトながら音にこだわったDACアンプになっており、その音質は、プロのサウンドプロデューサー・コンポーザーであるINOUE氏も認めるクオリティ。INOUE氏の音楽ファンのみならず、ストリーミング音楽をより楽しむために、そして“バランス接続とハイレゾの気軽な入門機”としても、AK HC2は見逃せない選択肢の1つとなりそうだ。
TAKU INOUEサイン入り「AK HC2 Midnight Blue」プレゼント
TAKU INOUEサイン入り「AK HC2 Midnight Blue」を、1名にプレゼントする。
応募方法はAstell&Kern JPのTwitterアカウントをフォローして、プレゼント告知ツイートをRTすれば完了。応募締切は2023年3月31日10時まで。
🎧フォロー&RT🎧
— Astell&Kern (JP) (@AstellnKern_jp)March 23, 2023
TAKU INOUE × Astell&Kern
AV Watchインタビュー記事公開記念!
直筆サイン入りポータブルUSB-DAC
『AK HC2 Midnight Blue』を1名様にプレゼント
応募方法
①@AstellnKern_jpをフォロー
②本ツイートをRT
締切:3/31(金)10時
▼インタビューはこちら▼https://t.co/WXcYJgtzS8pic.twitter.com/1vH1L6h3hq
1st LIVE『Overture』の模様を収めたBlu-ray/DVD発売決定
また、インタビューの中にもあった、1st LIVE『Overture』の模様を収めたBlu-ray/DVDの発売も決定。発売日は6月14日で、価格はBlu-rayが6,800円(税抜/品番:TFXQ-78234)、
DVDが5,800円(税抜/品番:TFBQ-18266)。
全形態収録内容は以下の通り。
- 2022.08.20 Midnight Grand Orchestra 1st VIRTUAL LIVE「Overture」LIVE映像
- M01 Never Ending Midnights
- M02 SOS
- M03 Allegro
- M04 Rat A Tat
- M05 Tuning
- M06 流星群
- M07 3時12分
- M08 Stellar Stellar
- M09 Highway