デジコン委員会でスマートTVやクラウドについて報告

-不法B-CASには「現地で法的対応の準備」


 総務省 情報通信審議会「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会 第63回」が5日に開催され、ダビング10に対するユーザー調査の結果や、インターネット上での放送コンテンツの不正流通防止の取り組み、iTunes Matchなどのクラウドサービスへの対応、スマートTVなどについて各委員らが報告を行なった。

 なお、7月開始予定の地上デジタル放送用新権利保護システムについてのアップデートはなかったが、「B-CASカード」の暗号を不正に解読したカードが出回っている問題については、委員会事務局がコメント。「海賊版B-CASで直接被害を受けるのは、有料放送チャンネルのWOWOWやスカパー、スター・チャンネルなど。彼らが技術的な解析を行なっているほか、現地での法的対応の準備を進めている」とした。


■ ダビング10関連アンケートやスマートTVについて報告

 地デジのコピー制御方式に関するユーザー調査については、事務局から報告。本調査のサンプル数は3,169で、モニターは人口構成比に基づき選定し、インターネット調査を実施。コピーワンスの認知度は49.6%で、ダビング10は56.7%と、約半数が存在を認識。最も利用されている録画機はBlu-rayレコーダとなった。

 「HDD録画後に記録メディアにコピーした経験」は「ある」が46.7%、「ない」が41%。HDD録画は90%近くの人が行なっており、「録画はHDD」が大半を占めている。録画機器がダビング10対応であるかどうかを「意識したことがない」と答えた人は約8割となった。

 また、視聴したいテレビ番組が録画できなかった場合は、「レンタルビデオ」や「動画投稿サイト」で探す人が3割を超えているが、ビデオ・オン・デマンドはほとんど活用されていない。そのため、「今後、コンテンツやサービスの充実などにより、更なるユーザー確保の余地があると思われる」としている。

 ネット上の放送コンテツの不正流通防止については、「不正流通対策連絡会」の取り組みを紹介。CODA(コンテンツ海外流通促進機構)による削除申請により、中国の動画投稿サイトでもほぼ100%不法動画が削除されるようになったことや、テレビ朝日における不法動画削除の取り組みなどを説明した。

 CPRAの椎名和夫運営委員は、クラウド型のコンテンツ配信サービスについて説明。購入したコンテンツを様々なデバイスでネットワーク経由で自由に聞ける(A類型/Amazon Cloud Drive)、定額課金で様々なデバイスでネットワーク経由で自由に聞ける(B類型/Spotify、LISMO Unlimitedなど)のほか、購入したコンテンツを様々なデバイスで聞けるだけでなく、CDなどの購入楽曲をアップロードもしくは照合して所有コンテンツとして扱うサービス(C累計/Google Music Beta、iTunes Match)などに分別。

 このうち、C類型のサービスについては、「コンテンツの利用主体や私的使用のための複製との関係などの議論がある」と述べ、特にアップロード/照合時にそのファイルが合法か違法かを識別できない点を問題視。「iTunes Matchでは、例えば違法に入手したファイルを照合した際に、Appleの正規ファイルと取り替えてくれる。違法品が正規品に変わる、僕らは『ミュージックロンダリング』と読んでいる」と語った。

 また、音楽ソフト市場が縮小する一方でネットワーク配信が伸びていないことについても懸念を表明。「プラットフォームの力が強くなり、コンテンツを集客の餌として使うというとなれば、権利者への対価還元は危なくなる。彼ら次第で価格が決まるのは大変なこと。しかもそれらの会社は日の丸ではなく、利益が外国に出て行ってしまう」と述べ、ICTを活用した権利処理や権利の集中管理による円滑化とともに、「日本版プラットフォーム創設の可能性も探るべき。きちんと日本のステークホルダーが儲かる仕組みを作らないといけないのではないか」と提案した。

 スマートテレビについては、フジテレビの関委員がNHKのハイブリッドキャストやHTML 5ブラウザへの取り組みを紹介した。テレビ向けのHTML 5の国際標準化は、W3C(World Wide Web Consortium)で標準化が進行中で、2013年中に標準化原案を決定。2014年中の勧告化を目指す。

 国内においてはIPTVフォーラムにおいて、HTML5ブラウザの技術仕様を策定し、W3Cに提案予定。放送連携WGやIP再送信WG、プラットフォーム連携WG、HTML5WGなどが技術検討を行なっており、HTML5 WGについては、HTML5ベースの技術仕様Ver.1.0「放送通信連携システム技術仕様書」を5月を目処に公開予定としている。


(2012年 4月 5日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]