クリプトン、ペア約38万円の2ウェイ「KX-3PII」

-「3P」を大幅強化。KX-5と同じウーファ/サイズ


左が新モデルの「KX-3PII」。右は上位モデル「KX-5」

 クリプトンは、2007年に登場した2ウェイブックシェルフスピーカー「KX-3P」を大幅に強化した後継モデル「KX-3PII」を7月下旬に発売する。価格はペアで378,000円。仕上げはピアノフィニッシュとなっている。

 同社は2005年に、スピーカー事業参入第1弾モデルとして、「KX-3」(ペア252,000円/バーズアイメープル仕上げ)をリリース。その後、同スピーカーをベースに、2006年に木目のモアビ仕上げ「KX-3M」(ペア252,000円)を発売。2007年にはピアノフィニッシュの「KX-3P」(ペア346,500円)をリリース。その後、2010年10月に「KX-3」の上位モデルにあたる、「KX-5」(ペア472,500円)を発売している。

 今回の「KX-3PII」は、「KX-3P」よりも31,500円高価で、型番としても「KX-3P」をブラッシュアップしたモデルだが、2基のユニットはいずれも新規採用で、ウーファは「KX-5」のものを使用。ツイータも「KX-3P」のユニットに改良を加えた最新型。さらに、エンクロージャも大型化し、内容積を約20%拡大。「KX-5」のエンクロージャと同サイズになるなど、大幅な強化となっており、実質的にはKX-5とKX-3Pの中間に位置するモデルと言える。なお、KX-3Pは併売されず、KX-3PIIに切り替わる。

KX-3PIIKX-3PIIと、クリプトンのスタンド「SD-5」を組み合わせたところ

 ウーファはKX-5に搭載しているものと同じで、同社スピーカーでは定番となるクルトミューラーコーン紙を使ったもの。エッジ部分にブチルゴムを使うことで低域再生能力を高め、低域共振周波数(fo)を35Hzとした170mmウーファを採用。ボイスコイルは「MEXCELエッジワイズワイヤー」のロングトラベルボイスコイルを採用。線積率を上げ、低域のリニアリティを改善したという。

 25mm径のツイータは、KX-3Pのピュアシルクソフトドームを踏襲しながら、内部に改良を加えたものを新たに開発。磁気抵抗を極小にしたアルニコ・マグネットを使用した壷型内磁方式で、KX-3PIIでは、独自の工夫で空隙磁束分布を均一化。振動系も改善することで、高域を35kHz(KX-3Pは30kHz)まで再生できるようにし、リニアリティや歪も改善したという。なお、磁束の漏れを抑えているため、防磁型のスピーカーとなっている。

クルトミューラーコーン紙を使ったウーファは170mm径ツイータはピュアシルクソフトドームで25mm径KX-5(右)と同じエンクロージャサイズになった事がわかる
ツイータユニットアルニコ・マグネットを使用した壷型内磁方式を採用している

 また、高域再生能力の高さや、解像感の高い再生ができることから、同社が展開している高音質音楽配信「HQM」サービスの楽曲も堪能できる「HQM対応設計」とされている。

 低音の再生能力を強化するため、エンクロージャは内容積を20%サイズアップ。密閉型で、素材は針葉樹系高密度(比重0.75)の18mm厚パーチクルボードを採用。オール天然材つき板、ピアノ塗装で6面を仕上げている。

KX-3P(左)と比べたところ。エンクロージャが一回り大きくなったKX-3PIIの周波数、音圧、歪、インピーダンス特性KX-3PとKX-3PIIのツイータを比較したグラフ。高域が伸びているのがわかる

 内部の吸音材は、純毛(ウール100%)の低密度フェルトと、クリプトン独自の吸音材「ミスティックホワイト(ダイニーマ)」をハイブリッドで使用。ウーファの低域特性の良さと合わせ、「トランジェントの良い豊かで伸びやかな低音再生を実現した」という。

ターミナルはバイワイヤリング対応

 ネットワークも改良。歪を極小まで抑えるため、抵抗値の低い直径1.2mmの空芯コイルや、ケース入りのピッチ材で振動を抑えた低損失メタライズドフィルムコンデンサーなどを採用。インピーダンスマッチング型で、内部配線材にはインアクースティック(旧モニター社)のOFC線を採用。素子間の結線はハンダフリーのかしめ方式としている。

 スピーカーターミナルはバイワイヤリング対応。定格入力は50W。最大入力は150W。出力音圧レベルは87dB/W・m。インピーダンスは6Ω。クロスオーバー周波数は3,500Hzで、再生周波数帯域は40Hz~35kHz。外形寸法は224×319×380mm(幅×奥行き×高さ)。重量は10.8kg。




■音を聴いてみる

 発表会は同社試聴室「KRIPTON LABO」で行なわれたが、そこで試聴した感想もお届けしたい。

 女性ヴォーカル(ノラ・ジョーンズ)では、中高域のクリアさ、ブックシェルフならではの定位の良さ、低域の精密さなど、「KX-3P」の良さを引き継ぎながら、エンクロージャがサイズアップし、ウーファがグレードアップした事で、音場が拡大。中低域に厚みが出た事で、音像がより立体的になったと感じる。

KX-3PIIとKX-3Pを比較試聴

 JAZZのアコースティックベースを聴くと、低域の沈み込みがKX-3Pと比べ、数段深くなり、ズシンと芯のある低い音が腹や肺に響くような豊かな量感で押し寄せて迫力が増す。低音の中の弦の描写や、響きの表情も細かく、かつしなやかで、バスレフスピーカーの低域とは一味違う精密で品位も豊かな低域が楽しめる。

 クラシックのオーケストラでKX-3Pと比較してみると、こうした違いがより明確化。同時に、展開する音場が横方向だけでなく、上下方向にも拡大した事がわかる。また、低域の沈み込みと同時に、弦楽器の高域の伸びやかさもアップしており、レンジの拡大を実感できた。

発を担当した技術開発室の渡邊勝室長

 KX-3Pからのクオリティの向上幅は大きく、中低域の描写では上位モデルの「KX-5」に迫るものがあり、個人的には「KX-4(?)」と名付けても良い製品と感じたが、あえて「KX-3PII」とした理由について、開発を担当した技術開発室の渡邊勝室長は「クリプトンのスピーカーの中核となる、エースモデルとして好評を頂いたKX-3Pという型番を残したいというこだわりがあった。KX-5の技術を多く取り入れつつ、コストパフォーマンスに優れたモデルに仕上がっている」という。



(2011年 6月 8日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]