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HTML 5対応STBや4K映像伝送など、最新CATV展示の「ケーブル技術ショー」開幕

 ケーブルテレビ(CATV)関連の新製品や技術、サービスなどを紹介する「ケーブル技術ショー」が東京国際フォーラムにて7月30日から31日まで開催されている。入場は無料(登録制)。

 会場には、STBメーカーや、映像制作、インフラ関連の企業が出展。地デジやCATVなどの放送に加え、DLNAなどネットワーク機能を活用した“ハイブリッドSTB”が各社から出展。スマートフォンやタブレットを活かしたサービスなども多く展示されている。また、将来の4K放送を見据えた技術展示なども行なわれていた。

 なお、ケーブル技術ショーは「ケーブルコンベンション」内のイベントだが、2012年はケーブルコンベンションのセミナーや展示は別会場で行なわれていた。2013年は会場が国際フォーラムに統合された。ケーブル技術ショーは地下の展示ホール、ケーブルコンベンションの展示やセミナーは、5階ホールB5ロビーで行なわれている。

パイオニア/HUMAXが次世代STBを開発

右がパイオニア「BD-V302J」、左がHUMAX「WA-7000」

 パイオニアとHUMAXは、HTML 5のWebアプリやAndroidアプリが動作する「JLabs-SPEC-023(次世代STB技術仕様)」認定済みの“ハイブリッドSTB”(次世代STB)を開発した。

 パイオニアの「BD-V302J」は、既にJ:COMが加入者に向けて提供開始。夏〜秋に行なうファームアップデートにより、HTML 5アプリやスマホ連携など、ハイブリッドSTBの機能が利用可能になる。

 トリプルチューナを内蔵し、1つの番組を観ながら別の2番組をUSB HDDまたはNAS(LAN HDD)、BDレコーダへの録画も行なえる。なお、録画先として使える機器は、「JLabs-SPEC-020(ケーブルDLNA運用仕様)」認定済みであることが必要。次世代STBは、スマホ/タブレットでの視聴用にトランスコーダを搭載することも特徴で、スマホなど1つの機器に、無線LAN経由で録画番組のストリーミング再生または放送転送ができる。

 なお、既にKDDIがJCN向けに提供しているハイブリッドSTB「Smart TV Box」とは異なり、OSはLinuxベース。現在HTML 5ブラウザは動作するが、Androidアプリには、今後のアップデートなどで対応する見込み。

BD-V302J
ハイブリッドSTBの概要
HDD内蔵のSTBも参考出展。製品化の時期は未定

 HUMAXの「WA-7000」も同じくトリプルチューナ内蔵で、1番組の視聴とUSB HDDへの2番組同時録画が可能。さらに、2つのスマホ/タブレットへの同時転送も行なえることを特徴としている。既にJ:COMへ納入しており今後J:COMから加入者へ提供される予定。

WA-7000
主な仕様
HUMAXもHDD内蔵STBを参考出展していた

 今回の展示会場では、パイオニアとHUMAXに加え、KDDIの「Smart TV Box」も展示。DLNA連携でスマホ/タブレットから録画番組/放送番組を視聴できる「ケーブルDLNA」や、年齢制限のあるコンテンツの視聴ロック機能などを紹介していた。

 さらに、KDDIは「Smart TV Box」を使った最近の取り組みとして、ゲームアプリをダウンロードせずに、サーバー経由でリアルタイムに楽しめるクラウド型のゲームサービスをデモ。操作はUSB接続したコントローラで行ない、遅延なくゲームを楽しめるという。サービスの提供開始は秋を予定している。

Smart TV Boxでクラウド型ゲームをプレイしているところ
タブレットもSmart TV Boxのリモコンとして利用可能
このほかにも、みるプラスなどのアプリを秋に提供予定

パナソニックのBD/HDD内蔵STB、動画のキュレーションなど

パナソニックが次期に提供予定のSTB

 パナソニックは、次期提供予定のBD/HDD内蔵STBを展示していたほか、将来のCATV向けサービスなどの新しい提案を行なっている。

 11月より提供予定の新しいSTBは、内蔵HDDを従来の500GBから1TBに拡張。チューナは従来の2基から3基に増強し、3番組同時録画にも対応。さらに、無線LAN経由でDLNA/DTCP-IP対応スマホなどに2番組同時配信できる。映像出力端子はアナログを省略し、HDMI 1系統のみとする。なお、前述の「JLabs-SPEC-023(次世代STB技術仕様)」はサポートしていない。

 既報の通り、9月より提供予定のCATV用モデム「TZ-CMP01M」も展示。STBと大きく異なるのは、映像出力を装備せず、スマホやタブレットなど、ネットワーク経由での視聴のみとなる点。CATV用の地上/BSデジタル放送、CATV放送用チューナを内蔵するほか、無線LANルータとしても利用できる。既存STBの台数出荷が伸び悩む状況のなか、これまでCATVを視聴していなかった若い世代などに対しても訴求していく製品と位置付けられている。

CATV用モデム「TZ-CMP01M」
スマホ視聴アプリはDiXiM製。パナソニックが求めた仕様により、メニュー階層が深くなり過ぎず、分かりやすさを重視している
背面にUSB端子を備え、将来のアップデートでUSB HDD録画も対応予定
「キュレーション番組」の紹介コーナー

 CATVで視聴するコンテンツについても様々な提案を行なっている。コミュニティチャンネルなどで生じる5分、7分といった短い“空き時間”をカバーすることを目的に開発しているのが、ネット動画を活用した“キュレーション番組”。

 これは、YouTubeなどネット上の動画を“キュレーター”がピックアップして、PC向けにコンテンツとして提供しているサービス「ShortForm」とパナソニックが共同で取り組み始めたもの。ShortFormが選んだ動画を実際の番組のように扱い、前述の空き時間に様々なコンテンツを表示させるという。「動物」や「スポーツ」など9ジャンルの動画を放送することで、利用者それぞれが関心のあるジャンルをまとめて視聴/録画できることを特徴とする。実際の運用には動画の権利関係をクリアする必要があるが、今回の展示の反響などを考慮して、各CATV事業者などに対して採用を呼び掛けていくという。

 このキュレーション番組などで視聴者の好みを把握し、「行動ターゲティング広告」も検討。視聴者の好みに合ったCMなどを表示することで広告の効果を高めるほか、視聴者にとってはCMを観るとVODコンテンツなど有料コンテンツが割引になるといったインセンティブを提供するといったことを想定している。

音声認識を使ったUIの展示。写真のキャラクター“ユイ”がアシスタント

 「音声認識による新UI」という展示も行なっている。これは、スマホなどを使った音声操作に、ガイドキャラクターを採用したもの。テレビの選局や観たいVOD番組の検索のほか、簡単な日常会話や質問にも答えてくれるため、親しみをもって使えるという。

 デモで案内役として使われていたのは、BONDの「Smartvatar Creator」で制作された“ユイ”というキャラクター。STBと無線LAN接続したタブレットのマイクに「映画」などのキーワードを話すと、該当する番組を検索。手元のタブレットで番組を選んで視聴できる。

タブレットのマイクに向けて話しかけて番組検索
年齢は“秘密”とのこと。「(iPhoneなどの音声アシスタントの)Siriについてどう思う?」という質問には、「足元にも及びませんわ」と謙遜していた
パナソニックブース内に、ケーブルアクトビラのコーナーも。現在、CATV 10局で採用が決まっており、8月にはスマホ対応を予定。スマホをリモコンとして使えるほか、VOD視聴も可能
“プロモチャンネル”のように放送局を最大36局表示して、選局できる「ザッピングポータル」という画面。採用に向けてCATV事業者に提案する
既に始まっている、ネットスーパーとの連携事例。決済は月々のCATV料金とまとめて支払う
緊急避難情報のプッシュ型配信サービスも提案

CATV向け4K放送への取り組みも

KDDIの4K HEVCエンコードのデモ

 総務省のロードマップでは、CATVの4K/8K放送について「2014年に、今後の技術策定や衛星試験放送の動向を見ながら同時期の開始へ準備」と示されている。この動きに合わせた取り組みも既に始まっている。

 KDDIとJ:COMは、既報の通り、4K/8K/HD映像をCATVで同時伝送する実験を2月に行なうなど、CATVを使った高画質映像を推進している。今回のデモでは、HEVC(High Efficiency Video Coding)エンコーダの圧縮効率を高め、4K/60p映像を15Mbpsまでに抑えた(従来は15〜20Mbps)ことを紹介。4K/30pの場合は10Mbpsまでに抑えられるという。KDDIは「映像のビット配分のバランスを最適化することで圧縮率を向上した。同等の主観品質で、15%程度のデータ量削減が可能」としている。このエンコーダを利用することで、既存のCATV 1チャンネル分の帯域で2つの4K映像を伝送可能。KDDI研究所はこのエンコーダをソフトウェアとして今秋に製品化。他社にも提供する。

 今後はJ:COMと共同でパブリックビューイングも予定している。将来的には、17日にKDDIが開始した映画館での音楽ライブ生中継「Live'Spot」のような活用も見込んでいるという。

圧縮効率を高めた新エンコーダを開発した
8K/4K/フルHDの同時伝送についても説明。会場でプロジェクタを使った投写デモも行なっていた

 NHKは、映像に95MbpsのMPEG-4 AVC/H.264を使用し、64QAMと256QAMの異なる変調方式の搬送波を組み合わせる「複搬送波伝送方式」で伝送するデモを行なっている。NHKは2月に既存CATV網を使った伝送実験を行なっており、今回の会場でも実際にヘッドエンドや分割/多重化装置、デコーダを用意して8K映像を伝送し、85型液晶で表示するデモを行なっていた。NHKは「CATVで地上波やBSを視聴する世帯も多いため、CATVでSHVを視聴する仕組みについても(地上波などのSHVと)並行して進めていく」としている。

NHKの8K/SHV伝送デモ
伝送に使っていた機材
8K対応の受信機(STB)

 放送局のメタデータ/番組情報の業務運用や、デジタルコンテンツの開発などを行なうプラットイーズは、4K8K映像の制作/編集/配信、メタデータ作成などを行なう子会社「えんがわ」を7月に徳島県神山町に設立。最初の4Kコンテンツとして「阿波踊り」の模様を自社で撮影/編集し、ケーブルテレビ徳島との協力で配信実験を行なう。

プラットイーズと、えんがわの業務
徳島県神山町は豊かな自然に囲まれた地ながら、光ファイバー網も整備されており、ITベンチャー企業らがオフィスを構えていることでも知られる
プラットイーズは、パナソニックの4Kタブレットを使った業務システムのデモも行なっていた
業務用次世代光ディスクをパナソニックと共同開発すると29日に発表したソニーは、デジタルアーカイブ用製品として、12枚のBDを1つのカートリッジとして扱えるユニット「ODS-D55U」を展示していた
スターコミュニケーションズは、小型バックパック型の無線映像伝送システム「TVUPack TM8200」を展示。HD/SD-SDIなどの入力を備えており、ビデオカメラと接続してLTEや3G、WiMAXなどの回線で局などに映像を伝送できる
防災メーカーのホーチキは、CATV STBの同軸端子に接続して使える、「見守り告知受信機」を参考出展。一人暮らしの高齢者用が「元気」ボタンを押すことで、離れた家族などに安全を知らせる

(中林暁)