DLNA/タブレット連携など、CATV STBの通信活用が進む
-「CATV技術ショー」。超小型のAndroid 4.0 STBも
東京ドームシティで開催中の「ケーブル技術ショー」 |
ケーブルテレビ(CATV)関連の新製品や技術、サービスなどを紹介する「ケーブル技術ショー」が東京ドームシティのプリズムホールにて7月18日から19日まで開催されている。入場は無料(登録制)。
会場にはSTBメーカーや、映像制作、インフラ関連の企業が出展。スマートフォンやタブレットの普及などを背景に、CATV STBの機能と通信サービスを連携させた技術が多く展示されている。
■ 各社がDLNAやスマホ/タブレット連携STB。超小型のAndroid STBも
パイオニアの次世代STB |
パイオニアは、日本ケーブルラボ(JLabs)が策定している次世代STB技術仕様「JLabs-SPEC-023」に準拠予定の次世代STBを参考展示。Androidアプリが利用可能になるほか、欧州のOpen IPTV Forumのテレビ向け規格「DAE」にも対応予定。Android端末とCATV STBそれぞれの利便性を兼ね備えた製品の実現を目指し、年内の提供開始を予定している。
ケーブルDLNA運用仕様の「JLabs-SPEC-020」にも準拠予定。本体にHDDは内蔵しないが、デジタルダブルチューナを搭載し、DLNA経由でBlu-ray DiscレコーダなどのHDDに録画可能なほか、DLNAサーバー対応レコーダの録画番組を再生することも可能。USB HDDへの録画も行なえる。本体にMPEG-4 AVC/H.264トランスコーダを内蔵したことで、AVC長時間録画にも対応。放送番組をリアルタイムでAVCに変換することで、スマートフォン/タブレットなどへの放送転送もできるという。
通常の付属リモコンのほか、無線LAN接続したスマートフォン/タブレットアプリからの操作にも対応。本体前面のディスプレイには有機ELを採用。従来の表示内容はチャンネルや時刻が主だったが、次世代STBでは天気や災害情報、ニュースといったCATV局が持つ情報をプッシュ配信できるようにする。
次世代STBの主な特徴 | AndroidアプリをSTBで利用可能 | BDレコーダなど他のDLNA機器と連携して、ネットワーク経由の録画や再生が行なえる |
HDMIを備えた小型のOTT-STB |
また、CATV専用ではないAndroid搭載STBとして、YouTubeやニコニコ動画といったネットサービスが利用できる小型の「OTT(Over Ther Top)-STB」も参考展示。テレビとHDMI接続して、スマートフォン/タブレットアプリからの操作でAndroidアプリやネットサービスを簡単に利用できるという無線LAN搭載STB。提供時期などの詳細は未定だが、配信事業者らに対して連携を呼びかけている。将来的に、CATV STBとのDLNA連携などの実現も目指す。
住友商事グループ・SCSKのブースでは、海外で秋に発売予定しているicube製のAndroid 4.0搭載OTTドングルを紹介。上記のOTT STBと同様に無線LAN経由でYouTubeなどのネットサービスが利用できるほか、DLNAのDMS/DMR/DMPに対応。NAS(LAN HDD)やスマートフォンなどにあるコンテンツをテレビで再生したり、スマートフォンをリモコンにするといった連携が行なえる。DTCP-IPについても、対応に向けて開発を進めているという。HDMI CECに対応し、接続したテレビのリモコンからも操作できる。電源は、テレビのUSB端子から供給可能。日本国内での導入時期は未定。
icube製のAndroid 4.0搭載端末 | Androidアプリを利用して、NASの動画再生などが可能。 | 主な特徴 |
「エラベラー」のアプリ画面 |
NECのブースでは、番組検索などが行なえるCATV向けサービス「エラベラー」を紹介。このサービスは既にパナソニック製STBに導入されているが、新たにAndroidに対応したほか、iOSにも11月に対応予定。タブレットやスマートフォンを使って手元で対応STBのリモコン操作が可能で、録画予約にも対応。DLNA/DTCP-IPにも対応予定で、STBで録画した番組をタブレットなどの画面でも再生できるようになる予定。
タブレット/スマートフォン連携によるもう一つの特徴は、デジタルマガジンへの対応。これは、番組ガイド誌の電子データ版だが、PDFなどのフィックス型とは異なり、文字と画像を別々のデータとして配信。端末に最適化した表示や、ユーザーによるレイアウト変更が可能となっている。例えば画像データだけを流し見して、気になった画像に該当する記事だけを読むといった利用もできる。
NECが発売中のAndroidタブレット端末「LifeTouch」を使ったSTB連携も提案。タブレットの赤外線通信機能を使って、高齢者にもわかりやすいリモコン表示を実現するほか、地域のニュースや医療案内といったサービスとも連携。家族それぞれのリモコンとして、使う人に合わせたレイアウトも実現できるとして、事業者に対して採用をアピールしている。そのほか、LifeTouchにデジオンのDiXiMアプリをプリインストールして、DLNA/DTCP-IP対応タブレットとして提供することも予定。今後はNECパーソナルコンピュータのPCで採用されている「SmartVision」と連携した放送転送サービスへの対応も検討している。
端末に応じた画面レイアウトでデジタルマガジンを表示できる | エラベラーの概要 | 「LifeTouch」をSTBの赤外線リモコンとして利用可能 |
■ 10月開始「ラウドネス」への対応も
民放テレビ局が10月から、NHKが'13年度から導入予定の「ラウドネス」による音声レベル管理に合わせた製品も各社から登場。CATV局にとっても、放送番組のチェックツールや、独自制作番組などへの利用が想定されている。
ラウドネスとは、人が感じる音の大きさ。ITU-Rによりデジタル放送におけるラウドネスの測定方法や目標値が標準化されている。従来は、テレビ局などが自主的な基準で音量を決めていたが、一部では本編とCMとの音量差が激しくなるといった問題が起きていた。10月から順次導入される運用規定では、1つの番組内のラウドネスの平均値を一定程度(-24 LKFS)に収めることが決まっている。
NECは、SDIインターフェイスを2系統実装可能なラウドネスコントローラを出展。入力音声のラウドネス値をリアルタイムに算出して、自然な聴感を保ちながら規定値内に収められるという。映画などダイナミックレンジが広いコンテンツについては、過度なコンプレッションを掛けると魅力が損なわれるため、ダイナミックレンジコントロール機能も備え、自然な聴こえ方にできるという。
なお、前述したラウドネスの運用基準によれば、生放送の番組では平均値が取れないため調整が難しくなるが、NECのラウドネスコントローラは生放送を想定した自動調整機能も備えているという。
NECのラウドネスコントローラ | PCの設定ツール画面 | 主な特徴 |
ラウドネスレベルコントローラの「AC-3804」 |
アストロデザインは、既に放送局などへの提供が決まっているというラウドネスレベルコントローラ「AC-3804」や、オーディオモニタリング用の「AM-3805」を出展。
ラウドネスレベルコントローラの「AC-3804」は、SDIからの音声信号を変更するもので、テレビ東京と共同開発。メインコントローラとリモートボックスの2ユニット構成で、本体にカラー液晶を備え、ラウドネスレベルなどの視認性を高めている。
モニタリング用のAM-3805は、既存モデルAM-3800シリーズの機能を継承しつつ、ディスプレイ構成を従来の1画面から3画面にするなど操作性を向上。VUメーター、PEAKメーター、ラウドネスメーターなどが表示可能となっている。
モニタリング用のAM-3805は、3つの液晶を搭載 | PC用のプラグインソフトを使用することで、より細かな調整が行なえる | ラウドネス対応のオーディオモニター製品 |
■ そのほか
ソニーの業務用光学ドライブユニット「ODS-D55U」 |
ソニービジネスソリューションは、放送事業者向けの大容量ストレージとして、Blu-rayの技術を使った光学ドライブユニット「ODS-D55U」などを紹介。1つのカートリッジに12枚のディスクを格納し、1つのストレージとして認識。メディアは防塵/耐水性に優れているほか、50年という長期保存も実現。ドライブは11月ごろに発売し、価格は50~60万円前後。
モトローラは、CATV STB向けのUI画面編集/管理ツールや、アダプティブストリーミング技術などを紹介。「ドリームギャラリー ビデオ ナビゲーション ソフトウェア」は、CATV事業者向けのUI画面編集ツール。HTML 5を採用し、従来に比べて簡単に見せ方の変更などが可能になったことが特徴。UIを変更したい時に、事業者自身がWYSIWYG(ウィジウィグ)画面で編集できるため、外部に発注する場合に比べ時間を短縮できることなどが特徴。
モトローラのHTML 5採用STB向けUI画面編集ツール | PCのWYSIWYG画面で簡単に画面表示を変更できる | 様々なDRMや再生端末に応じた動画配信サービスが実現可能なアダプティブストリーミング技術も紹介 |
(2012年 7月 18日)
[AV Watch編集部 中林暁]