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“復元時間”までこだわる脅威のイヤーピース「SednaEarfit Foamax」使ってみた
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- アユート
2024年1月26日 08:00
新進気鋭のイヤフォンメーカー・AZLAが展開するイヤーピースブランド「SednaEarfit」から、同ブランド初となるフォームタイプ製品「Foamax」が発売された。「高遮音と高音質の両立にフォーカスした」という製品で、最大の特徴といえるのが同ブランドならではの徹底した造り込みだ。
これまでのシリコンタイプでも、実際に多数のユーザーの外耳道を分析したデータを元にデザインを設計。サイズ違いであっても軸の長さは全く同じにして確実な装着位置を確保していたり、軸の堅さが異なる製品バリエーションを用意するなど、これまでのイヤーピース製品では類のない、こだわりある製品作りが特徴となっている。
今回のFoamaxでも、そういったこだわりある物づくりの姿勢は貫かれている。なお、価格は「M/ML/Lセット」(各1ペア)と「S/MS/Mセット」(各1ペア)が各3,960円。S/MS/M/ML/Lの単品(各2ペア)が各2,970円だ。
潰してから復元する時間にまでこだわる
まず、フォーム素材については、約1年間にわたって成分配合等を変えたテストを数十回にわたって行なうことで、ベストな復元力を見つけたという。
実際、フォームタイプのイヤーピースはいったん潰して耳穴に挿入、徐々に広がっていきフィットするという装着方法だが、復元が遅いと使いづらいし、早すぎると耳に入れにくかったりする。一方、Foamaxは潰してから約30秒かけてゆっくり復元するため、余裕を持って耳道内にフィットさせることができるという。
そういった装着時にベストな復元力を追求してくれているのは、使い勝手の面でありがたいかぎり。
さらに、耳道への刺激を軽減する円形デザインの採用や、汗や皮脂汚れを防ぐ超薄膜コーティングを施すなど、快適性に対しても細やかな配慮がなされている。
もちろん、肝心のフィット感や遮音性についても徹底的に追求。本体は、高い遮音性を確保する独自の高密度フォームと、イヤフォンのノズルに対して高い固定力を発揮するプレミアムメディカルシリコンのハイブリッド構成を採用。これによって、フォームタイプならではの高い遮音性を確保しつつ、音質面のデメリットを解消したという。
「多くのフォームタイプは、高い遮音性とフィット感を得る代償に高域特性が落ち、低域に音が寄る傾向がありましたが、Foamaxは高域の減衰を抑えつつ、音の直進性を確保する独自の内部設計により、広いサウンドステージと鮮明な音を確保した」とアピールする。
たしかに、内部にシリコン素材を採用するハイブリッド構造はいくつかのメリットをもたらしてくれている。たとえば音の直進性。ノズル部が大きく歪んだり推し潰れてしまうと、音質にも悪影響を及ぼしてしまうため、それを回避できるのはFoamaxならではのアドバンテージといえるだろう。
また、耳穴側にはノズル部と一体のハニカム構造フィルターも採用されている。これによって、効果的に異物の流入を防止しつつ、音の伝達を邪魔しない=音質に対する影響を最小限に留めているという。確実なフィット感や遮音性をもたらすとともに、音の伝達を邪魔しないという特徴もある。ちなみにこのフィルターも柔らかい素材で作られており、フィルターごと押しつぶせるようになっている。
こういった数々の作り込み、丁寧な製品デザインは、これぞAZLAといえる部分だ。
ちなみに、Foamaxはフォームタイプとしては珍しくS/MS/M/ML/Lと5つものサイズバリエーションを用意。フィット感や好みに応じて細やかなチョイスができるようになっているのはありがたい。また、全サイズの高さが8.8mmに統一され、どのサイズでも不要な音質的変化が生じないよう配慮されている点からも、SednaEarfitらしさが伺える。
人気イヤフォンと組み合わせて聴いてみる
では、実際のイヤフォンと組み合わせて聴いてみよう。今回、TWSを中心に数機種でその装着感や音質を確認してみることにした。
まずはソニー「WF-1000XM5」を使用してのチェック。
WF-1000XM5は、独自デザインのウレタンフォーム・イヤーピース(ノズル部がFoamax同様シリコン製のもの)が付属しているため、こちらと比較してみた。
装着感、音色ともに大きく変化した。まず装着感については、フォーム部分の厚みが大きく異なっているためFoamaxのほうがフィット感が自然で、かつ快適に感じられる。特に長時間使い続けたい人には、Foamaxがオススメだ。
音色傾向も変化する。純正イヤーピースでは、迫力はあれどもややウォーミーなサウンドキャラクターだったが、Foamaxに変更すると高域のヌケが良くなり、それでいて低域の量感は失わず、絶妙なサウンドに変化してくれる。おかげで、肩の力の抜けた聴きやすい音となってくれた。
ノズル開口部の大きさなども影響しているのだろうが、WF-1000XM5本来のサウンドはこちらのような気がする。純正ともシリコンタイプとも異なる、絶妙なバランスのサウンドだ。
ちなみにFoamaxをMSサイズからMサイズへと大きさをアップしてみたが、装着のしっかり感が増すおかげか、音場表現も安定してくれたようにも思う。フォームタイプのメリットを活かすためには、普段よりもやや大きめのサイズをチョイスするほうが音の面ではよさそうだ。
ただし、装着感については好き嫌いがあるだろうからいくつかのサイズを試すことをオススメしたい。
続いて、JBL「Tour Pro 2」を試してみる。Tour Pro 2は楕円形のノズルを採用、純正のシリコン・イヤーピースも楕円形となっているため、装着感についてはなかなかの快適さを持ち合わせている。それでいて、低域の量感もしっかり確保されているのだから完成度は高い。
しかしながら、Foamaxに交換するとフィット感がさらに高まってくれる。多少なり圧迫感が増えるので好みはあるかもしれない(フォームタイプそのものの好き嫌いの問題だろう)が、この“しっかり感”はありがたい。
また、サウンドも純正の低域が目立つイメージからフラット志向に変化、歌声や楽器のバランスがより自然に感じられる。また、Foamaxならではの遮音性の恩恵か、ANCの効き具合もより効果的になっている気がする。装着感の好み次第ではあるが、悪くない組み合わせといえる。
さらに、ヤマハ「TW-E7B」でもチェックしてみた。こちら、純正ではごくオーソドックスなデザインのシリコン製イヤーピースが付属しているが、持ち前の音響技術もあって音質的には充分良好だ。それをFoamaxに変えてみると、密閉性が高まったおかげか、音量が増してメリハリのよい迫力サウンドを聴かせてくれるようになった。
とはいえ、基本的な音色は自然な印象のまま、TW-E7Bらしさは失っていない。あくまでも、装着感の好みや利用するシチュエーション(騒音レベルが高い場所など)に応じてどうするかを考えるのが良さそうだ。
HIFIMAN「Svanar Wireless」も試してみた。こちらも純正はごくオードソックスなデザインのシリコン・イヤーピースだ。
Foamaxに替えると、音色が幾分丁寧な表現になった。低域がパワフルではあるが。歌声はヤヤウォーミーになり、優しい響きとなった。Svanar Wirelessはイヤフォン本体が大柄のため、フィット感のよいFoamaxにメリットを感じるが、音質の変化もあるため、好み次第といったところだろう。
最後にテクニクスの「EAH-AZ80」でも試聴をおこなった。EAH-AZ80は独自デザインのシリコンイヤーピースを採用しているが、Foamaxに替えてみることでどういった変化がもたらされるのだろうか。
結果としては、なかなかに良好だった。密閉性が高まってくれるおかげか、ディテール表現がより丁寧に感じ取られ、同時に低域の質も量も高まってくれる。パワフルだけど上質、そんな印象のサウンドに変化する。WF-1000XM5同様、これがEAH-AZ80本来のサウンドなのかもしれない。
オマケとしてもうひとつ、EAH-AZ80はそのままにフォームタイプ・イヤーピースの老舗ブランドであるCOMPLYも試し、両者でどういった特徴のや違いがあるのかもチェックした。
使用したCOMPLY製品は「TRZ-500」。サイズは同じMサイズを選んだ。実は、(同じMサイズの)素の状態だとTRZ-500の方がやや大きく感じる。これは、COMPLYの方が反発力の弱い素材を採用しているためだろう。
装着感は両者でそう変わらず、どちらかといえばTRZ-500の方が圧が少なく感じるくらいだ。また、表面はFoamaxのほうがしっとりめ、TRZ-500はサラッとしている。
結果としては、低域の強さはTRZ-500のほうが上まわっているものの、音の質感アップやバランスのよさはFoamaxの方が有利、といった印象だ。COMPLYには楕円形の外観を持つモデルもラインアップされているので、組み合わせるイヤフォンによっては好ましい場合があるかもしれない。
SednaEarfit Foamaxは、愛用イヤフォンの実力を引き出してくれるだけでなく、耳に装着しやすく、装着感も良好。サイズ展開も豊富と、使い勝手が良いところもポイント。また取材時にはフォームタイプと思えないほどの着脱し易さも嬉しかった。愛用イヤフォンでフォームタイプを試してみたい、という人にはまず最初に試してみて欲しい製品だ。