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“ジンバル一体型”に“3色レーザー”、プロジェクター界の革命児JMGOとは何者なのか?

JMGOの新モデル「N1S Pro 4K」

映像鑑賞のスタイルは激変した。映像配信サービスが普及し、オリジナルコンテンツやスポーツイベントなどを競い合って配信している。テレビも一家に一台の時代を経て、一台も持たないというライフスタイルが拡大。コンテンツはパッケージメディアから解き放たれ、スマホやタブレットで、いつでも、どこでも鑑賞できるようになった。

その一方で、コンパクトなプロジェクターが注目を集めている。普段小さな画面で見ている反動からか、じっくりコンテンツを楽しみたい時は大画面で高画質に、使わない時は場所をとらずコンパクトで、部屋のインテリアとしてもデザイン性のプロジェクターが欲しい。しかも安価で……というニーズだ。

メーカーにとって、これらの条件をクリアするのは難しい事だろう。だが、突如こうしたハードルを乗り越え、クオリティの高いプロジェクターを投入し、話題となっているメーカーがある。JMGO(ジェーエムゴー)だ。

正直に言って、筆者はJMGOというメーカーを知らなかった。それゆえ、2023年4月に、3色レーザー搭載プロジェクター「N1」シリーズを見た時には驚いた。角度が自由に変えられるジンバル一体型プロジェクターはとても独創的で、映像のクオリティも高く、世間からのプロジェクターに対するイメージを一新する可能性を秘めていたからだ。

ただ、日本人からすると、聞いたことのないメーカーが、やたらクオリティの高いプロジェクターを次々と作っているように見える。「彼らはいったい何者なのか?」。

そこで、来日したJMGOのCEO・李树森氏(以下、李氏)に話を聞くと共に、注目の新製品「N1S Pro 4K」「PicoFlix」も体験した。李氏の口から語られたのは、映画が大好きなのに、なかなか映画が見られない……そんな悩みを抱えたエンジニア達が集まり、初めてのプロジェクター作りに挑んだ、熱い物語だった。

JMGOの新ポータブルプロジェクター「PicoFlix」

映画好きのエンジニアが集まり、夢のプロジェクター開発に挑む

前述の通り、JMGOが日本で注目され始めたのは、N1シリーズが発表された2023年4月頃からだろう。しかし、JMGOが中国深センで設立されたのは、2011年と10年以上前だ。N1シリーズ以外にも数々のモデルを本国でリリースしてきており、まったくの新進気鋭メーカーというわけではない。

JMGOのCEO・李树森氏

李氏は「日本の皆さんがJMGOを知らないのは理解できます」と認めたうえで、「ただ、JMGOは実は“業界初”を多く実現しているんです。スマートプロジェクターも、カプセル型も、3色レーザーをホームプロジェクターに搭載したのも、JMGOが初めて。そうして本国でのシェアを高めましたが、そのイメージを海外に作ることができていませんでした。創立者である胡震宇氏は、規模よりも質を追求していて、企業をより大きくしていくことをあまり考えていなかった……というのもあります」と語る。

JMGOの代表的なプロジェクター

高い技術力に驚くが、JMGOは技術至上主義のメーカーではない。発端は、“映画好きの集まり”だったそうだ。

「JMGOの設立当時、中国はまだそこまで経済が発達しておらず、お金がありませんでした。映画を見に行きたくても、チケットは高いし、映画館がそもそも大都市にしかない。初任給で奮発してデートとして映画館に行く……そのくらい高価な趣味だったんです。映画を見に行きたいけれど行けない、いつでも家庭で見ることができるものはないか、と映画好きなメンバーが一緒におしゃべりをしているなかでJMGOは生まれました」。

創立時のメンバーは18人。創立者の胡氏はソフト系の会社に勤めていたが、その元同僚がメンバーの半数ほどを占めていたので、ハードを扱える人を募集した。共通するのは映画好きであること。

プロジェクターの開発ができるから起業したわけではなかったので、開発は苦労の連続。しかも、彼らが目指していたのはデザインも機能も“スマートなプロジェクター”。プロトタイプが何台もお蔵入りとなり、苦労の末に納得のいくスマートプロジェクター「G1」をリリースできたのは2014年だった。

2014年に発売した「G1」

円形の近未来的なデザインに、Android OSを搭載。Bluetoothでスピーカーに音を飛ばすこともできるといった機能性が当時の市場にインパクトを与え、中国国内で一気にJMGOの名を広めた。李氏も「G1は今みても格好良いデザインで、思い入れがあります」と語るように、JMGOはそれまでのプロジェクターの業務用然としたルックスを良しとしなかったことも、他社との差別化につながっている。

他社に真似できない製品を作るため、光学研究所を設立

いつでも家で映画が見られるように、という志からスタートしたJMGOだが、決して勢いだけが先行しているメーカーではない。デザインで獲得できる人気は一時的なもので、その人気を継続するにはプロジェクターとしての品質を常に高めていかなくてはならないことを、G1発売の時点で認識していた。2014年、JMGOは光学研究所を設立する。

「最初は外からパーツを買ってきて組み立てていましたが、それだと他社も真似できてしまうため、差別化ができません。プロジェクターにとって重要な光学を自分たちで極めていかないと、この先はないと考えました。メーカーが自社でコア技術を研究するのはチャレンジングでもありますが、必要だと考えての投資です。革命的な発想には、技術がついてこないといけません」

プロジェクターにとって重要な光学ユニット。それを自分達で追求し、開発するために光学研究所も設立した

こうしてアイディアと技術の両軸からJMGOは成長を続け、今では本社に300人、自社工場を含めればおよそ800人が働く企業となった。このうちエンジニアは250人で、ソフト担当、ハード担当、デザイン担当で大きく3つのチームに分かれている。製品の開発にあたっては、マネージャーのもと各チームから数名が集まり、チーム横断で進められる。

製品開発では、例えばデザインにおいて、先進性があること、付加価値があること、イノベーションを生み出していること、の3点を大切にしているという。そして、JMGOが特に重視しているのは“ユーザーの声”だという。定期的にユーザーをと交流し、生の声を聞いて、それを製品に落とし込んでいく。

ユーザーの声を第一に、ソフト、ハード、デザインのチーム横断でプロジェクトが進められる

ユーザーの声には「高さの調節ができないから、積み上げた本の上にプロジェクターを置かないといけない」「設置した時の見た目が良くない」などなど、ネガティブなものも多い。だが、そこにこそ新製品のヒントが隠されている。

高さに関する不満からは、カメラでは当たり前だったジンバルを活かせるのでは?というアイディアが生まれた。そしてどうすればデザインの面でも優れたものになるか、と練り上げていくなかで、N1シリーズのジンバル一体型スタイルが形作られていった。

上下左右に投写角度を自由に調整できるジンバル一体型は、シームレス台形補正機能があることでそのメリットが最大限活かされている

デザインの好みは、国によっても異なる。そこで、欧米向けのデザインについてStylus Media Groupからアドバイスをもらったり、中国美術学院と毎年コラボレーションしたりすることで、中国と欧米の異なる美的観点を吸い上げているそうだ。こうして出来上がったデザインは、使い勝手と表裏一体になった実用的にしてスマートなものになっている。

ユーザーの声を最大のヒントに日本仕様の画質を追求

JMGOプロジェクターの、画質における最大の特徴は、N1シリーズに搭載された3色レーザー光源だろう。レーザー光源を採用するモデルは複数あるが、3色レーザー光源となると難易度が上がるため、ホームプロジェクター向けにはほとんど存在していなかった。にも関わらず、彼らは3色レーザー光源に早くから着目していたという。

プロジェクターの高画質化にあたり、JMGOは光源を重要視したことが大きい。光源として3色レーザーが優れている事に着目。日亜化学による3色レーザーの弱点とされる緑色レーザーの光効率、小型化、高コストといった課題の克服、更にレーザーの最大の課題であるスペックルノイズをJMGOのMALCエンジンという技術により解決できたことでホームプロジェクターへの搭載を実現した。

JMGO N1Sシリーズに搭載される3色レーザー光源は、LED光源や単色・2色のレーザー光源に比べ緑の色域が広い

さらに、李氏の手腕も発揮されている。「私は以前までファーウェイで働いていましたが、そこではどの分野であっても世界一を目指すのが当たり前の環境でした。私がJMGOに入った2022年3月には、プロジェクターの技術は似通っていて、差別化されていなかった。これではいけない、世界一になるためにはどうすればよいか、と考えた結果が3色レーザーの採用です。3色レーザーが明るく、広色域で、コントラストも良いのはわかっていたことです。これを使って最良の画質を目指すのは当たり前の選択でした」という。

だが、光源だけで画質は決まらない。その光源を活かすチューニングが大切だが、ここでもユーザーの声が活かされる。

JMGOには20年来テレビ開発に関わってきたエンジニアが2名在籍しており、彼らが基本となるモードを複数作るそうだ。そのモードを、厳密な検査により色を見分けるなどの精度に優れると認定された20名程度の“ゴールデンアイメンバー”がチェック。その意見をフィードバックして、さらにブラッシュアップした画質を、今度はユーザー調査チームがユーザーに見てもらう。その意見を受けて最終調整をかけるというステップで仕上げられる。

ここでのユーザーとは、本国である中国人の意見となるが、国によって求められる画質が異なることをJMGOは把握している。当初グローバルでも同一の画質を提供していたが、日本市場に向けては、「誰もが知っているソニーのテレビを真似よう」というところから調整したそうだ。

その段階で、彼らも画質には自信があったはずだが、それでも評論家を始めとしたユーザーの意見を謙虚に受け入れて、日本向けに調整が必要となれば、すぐに修正をかけていった。結果として最新の「N1S」シリーズでは、完全に“日本仕様”といえる画質になっている。

DLPプロジェクターのDMDチップ

音質も同様だ。約28年間にわたって音まわりに関わってきたエンジニアが、社内の音響専用室でサウンドモードを開発。これまた耳の精度が優れる“ゴールデンイヤーメンバー”が、そのサウンドモードを聴き、ユーザーの意見もフィードバックし、音を練り上げていくそうだ。

プロジェクター内蔵スピーカーの特性を測定

なお、N1シリーズではこれまで、DYNAUDIO製スピーカーを搭載していたが、N1Sシリーズからは“JMGO Master Sound”という自社製のものに変更されている。これも光学系と同様に、自社で長年の研究を進め、既存パーツをチューニングする以上のレベルを実現できるようになったという判断で切り替えたとのことだ。

ゴールデンイヤーメンバーやユーザーの意見をフィードバックしながら、サウンドクオリティを高めていく

すでに実績のあるパーツ、著名なブランド名を利用しないというのは思い切った決断だったろう。開発費用を考えれば、コスト面でもデメリットがあるはずだ。それでも自社製に踏み切ったのは、他社と差別化する、製品クオリティを上げる、そして世界一を目指すには必要だった、ということに違いない。

コンパクトでスタイリッシュなプロジェクターを作るためには、内部の発熱をどう処理するかも重要になる。ヒートパイプやヒートシンクの形状なども最適化していく

プロジェクターがテレビ代わりになる未来に自信

日本市場についての印象を伺うと、「同じアジア圏で見ると、日本と香港は似ていると思います。部屋が狭いため焦点距離が確保しにくいので、条件としては難しいですね。ただ、楽天やAmazonの口コミ、量販店、ショップからもユーザーの意見を吸い上げていますが、大画面への関心は高いです。また日本メーカーのユーザーの声を大事にする姿勢には、とても共感しますね。メーカーの自己満足ではなく、結局は使うユーザーの気持ちが大事ですから」と李氏。

日本では“テレビ離れ”が話題になって久しいが、中国でもテレビは高年齢の方が中心で、若年層はテレビを購入しなくなってきているそうだ。こうした時代背景を追い風に、李氏はプロジェクターの未来は明るいと語る。

「これまでのプロジェクターはテレビから置き換えられるものではありませんでしたが、今は違います。3色レーザー光源によって明るい部屋でもキレイな映像を見ることができ、100インチの大画面はテレビよりコストの面で優位性があります。また映像配信サービスの流行で、様々な人気コンテンツをプレーヤーなしで見ることができます。テレビにできることはプロジェクターにもできるようになりました」

「一方で、プロジェクターにできてテレビにできないことがあります。例えば窓のない部屋に窓の映像を投写するとか、寝る前にリラックスできる映像を天井に投写するとか。プロジェクターなら友達のところに持って行くこともできます。テレビは薄型になったとはいえ設置スペースが必要なのでレイアウトに制限がありますが、プロジェクターは設置の自由度も高いです。実際、中国ではテレビの販売台数は下がってきていて、プロジェクターは上がってきています。スマホもパソコンもタブレットも映像鑑賞に使えますが、どれも小さい画面です。これからも、大画面で見たいという欲求は必ずあります」

これまでのプロジェクターは“ホームシアターファンが楽しむためのアイテム”だった。関心を持った人がいても、スクリーンが必要で、大きなプロジェクターを設置して、部屋を暗くして……といった過程に、ハードルを感じて導入できなかった人も多い。

だが、プロジェクターをマニアックなものにしていた「気軽に使えない」という問題点は、解消されつつある。遮光していない部屋に、ポンと置くだけで映像配信サービスのコンテンツを壁に投写できる、JMGOのようなプロジェクターが登場した事で、ユーザーの裾野は着実に広がりつつある。

これを実現できたのは、「気軽に使えて高品質、しかも低価格」という、ユーザーのワガママな要望を真摯に受け止め、改良を繰り返していく製品開発の姿勢があってこそのもの。「いつでも家で映画が見たい」、映画好きなエンジニア達が語り合った夢が、花開こうとしている。

「PicoFlix」を手にするJMGOのCEO・李树森氏

3色レーザーの画質を手軽「N1S Pro 4K」、ユニークな機構で天井投写も「PicoFlix」

インタビューの場で、JMGOの新製品「N1S Pro 4K」と「PicoFlix」を見ることができたので、そのインプレッションもお届けする。

N1S Pro 4K

まずN1S Pro 4Kは、先行して発売された「N1S」および「N1S Ultra 4K」に連なるN1Sシリーズの新モデルだ。前N1シリーズでの「N1 Pro」は、「N1」と「N1 Ultra」のちょうど中間に収まるミドルモデルといった位置づけだったが、今回のN1S Pro 4Kは少し趣が異なる。

店頭予想価格はN1S Ultra 4Kが342,980円前後、N1Sが149,380円前後に対して、N1S Pro 4Kは296,780円前後とUltra寄り。機能性もほぼN1S Ultra 4Kと同じで、明るさが少し劣るだけだ。シリーズのミドルモデルというより、「3色レーザーを搭載した明るい4Kプロジェクターが欲しいけれどN1S Ultra 4Kまでは手が出ない」という方に向けたモデルと言えるだろう。

N1シリーズと比べてみると、N1 Ultraと明るさの差がそれほどない中、かつ価格は同程度(N1 Ultraの販売価格は283,360円)なのでお買い得なモデルでもある。

0.47型のDMDチップを採用したDLP方式で、当然、日亜化学工業製の3色レーザーモジュール「QuaLas RGB」を搭載。明るさは2,500 ANSIルーメンで、N1S Ultra 4Kの3,000 ANSIルーメンに対して差別化されている。他のスペックはUltraと共通で、投写解像度は3,840×2,160ドット/4Kとなり、HDR10に対応、色域はBT.2020を110%カバー。スピーカーはN1Sシリーズから新たに採用したJMGO Master Soundスピーカーを10W×2基で搭載する。

ソフト面では他N1Sシリーズと同様に、前モデルからオートフォーカス速度を54%、リアルタイム台形補正速度を45%高めている。上下左右に投写方向を気軽に変えられるジンバル一体型で、投写方向を動かしても瞬時にピントが合い、台形補正で画面も補正される。キビキビとした動作で、お買い得モデルとは思えない。外観上もほぼN1S Ultra 4Kと同じだが、N1S Pro 4Kではフロントがマット仕上げになっている。

上下左右に投写方向を気軽に変えられるジンバル一体型

PicoFlixはN1Sシリーズとガラッとスタイルを変えた、回転できるボトル型のプロジェクターだ。バッテリー内蔵のモバイルタイプで、ジンバル非搭載だが、向かって左側にHDMI端子などを備えた部分と、投写レンズなどを備えた右部分が分離しており、右部分だけを上下に回転できる。

PicoFlix

回転幅は上下127度の範囲で、天井への投写も可能。もちろんオートフォーカス+シームレス自動台形補正を備えているため、JMGOらしいノンストレスな映像投写が行なえる。

向かって左側の筐体は回転しないため、HDMIケーブルがよじれたり、机の上を本体がコロコロ転がる事もない。良く考えられた機構だ。

向かって左側にHDMI端子を備える。底部にはゴム足も搭載
向かって右側を、写真のように回転でき、天井や下方などに映像を投写できる

店頭予想価格は89,980円と9万円切りを実現。価格が抑えられているのは、3色レーザーではなくLED光源であるため。0.23型DMDチップ採用の1,920×1,080/フルHD解像度、明るさは450 ANSIルーメン、HDR10対応で色域はRec.709 124%というスペックは価格帯相応といったところだ。

筐体は樹脂ではなく金属製で、質量は約1.3kg。手にするとしっかりとした重さを感じるが、見た目に高級感があるのが嬉しい。内蔵バッテリーで、ECOモードで最大4.5時間の連続投写が可能だ。

照明を落としただけの部屋でも、充分映画が楽しめる

N1S Pro 4K

実際の使用を想定し、視聴は専用暗室ではなく、窓から日中の光が差し込む、照明を落としただけの一般的な家庭と同じくらいの明るさの部屋で行なった。

まずN1S Pro 4Kだが、この環境でも充分に明るく、力強い映像が楽しめる。率直に画作りの完成度も高い。N1S Ultra 4Kとのセット売りが用意されているVIVIDSTORMレーザー用スクリーンに投写された映像は、黒がしっかりと締まり、発色のバランスも良好。草花を映し出した4K映像では、花びらの内側から外側に向かっていく赤のグラデーションが滑らかで、若草の緑も鮮やかに表現される。安価なモデルによく見られる華やかを超えた派手な色使いではなく、しっかり現実的な色合いに整えられている。

白壁に直接投写してみると、スクリーン投写よりも明るく感じられるが、色のバランスは崩れていない。黒はやや浮くが、コントラストも十分に感じられ、解像感も高い。白壁でも充分に楽しめるクオリティだ。プロジェクターの向きを何度か動かしたが、その都度シームレスに補正が働き、一切の調整を必要とせず快適に視聴できたことも記しておきたい。

サウンドについては、スピーカー内蔵の小型プロジェクターにありがちな筐体が鳴ってしまうこともなく、クリアな音だ。低音は少しブーストされているが、かなりナチュラルな傾向。アクション映画などの迫力あるシーンも、このサウンドであれば満足のいく再現性が得られるだろう。

PicoFlixだが、セッティングの段階でやはり設置性が優れていることを実感。大きめのペットボトルを机に横倒ししたようなサイズ感なので、例えば、机の上にコップやお菓子の袋があるような状態でも、設置できそうだ。

N1S Pro 4Kも省スペースなプロジェクターだが、それと比べてもPicoFlixはコンパクトだ

内蔵バッテリーで動作するので、基本的にはケーブルレスで使える。モノが多い部屋の中に設置して、ちょっと移動した時にテーブルに足が当たってプロジェクターが落下……という心配もないなと、小型・バッテリー内蔵のメリットに改めて気付かされた。

白壁に投写された映像はスペック以上に明るく感じられ、色表現も豊か。部屋の照明を落とせば、日中でも映像が十分楽しめる。解像度はフルHDだが、花びらの細かな部分も十分描写されており、満足感は高い。なんの不満なくYouTubeのコンテンツから映画まで楽しめるだろう。

本体右側を回すだけで天井への投射も楽にできる

サウンドは金属筐体が効いているようで、クリアで聴きやすい。良い意味で“無理をしていない鳴り方”だ。全体としてコスパの高いモデルと言える。

発泡スチロールの製品パッケージは、そのままキャリングケースとしても使える

N1S Pro 4KはN1シリーズからの進化を実感でき、PicoFlixは小型プロジェクターの新しいスタイルを提示してくれている。どちらもJMGOらしいアイディアが詰まった、クオリティの高いモデルだ。大画面での映像鑑賞に興味のある入門ユーザーや、安価なプロジェクターからのステップアップに、後悔しない選択肢としてオススメできる。

左から「PicoFlix」、「N1S Pro 4K」
小岩井 博

カフェ店員、オーディオビジュアル・ガジェット関連媒体の編集・記者を経てライターとして活動。音楽とコーヒーと猫を傍らに、執筆に勤しんでいます。