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クリプトン、エーススピーカー第6世代「KX-3SX」。内部や仕上げも進化

KX-3SX

クリプトンは、ピュアオーディオ向けの密閉型スピーカー新モデル「KX-3SX」を10月上旬に発売する。価格はペアで398,000円(税抜)。同社スピーカーのエースモデルであるKX3シリーズの、第6世代目となり、「熟練したコアテクノロジーに加え、最新の素材とニューテクノロジーを融合させて感動のスピーカーシステムに仕上げた」という。

2ウェイのブックシェルフで、“熟練したコアテクノロジー”にあたるのが「オールアルニコマグネット磁気回路」、「密閉型エンクロージャー」、「クルトミュラーコーン・ウーファー(口径170mm)」の3つ。

KX-3SX。スタンドは別売

1つ目は、170mm径ウーファーと35mm径ツイーター両方の磁気回路に、オールアルニコマグネット磁気回路を採用している事。昨今の国際情勢も影響し、アルミやニッケル、コバルトなどの材料が値上がりしており、その結果、フェライトコアと比べて、かつては20倍のコストと言われていたアルニコマグネットは、現在では30倍を超えてしまうという。

そんな高価で貴重なアルニコマグネットだが、ユニットに使うと密度感の高い深みある音になる。そのため、コストが上がっても、こだわりを持って採用しているという。

2つ目は、無駄のない小型サイズとこだわりの理論に基づいた密閉型エンクロージャー。今回のKX-3SXでは、高級家具にも使われ、音響的に優れているという木目が美しい新開発「ワンダーローズ突き板」のエンクロージャーを採用。その表面には、高級塗料のポリエステル仕上げ(ピアノ塗料と同じ)を施している。内部の吸音材は「ミスティックホワイト」と「ウール(純毛)」のハイブリッド構成。

クリプトンのサウンド・プロデューサー・渡邉勝氏

クリプトンのサウンド・プロデューサー・渡邉勝氏によれば、ワンダーローズの突き板は、従来の単板の2倍の厚みをもたせており、豊かな中低域の響きが得られるという。さらに、一般的なスピーカーでは、背面に突板は貼られていないが、KX-3SXは背面も含めた6面全てを木目の突き板にしている。

スピーカーのエンクロージャーは、組み上げると背後に出っ張りができるものだが、KX-3SXでは突き板仕上げとするため、ここにも時間をかけて加工を施した。音に良い影響がある事に加え、見た目も美しくなる。「設置時などに、手にとって見ていただいた時に、商品の作りの良さに感動していただきたい」(渡邉氏)という。

KX-3SXの背面。まるで1本の木をくりぬいてスピーカーを作ったようにも見える
一般的なスピーカーの背面には、このように凹凸もある

また、仕上げに高級塗料のポリエステルを3回塗り重ねている。一般的なスピーカーではポリウレタンが使われる事が多いが、ポリエステルは硬度が高く、傷もつきにくいという利点がある。一方で、塗装時には液垂れしやすく、時間をかけた自然乾燥が必要なため、短時間に何台も仕上げる事が難しいが、こだわりをもってポリエステル塗装が採用された。

3つ目は、ウーファーの振動板に、音質の良さと音楽性に定評のある伝統のクルトミュラーコーンを使っている事。サイズは170mm径。他の素材と違い、接着剤を使わず、水の中で撹拌させ、“紙すき”のような手法でコーン型にしているほか、振動板として最適になるよう長さの異なる繊維の配分にもこだわって作られたユニットであり、「とにかく音がナチュラルであること」(渡邉氏)が魅力だという。

このコーンと、OFCエッジワイズ4層巻ロングトラベルボイスコイルとハイコンプライアンス設計を組み合わせる事で、低域再生限界周波数(f0)は35Hzを達成。170mm径というサイズは、振動板の剛性を考慮したものでもあるが、それに加え、クロスオーバーを入れずに、人の声の帯域をこのユニット1つでカバーできる事にも、こだわっている。

ツイーターの振動板は、50kHz以上の超高域再生も可能な砲弾型イコライザー付きのリングダイヤフラムを採用。システム全体での再生帯域は40Hz~50kHzで、定格入力50W、最大入力150W。出力音圧レベルは87dB/Wm。インピーダンスは6Ω。

エンクロージャー内部の配線も進化。ウーファー用、ツイーター用の各内部配線材に、単品売りもしている高級スピーカーケーブル2種類を新たに採用した。

ウーファー用は、ポリエチレン芯にPC-Triple C φ0.33×7本6束をロープ撚りにし、絹の介在を使用した構造で、ツイーター用にはマグネシウム芯線の外周にPC-Triple Cを6本撚りにした構造を採用。「スピーカーユニットの特長に合わせて多くの試聴を繰り返し、音作り・チューニングを徹底的に施し完成させた」という。

スピーカーターミナルは、ウーファーの逆起電力を抑え、バイアンプ方式にも対応できるバイワイヤリング接続端子を装備。サランネットは、透過度の高いものを使い、音抜けの良い、明瞭な再生を実現したという。外形寸法は224×319×380mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は10.8kg。

大きく進化した、旨味のあるサウンド

KX-3シリーズとして6世代目となり、クリプトンの代名詞とも言える3つのコアテクノロジーも採用しているため、パッと見では「マイナーチェンジかな?」と思ってしまうが、音を聴いてみると、驚くほどの進化があった。

まず、シングルワイヤー接続で聴いてみたが、ブックシェルフらしい広大な音場に、スッと立ち上がるヴォーカルや楽器の細かな音の情報量が大幅に増加。ストリングスの響きなど、細かな音が重なった部分も、明瞭に聴き取れる。これはおそらく、内部配線の進化が効果を発揮しているのだろう。

そして何より驚くのが、音の深みと響きの豊かさだ。女性の声の生々しさ、ナチュラルさは「さすがクルトミュラーコーン×アルニコマグネット」という感想だが、その声の響きが空間に広がっていく様子や、オーケストラの弦楽器の響きなどが非常に美しく、胸に響く。これは、従来の2倍の厚さになったというワンダーローズの突き板によるものだろう。

凄いのは、かといって“あえて箱鳴りをさせて、響きを加えたボワボワした音”ではない事。前述の通り、情報量やSN比の良さ、音のクリアさはむしろ前モデルより進化しており、その上で、音の余韻の深さ、味わいの部分だけが“濃く”なっている。

なお、バイワイヤリング接続すると、SN比の良さや空間の広さがさらにアップすると共に、高域・低域どちらも、よりのびのびとしたサウンドになり、レンジも拡大したように感じる。

スピーカーとしての再生能力をアップさせると共に、聴いた時に感じる“旨味”も深くなる。その双方が進化した、安定感と革新性を兼ね備えた“6世代目”という印象だ。