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パナソニック、2013年度は純利益1,204億円に黒字回復

TVは営業損失25億円。BtoBシフト/液晶パネルなどの改善進める

津賀一宏社長

 パナソニックは、2013年度(2013年4月~2014年3月)の連結業績を発表した。

 売上高は前年比5.9%増の7兆7,365億円、営業利益は89.6%増の3,051億円、税引前利益は前年度の3,983億円の赤字から黒字転換し、2,062億円、当期純利益は7,542億円の大幅赤字から、1,204億円の黒字に転換した。

河井英明代表取締役専務

 河井英明代表取締役専務は、「住宅・車載事業の伸張と、テレビ・パネルなどの赤字事業の改善が寄与したのに加え、全社をあげた固定費削減、合理化の効果により、営業利益が大幅に改善した。また、半導体事業やプラズマディスプレイパネル事業など、主要な課題事業の方向づけを完了し、事業構造改革の追加および前倒しを実行。ネット資金や株主資本比率が順調に良化し、中期経営計画の想定を上回る形で、財務体質の改善が大きく進展した」と総括。

'13年度連結決算概要
営業利益が大幅に改善

 津賀一宏社長も、「この1年間で、事業部機軸の経営にシフトするとともに、4つのカンパニーを設置。事業計画の立て方も、従来のような売り上げ成長に基づいた積み上げ型ではなく、事業部自身が自主判断で計画をつくり、それに対して本社がリスクを盛り込みながら計画するという形にした。結果としては、四半期ごとの成果をみても、順調にまわりつつあると感じている。中期経営計画実行1年目としては、想定以上の順調な滑り出しになっている」と自己評価した。

 だが、その一方で、「為替の影響を除いた現地通貨ベースの売上高は3%減になっている。為替の追い風で7兆7,000億円という数字に着地した」と、手放しで評価できないことを自ら指摘。河井専務も、「デジタルコンシューマ事業での販売減、アプライアンスでの営業利益減がある。その一方で固定費圧縮で982億円プラス効果があり、構造改革の成果が出ているが、為替でも営業利益では200億円のプラス効果が出ている」(河井専務)と説明した。

津賀社長

 津賀社長は、「2018年には、売上高10兆円を目指すが、そのなかでも為替は大きなファクターとしてみている」としながらも、「まずは現地通貨ベースでの減収に歯止めをかけ、現地通貨ベースでの反転攻勢に出る必要がある。その上で為替を捉えていきたい」とした。

 2013年度の連結業績によると、地域別売上高は、円ベースにすると、国内が前年比3%増の3兆8,979億円。海外では、米州が11%増の1兆1,346億円、欧州が11%増の7,403億円、中国が6%増の9,949億円、アジアが10%増の9,688億円。海外全体では9%増の3兆8,386億円となったが、海外は現地通貨ベースではすべての地域で前年割れとなった。すべての地域で為替がプラスに働いていることを示している結果といえるだろう。

主要商品別売上高分析
要因別の営業利益分析
セグメント別の営業利益分析

テレビ事業部の営業損失は25億円。自動車関連事業の成長に大きな期待

セグメント別実績

 セグメント別では、AVCネットワークスの売上高が前年比3%減の1兆5,734億円、営業利益は259%増の215億円。製販連結では、売上高は3%減の1兆7,805億円、営業利益は88億円と黒字転換した。

 テレビ事業部の売上高は前年比11%減の3,062億円、営業損失は25億円の赤字となった。

 レッツノートなどのPC事業を担当するITプロダクツ事業部は、前年比17%増の1,114億円となったほか、デジタルカメラを担当するDSC事業部は、売上高が25%減の695億円となった。

 「姫路工場で生産する液晶パネルのターゲットは、これまでのテレビ用途から、タブレットや高精細ノートPC、医療用や車載といった非テレビ用途へとシフトし、長期的なパートナーとの協力関係に基づくビジネスへと変化させている。これにより、限界利益額を稼ぐことができ、黒字化につなげることができる。黒字化達成後に姫路工場をどうするのかという点についてはなにも決定したものはないが、様々な検討を引き続き継続する必要があると認識している」など、今後の構造改革も視野に入れていることを示した。

 アプライアンスの売上高は前年比10%増の1兆1,966億円、営業利益は22%減の285億円。アプライアンスの製販連結では、売上高が10%増の1兆6,180億円、営業利益は18%減の482億円となった。そのうちエアコン事業部の売上高は7%増の3,822億円、冷蔵庫事業部の売上高は14%増の1,254億円、ランドリー・クリーナー事業部の売上高は11%増の1,873億円、コールドチェーン事業は4%増の886億円となった。

 エコソリューションズは、売上高が10%増の1兆8,466億円、営業利益が51%増の950億円。オートモーティブ&インダストリアルシステムズは、売上高が9%増の2兆7,376億円、営業利益は191%増の857億円。その他事業では、売上高が5%減の9,580億円、営業利益は488%増の200億円となった。

営業外損益など
事業構造改革費用
株主資本比率など
'14年度の年間業績見通し

 一方、2014年度の通期業績見通しは、売上高は前年比0.2%増の7兆7,500億円、営業利益は1.6%増の3,100億円、税引前利益は41.8%減の1,200億円、当期純利益は16.2%増の1,400億円を見込む。

 津賀社長は、「2013年度の業績がわかる前に、2014年度見通しを策定したものであり、そのため、売上高は2013年度の7兆7,000億円に対して7兆7,500億円、営業利益は3,050億円に対して、3,100億円という数字は小さく見えるだろう。だが、実際に『売り(売り上げ)』がどうなるのかはやってみないとわからない。それだけ着地が不確実であるということだ。2015年度までの中期経営計画では、まずは利益をしっかりと出し、営業利益率5%を出す体質を作ることを優先する。なにをやれば利益があがるのかというこどかわかる体質をしっかりと作る。それ以降は、それを前提にした売り上げ増加ということになる。つまり、その時点で売り上げにフォーカスした大胆なシフト、大胆な挑戦ができるようになる。そこから10兆円に向けてはしっかりと『売り(売り上げ)』を作っていく」とした。

営業利益分析('13年度/'14年度見通し)

 また、津賀社長は、「営業利益に関しては、実力上ではもう少し上を狙えると思って、社員が事業を進めているはずだ。まずは3,100億円の達成を目指し、2015年度の営業利益3,500億円という目標達成につなげたい。大きな成長戦略に向けた投資を行える体質に戻りたい」と述べた。

 2018年度に住宅事業で2兆円、自動車関連事業で2兆円という目標に対する初年度の成果についても言及。「計画を立てた時点では、住宅が1兆1,000億円、自動車関連では1兆円程度の規模だった。それぞれ2013年度には10%以上の売上高伸張ができ、2兆円に向けたハードルは確実に下がってきたのが2013年度の実績である。自動車関連では将来の受注に対して、期待以上の受注が取れている。家電産業よりも規模が大きい自動車産業のなかで、電機、電子が果たす役割は大きい。バッテリーのほか、カーナビ、オーディオといったコックピットを進化させていく商品で圧倒的な競争優位性を発揮できる。ここは確実に伸ばしていく。M&Aといった非連続の成長に取り組む」と述べた。

デジカメ/液晶パネルなどを除く半分の事業で営業利益率5%目指す

セグメント別の'14年度見通し

 2014年度のセグメント別業績見通しは、アプライアンス社の組織再編に伴う事業移管があり、今回の数値はそれをベースとしている。

 新たなセグメントで、アプライアンス社に事業移管したのは、AVCネットワークスのテレビやBD事業などのコンシューマ事業、その他部門に含まれていた三洋電機直轄のテレビ事業および海外の空調機器販売、エコソリューションズの国内コールドチェーンおよび空調機器販社だ。

 比較対照となる前年実績を新セグメントに置き換えた場合、アプイアンスの売上高見通しは前年比2%増の1兆7,890億円、営業利益は24%増の350億円。製販連結の売上高は1%減の2兆2,800億円、営業利益は31%増の520億円となる。

 「消費増税前の需要の反動で、国内家電事業が減販となるが、海外事業や、コールドチェーンなどのBtoB事業は伸長するとみている」(河井専務)とした。

 エコソリューションズの売上高は2%減の1兆6,370億円、営業利益は32%減の625億円。「国内住宅着工の減少に伴う減販、ソーラーの価格下落の影響などはあるが、リフォーム事業や海外売り上げは伸張するとみている」(河井専務)という。

アプライアンスの'13年度業績と'14年度見通し
エコソリューションズの'13年度業績と'14年度見通し

 AVCネットワークスの売上高は1%増の1兆2,310億円、営業利益は111%増の430億円。「コンシューマ事業の移管に伴う減販要素はあるが、BtoB事業の販売増に伴う利益増や、パネルなどの課題事業の改革効果などを期待している」(河井専務)。また、津賀社長も、「2018年度に2兆5,000億円の売上高を目標としているBtoBソリューションは、AVCネットワークスが牽引していくことになる」と、BtoBのシフトしたこの事業セグメントの成長に期待を寄せた。

 オートモーティブ&インダストリアルシステムズの売上高は1%増の2兆7,770億円、営業利益は25%増の1,070億円。「車載向け電池を中心に売上高が伸張するとともに、構造改革による収益改善効果、成長事業の増販益が大幅な増益につながった」(河井専務)という。

 その他部門は、売上高が22%減の7,000億円、営業利益は59%減の100億円とした。

AVCネットワークスの'13年度業績と'14年度見通し
オートモーティブ&インダストリアルシステムズの'13年度業績と'14年度見通し
セグメント別の営業利益分析
主要課題事業の見通し
要因別の営業利益分析('13年度と'14年度見通し)
営業外損益等の見通し

 なお、事業部別の情報開示に関しても、今年度からセグメントを変えており、新たな開示事業部の業績内容については、2014年度第1四半期の決算発表で明らかにするという。そのなかで特別追加情報として、今回、エアコン事業部とセミコンダクター事業部の2014年度売り上げ見通しを開示。エアコン事業部は売上高が前年比9%増の3,411億円、営業利益が137億円増の32億円と黒字化を見込むほか、セミコンダクター事業部は売上高は3%増の1,861億円、営業利益は278億円改善するものの、57億円の赤字と予想している。

 津賀社長は、「2014年度も、DSCや液晶パネルなどで赤字が残ることになる。だが、今年度中に半分の事業では営業利益率5%以上を目指す。営業利益率5%以上の事業を増やし、赤字の事業を減らしていくことで、2015年度には少なくとも赤字事業からの脱却を果たす」とする一方、「これまでのように単純に延長線上での成長計画では、目標に届くとは思っていない。またそれでは途中で失速する可能性もある。伸びしろがどこにあるのかをみて、どこに重点的に投資していくということが必要である」と述べた。

セミコンダクター事業部の'13年度実績と'14年度見通し
中期計画達成に向けた収益力の強化を目指す

(大河原 克行)