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東芝の米原子力子会社破産法申請。損失1兆円規模の可能性

 東芝は29日、米国で原子力事業を担うウェスチングハウス(WEC)と、その関連社、米国外の事業会社群の持株会社である東芝原子力エナジーホールディングス(TNEH UK)が、米国連邦倒産法 第11章(日本の民事再生法に相当)に基づく、再生手続を申し立てる事を決議。同日付けで、ニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。WECグループは東芝の実質的な支配から外れ、2016年度通期決算より連結対象外となる。東芝の業績への影響額はまだ確定していない。

 WECグループは今後、事業再編を念頭に当面は事業を継続予定。この間に、事業継続のため8億ドルの第三者からのファイナンスを確保。東芝はそのうち、2億ドルを上限として債務保証を提供する予定。

 また、東芝とWECグループは、建設中の米国原子力発電所2サイトの顧客である各電力会社との間で、建設プロジェクトの作業継続について合意を目指して協議中。協議継続の間は、電力会社が建設コストを支払う事が前提。東芝は、「速やかに合意がなされ、再生手続が円滑に進むよう、真摯に協力していく」としている。

 再生手続の開始により、WECに対する東芝債権の全部、または一部については連邦倒産法に沿った処理がなされ、債権の回収についても連邦倒産法、および債権整理手続きに則った扱いとなる。

2016年度の当期純損益は1兆円規模の可能性も

 WECは、米国の原子力のサイト4基の建設プロジェクトの見積コストにおいて、61億ドルの増加が判明。大幅な損失を計上する見通し。WECと東芝は昨年12月以降、影響額の精査や原因究明などを進めているが、WECは今後の資金繰りの見込み、事業価値の維持などの再建方策を検討した結果、再生手続の申し立てを決定したという。

 WECとTNEH UKの負債総額は、昨年12月31日現在で98億1,100万ドル、そのうち12億8,700万ドルは、東芝を含む東芝グループに対する債務。29日現在での、東芝のWEC、TNEH UKに対する出資持分は、WECが4,176億円、TNEH UKが1,462億円。

 東芝は今年の2月に公表した2016年度の業績見通しにおいて、S&W買収に伴う損失として、営業利益ベースでは原子力事業ののれん減損による7,125億円の悪化影響を、当期純損益、持株資本・純資産には6,204億円の悪化影響を織り込み、当期純損益で3,900億円のマイナス、株主資本マイナス1,500億円、純資産1,100億円としていた。

 今回の再生手続の結果、営業外損益において、のれん減損などの悪影響額を除外する一方で、WEC、TNEH UKへの投資勘定の全額減損による悪化影響などを盛り込むと、約2,000億円を超える、当期純損益ベースでの改善影響を計上する見通し。

 これに加え、主に米国原子力発電所の建設プロジェクトにおいて、東芝が電力会社に提供している親会社保証に関する損失、WECグループへの東芝債権に対する貸倒引当金の営業外損益の計上を新たに検討する必要がある。

 仮に、親会社補償額6,500億円規模の全額引当計上、債権全額1,756億円に対して、貸倒引当金を見積もった場合、2016年度の当期純利益に6,200億円規模の追加悪化となり、2月発表の損失3,900億円から、1兆100億円の損失に悪化する可能性がある。