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Astell&Kern、アンプ強化+デュアルDACに進化した「AK70 MKII」。上位機に迫る低音

 アユートは、iriver Astell&Kernのハイレゾプレーヤーエントリーモデル「AK70」の後継機「AK70 MKII」(AK70MKII-NB)を10月14日に発売する。予約は9月20日よりスタート。価格はオープンプライスで、直販価格は79,980円(税込)。従来のAK70の69,980円より1万円アップしている。今後AK70はこのMKIIに切り替わっていく。カラーはNoir Black。

「AK70 MKII」(AK70MKII-NB)

 進化ポイントは、最上位モデル「SP1000」の回路設計の特徴である「バランス再生時の高出力化と低歪・高SN比の両立」を取り入れ、アンプ部の強化をした事。DACはシーラス・ロジックの「CS4398」で従来と同じだが、これを1基から2基へ増やし、デュアルDAC構成とした。アンプ強化、デュアルDACという最上位モデルの要素を取り入れた事で「エントリーを越えたプレミアムモデル」と位置付けられている。また、「第二世代AKシリーズのフラッグシップ“AK240”の特徴を受け継ぐ事も意味している」という。

 その他の再生対応フォーマットや機能に変更は無い。なお、AK70は登場当初、ミスティミントカラーのみで展開した事が話題となったが、AK70 MKIIは比較的オーソドックスな色味のNoir Blackとなっている。

左が新モデル「AK70 MKII」、右が従来のAK70

アンプ部とDACを強化

 出力は3.5mmのステレオミニアンバランスに加え、2.5mm 4極のバランス出力も装備。アンプ出力を強化しており、AK70はアンバランス 2.3Vrms、バランス(無負荷時)で2.3Vrmsだったが、AK70 MKIIではアンバランス 2.0Vrms、バランス(無負荷時)で4.0Vrmsとなった。

3.5mmのステレオミニアンバランスに加え、2.5mm 4極のバランス出力も装備

 SN比と全高調波歪率も改善しており、AK70のアンバランス116dB@1kHz、0.0008%@1kHz、バランス116dB@1kHz、0.0007%@1kHzに対し、AK70 MKIIはアンバランス118dB@1kHz、0.0005%@1kHz、バランス119dB@1kHz、0.0005%@1kHzになっている。いずれのスペックも、最上位のSP1000に迫るものとなっている。

AK70、AK70 MKII、SP1000の比較

 第二世代AKシリーズのフラッグシップ「AK240」と同様に、シーラス・ロジックのDAC「CS4398」を2基搭載した。AK70のデュアルDAC化は、以前から市場より多くの要望があったという。

シーラス・ロジックのDAC「CS4398」を2基搭載した

 なお、こうした強化により消費電力は増加しているが、バッテリ容量は少しアップしており、再生時間は従来のAK70とほとんど変わらない約10時間だという。

 また、サイズはAK70とほぼ同じに見えるが、並べてみるとわずかに大きく重い。AK70は96.8×60.3×13mm(縦×横×厚さ)、重量は132g。AK70 MKIIは、96.8×62.8×15.2mm(同)で、重量は150g。

左がAK70 MKII、右がAK70。横幅と厚みが、AK70 MKIIの方がやや大きい
端の、角度がついた部分の形状がやや異なる
左はSP1000

プレーヤーとしての機能は従来モデルを踏襲

 内蔵メモリは64GB、microSDカードスロットも備えており、最大256GBまでのカードも利用できる。

microSDカードスロットを装備

 再生対応ファイルは、192kHz/24bitまでのネイティブ再生が可能で、それを超える384kHz/32bitまでの再生も可能だが、ダウンコンバート再生となる。DSDはネイティブ再生非対応だが、5.6MHzまでのファイルを、PCM 176.4kHz/24bitへ変換しながら再生できる。ファイル形式は、WAV/FLAC/MP3/WMA/OGG/APE/AAC/Apple Lossless/AIFF/DFF/DSFをサポート。ギャップレス再生にも対応。

 底面のUSB端子からUSBオーディオデジタル出力が可能。AK70をスマートフォンのように扱い、外部のDAC搭載アンプなどにデジタル出力し、そのアンプから音を聴くといった使い方ができる。その際、PCMは384kHz/32bit、DSDはDoPで5.6MHzまでの伝送をサポートする。

 PCとUSB接続して、USB DACとして動作する事も可能。その場合は96kHz/24bitまで対応。DSDはPCM変換再生となる。

背面

 Bluetooth 4.0にも対応。プロファイルはA2DP/AVRCPをサポートし、コーデックはSBC/aptX/aptX HDに対応する。IEEE 802.11b/g/nの無線LAN機能も備え、DLNAを使い、NASなどに保存した音楽を再生したり、スマホからの制御を受け入れる「AK Connect」機能が利用可能。

 ディスプレイは3.3型の液晶で、解像度は480×800ドット。静電容量式のタッチパネル仕様。USB端子はマイクロB。

ボリュームダイヤル

 別売アクセサリとして、CDからAK70 MKIIの本体に直接リッピングできるドライブ「AK CD-RIPPER」と、その新型「AK CD-RIPPER MKII」(今秋発売予定/オープン/直販税込54,980円)も利用できる。

新型「AK CD-RIPPER MKII」

AK70からどのように音が変化したのか

 「マイケル・ジャクソン/スリラー」のDSDで新旧AK70を聴き比べてみた。まず、イヤフォンでAK70を聴いた後、AK70 MKIIに切り替えると、まるで違う音が出てくる。「MKII」というより、まったく違うモデルというほど、音が進化している。

 最も大きな違いは中低域。アンプが強化された事で、ドラムなど、低音の沈み込みが深くなり、広大な空間に「ドーン」と響く効果音も、MKIIの方が圧倒的に力強く、同時に音の芯が“重い”。中低域の張り出しもパワフルで、イヤフォンをしっかりドライブできているのがわかる。

 ヘッドフォンで同じように聴き比べると、この“アンプの進化度合い”がイヤフォンの2倍くらいよくわかる。重心が低く、ドッシリとしたサウンドは、とてもエントリーモデルのサウンドではなく、完全に上位モデルの風格を漂わせている。

 「機動戦士ガンダムUC/オリジナルサウンドトラック4」の2曲目「2ndMob.:MSGUCEP7(SYMPHONIC-MOBILE SUITE[UC])」のような、重厚な低音が押し寄せるような楽曲では、AK70との差は歴然。AK70 MKIIでじっくり聴いた後で、AK70に戻ると、低域がスカスカした、頼りない音に聴こえてしまう。

 低域だけではない。一聴してすぐわかるほどSN比がアップしており、音場の奥行きが深く、そこに展開する音の数もMKIIの方が豊富だ。音圧豊かに押し寄せる中低域の中の、描写の細かさにもMKIIの進化を感じる事ができる。このあたりは、アンプの改良だけでなく、デュアルDACになった事も寄与しているだろう。

 アンプの強化、そして「CS4398」のデュアルDACという仕様は、かつてのハイエンド機「AK240」の仕様とよく似ている。そこで、AK240とも聴き比べてみたのだが、衝撃的だ。バランス接続のヘッドフォンで比較したのだが、AK240のサウンドに、AK70 MKIIがかなり肉薄している。音の傾向は両者でよく似ているのだが、厳密に聴き比べると、全体のワイドレンジ感や、低域の分解能にAK240の“上位モデルらしさ”を感じる事はできる。ただ、それ以外の部分に関しては、AK70 MKIIが“匹敵する”レベルに到達している。AK240が20万円を超えるプレーヤーである事を考えると、AK70 MKIIはかなり要注目の“下克上プレーヤー”と言えそうだ。

 なお、AK70 MKIIと、Astell&Kern×JH Audioのコラボイヤフォン新機種「Michelle Limited」の発売前先行試聴会も実施する。日時は9月25日の月曜日で、時間は17時~20時。会場は東京新宿の「dues」(東京都新宿区新宿 3-28-4 新宿三峰ビル 4F)。入場料は無料。事前予約などは不要だが、来場者多数の場合は整理券を配布。混雑時は試聴時間を制限する場合がある。

【お詫びと訂正】記事初出時、AK240との比較部分に誤ってAK380と並べた写真を掲載していたため、削除しました(9月21日)