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約5万円の”第2世代”HD DVDプレーヤー「HD-XF2」
-動作速度も向上。専用機ならではの操作性


12月下旬発売

標準価格:オープンプライス


 “次世代ディスク”競争で3月に一足先に製品投入したHD DVD。初代プレーヤー「HD-XA1」は実売10万円で登場し、HD DVDの高画質を体験可能としていたが、初代機ということもあり、動作速度などに不満を残していた。

 第2世代の「HD-XA2/XF2」では、専用LSIの開発などによる低コスト化や、大幅な小型/薄型化を実現。あわせてエントリーモデル「HD-XF2」は実売価格で54,800円程度と、より手に取りやすい価格に落ち着いてきた。

 Blu-ray Discとのフォーマット戦争もPLAYSTATION 3やBDレコーダの登場で、いよいよ本番を迎えるが、ビデオソフトで先行したHD DVDだけに「第2世代」での熟成ぶりが気になるところ。実売5万円で登場した期待のプレーヤー「HD-XF2」の実力を検証する。


■ 薄型/軽量化された新プレーヤー

左側にトレー部を備える

 付属品はリモコンとAVケーブルのみと至ってシンプル。外形寸法/重量は430×345×63.5mm(幅×奥行き×高さ)/4.1kg。HD-XA1(437×354×115mm/8.9kg)と比較すると、大幅に薄型、軽量化され、デザインもかなりすっきりした。ずっしりとした重みのあるHD-XA1と比べると、天板やフロントパネルの質感も若干安っぽくなったようにも感じるが、価格相応といったところだろう。

 HD DVDドライブ部は、本体向かって左側で、センターが多い最近のプレーヤーの中では珍しい。右側にはFL表示管を装備する。前面の下のふたを開けると、操作ボタンやUSB端子の拡張スロットが現れる。今のところ拡張スロットの使い道はない。


本体前面 本体下部のカバーを開くと操作ボタンが現れる。USBの拡張端子も用意している
Dolby Digital Plusなどのロゴをプリント 背面。HDMI出力やコンポーネント出力、D端子出力などを備える

 背面端子は、HDMI出力、D4出力、S映像出力、コンポジット映像出力、アナログ音声(2ch)、光デジタル出力を各1系統装備する。上位モデルのHD-XA2では、このほかアナログ5.1ch出力や同軸デジタル出力を備える、また、HD-XA2のみHDMIもVer.1.3相当で、Deep Colorや1080p出力に対応する。

HD-XA1との比較


■ 起動時間も高速化。プレーヤーならではの操作性がXbox 360との違い

 電源投入後、HD DVDのロゴが出画されるまでの時間は約24~30秒。プレーヤーとしてはあまり早くないが、初代のHD-XA1と比較すると大幅に高速になった。

HD-XF2の付属リモコン

 HD DVDディスクのローディング時間は18~22秒程度。まだ、少し待たされるだが、40秒以上かかっていたHD-XA1と比較するとこちらも高速になった。まだ、通常のDVDプレーヤーと同等とは言えないが、それでも日常的に使ってもさほど不満を感じない程度に改善された。また、ディスクが入っている際には、電源投入から出画まで40秒程度とさらに高速で、体感的にはHD-XA1の半分以下で再生開始できる。

 レスポンスも向上しており、リモコンによるトレイのオープン/クローズ動作などの反応が良くなっている。また、DVDやCDのローディングはHD DVDより高速で、DVDでは9~11秒、CDは約9秒。既存のDVDプレーヤーと比較しても遜色のないレベルになっている。

 設定画面はHD-XA1からあまり変更がない。映像設定はテレビ画面形状(16:9/4:3)や、プログレッシブ変換(フィルム/ビデオ/オート)、解像度設定(~480i/~480p/~720p/~1080i)を設定できる。

 HD-XA1で気になったファンノイズだが、HD-XF2ではかなり小さくなったものの皆無という訳ではない。ディスク再生時はもちろん全く気にならないが、静かなフローリングの部屋に置いて電源を入れるとすこし耳障りな時もある。

 音声設定では、HDMIや光デジタル音声出力のビットストリーム/PCM切り替えやダイナミックレンジコントロールなどの設定が可能。そのほか、ネットワーク機能の設定画面なども用意されている。


設定のトップメニュー 出力解像度設定 各種操作設定

Xbox 360 HD DVDプレーヤーやHD-XA1のシアターライトリモコンと比較

 操作はリモコンで行なうが、HD-XA1の「シアターライトリモコン」と比較するとHD-XF2のリモコンはだいぶ安っぽい。また、再生や一時停止、スキップ/バックといったボタンが込み入っているので、もう少し主要なボタンを大きくしてもよかったのでは、とは感じる。

 とはいえ、音声切り替えや字幕の切り替えなどがワンボタンでできるなど、基本的な操作性にはほとんど不満はない。メニューボタンでのポップアップメニュー呼び出しはPS3ほど早くはないものの、ほとんどタイムラグ無く呼び出せて、ストレスを感じさせない。

 また、HD DVDではA、B、C、Dというボタンがあり、ディスクによっては、これらのボタンを使ってポップアップメニューでチャプタ表示したり、お気に入りのシーンをプレーヤーのメモリに記憶する「ブックマーク」機能を呼び出したりできる。

 例えば、北米版の「The Fast & The Furious: Tokyo Drift(邦題:ワイルド・スピード×3)」では、Aボタンでチャプタメニューを本編映像に重ねてポップアップ表示、Bボタンでブックマーク機能を呼び出せる。「映像詩 里山 命めぐる水辺」では、チャプタメニュー呼び出しや、ブックマーク、字幕呼び出しなどが行なえるように機能が割り当てられている。

 こうしたHD DVD独自のナビゲーションが、リモコンでしっかり利用できる。当たり前のことではあるのだが、Xbox 360 HD DVDプレーヤーのリモコンでは、このA/B/C/Dボタンが、なぜか左からD/C/A/Bという順番で並んでおり、ボタンを見ながらでないと操作がしづらい。

 これらのボタンは北米版「King Kong(キング・コング)」やTOKYO DRIFTなど、Universal Pictures独自のナビゲーション機能「U-Control」でも利用するなど、今後活用の幅が広がってくると思われる。きちんとアルファベット順に並んでいるというのは使いやすさに直接繋がってくる。また、Xbox 360との比較で言えば、トップメニューの呼び出しや、音声や字幕切り替えをダイレクトボタンで行なえるというのも大きな違いといえる。Xbox 360 HD DVDプレーヤーがあくまで「ゲーム機のアドオン」であるのに対し、HD-XF2は専用機。HD DVD再生に特化した機能を求めるのであれば、専用プレーヤーのほうが使いやすい。

Xbox 360 HD DVDプレーヤーリモコンのボタンはなぜかD/C/A/Bという順番に U-Controlでブックマーク機能を利用


■ HD画質を気軽に。DVD画質も良好で、画質設定はシンプル

 画質は良好。ハイビジョンソースの魅力をそのまま体感できる。まずはHDMIの1080i出力で東芝「REGZA 37Z2000」やソニー「BRAVIA KDL-40X2500」と接続してみた。なお、HD-XF2では、1080p収録のタイトルについては、1080iで出力されるのが残念なところ。

 「King Kong」では文字通り、毛の一本一本までが見えそうなもの緻密なコングの皮膚や、密林の鬱蒼とした木々が細部まで見渡せる。DVDの「キングコング」も高画質ディスクの一枚と思っていたが、さすがにハイビジョン収録のディスクとは雲泥の差。船内の会話シーンの壁の木目や、船上の撮影シーンの穏やかなナオミ・ワッツの表情、森の茂みの暗部階調などものすごい情報量が確認できる。

 また、強烈な色彩の北米版「Charlie and The CHOCOLATE FACTORY(チャーリーとチョコレート工房)」のど派手な工場内の装飾やウンパ・ルンパのダンスシーン、「The Phantom of the Opera(オペラ座の怪人)」の“マスカレード”のチャプタにおける、ドレスアップした煌びやかな衣装や客席の微細な装飾、「TOKYO DRIFT」のレースシーンの車の光の照り返しなど、「ハイビジョンであること」自体が価値、というか圧倒的な体験として伝わってくる。

 ビデオ収録のNHKスペシャル「映像詩 里山 命めぐる水辺」も高画質なディスク。MPEG-4 AVCで収録した琵琶湖湖畔の生物や人々の生活などをハイビジョン記録したものだが、水中に咲く花や、俯瞰の自然の風景などはもちろん、桶の中の鯉や、カエル、蛇などの水に濡れた生物の質感が気持ち悪いぐらいに体験できる。

 1080p出力対応の「HD-XA2」については未見だが、まずはHD-XF2が5万円程度で、このクオリティを体験できるというのは、大きなメリット。とにかくハイビジョンコンテンツに入門するには十分すぎるクオリティといえる。

 D端子接続でも画質の傾向に大きな変化は無いが、精細感ではやはりHDMIのほうが大抵の場合上回っている。たとえば、「里山」に出てくる水に潜って魚を捕らえる蛇「ヒバカリ」のなまめかしく艶やかな鱗や、カエルの皮膚の質感などは圧倒的にクリアなHDMI接続が望ましい。

 だが、例えばKing Kongの場合、CGを多用していることや、リメイクにあたり「合成らしさ」を意図的に出していることもあり、奥行き感に乏しく感じるシーンもある(それが監督の狙いなのだろうが)。こうしたシーンでは、D端子接続のほうが適度に奥行きを感じることもある。このあたりは好みにあわせて使い分けたいところだ。

 なお、再生中の画質調整機能は特になく、設定メニューでプログレッシブ化ロジックの変更ができる程度だ。画質設定はディスプレイ側で行なう、というのが基本になるだろう。

 DVDの再生機能も搭載しており、HDMI接続の場合、最高1080iまでのアップスケーリングに対応している。1080p出力は上位モデルの「HD-XA2」のみサポートする。アナログ出力に関しても、ビデオDACに12bit/148.5MHzとかなり高性能なものを搭載するため、画質面でも期待できる。

 今回、マランツのユニバーサルプレーヤー「DV8400(2003年4月発売/発売時の実売15万円)」と比較してみたが、アナログの480p出力においてもHD-XF2の方が優秀。字幕周辺のすだれ状のノイズなどは無く、クロマエラーも発生しない。すっきりとした画質を楽しめる。さらに1080i出力でもぐっと情報量が多く、ハイビジョン“的な”映像出力が可能だ。DVD黎明期や初期のプログレッシブ対応プレーヤーなどのユーザーは、DVDのクオリティアップという点も期待できる。

 残念なのは、現時点ではHD DVDレコーダ「RD-A1」で録画したHD DVD-Rディスクを再生できないこと。実際にA1で記録したディスクを入れてみたが、「再生できません。サポートしていないディスクです」とのダイアログが表示されるだけだった。将来的なアップデート対応を予定しているとのことだが、このあたりは残念だ。

 DVD-RAMには非対応。また、DVD-RWではVRモード記録のディスク再生に対応するが、デジタル放送のコピーワンス番組を記録したCPRM対応のDVD-RWについては、正式サポートしていない。しかし、編集部でコピーワンス番組を記録したファイナライズ済みのCPRM対応DVD-R、DVD-RWを入れたところ、特に問題なく再生が行なえた。


■ 難しいHD DVDの音声出力。CD出力音質も良い

 また、HD DVDのみならず、次世代ビデオディスクでややこしいことになっているのが、デジタル音声出力だ。

 DVDでは基本的に光/同軸デジタル接続で、ドルビーデジタルやDTSの5.1ch出力が可能となっているが、HD DVD/Blu-rayではさらにドルビーデジタル プラス(DD+)や、DTS HD、Dolby True HDなどの新しいコーデックが導入されている。アナログ5.1ch出力を持つ上位モデル「HD-XA2」であれば、6本のケーブルをつなぐ必要こそあれ、プレーヤー側で変換して出力可能。しかし、デジタル出力にはいくつかの制限がある。

 HD DVD、Blu-ray問わず、デジタル音声出力を行なうためには、光デジタルもしくはHDMI出力を利用することとなる。しかし、著作権保護や、伝送帯域、対応機器などの問題から、この関係性がかなり難しくなっているのだ。

 DD+やDTS HD、TrueHDなどの新コーデックについては、現時点ではそのままパススルー出力されてもデコードできるアンプが無い。そのため、プレーヤー側で変換する必要がある。

 さらに、HD DVDビデオの規格においては、DVDビデオとほぼ共通のメニュー構成をもった「スタンダードコンテンツ」と、ポップアップメニューなど新しいナビゲーション機能が備わった「アドバンストコンテンツ」の2つのタイプが用意されている。このスタンダード/アドバンスの違いにおいても音声の扱いが違うのだ。

 もっとも、HD-XA1に付属した「バイオハザード」や「ムーンライト・ジュリーフィッシュ」など最初期のディスクを除けば、現在発売されているディスクのほとんどはアドバンストコンテンツと考えて良い。

 そこで、アドバンストコンテンツのディスクの場合、現時点ではHD-XF2の光デジタル音声出力は、DD+、DTS HD、TrueHD、LPCMなどの音声を全て全てDTSに変換して出力する。

 一方、HDMI音声出力については接続機器が対応していれば各フォーマットがスルー出力されるが、現状のAVアンプなどにはリニアPCMに変換して出力されることになる。スタンダードコンテンツの場合も、基本的にマルチチャンネル/ステレオPCMで出力される。

光デジタル出力の音声設定画面。ビットストリーム/PCMの選択が可能 HDMI音声出力の設定。自動/PCM/ダウンミックスPCMを選択可能

HD-XF2のHD DVDビデオアドバンストコンテンツ
デジタル音声出力仕様
接続方法音声方式設定
ビットストリームPCM
光デジタル
DD+
Dolby TrueHD
DTS HD
リニアPCM
DTSビットストリーム2ch PCM
接続方法音声方式設定
自動PCMダウンミックスPCM
HDMIDD+
Dolby TrueHD
DTS HD
リニアPCM
接続機器に準じるマルチチャンネルPCM2ch PCM

 特にHDMI接続の場合に問題となるのが、AVアンプやテレビ側の対応。リニアPCMのマルチチャンネル音声を受けられるアンプは多くないので、このあたりの対応状況をチェックする必要がある。いずれにしろ、AVアンプ側でもマルチチャンネルリニアPCMへの対応というのが今後のトレンドとなっていくだろう。

 実際の音声については、光デジタル音声出力を中心に、デノンのAVアンプ「AVC3890」に接続し、HD DVDやDVD、CDを聞いてみた。

 HD DVDの場合、DTSエンコードされることと関係あるのか、音声レベルが若干低めになるようで、DVDでの同音量での出力と比べると若干音が小さくなる傾向がある。DVDについては、問題なくドルビーデジタルやDTS音声をそのままパススルー出力する。

 HD DVDはもとより、DVDやCDの再生品質も良好で、CDでは中低域の力強さが印象的。ポップス系のソースからクラシックまでそつなくこなせ、特に音圧の強いポップスなどでは、マランツの「DV8400」よりも好ましく感じた。アナログ音声出力も十分なクオリティで、2~3万円程度のDVDプレーヤーよりはワンランク上という印象だ。なお、DVDオーディオやSACDの再生には非対応となっている。


■ 「手軽にHD DVD」を実現した第2世代

 HD DVDプレーヤーも第2世代に突入。動作速度などの大きな不満点を解消し、完成度を高めた製品に仕上がった。5万円という値段は、ちょっとだけ上のランクのDVDやCDプレーヤーが欲しい、といった人にも手が届く価格帯。HD DVDを求める人はもちろん、ちょうどCDやDVDプレーヤーの買い換え時期という人にとっても検討に値する価格になっている。

 パソコンやXbox 360などの再生環境も整ってきてはいるのものの、例えば、King KongやTOKYO DRIFTのU-Control、ブックマーク機能など、ソフト側でも新しい機能提案が行なわれている。大画面テレビでの視聴を考えるのであれば、専用プレーヤーの使い勝手が現時点では勝っているように感じる。画質はもちろんのこと、こうした使い勝手の上でも現在のHD DVDフォーマットの実力を体験できる製品になっている。

 より高クオリティを求めるのであれば、上位モデルの「HD-XA2」もいいが、直接の競合となるのは、単体で20,790円と低価格な「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」かもしれない。もっとも、HDMI出力や専用プレーヤーならではの操作性といった点で、シンプルに「HD DVDを楽しむ」ということであれば、使い勝手はHD-XF2の方が明らかに上。現在、Xbox 360を持っていないのであれば、HD-XF2が第1の選択肢となるだろう。

 競合フォーマットのBlu-ray DiscではPLAYSTATION 3という約5~6万円の選択肢があるが、HD DVDにおいてもHD-XF2による比較的安価な選択肢が登場した。あとはソフトの問題だが、タイトルも70に迫り、年明けには「キング・コング」などのビッグタイトルも控えている。新しいインタラクティブ機能なども多数登場してきており、これから手軽にHD DVDを楽しみたい人にちょうどよい製品といえる。海外版が楽しめるのもHD DVDのメリットではあるが、国内でのソフトのさらなる充実にも期待したい。

□東芝のホームページ
http://www.toshiba.co.jp/index_j3.htm
□ニュースリリース
http://www.toshiba.co.jp/about/press/2006_11/pr_j1501.htm
□「HD-XF2」製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/products/hddvd/hd-xf2/index.html
□「HD-XA2」製品情報
http://www3.toshiba.co.jp/hdd-dvd/products/hddvd/hd-xa2/index.html
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( 2006年12月26日 )

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