東芝、ASEANシェア20%に向けバッテリ内蔵TVを発売

-新興国向けの「Power TV」。Google TVは「検討中」


東芝VP社 大角正明社長

 東芝は29日、ASEAN地域向けのテレビの戦略説明会を開催。バッテリやブースターを内蔵した地域密着モデルを発売するほか、高付加価値モデルも投入し、2011年度のASEAN地域シェア20%獲得を目指す。


 


■ バッテリ内蔵やブースター内蔵モデルでASEAN市場に注力

Power TV 3シリーズを投入

 東芝では、欧米や日本などの先進国に比べ、急成長が続く新興国の事業拡大に注力。特に、2009年から2012年までで年率24%の成長が続くと見込まれるASEAN(東南アジア諸国連合)地域での事業拡大を目指し、地域のニーズにあわせた現地モデルを発売する。

 具体的には、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムの6カ国で現地向けの新製品「Power TV(パワーテレビ)シリーズ」を投入する。

 ASEAN地域の特性に配慮し、電波受信感度の弱い地域(弱電界地域)への対応を強化。Power TV全モデルで、パワーブースターを内蔵する。Power TVはベーシックモデルの「PB1」、LEDバックライト搭載の「PS1」、バッテリ搭載の「PC1」の3シリーズを展開する。全モデル24型と32型が用意されるほか、PS1には40型もラインナップする。

 バッテリを内蔵した「PC1」は、現地の電気供給状況に配慮し不意の停電時にも内蔵のバッテリからの電源供給に切り替えることで、最大2時間の視聴が可能となるという。価格はPB1シリーズの24型が190ドル、32型が300ドルの見込み。現地の平均的なテレビに対し、約40ドル程度高い設定にしているという。バッテリ内蔵のPC1シリーズは24型で290ドル、32型で400ドル程度の見込み。

アジア地域には多くの弱電界地域が存在32PC1ASEANの販売戦略
Power TVなど新シリーズをシンガポールで発表PC1シリーズで、電源を抜いてもバッテリ駆動でテレビを動かし続けるデモも実施シンガポールでの発表会の模様

CELL REGZAのコンセプトを継承した「55ZL800」

 こうした低価格機だけではなく高付加価値モデルも発表。CELL REGZAのコンセプトを受け継いだ「55ZL800」も欧米に先駆けて発売する。これは、新開発のCEVO ENGINE(シーボ・エンジン)と呼ばれる映像処理回路や、CELL REGZAに搭載したメガLEDパネルなどを搭載した3D対応モデルで、「欧米に先駆けてアジアに投入する(東芝 ビジュアルプロダクツ社 大角正明社長)」という。「価格は3,000ドルぐらいをベースに考えている」とのこと。

 また、ヤコブ・イェンセンとのコラボレーションモデル「WL700シリーズ」も55型と46型の2モデルで発売する。


55ZL80055ZL800はCEVOエンジンを搭載する55WL700


■ 現地化を加速し、ASEANシェア拡大。Google TVは検討中

 東芝 執行役上席常務 ビジュアルプロダクツ社 社長の大角正明氏は、新興国、ASEAN地域における液晶テレビ販売の伸びについて説明するとともに、ASEAN市場においても、画像処理技術やソフトウェア技術、半導体技術などを生かした製品を投入することを説明。

ASEAN地域の需要推移

 ASEAN強化の一環として2010年4月にシンガポールにアジアヘッドクォーターを設立したほか、市場ニーズに合わせたラインナップ展開、高付加価値モデルの投入などを行なうと説明。新興国向けのラインナップも、2010年の5シリーズ/10モデルから、2011年には10シリーズ17モデルに拡大。特に24/32型を強化していくとした。

 市場特性にあわせて開発した商品としてPower TVシリーズを紹介。アジア市場では今後ブラウン管テレビの買い替えが進むため、このユーザー層のニーズを満たす商品投入を重視したという。それとともに、アジア各国では多くの弱電界地域が存在し、また、インドでは毎日停電がある比率も高いなど、電力供給が不安定な地域もあるため、バッテリ内蔵モデルを用意した。

 大角氏は、「圧倒的な技術力をもって、高付加価値、地域密着型の商品をASEAN市場に積極的に投入する」と説明。2010年のASEAN主要地域におけるシェアは、インドネシアが14%、ベトナム11%、マレーシア17%、タイが6%で、「地域全体で10%強」とのことだが、Power TVを始めとする新製品の投入で「2011年度にASEAN地域で120万台、シェア20%を目指す」とした。2011年の目標販売台数120万台のうち、6割がPower TVシリーズと想定している。

 ASEAN地域では、関税を含む様々な障壁があるとしており、「地産地消」を基本に展開。事業強化にあたり、アジアの基幹工場であるジャカルタ工場を、現在の6ラインから8ラインに拡充。さらに、パネルモジュールとテレビの一体生産のために、パネルモジュールの後工程をジャカルタ工場に取り込むなど、現地化を徹底する。

 

シンガポールでの発表会の模様
 流通網については、「欧米と違いメーカー主導流通になる。都市部では地域のパワーリテーラーがいるが、欧米とは違った地域密着型でやっていく。ただし、欧米のリテーラーも進出してきているので、そこに対してはグローバルな関係でやっていきたい」とした。

 地域別の販売構成比については、「2010年の新興国の台数構成比が上期が10%、下期が15%ぐらい。これを2011年は20%に、2013年には50%にあげていく」と説明。国内に関していうと、2010年は「どうしようもないブームが来ている。2010年度は40~45%になる見込みだが、2011年度には3割を切ることになるだろう。国内市場のウェイトは間違いなくダウンする。日本の落ち込みをどうASEANや新興国でカバーするか、ということになる」とした。

 また、「東芝とエジプト企業による合弁会社を設立し、中東、アフリカ向けの液晶テレビを現地生産する」との報道についても、大角氏は、「エジプトで合弁をやる交渉はしています。詳しいことは相手もいるので言えないが、2011年3~4月ごろの生産開始を目標に進めているという」とした。

 なお、一部報道で伝えられた「Google TV」の採用については「検討中」とのことで、「やるとしたら米国からになると思う」と語った。


(2010年 11月 29日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]