ニュース
8K空撮、VR、残業抑制も? 「ジャパン・ドローン」で新たな活用提案
2017年3月24日 19:16
ドローンに特化した製品/サービス展示や講演などを行なう「ジャパン・ドローン2017」が3月23日に開幕した。会場は千葉県の幕張メッセで、期間は25日まで。入場料は2,000円だが、事前登録や招待状持参で無料となる。主催は日本UAS産業振興協議会。
150社/団体が参加し、ドローンの機体や、それを活用したサービス、新しいビジネスなどの発表の場となるイベントで、今年で2回目となる。農業や物流などを想定した業務用の機体を中心に、ホビー向けの小型モデルなども多数展示。マルチコプターなどの航空機(UAV)以外に、地上を走行するタイプ(UGV)なども出展されている。
最終日の25日には、ドローンレースや、小学生向けのドローンスクール/体験会(事前予約制/定員に達し次第締め切り)など、一般向けの企画も用意されている。
4K/8K撮影、農業、災害対策など様々な用途
大規模なブースを構えるDJIは、夏前ごろに発売予定の新モデル「MATRICE 200」シリーズを披露。17インチプロペラと高性能モーターとの組み合わせで、強風時でも安定して飛行でき、デュアルバッテリにより氷点下でも自動でバッテリを温める機能なども備えるオールインワンタイプ。カメラは4種類のZENMUSE(X5S/X4S/XT/Z30)を装着可能で、3タイプのジンバルマウントを用意する。
MATRICE 200のスタンダードモデル「M200」は、単一下方ジンバルマウントを搭載。「M210」は、単一下方ジンバルマウントとデュアル下方ジンバルマウント、単一上方ジンバルの複数のペイロード構造。「M210」は、サードパーティ製センサーとアクセサリに対応する追加の接続ポートを用意。機体上部に取り付けられる追加のセンサーとペイロードにも対応予定。M210 RTKには、cm単位の高精度なナビゲーションが可能な内蔵型のRTKモジュールを備える。価格は未定だが、M200は100万円を切る見込みで、最上位のM210 RTKは200万円前後。
産業用小型ロボットなどを手掛けるエンルートは、物流や農業、災害対策などのUAV/UGVを展示。様々な企業とのコラボレーションにより、新たなビジネスを提案している。
農業用の「Zion AC940-D」は、液剤や粒剤を5kgまで積載でき、50aの広さを5分で撒けるという。最大飛行距離は2,000m。飛行時間は最大12分。さらに、1haの広さで液剤なら10分、豆粒は5分で散布できる「Zion AC1500」を今春発売予定としている。
物資輸送向けでは、日本郵政やヤマト運輸と共同で開発しているデモ機などを紹介。3月に福島県南相馬市でテストを行なっており、今後は山間部や離島感の配達を想定したシミュレーションと実証実験を予定している。
地上を走るUGVは、200kgまで積載できる「Berg600」を展示。走行時間は無積載の場合1時間。運搬や、地質調査などの研究開発向けに販売する。
そのほか、「ドローン+AI」を提案する企業のLabRomanceによるシステムを紹介。カメラからの映像を元にディープラーニングを行ない、トマトの生産や品質予測を東京大学と共同で研究しているという。
XYZ(エクシーズ)は、CMや映画、番組撮影などの空撮サービスを展開。DJI製やXYZ製ドローンのほか、RED WEAPON HELIUM 8Kを使った8K撮影にも対応可能としている。DJIのZenmuseXTを使った自然環境調査や設備点検などの業務も行なう。
ドローン+360度VR映像活用。3Dプリント&プロジェクションマッピング
人が立ち入ることが困難な場所での利用を想定したドローンに、360度カメラを用いた「VRモニタリングによる遠隔操作式無人探査車」を、アイ・ロボティクスが展示。高線量/高汚染区域での作業を想定したもので、展示機にはリコーのTHETAをエンルートのUGVに搭載。カメラの映像を、PCに接続したヘッドマウントディスプレイで確認しながら走行し、バックしたいときには操縦者が後ろを振り返ることでTHETAの360度映像から後ろの状態を確認できる。
THETAの他にGoProも同じ機体に搭載しており、用途によってカメラの映像を切り替えて使用可能。ヘッドマウントディスプレイはHTC Viveを使用している。展示されたシステムの場合は300万円程度だが、小型のUGVだけでなく、ロボットアームの付いたものや、パワーショベルのような重機にも、同様のシステムで遠隔操作のシステムを使用できるという。災害区域だけでなく、鉱山や大きな建物の地下など幅広い用途を想定しており、海底で使いたいという要望もとどいているという。走る場所に応じて車体の外装などを設計する。
さらに、映画撮影などの利用も想定。4K 360度カメラを用いて、全編VRの作品を撮影するといったことも想定している。現在のシステムでは0.8秒の遅延があるため、高解像度化の場合は遅延の低減も課題の一つとなる。
VUFINEは、メガネなどに装着できるウェアラブルディスプレイ「VUFINE+」を展示。ドローンのカメラ映像をリアルタイムで確認しながら飛行操作ができるデモを行なっている。国内ではセキドが販売し、価格は22,800円。機体から目を離さずに操縦可能としている。ディスプレイはLCOS(反射型液晶)で、720p入力に対応。内蔵バッテリで約90分動作し、microUSBで給電できる。
東京カートグラフィックは、ドローンの空撮写真を元に、精密な地形や建物の模型を3Dプリンタで作るワンストップサービスを提供。博物館などの展示物や、建築物のミニチュアなどに利用できるもので、3Dプリンタから出力された状態では無色だが、プロジェクションマッピングによってリアルな模型として展示でき、四季など時間の変化に応じた表現ができるのが特徴。
オフィスを飛ぶドローンが残業を抑制? 入門者向けマンガも
セキュリティ事業などを手掛ける大成と、ドローン活用サービスなどを展開するブルーイノベーションは、NTT東日本と協力してドローンによるオフィス巡回システム「T-FREND」を発表。
GPSを使わずに屋内で自律飛行できるドローンで、巡回時間やルートの設定などが自由に行なえる。セキュリティ用途だけでなく、政府の「働き方改革」を受けての残業抑制にも活用。決まった時間にドローンが巡回し、社員の退社をスムーズに促せるという。オフィスに残っている人をカメラで撮影し、総務担当者などが実態を把握できる。飛行ルートの設定などはタブレットから行なえ、複数の機体をまとめて管理できる。
ドローンの自律飛行などのシステムはブルーイノベーションが提供し、オフィス内の飛行に適した本体デザインや機能などを検討中。ネットワーク基盤はNTT東日本がサポート。オフィス内の映像は、インターネットを介さず閉域ダイレクト接続により安全にクラウド上のサーバーへ送信できるという。大成がサービスパッケージとして販売し、同社にとっては、警備事業の深刻な人手不足解消にもつながると期待を寄せている。
主催者ブースには、東京大学とリコー、ブルーイノベーションが開発した安定飛行システムが紹介されている。超広角ステレオカメラで飛行経路の3次元地図を生成し、予期しない障害物を検出して自動回避するもので、リコーが産業用ロボットのカメラで培ったステレオカメラ技術をドローンに応用した。
飛行している経路の3次元地図の生成をリアルタイムで行なえるのが特徴で、予定の飛行経路に出現した障害物を検出し、自動で避けられる。生成したデータは本体内に保存でき、他の機体での飛行などにも活用できる。展示されたシステムの重量は約1kgで、用途に合わせた軽量化も検討するという。
ドローンのレンタルや、トレーニングスクールなどを展開するトラストは、プロを目指すパイロットや、実務経験の資格取得を目指す人のための養成スクールを紹介。入門者向けにマンガ「ドローンGIRLS 晴美」を制作し、女性を含む幅広い層を対象に案内している。このマンガは、ジャパン・ドローン内のブースのほか、同社のスクールなどでも配布している。
養成スクールのパイロットコースは週末を利用し、3日間の短期コースと約1カ月の本格的なコースで、座学と実技を行なう。安全運航管理者コースは座学のみで1日となる。