ソニー、積層型の次世代CMOSセンサーを開発
-HDRムービー機能にも対応
従来の裏面照射型CMOS(左)と積層型CMOS(右) |
ソニーは、“積層型”の次世代裏面照射型CMOSイメージセンサーを開発。デジタルカメラやスマートフォン向けに3月よりサンプル出荷する。
新イメージセンサーの特徴は、従来の裏面照射型CMOSで必要となっていた支持基板の代わりに、信号処理回路が形成されたチップを用い、その上に裏面照射型画素を形成した画素部分を重ね合わせる積層構造となったこと。これにより、高画質化、高機能化、小型化が可能になるという。
従来のCMOSセンサーでは、同一チップ上に画素部分とアナログロジック回路を搭載するため、回路規模とチップサイズ、画素部分と回路部分の配置によるノイズ対策、画素特性と回路トランジスタ特性の最適化などの数々の制約があった。そこで、信号処理回路が形成されたチップを用い、その上に裏面照射型画素が形成された画素部分を重ね合わせるという積層構造を開発、これにより小さなチップサイズで大規模回路の搭載が可能になるという。
また、画素部分と回路部分をそれぞれ独立したチップとして形成するため、画素部分は高画質化に特化し、回路部分は高機能化に特化した製造プロセスを採用できるため、高画質化、高機能化、小型化を同時に実現できる。また、回路チップに先端プロセスを採用できるため、信号処理の高速化や低消費電力化も可能という。
■ 積層CMOS 3製品を出荷。HDRムービーにも対応
RGBWコーディングのサンプル画像。低照度時(10ルクス)撮影時 |
同技術を使った新CMOSセンサー3モデルも3月以降順次サンプル出荷。1/4型800万画素でカメラ信号処理機能搭載したCMOSは3月にサンプル出荷を開始、6月には1/3.06型1,300万画素でRGBWコーディング/HDRムービー対応CMOSを、8月には1/4型800万画素でRGBWコーディング/HDRムービー対応CMOSをサンプル出荷する。
いずれも積層構造のCMOSイメージセンサーで、6月以降に出荷する2製品では「RGBWコーディング」と、「HDRムービー」に対応する。
RGBWコーディングは、RGB画素にW(白)画素を加えることで、高感度化を実現し、室内や夜景などの暗いシーンでもノイズの少ない撮影を可能にするもの。W画素を追加すると感度を上げられる代わりに、画質が低下するという課題があったが、独自のデバイス技術と信号処理技術の開発により、画質を損ねることなく高画質化を実現できたとする。開発品では1.12μm単位画素で従来品(1.4μm)と同等のSN比を実現し、イメージセンサーの高解像度化、小型化が可能になるという。また、撮影した信号を従来のRGBに変換して出力する機能も搭載しているため、既に機器側で採用している信号処理を変更することなく、使用できるという。
HDRムービー機能は、撮影時に一画面内で2種類の露出状態を設定し、それぞれの露出条件で得た画像情報に対し、適切な信号処理を施すことで、ダイナミックレンジの広い画像を生成し、逆光環境などでも背景と被写体を色鮮やかに動画撮影できるという。
(2012年 1月 23日)
[AV Watch編集部 臼田勤哉]