トピック

aurender製品が生まれる現場に本邦初潜入! ハードとソフト両輪で進化、ベテランと若手の熱意が結集する

前編ではaurender本社で話を聞いた

A1000が話題、気鋭のブランドaurender

韓国aurenderへの訪問取材は2日間に渡って行なった。aurenderの本社はソウル市から南に下った安養(アニャン)のビジネスビルにあり、主要メンバーとのミーティングで特に印象的だったのは、ハードウェア設計からソフトウェア設計まで自社内で手掛けるという力強い意志だった。

サードパーティによる回路基板やソフトウェアに頼るよるようなことはせず、すべてを自社で開発することで得られる製品の高い完成度がaurenderの強みだという。それは、たとえば私が抱いているMade in Japan製品への信頼と同等もしくはそれ以上。彼らはMade in Korea by aurenderへの自負と誇りを持っている。

aurenderの製品はどのように作られるのか

SM TRONICS社

aurenderの製造を担当しているのは、ソウル市から車で1時間ほど離れた安山(アンサン)の工業地域にあるSMトロニクス社。SMは「サーフェス・マウント=表面実装」を意味しており、回路基板への精密な部品実装と検査工程に始まってaurender製品のアッセンブルまで行なっている重要な会社である。aurenderは製造工場を持たないファブレス企業であり、それを可能にしているのは高度な技術を持っているSMトロニクスのような存在があるからだ。

広い工場内には回路基板に表面実装を行なう機械がたくさんある
aurender製品が製造されているSMトロニクスの工場

SMトロニクスの品質管理責任者から話を伺うと、一時期は製造コストの低いアジアの国々にシェアを奪われてしまったけれども、品質と信頼性を重視するクライアントは継続して取引を行なってくれているという。10年以上の取引があるaurenderもその代表格であり、SMトロニクスのなかに専用のアッセンブルラインを確保している。

aurender Lineの看板がある広いスペースで作業が行なわれている
数名の女性が手際よく製品のアッセンブルを進めていた

常駐しているわけではないらしいが、週のうち何日かはaurenderの製造責任者であるブランドン氏がSMトロニクスに赴いて製造ラインの進捗状況や品質管理について打ち合わせをしている。彼は、以前aurenderがポータブルサイズのDACを開発したときの設計者でもあり、製造現場に精通していることから責任者として抜擢されたようである。

製造部門の責任者であるaurenderのブランドン氏

個人的に興味深く思ったのはaurender製品の特長にもなっている大型のワイド液晶スクリーンが、製造時点では搭載基板やファームウェアのバージョンなどを表示する診断画面(Diagnostics)になっていることだった。

製造ラインで見かけたのはaurenderの創業15周年を記念した、世界限定300台の限定生産になる「A1 15th Anniversary」という一体型ネットワークプレーヤー。世界的なベストセラーになっているA1000をハイグレード化したようなフルサイズ機で、DAC素子には「AKM4499EX」を合計4基も搭載する贅沢な構成。音量コントロールは固定抵抗器を切り替えるR2Rタイプで、記念モデルらしい妥協を許さない内容に仕上がっている。

1A1 15th Anniversaryの診断画面

基本的なアッセンブルを終えた製品は、天板を取り付ける前に長時間の通電状態で動作させるという。この作業で合格した機体は次に工場内の別の場所に運ばれて、今度は温度管理を行なっている専用の場所(温度設定は高い)で数日間の動作試験が実施される。私はオーディオ機器の製造現場を日本を含めた各国で見る機会があったが、aurenderほど時間をかけて徹底しているところはレアケースだと思う。

基本的なアッセンブルを終えて通電試験されている製品
温度管理を行なわれている場所でのA1000の動作試験

一連の動作試験を無事にパスすると、最後に完成品として天板を取り付けて仕上げられる。製品は安養にあるaurenderの本社に運ばれて、再び出荷前の最終チェックを経て梱包作業が行なわれる。二重三重の品質管理を行なっているのがとても印象的だった。

ブランドン氏に尋ねたところ、アルミニウムの外装部品もすべて韓国内で製造しているとのこと。世界のハイエンドオーディオ市場で勝負していることから、外装のクオリティにも気を使っている。

SMトロニクスからaurenderに納入されるのを待つ製品

安養のaurenderには品質管理とリペアを行なう専門の部署がある。かなり大きなスペースを確保していて、SMトロニクスから納品された製品の最終チェックを行なってから、製品は地下の倉庫に運ばれているようだ。部屋には業界標準であるオーディオプレシジョン製の高性能アナライザーを完備しているいっぽう、片隅ではリモートコントローラーの組み立てが手作業で行なわれていた。

本社内の品質管理左から3番目のユン・ヨンウ氏が品質管理の責任者

aurenderのサウンドが決まる、本社リスニングルームにも潜入

さてさて、待望のaurenderリスニングルームに潜入だ。

本社のなかには音響トリートメントが施されたリスニングルームが設けられていて、製品プランニングの責任者であり音質を判断する “Golden Ear”のジェフ氏がリスニングルームを管理している。

まずはジェフ氏から機材説明を伺うことに。

気になるスピーカーシステムはウィルソンオーディオ「Alexia V」だった。伝説的なWatt/Puppyから進化していったSashaをベースにスケールアップした3ウェイ・4スピーカーのフロア型システムである。鳴らすアンプはコンステレーションオーディオのセパレート構成。aurender製品を除いたデジタル系の製品は、私も使っているdCSのヴィヴァルディ「APEX(DAC)」だった。この音が訪問時のベンチマークになっていたのだが、スピーカーシステムとアンプやDACは特に固定しているわけではなさそう。ジェフ氏はワイドレンジな英国モニターオーディオのスピーカーを自宅で使っているということだ。

”Golden Ear”のジェフ氏から機材説明をしていただいた

開発中の製品の音決めや完成した製品の音質を確認するジェフ氏は、リスニングに使う音源のカテゴリーとアーティストのアルバムと試聴楽曲について記載したチャートを作成している。全体的な音質については「バランス」「プレゼンテーション」「サウンドステージ」を判断しており、カテゴリーは「ボーカル」「ギター」「ピアノ」「オーケストラ/コーラス」「パーカッション/ベース」に分類。訪問時には全14曲をリストアップしていた。

リスニングに臨んでいる筆者

dCSのヴィヴァルディAPEX(DAC)は自分にとって聴き慣れた音だ。aurender製のマスタークロックジェネレーターからワードクロック信号で同期しているため、音像描写が克明で定位感も抜群。それでも妙に音がいいなと思ってジェフ氏に尋ねると、aurenderの最高級ネットワークトランスポート「N50」から音源を送り出しているとのこと。もちろんマスタークロックも供給されているので解像感が抜群の音に仕上がっている。いくつかの試聴楽曲を聴いてから、続いて製造現場のSMトロニクスでも見かけた最新作のA1 15th Anniversaryの音を聴かせてもらうことに。

創業15周年を記念した世界300台限定のA1 15th Anniversary

ここでは大型ワイド液晶画面を消灯した、クリティカルリスニングモードの設定で聴いている。AKM4499EXをチャンネルあたり2基(各2回路のバランス信号伝送)を奢った贅沢なDAC回路に加えて、ルビジウム発振器によるマスタークロックMC20からの10MHzクロック接続という完璧な布陣で鳴るA1 15th Anniversaryの音は、AKMの最高峰DAC素子らしく繊細さが際立った、きわめて上質な音の滑らかさとローエンドまで深々と伸びて響き渡る圧倒的な臨場感で迫ってきた。

フラグシップの一体型ネットワークプレーヤー(aurenderではアナログミュージックサーバーと呼ぶ)らしい音の風格と音楽への没入感を誘う音に、私は取材であることを忘れてしばらく聴き入ってしまった。

リスニングルームの片隅には天板を開けてあるブラック仕上げの機体があったので見せてもらったが、潤沢かつ強力なアナログ電源部と自社開発という小型アンプモジュールが並んでいる姿は壮観だった。黒いケースに覆われているのは固定抵抗を切り替えるR2Rのアッテネーター回路だそう。日本でもヒットしているA1000もそうだが、ライン出力は音量レベルをMAXに固定した状態と、パワーアンプ直結を想定してボリューム操作ができる状態を選択できるのだ。

「A1の内部」ブラック仕上げのA1 15th Anniversary

若手スタッフが活躍するソフトウェア開発の現場

ソフトウェア開発チームがいるソウル市の江南にあるビル

aurenderの取材を締め括るのは、ソフトウェア開発の現場である。ソウル市内のホットスポット、江南(カンナム)。高級マンションが立ち並び、“韓国のシリコンバレー”とも称されるIT文化の中心地。日本で言うと、六本木や銀座、原宿を合体させたようなエリアだ。そのビルの一室がソフトウェアの開発部門になっていて、本社でのミーティングに参加していただいたエリック氏がチームリーダーを務めており、普段はここでプログラム開発に従事している。

エリック氏を含めてソフトウェア開発は9名ということだが、そのうち1人は在宅勤務しているという。エリック氏によると、ここの社員は皆さん年齢も若く、本社がある安養は(都会ではないので)行きたくないということだ(笑)

製造現場や本社とは異なる雰囲気のオフィス

エリック氏が率いるソフトウェア開発部門は主に2つの仕事をこなしている。ひとつはハードウェアに使われているFPGAのプログラム開発やOSのプログラムである。そしてもうひとつは、aurender Conductorに代表される専用アプリの開発だ。この2つは表裏一体の関係にある。特に専用アプリは一般的なUPnPで使われるような汎用的な音楽再生アプリとは違っていて、ハードウェアの深部までコントロールできるのが特徴。

たとえばA1000では、AKM製DAC素子の「DAC電流モード」や「デジタルフィルター」を選択できる。また、最高の音質を提供するためにワイド液晶画面を消灯するなど、システムの動作を最小にする「クリティカルリスニングモード」もアプリで操作できる。電源オフや再起動も可能だ。専用アプリのaurender ConductorはAndroidのスマートフォンとタブレット、そしてiPhoneとiPadのiOS系もサポートしている。

aurender Conductorのアプリ開発が進められているようだ

オフィスにはaurender初期のレガシーな製品から開発中らしきプロトタイプまであるといい、ハードウェアのプログラムと専用アプリの動作検証も行なわれている。チームリーダーのエリック氏だけは背の高いデスクで立ったままプログラムをタイプしていて、腱鞘炎にならないように2分割されたキーボードを使っていた。ソフトウェア開発部門は専用アプリのカスタマーサポートも行なっているらしく、忙しい日々を送っているという。

ソフトウェア開発チームとの記念撮影

専用アプリのaurender Conductorは昨年の12月にメジャー・アップデート(V5)を果たして、内容的に大幅パワーアップしている。DELAやfidataのミュージックサーバーに格納している音楽ファイルを聴くことが多い私にとって、新しいaurender Conductor V5は画期的といっても賞賛がたりないくらいの進化だ。

以下のスクリーンショットは私のQNAP製NASにあるディレクトリ「Public」に入れた音源の表示。個々の音源はタグ編集ソフト「Mp3tag」で画像を埋め込んでいる。このディレクトリはミュージックサーバー・ソフトの管轄外なので、一般的なUPnPの音楽再生アプリでは見ることができない。

QNAP製NASに格納している音源の表示

実をいうと以前のaurender Conductor V4だったら、このように画像を表示できなかったのだ。しかも、画像表示が可能になった新しいaurender Conductor V5では、音源のフォーマットがサムネイル表示されている。たとえば FLAC 24bit/352.8kHzやWAV 24bit/192kHzという表示で、DSDなら DSF DSD や DSF 8xDSDと表示される。なんて便利なんだろう! これは設定でOFFにすることもできる。

ちなみに、サンプリング周波数が混在している音源ディレクトリ(FLAC)では FLAC N/A という表示になった。

Qobuzから「最も多く聴かれたのは」を見た場合

音楽ストリーミングの場合もすばらしい。これはQobuzのスクリーンショット。なにがいいかというと、ハイレゾ音源は画像の右上にわかりやすく「HR」の表示がある。ここではダイアナ・クラールのWallflowerを再生している。

以下の画面、最初はQobuzの音楽ストリーミングを再生したときに左上の画像をタッチすると表示される画面。ヤニク・ネゼ=セガンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮するニューイヤーコンサート 2026年の音楽ストリーミングだ。

iPadの画面半分に画像が表示され HR 24bit・96kHz・Qobuzも見える

この画面の状態から画像中心の下にある「音符のマーク」をタッチすると「再生キュー」が表示されて演奏される曲目が表示される。曲目もしくは小さな画像をタッチすると、その曲が再生できるようになっている。

再生キューの表示

先ほどの「音符のマーク」の右隣にある「ディスクのマーク」をタッチすると「アルバム」の画面だ。小さな画像が消えて曲名と演奏者(この場合はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団)が表示される。

アルバムの表示

さて次は、「ディスクのマーク」の右隣にある「©マーク」をタッチしよう。©はコピーライトの意味だ。ここで表示されるのは「クレジット」である。演奏者や指揮者に始まり、作曲家やメインアーティストに続いてマスタリング・エンジニアやプロデューサー、録音エンジニア、フォーマットとSTEREO、そしてコピーライトに音源を識別するISRACコードの表示まで!

©マークをタッチすると、ここまで細かな情報が表示される

コピーライトの右隣は「〇にiのマーク」でインフォメーション、すなわち「説明」の表示があらわれる。ここではオーストリアのウィーンで新年に開催されるニューイヤーコンサートについて詳細に解説されている。ちゃんと日本語で表示されていることにも注目していただきたい。ただし、インフォメーションのない楽曲や、あっても外国語表記だけだったりというケースもある。

説明の表示

最後は下の右端にある「スピーカーのマーク」である。これは「音量」の表示になるのだが、この時に設定はA1000の音量を調節できるようにして-7.5dBのボリューム位置を示している。その下にあるマークは左が入力を示していて、A1000/COAX//Optical/Bluetooth/HDMI ARC/USBの選択。中央のマークはLine out (アナログ出力)/COAX/USBの出力端子の選択だ。そして右側は音量のカスタマイズの選択になる。

音量の表示

さて、どうだろうか? aurender Conductorのメジャー・アップデートでaurenderの製品は大幅なパワーアップを実現してしまった。ちなみに、さきほどダイアナ・クラールのWallflowerを再生しているときに左から右に指でスライドさせても、基本的な楽曲の情報が表示されるのだ。

左から右に指をスライドさせて表示される楽曲の情報

取材を終えて

取材後、私はソウル市内に滞在して開催中のオーディオショウ「Audio Expo Seoul 2025 」も見学した。ホテルがメイン会場のオーディオショウではaurenderも出展していて、発売間近の高音質スイッチングハブの比較試聴を行なうなど、精力的にaurender製品をアピールしていた。

Audio Expo Seoul 2025(2025年11月28~30日に開催された)

aurenderのネットワークプレーヤーやトランスポートは、内蔵するSSDに音源を瞬時に取り込んで再生するキャッシングストレージに最大の特徴がある。メジャー・アップデートを果たした専用アプリaurender Conductor V5がリリースされたのは帰国後だった。

そこで、改めて自宅でA1000を使ってアプリを試してみた。A1000にはストレージを内蔵できるスペースがあり、最大8TBまでの2.5インチSSD、もしくはHDD(SATA)を搭載できる。その内蔵ストレージや外部のNASにある音楽ファイル(ローカルデータ)は、アルバム内の楽曲すべてを一括転送してキャッシュ再生する。音楽ストリーミング(Qobuz/Tidal)の場合は、1曲ごとのキャッシュ動作(曲の終わりに次の曲をキャッシュし始めてギャップレス再生に対応)になる。SpotifyやAirplay、Qobuz Connect、Tidal Connect、RoonReadyの再生ではキャッシュ再生ができないから、安定した高音質を求めるならキャッシュ再生できるローカルデータや音楽ストリーミングのQobuzを聴くといいだろう。

A1000の音を聴きながら、aurenderの本国取材を通じて、彼らの熱い情熱と製品の完成度の高さを追求していく姿勢を改めて思い返した。

自宅で試聴したA1000 ブラック
三浦 孝仁

中学時分からオーディオに目覚めて以来のピュアオーディオマニア。1980年代から季刊ステレオサウンド誌を中心にオーディオ評論を行なっている。