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有線イヤフォンに新たな生命を! qdcのTWSアダプタ「TWX II」とUSB DAC「QD1」を使う

「お気に入りの有線イヤフォンがあるのに、手軽なのでつい完全ワイヤレスイヤフォンばかり持ち出している」「スマホを買い替えたらイヤフォン出力が無くなったので、有線イヤフォンをあまり使わなくなってしまった」なんて人、多いのではないか。というか、私もその1人だ。

確かに完全ワイヤレスイヤフォンの高音質化は目覚ましいものがある。しかし、まだ有線イヤフォンのクオリティの方が良いと感じる部分もある。さらに、完全ワイヤレスの場合、バッテリーやプロセッサー、アンテナなどを筐体に内蔵しなければならず、有線イヤフォンよりもスペースに限りがあるという弱点もある。

そこで注目したいのが、“有線イヤフォンをワイヤレス化する”というアイデア。例えば、qdcが、同社の2pinコネクター採用の有線イヤフォンをワイヤレス化する製品として発売した、Bluetooth TWSアダプター「TWX II」(22,000円)がそれだ。

Bluetooth TWSアダプター「TWX II」

さらに、「イヤフォン出力が無くなったスマホで、有線イヤフォンを使う」方法としては、ポータブルDACアンプを用意するという手もある。ちょうど、qdcブランド初のポータブルUSB DAC「QD1」(27,500円)も今年9月に発売されたばかりだ。

qdcブランド初のポータブルUSB DAC「QD1」

“有線イヤフォンをもっと活用するための周辺機器”2モデルを、使ってみよう。

有線イヤフォンをワイヤレス化する「TWX II」

ご存知の通り、有線イヤフォンの中にはケーブルが着脱できる、“リケーブル対応”モデルが多い。そんなリケーブル対応イヤフォンに取り付ける事で、ワイヤレスイヤフォン化してしまおうという製品が「TWX II」だ。

簡単に言えば「完全ワイヤレスイヤフォンから、イヤフォン機能を取り除いたもの」でもある。形状としては、イヤーフックを備えたイヤフォンの、耳掛け部分だけだ。先端にqdcの2pinコネクターがあり、互換性があるqdcのカスタムIEMなどを取り付けられる。

TWX IIという型番からもわかるとおり、この製品は有線イヤフォンをTWS化するアダプターとしては第2世代モデルだ。初代からの進化点として、充電ケースのイヤフォンを配置する空間が大きくなり、より大きなイヤフォンも収納できるようになった。

実際に見てみると、特に深さがより深くなっており、BAドライバーを多数搭載した、大きめのIEMでも収納できそうだ。

収納部分の空間が大きくなった充電ケース

試しに、BAドライバー×1基、ダイナミックドライバー×1基、平面振動板ドライバー×1基の3種類を搭載したユニバーサルタイプの「Hybrid Folk-S」を取り付けてみたが、余裕で収納できた。奥行きや横方向にもまだスペースがあるので、かなり大きなイヤフォンも収納できるだろう。とはいえ、全部のイヤフォンを収納できるかはわからないので、可能であれば、事前に店舗で確認することをお勧めする。

Hybrid Folk-S
Hybrid Folk-Sを収納したところ。まだまだ余裕がある

ケースだけでなく、TWSアダプター自体も進化している。具体的には、充電管理用のチップセットが変更され、ソフトウェアもアップデート。より安定性が向上したという。

チップセットはQualcomm QCC3040で、Bluetooth 5.2に準拠。Bluetoothのコーデックは、SBC/AAC/aptXに対応する。

また、接続した有線イヤフォンをパワフルに駆動するため、左右それぞれに強力な30mW出力のアンプを内蔵しているそうだ。

有線イヤフォンをワイヤレス化してみる

実際に使ってみよう。ケースから取り出し、Hybrid Folk-Sを取り付ける。そして耳に装着する。

qdcの2pinコネクターを採用

装着の仕方としては、先にHybrid Folk-Sを耳にしっかり入れて、その後にTWX IIを耳に掛けるという流れが良いだろう。装着してみると、想像以上にシッカリと耳にホールドされる。Hybrid Folk-S自体、ユニバーサルタイプでも装着安定性が高い形状をしているが、そこに耳掛け機構のホールド力がプラスされるので、安心感がハンパではない。

歩いたり小走りする程度ではズレる気配もない。この安定感は魅力だ。通常の有線ケーブルの、ケーブル部分を耳裏に這わせる、いわゆる“Shure掛け”よりも安定感は高い。

使い方は普通のTWSと同じ。スマホのBluetoothペアリング画面に移動すると、TWXの名前があるのでタップするだけ。

ペアリングが完了し、Amazon Musicアプリで音楽を再生すると、TWX IIに取り付けたHybrid Folk-Sから音楽が流れ出す。「お気に入りイヤフォンがワイヤレスになった!」と、ちょっと感動する。

音質も良好だ。

qdcらしい、色付けの少ないニュートラルな音で、Hybrid Folk-Sのバランスのとれたサウンドと良くマッチしている。

特筆すべきは、アンプの駆動力が高く、低域もしっかり出る事。例えば「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴くと、アコースティックベースの低域が「グォン」としっかり沈み、重い低音が再生できている。前述の通り、左右それぞれに30mW出力の強力なアンプを搭載しているのが効いている。

同時に、ボーカルの高音はパワフルな低音に埋もれず、クリアに描写。向かって左奥の空間に、歌声の余韻がスーッと広がり、消える様子も聴き取れる。駆動力だけでなく、分解能も高いTWS化アダプターと言えるだろう。

低域の再生能力が高いので、「米津玄師/KICK BACK」のような疾走感あるロックを再生すると、最高に気持ちが良い。ベースの張り出しの強さを出しつつ、切り込むようなベースラインの鋭さも同居する。一方で、ボリュームを上げても、これらパワフルな低音に埋もれず、ボーカルやSEの中高域が鋭く突き抜けてくる。

完全ワイヤレスイヤフォンは、このように低音がパワフルで音の数が多い楽曲はあまり得意ではない。搭載しているアンプが貧弱だったりして、低域の迫力や解像度が出なかったり、小さな完全ワイヤレスイヤフォンの筐体内にいろんな部品を詰め込んだ事で、音場に広がりが無く、様々な音が団子のようにくっついてしまう事もある。

その点で、すでにイヤフォン単体で完成しているHybrid Folk-Sを、外部からアンプで駆動するようなカタチになるTWX II + Hybrid Folk-Sの組み合わせは、ワイヤレスで便利になると同時に、音質面でも利点がある組み合わせと言えるだろう。

TWSのような操作性も実現

操作面と利便性についても触れておきたい。

専用アプリも用意されているのだが、TWX IIは本体をタップする事で、様々な操作が可能だ。

完全ワイヤレスイヤフォンに慣れていると、ついイヤフォン本体のフェイスプレート部分をタッチしてしまうのだが、当然それでは何の操作もできない。タップするのは、TWX IIを装着した時に、耳の裏にくる、滑り止め加工がされた部分だ。

ここをタップすると、音楽の一時停止/再生ができる。さらに、R側タッチエリアに3回タッチをすると音量調整モードになり、Rを長押しで音量アップ、Lを長押しで音量ダウンとなる。

さらに、L側を3回タッチすると、ミュージックモード、トランスペアレントモード、ゲームモードが順番に切り替わる。ミュージックモードは音質を追求、トランスペアレントは外音取り込み、ゲームはゲームや動画の視聴向けに低遅延を優先したモードだ。

なお、外音取り込み機能は備えているが、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能は搭載していない。もっとも、Hybrid Folk-S自体の遮音性が非常に高いので、使っていて「ANCが欲しいなぁ」という瞬間はなかった。

また、アプリの「qdc」をインストールすると、ミュージック/トランスペアレント/ゲームの各モード切り替えがアプリからできるほか、トランスペアレントモードでの外音取り込みレベルの調整や、10バンドのイコライザー設定、プリセットEQなども活用できる。

バッテリーの持続時間は、本体フル充電で連続約8時間。充電ケースとの併用で約40時間再生できる。充電所要時間は約1.5時間だ。ケースの充電ポートはUSB-Cとなっている。

qdc初のポータブルUSB DAC「QD1」

qdc初のポータブルUSB DAC「QD1」

次は、qdc初のポータブルUSB DAC「QD1」使ってみよう。

印象的なのは筐体のデザイン。流線型のような滑らかなフォルムで、「走ったら速そう」という謎の感想を持つ。カラーは青みを帯びたグレーに近く、落ち着いた色味だ。フォルムが滑らかなので、光の当たり方が場所によって異なり、それによって色の濃さに変化があり、見ていて飽きないデザインだ。

筐体はアルミニウム製で、触るとひんやり冷たく、高級感がある。底面だけクリアパネルが貼られており、その部分は冷たくないので、冬場に持ち辛いという事はないだろう。

筐体はアルミニウム製
ケーブルは着脱式で、USB-Cを採用
底面

スマホなどと接続するための約8cmのUSB-Cケーブルが付属する。ケーブルは着脱式だ。

約8cmのUSB-Cケーブルが付属

デジタルで入力された音声を、アナログに変換するため、DACチップを内蔵しているのだが、シーラスロジック製の「CS43198」をデュアルで搭載している。ポータブルDACアンプとしては豪華な仕様。最大130dBのダイナミックレンジを実現している。

音声データは最大768kHz/32bitまでのPCM、DSD 256(DoP)の再生に対応。オーディオブリッジコントローラーは「CT7601PR」を使っている。

イヤフォン出力は3.5mmアンバランスと4.4mmバランス

イヤフォン出力は3.5mmアンバランスと4.4mmバランスを備搭載。ゲインは2段階から選べ、ハイゲインにすると、アンバランス出力で2Vrms(無負荷)、バランス出力で4Vrms(無負荷)の高出力が可能だ。イヤフォンだけでなく、鳴らしにくいヘッドフォンもドライブできるパワーを持っている。

高音質フォーマットに対応する「Musicモード(UAC2.0)」と、Nintendo SwitchやPlayStation 5といった家庭用ゲーム機に対応する「eスポーツモード(UAC1.0)」の切り替えもできるという。これは後ほど試してみよう。

QD1を聴いてみる

スマホとQD1をUSB接続し、QD1のステレオミニ出力にHybrid Folk-Sを接続。Amazon Musicのアプリや、「HF Player」を使ってハイレゾ音楽を聴いてみた。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴くと、ズシンと沈むアコースティックベースから、抜けの良いボーカルの高音まで、非常にワイドレンジなサウンドが飛び出してくる。このDACアンプも、qdcらしい色付けの少ない、ニュートラルなサウンドで好感が持てる。

SN比が良く、音が無い状態が非常に静かで、その静かな空間から楽器の音がスッと立ち上がる様子がハイスピードで気持ちが良い。このSNの良さは、デュアルDACの効果だろう。

ベースの低域も、低く沈むだけでなく、ベースの弦が細かく震える様子もクリアに見通せる。これは、イヤフォン内部のユニットを、アンプがキッチリと駆動できている証拠だ。

「米津玄師/KICK BACK」のベースも、キレッキレ。鋭く切り込んでくるようなサウンドで、思わず身体が動いてしまう。このようなトランジェントの良い音を体感していると、ポータブルDACアンプでも、アンプの駆動力の大切さを改めて実感する。

バランス駆動も効果的だ。Hybrid Folk-Sは入力プラグが変更できるため、4.4mmのバランスに変えてQD1のバランス出力と接続したが、音場の広さや、そこに定位する音像の立体感がさらにアップ。「手嶌葵/明日への扉」の余韻の広がりが、バランス接続ではより味わい深い。中低域のキレも一段と鋭い印象だ。

ゲームの音も聴いてみよう。

QD1の「+」ボタンを押したまま、Nintendo Switchと接続すると、デバイスのインジケータが赤く点滅。それを確認した後でボタンを離すと、eスポーツモード(UAC 1.0)に切り替わる。

「+」ボタンを押したまま、Nintendo Switchと接続すると、デバイスのインジケータが赤く点滅。それを確認した後でボタンを離すと、eスポーツモードになる

この状態で「スプラトゥーン3」をプレイしてみたが、遅延はほぼ感じない。それよりも「Nintendo Switchってこんなに音が良かったんだ」と驚く。このゲームでは、プレーヤーがイカのようなカタチに代わり、インクの中に潜り込めるのだが、イカ状態に変化する時の「チャポン」「チュポン」という水の音が非常に生々しく高精細に聞き取れ、「こんな音だったんだ」と初めてプレイしたような新鮮な気持ちになる。

バトル時にも、敵がインクに潜伏している音が聴き取りやすいし、乱戦時でも、バトルのSEと、背後のBGMが聞き分けやすい。いつもはNintendo Switchの内蔵スピーカーでプレイしているという人は、QD1 + Hybrid Folk-Sで聴くと「ゲームって、こんなに音にこだわって作られていたんだ」と驚くはずだ。

有線イヤフォンに新たな生命を与える2台

TWX II + Hybrid Folk-Sのサウンドも悪くないが、やはりUSB DACアンプのダイレクトな有線接続でダイレクトに聴くと、音場の広がり、情報量、低域の深さやキレといった部分で、有線接続の方にまだ軍配が上がる印象だ。

とはいえ、TWX II + Hybrid Folk-Sの気軽さ、利便性の高さは、一度使ったら離れられない魅力がある。それでいて、Hybrid Folk-Sのクオリティをしっかり堪能できる音質を実現しているという点で、TWX IIも十分オススメできるTWS化アダプターと感じた。

いずれにせよ、こうした機器と組み合わせることで、Hybrid Folk-Sのような有線イヤフォンに新たな生命を与えられ、日常生活で活用する時間がグンと増えるのは間違いない。お気に入りのイヤフォンが引き出しの奥で眠っている人には、要注目のアクセサリーだ。

山崎健太郎