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「英知を全て盛り込んだ」パイオニアSACDプレーヤー「PD-70AE」。8ch DAC×2基搭載

 オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンは、長年の光ディスク再生技術・ノウハウを凝縮したという、パイオニアブランドのSACDプレーヤー「PD-70AE」を10月下旬に発売する。価格は28万円でカラーはシルバー。

パイオニアブランドのSACDプレーヤー「PD-70AE」

 1980年にCD規格が誕生し、パイオニアブランドからも多くのプレーヤーが登場したが、「これまでの英知を全て盛り込んだ」というSACDプレーヤーであり、「ディスクの新しい音の存在に気づかせてくれるプレーヤー」を目指したという。ディスク再生に特化している事も特徴で、あえてUSB DAC機能や、USBメモリ再生機能などは搭載していない。ただし、CD-Rなど、ディスクに記録したハイレゾファイル再生は可能。詳細は後述する。

SACDプレーヤー「PD-70AE」
光ディスクとパイオニアブランドの歴史

 ドライブメカには、長年の光ピックアップ制御技術を集約させ、「圧倒的な読み取り精度を実現した」とする。制振黒塗装を施した、ハニカムメカカバーに覆われた「シールド構造CDドライブ」となっている。

SACDプレーヤー「PD-70AE」
内部。黒いパーツが制振黒塗装を施したハニカムメカカバー

 ドライブメカと高剛性鋼板によるメカベースの固定には、減衰性の高いパルプ素材を挟み込んでおり、フローティング構造になっている。これにより、ドライブ内外に発生する振動を最小限に抑制、剛性化と静音性の両立を達成したという。

 ディスクトレイはアルミダイキャスト製。剛性を高める事で、ドライブの動作をより一層安定させている。

ディスクトレイはアルミダイキャスト製

 再生可能なディスクはCDとSACDで、SACDのマルチチャンネルには非対応。WAV/FLAC/Apple Lossless/AIFFの192kHz/24bitファイルや、5.6MHzまでのDSDを記録したCD-R/RW、DVD-R/RW、DVD+R/RWディスクを再生する事も可能。

 オーディオ基板は、LRの信号経路を、パターンからパーツの配置に至るまで同一に設計。LR信号のバランスを徹底して保ち、優れたセパレーション再生を実現するという。

 D/A変換から信号出力までのアナログ全般は、L/R独立したフルバランス回路で構成。外来ノイズの影響を排除している。バランス出力に対応したアンプと接続する場合には、伝送系の共通インピーダンスを極限まで抑えられ、チャンネルセパレーションを高めている。

 さらにRCAアンバランス出力のON/OFF機能も搭載。RCA信号の電源をOFFにする事で、XLR出力の高SN比、高セパレーションを実現している。

オーディオ基板は、LRの信号経路を、パターンからパーツの配置に至るまで同一に設計

 DACは、768kHz/32bitに対応する、ESSの8ch DAC「ES9026PRO」を左右チャンネル用に個別に搭載。それぞれを8chパラレル駆動とし、高精度なD/A変換を実現。高SN比、ローノイズ化を達成した。

 パイオニアはこれまでもESSのDACを使っているが、「ES9026PROのノウハウを蓄積し、我々が使いこなし、本来の性能を100%引き出せる状態で搭載した事もポイント」だという。

 このDACに、SACDやCDの試聴を繰り返して選定した、高音質なカスタム電解コンデンサを組み合わせている。

 DACのロックレンジ精度を調整し、ジッタを軽減する「LOCK RANGE ADJUST」機能を装備。6段階から調整でき、より性格な信号再生による音質向上が期待できるという。デジタルフィルターはシャープ、スローに加え、ショートの3つから選択可能。

 デジタル回路用、アナログ回路用、それぞれに、専用のEI型トランス電源を搭載。電源基板も、アナログ回路、デジタル回路、それぞれ専用にディスクリートで構成。ノイズのないクリーンな電源を最適な経路で供給する事で、純度の高い、濃厚なサウンドを実現したという。

右下にあるのがEI型トランス電源。デジタル回路用、アナログ回路用、個別に搭載している
各トランス電源から、最短かつシンプルな経路でデジタル/アナログ回路へと繋がっている
内部の配置

 高剛性の筐体を、さらに底辺から支える「リジットアンダーベース」を採用。シャーシをより強固な2重構造にすることで、高い制振性と低重心化を実現。外来ノイズを遮断するため、磁性体鉄板を内側に配置したアルミサイドパネルも組み合わせている。

磁性体鉄板を内側に配置したアルミサイドパネル

 インシュレータは特殊形状で、内部構造の平行面を無くし、空洞共振を原理的に発生させないことで、音の定位や音数、音階が明確になったという。チャンネル間のシームレスな繋がりや、俊敏な音へのレスポンスといった部分も向上している。

 出力端子は、RCAアンバランス、XLRバランスを各1系統装備。光デジタル、同軸デジタル出力も各1系統備えている。さらに、光デジタル入力、同軸デジタル入力も各1系統備え、DACのみを使う事もできる。

 XLR端子には、非磁性体メッキを施した、オリジナルカスタム開発の端子を採用。アンバランスのRCAには、金メッキ削りだしタイプの端子を使っている。

 ディスプレイは、アルファベットや漢字を含む日本語表示に対応。ACインレットタイプの極太電源ケーブルが付属する。

 消費電力は38W。待機時消費電力は0.3W。外形寸法は435×413×142mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は19.6kg。リモコンが付属する。

背面

音を聴いてみる

 女性ボーカルを聴くと、低域の粒立ちが良く、描写が非常に細やか。音がクリアで音像の輪郭が明瞭であり、ボーカルや楽器の定位もバシッと決まり、揺るがない。非常に高精細かつ、安定した描写であり、“ディスクプレーヤーっぽくない音”だ。

 まるでネットワークプレーヤーで、NASやUSBメモリからハイレゾファイルを再生したかのような、精緻で雑味のない、安定したサウンド。それが、ディスクから再生されているのが凄い。

 かといって、PCオーディオやネットワークプレーヤーのサウンドそのものかというと、CD/SACDプレーヤーらしい、どこかホッとする音のまとまりの良さ、長年の音作りノウハウの蓄積による“熱く再生して欲しいところはそのように再生してくれる”旨味もある。ディスク再生の良さを、最新の高精細ハイレゾ再生にも負けないクオリティで聴かせてくれるプレーヤーと言えるだろう。