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先進の技術力×英国生まれの“自然なオーディオの音”。iFi audio主力「NEO Stream 3」「NEO iDSD 3」に迫る

USB DACやネットワーク再生を身近にしてきた先駆者、iFi audio

上からネットワークプレーヤー/ストリーマーの「NEO Stream 3」、D/Aコンバーターの「NEO iDSD 3」

iFi audioは、2002年に創立されたオーディオブランドで、その母体はイギリスのハイエンドオーディオブランドAMR(Abbingdon Music Research)だ。AMRは、2000年頃から優れた半導体技術を活用したオーディオ製品を展開し、そこから小型・高品質なパーソナルオーディオ向けに特化したブランドとして生まれたのが、iFi audoだ。その名前は、ヘッドフォン/イヤフォンやポータブルオーディオに詳しい人ならご存じだろう。

ブランドの系譜。2024年には業務用オーディオソリューションや音質改善アクセサリーを提供する「Silent Power」も展開している

オーディオの世界が、ディスク再生中心からネットワーク再生時代に突入した初期から、DSD音源やDXD音源にいち早く対応し、16bit/44.1kHzのCD音源どころか、24bit/192kHzなどのハイビット・ハイサンプリング音源やスーパーオーディオCDと同じDSD64といった音源に幅広く対応。しかも、nano iDSDのような手のひらサイズのコンパクトな機器で手軽に現代とほとんど変わらないデジタルオーディオを実現していた。

nano iDSD

筆者もnano iDSDのユーザーだったが、PCと接続して、USB接続だけで(電源もUSBから供給する仕組み)、多彩なデジタル音源を幅広く再生できた先進的なアイテムだった。現代のUSB DAC内蔵ポタアンの原型のようなもので、現代のポータブルオーディオの普及にも広く貢献したメーカーだ。

今や、ハイビットハイサンプリング音源は一般的なものになり、それらは無線で手軽にやりとりされ、音楽再生自体もネットワーク経由でストリーミング再生されるスタイルとなった。こうした変化の中で、iFi audioはネットワーク対応や無線対応などを進め、現代のスタイルのポータブルなオーディオ製品を数多くラインアップしている。

そんなiFi audioの主力といえば、エントリーの「ZEN」シリーズ、そしてネットワークプレーヤー/ストリーマーの「NEO Stream 3」、D/Aコンバーターの「NEO iDSD 3」などだろう。

最新のZENシリーズ、一番上から「ZEN Air Phono 2」、「ZEN Air Blue 2」、「ZEN Air DAC 2」。コンパクトかつ曲面を活かしたユニークなデザインが特長

ZENシリーズは曲面を活かしたユニークなデザインが特徴だし、NEO Stream 3とNEO iDSD 3は、横幅214mmのコンパクトさ(横置き時)で、直線主体のボディの中心にボリュームなどのコントローラーを配置したスマートなデザインで、NEO Stream3とNEO iDSD 3は並べて置いたら見分けがつかなくなるほどそっくり。本棚のように縦置きで並べてもいいし、横置きで重ねるようなレイアウトも似合う。デスクトップで邪魔にならないサイズで、優れた音質を存分に楽しめる製品だ。

左からネットワークプレーヤー/ストリーマー「NEO Stream 3」、D/Aコンバーター「NEO iDSD 3」。外観的にはほぼ同じように見える
このように縦置きでき、スペースをとらないのも嬉しいポイント

現代のiFi audioは、プロフェッショナル向けブランドの「iFi Studio」、ネットワーク環境の音質改善アクセサリーなどを扱う「SilentPower」を設立し、現代主流のネットワークオーディオに対応して、活躍の場を広げている。いわば、NEO Stream3やNEO iDSD 3は“最新のiFi audioの技術や思想が込められた製品”と言える。これはなかなか気になるじゃないか。というわけで、NEO Stream 3、NEO iDSD 3をじっくり聴いてみることにした。

ネットワークオーディオに求められる機能を独自の設計で盛り込んだ。DAC内蔵の「NEO Stream 3」

まずは、NEO Stream 3(実売17万8,200円前後)。

NEO Stream 3

ネットワーク再生機能に加えて、D/Aコンバーターも内蔵したモデル。アナログ出力があるので、あとはプリメインアンプなどにつなぐだけでいい。ネットワーク再生を導入する最初の一台として使いやすい製品だ。

各種のストリーミングサービスは、Tidal Connect、Spotify Connect、Roon、Airplay、そしてQobuz connectに対応する。また、OSは「Volumio3」をベースにiFi audioがフルカスタムしたものを採用している。従来モデルの「NEO Stream」はVolumio2ベースで、Tidal ConnectやSpotify Connect、Qobuz Connectなどには対応できていなかったので、大きな進化だ。AmazonMusicは? 膨大なInternet Radioは? と考えてしまいがちだが、そのあたりを利用 したいなら、TidalやRoon、AirPlayを使えばいい。

OSを独自にカスタムしているのは、多機能性よりも音質を重視して、可能な限りOS自体を軽量化するためだという。もちろん、このほかにNASやUSB HDDと接続しての音楽再生やDLNAによる豊富なプレーヤーなどとの連携機能もある。

NEO Stream 3の背面。DACも内蔵しており、アナログ出力もそなえている

DAC部は、iFi audioではおなじみの、バーブラウン社のチップセットを採用したDACステージを採用。最大768kHzのPCM音源のほか、DSD 512のネイティブ再生が可能。そして、JVC/ケンウッドのK2HDテクノロジーを搭載。レコーディングスタジオで鍛えられた、制作時のデジタル処理などで失われた倍音成分などを復元する技術で、これは192kHz以下のすべての音源に作用し、アーティストとエンジニアが意図した音が楽しめるというもの。このほか、デジタルフィルターの調整なども可能だ。

NEO Stream 3のディスプレイに表示されている「K2HD」ロゴに注目

そして、製品にはOptiBoxが付属するのも大きな特長だ。これは兄弟ブランドのSilentPowerとの協力によるもので、「LAN iPurifier」(実売約53,900円)とほぼ同じ、光ガルバニックアイソレーションによるネットワーク回線に混入するノイズを絶縁するもの。ネットワーク信号(電気信号)を一度光信号に変換してやることで、ネットワーク信号に乗ったノイズを遮断できる。こうした光絶縁のアイテムはさまざまなメーカーから発売もされているが、このアイテムがすでに付属しているというのはありがたい。

付属する「OptiBox」
SilentPowerから単体販売されている「LAN iPurifier」

コンパクトなボディに機能満載。NEO Stream 3を使ってみる

では、さっそく使ってみよう。我が家のネットワーク環境も、前述の光絶縁によるノイズ対策や、オーディオ用ルーターの導入などを行なっているが、今回はあえて、それらの対策を外している。外部からくる光回線を受け取るONUからのネットワーク線と直接接続する形だ。

NEO Stream 3のネットワーク接続は、有線によるイーサネット接続とWiFi接続の両方が可能。WiFi接続の設定は、専用アプリの「iFi Nexis」を使う。これがあると、接続設定だけでなく、アップデート機能の利用などが行える。リモコンのように使うこともできるようになるので、ユーザーは手に入れておくといいだろう。

設定や操作は専用アプリの「iFi Nexis」を使う

接続は、まずは、付属のOptiBoxは使用せず、ネットワークケーブルを直接本体に接続した。

オーディオ出力はRCAのみ……に見えるが、実は背面に4.4mm 5極端子を搭載しており、変換ケーブルを使えばバランス出力も可能になっている。ただ、価格帯的にもRCA出力を使う人が多いと思われるので、今回はRCAケーブルで、マランツ「AV10」のオーディオ入力に接続した。

スピーカーは左右のBWV home/studio「H-2」、およびサブウーファーのBWV home/studio「S-5」(駆動用パワーアンプはオーディオラボ「9000P」)が2台、イクリプスの「TW725SWMK2」が2台。この状態で聴いている。

BWV home/studio「H-2」
サブウーファーのBWV home/studio「S-5」

入力をQobuz Connectとし、いくつか聴き慣れたクラシック曲やポップス曲を聴いたが、まとまりの良い音だ。クラシックでもスケール感や迫力は出ているし、ポップスでもドラムの立ち上がりの速さや勢いは出る。

一方で、微妙に緩んだ感じというか、ぼやけた感じがある。ネットワーク環境を対策前に戻したことで、ノイズ対策などをしていないことが原因と思われる。ユジャ・ワンの「ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番」は、ちょっとメリハリがついた感じで、決して悪くはないが、音の余韻などで雑味を感じるし、フォルティッシモでは粗さも感じる。

このままでも、大きな不満はないが、インシュレーターなどを使ってきちんと設置するとか、電源周りを見直すなどの手を加えたくなる。ただ、NEO Stream 3には、SilentPowerのACアダプター「iPower2」(単品価格14,300円)が付属する。このACアダプターは、独自の「Active Noise Cancellation II」で、EMI(電磁干渉)とRFI(高周波干渉)ノイズをキャンセルできるACアダプターであるため、ACアダプターを交換する必要はない。

付属のACアダプターは単品発売もされているSilentPowerの「iPower2」だ

そこで、付属のOptiBoxを活用する。小さな別体のOptiBoxにLANケーブルをつなぎ、NEO Stream 3とは付属するSC-SC光ファイバーケーブルで接続する。OptiBoxでネットワーク信号は電気信号から光信号へ変換され、光信号のまま接続されるわけだ。ネットワーク接続が問題なくできていることを確認して、音を出してみる。

付属の「OptiBox」
LANケーブルを接続すると
SC-SCの光ファイバーで出力できる。ネットワーク信号を電気信号から光信号へ変換するわけだ

まず、音がまろやかになったと感じた。弦楽器の音色などもなめらかでより自然になる。オーケストラのステージ感、目の前に楽器が並んでいる感じ、その舞台の奥行きや空間の広さが出る。演奏にしても、先ほどの緩んだ感じがなくなり、演奏が締まり、全体が整う感じだ。

ネットワークの光変換だけでこんなに変わるのか? と驚く人もいるかもしれない。最近のネットワーク機器は絶縁トランスを搭載し、ノイズ対策も行なわれているものがほとんどなので、間違っている! こんなことで音が変わるなんてオカルトだ! と騒いでしまいそうだ。

ネットワーク回線はそれなりに整備された道路ではあるが、実際はさまざまな信号が混走していて渋滞もする。そこをオーディオ信号を載せた車を走らせるようなイメージだ。

オーディオ信号は本来、一方通行の専用線(オーディオ用ケーブルを思い出そう)で運ぶもので、取扱注意のこわれもの。高周波ノイズや微小な電位変動などの影響を受けやすく、配慮が必要なものだ。

一般的なLAN伝送はバランス伝送だが、シールド付きケーブル(STP)の使用や機器間の静電結合によってGND(グラウンド)や高周波ノイズが繋がってしまい、グラウンドループを引き起こす原因になる。電気信号のままでグラウンドループを完全に絶つのは難しいが、光アイソレーションによってGNDとノイズ経路を完全に分離することはかなり有効な手段となる。抜本的なノイズ対策を考えると、最初に手を付けるべきことだと思える。これによってオーディオ機器へ微小な影響も与えないようにするわけだ。

今や、光絶縁系のアイテムの認知度も高まってきており、注目度も高い。効果を実感している人も増えてきているので、まだ試していないならば、ぜひ試してみることをおすすめする。

筆者の気分を正直に言うと、もうネットワークのノイズ対策をしていない状態では、コンディションが悪くて、真面目に聴く気にならない。ネットワークの対策をそれなりに整えたことではじめて、NEO Stream 3のもともとの音質の良さも気がつくようになるわけだ。

そう考えると、実売17万8,200円前後のNEO Stream 3を買うだけで、LAN iPurifier(実売約53,900円)相当のネットワークノイズ対策アイテムと、ノイズの少ないACアダプターのiPower2(単品価格14,300円)がオマケで付属するというのは、かなりの大盤振る舞いであり、NEO Stream 3の真価を発揮するという意味でも効果は大きいだろう。

試聴に戻ろう。ユジャ・ワンのピアノ協奏曲は、序盤のピアノのソロ。ピアノの響きが豊かで、残響まできれいに響く。そして、ピアニッシモから次第にフォルテ、フォルティッシモへと力が入ってくる。そして、オーケストラの演奏が重なる。この感じのテンションの高さ、静かななかでピアノの音だけが最初は静かに鳴るときの引き締まる感じ。フォルティッシモを含めて、このダイナミックさがよく伝わる。

ピアノのタッチや勢いもしっかりと出る。このテンポ感や余韻がきれいに減衰していく感じはまさにオーディオ的な喜びの重要な要素のひとつ。音色が変わることで、音楽の満足度も高まる。

Qobuz Connectでの再生画面

そのうえで、じっくりと聴いてみると、情報量は十分にあるが、高解像度かというと感触は柔らかく、むしろソフトだと言える。最新のデジタルストリーマーというより、アナログレコードに近い印象だ。オーケストラの弦楽器や木管楽器なども質感が伝わる音色で、陰影のよく出る音だ。比較的印象の良かったEDMでもドラムは芯の通った力強さで鳴るし、電子楽器による軽快なリズムも、リズム感がよく出て、グルーヴ感がある。

そして、空間感。単純な音の広がりというだけでなく、ホールで音が響いているような感じになる。ユジャ・ワンのピアノとその後ろに並んだオーケストラの演奏の前後感もしっかりと出る。おそらくはノイズによる雑味が減って、録音された演奏本来の持ち味がしっかりと再現された印象だ。

K2HDテクノロジーも試してみたが、ユジャ・ワンのピアノはもともと96kHz音源でもあり、その差は少ない。それでも、ピアノの余韻がきれいになるし、オーケストラの演奏はやや艶がでてくるように感じた。キラキラと輝くというよりもなまめかしく光る感じだ。音と音の間が明瞭になって、リズム感もより豊かに感じられる。なかなか生々しい感じになり、好ましい変化だ。

iFi audioの設計思想を受け継ぎ、最新の技術を結集した再設計「NEO iDSD 3」

NEO iDSD 3

続いては、NEO iDSD 3(実売17万8,200円)。こちらはUSB DAC/ヘッドフォンアンプだ。NEO Stream 3と組み合わせると、DAC部の強化と、ヘッドフォン用アンプを持つことで、ヘッドフォンやイヤフォンをメインに音楽を聴く人には、必須と言える製品だ。

左からNEO Stream 3、NEO iDSD 3

デジタル入力は、USB3.0、同軸/光が各1系統。アナログ入力はRCA1系統。このほかに、Bluetoothにも対応する。デジタル入力はPCM最大768kHz、DSD最大22.6MHz。Bluetoothの対応コーデックは、aptX lossless、aptX Adaptive、aptX、LDAC、LHDC/HWA、AAC、SBC。

単体DACとしての優位性は、D/A変換後のアナログステージの充実だ。歪み率を半減した新オペアンプの採用や電源リップル抑制のために上位のポリマーコンデンサーを採用。高域特性をなめらかにするWIMA MKS2コンデンサーの採用などで、音を磨き上げている。出力端子は、RCAのほか、XLRも用意されている。

ヘッドフォンアンプは、iDSD Diablo2のアンプ部を踏襲。さらに改良を加えることで、ピーク出力5551mWを実現。高い駆動性を実現し、さまざまなヘッドホンの多くをしっかり鳴らすを実力を持つという。ヘッドフォン出力は、4.4mmのバランスと、6.3mmの標準ジャック。

上がNEO iDSD 3、下がNEO Stream 3。NEO iDSD 3はXLR出力も備えている
NEO iDSD 3のフロントパネル。ヘッドフォン出力は、4.4mmのバランスと、6.3mmの標準ジャックを搭載する

こちらにもK2およびK2HDテクノロジーが搭載され、再生時にK2/K2HDを切り替えることができる。独自の音質調整機能としては、音場の広がりを調整できるXSpace、低音を強化するXbassがある。オープン型で不足しがちな低域を補強するXBass(青)、中域の厚みを増すXBass(緑)、低域と中低域の両方を増強するXBass(赤)が選べる。

このほか、専用アプリのiFi Nexisにも対応しており、ファームウェアの更新のほか、リモコン操作も可能になっている。

NEO Stream 3単体としてもなかなかの実力だったが、iDSD 3の追加により、音質的にはかなりのグレードアップとなる。NEO Stream 3とはUSBで接続。NEO Stream 3は付属Optiboxを使用した状態としている。アンプとの接続はXLR出力を使い、マランツAV 10のバランス入力に接続している。

NEO Stream 3単体では、情報量は十分にあるが、決してカリカリの高解像度な感じの音にはならなかったが、その方向性は、NEO Stream 3 + NEO iDSD 3の組み合わせでも変わらない。

ただし、ピアノの音色やオーケストラの演奏など、音の厚みが増し、強弱の変化がしっかりと出る。自然な音色はより活き活きと鳴るし、音場も広さや奥行きはそのままに、その大きさにふさわしいスケールが出る。

昨今のオーディオでは、どうやら高解像度が人気のようで、情報量や音のきめ細かさはかなりのものだが、音が細身というか、線が細くなって、重みが出にくい製品も少なくない。その中で、NEO iDSD 3は、情報量はしっかりと出し緻密な音に仕上げながら、厚みもある。この点でも、他にはない価値があると思う。

SENDY AUDIO「Egret」

今度はヘッドフォンを聴く。SINDY AUDIOのEagretを使用し、4.4mmバランス接続で聴いている。ユジャ・ワンのピアノは強弱がより明瞭で、力の入った低音になる。

スピーカー再生よりも音源と耳の位置が近く、部屋の音環境の影響も少ないヘッドフォン再生の良さで、強弱の変化がよくわかり、ニュアンスの違いもよく伝わる。よく聴く米津玄師と宇多田ヒカルによる「JANE DOE」は、ニュアンスたっぷりで、ふたりの切ない恋心がよくわかる。ボーカルの印象が強い曲だが、ピアノのせつなげな演奏や案外どっしりと強いリズムの刻みなど、バックの演奏もよく聴き取れ、せつない恋というだけでなく、恋心をいだきながらも、お互いのために離れていくほろ苦さ、それを表に出さない大人の恋の雰囲気がよく出る。質感たっぷりの声がその心情をよく伝えてくる。

柔らかく、どちらかというとソフトな音ではあるが、ヘッドフォンでじっくりと聴くと、ソフトながらも十分に解像度は高く、細かな音まで丁寧に再現されていることがわかる。ヘッドフォンアンプ部の出来もなかなかのものだ。

K2/K2HDテクノロジーも試してみたが、「JANE DOE」は48kHz音源ということもあり、感触はずいぶんと変わる。質感が増し、生々しい歌声になる。伴奏の音や高音まで伸びた声などでも、荒っぽさがとれてスムーズになる。質感はより豊かになって、しかも聴きやすい耳なじみの良さもある。iFi audioの目指す音の方向性とも共通する感じがあり、最新のラインアップに広く採用している理由もわかる気がした。

このほか、ゲイン調整や自動的に最適なインピーダンス適合を行うiEMatchなどのヘッドフォン/イヤフォンに有効な機能も豊富に備える。DACのフィルター特性も複数から選べる。XBassについては、平面磁界型でオープン型ながらもSENDY AUDIOのEgretは低音のよく鳴るし、パンチの効いた反応の良さもあるので、XBass(青)はいわゆる低音域が強調される。低音が増強されても、中高音にかぶって、明瞭度が下がることもないし、低音がふくらみすぎて、ボコボコした低音になることもないので、ヘッドフォンの型式というより、好みとしてもっと低音が欲しいという場合に使うといいだろう。

XBass(緑)はボーカル曲に良い。歌声をじっくり聴きたいときなど、気分によって使い分けていいだろう。Xbass(赤)は個人的には過剰だと感じたが、EDMなど、曲によっては有効だろう。

自然で、音楽に寄り添った音質がiFi audioの持ち味

iFi audioというと、768kHzのPCM音源やDSD512(22.6MHz)対応をいち早く実現し、それをエントリークラスでも採用するなど、“先進技術に強い”というイメージが強い。そのため、知名度は高いが、ちょっと“マニア好み”、というイメージもあるブランドだ。

だが、久しぶりに本格的に聴いてみると、技術力の高さはしっかりしていると同時に、音楽に対するアプローチはむしろオーソドックスで、昔のイギリス製のオーディオに共通した魅力である中音域が充実し、聴きやすいバランスに仕上げられた親しみやすい音は変わっていなかった。技術的な進化もあって、音楽的な表現の深さはより豊かになっていると思う。

それでいて、決して、大型の高級品を志向せず、コンパクトで手軽に使えるサイズ感や、きちんとエントリーから製品をラインナップしているのも嬉しいところ。より多くの人にこの良さを知ってほしいと思った。

一方で、NEO iDSD 3とNEO Stream 3を組み合わせると、30万円台となかなかの価格帯になる。この価格になると、より高価なモデルにも興味が出てくるかもしれない。ちょうど、NEO Stream 3とiDSD 3が合体したようなハイエンド機「iDSD Phantom」(実売66万円前後)も今後登場予定。次回は、そんなiDSD Phantomに、迫ってみたい。

鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやHiFiオーディオ、ヘッドフォンなどのポータブル機まで、AV系のジャンル全般をカバーする。AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、さまざまな媒体、メディアで製品紹介記事や取材記事を執筆。かつてはB&W MATRIX801 S3を中心とした大型スピーカーでサラウンド再生システムを構築していたが、現在は、BWV H-1という小型スピーカーによるシステムへ移行中。映画はもちろん、アニメやゲームも愛好する。