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ソニー、12万円の最上位ハイレゾウォークマン「NW-ZX2」

microSDやDSD 5.6対応。アルミ+銅シャーシ等で音質向上

 ソニーは、音質を追求した最上位ハイレゾウォークマン「NW-ZX2」を2月14日より発売する。電源やシャーシなどから徹底的に音質を改善したほか、miroSDカードスロットを装備。内蔵128GBに加え、128GBまでのmicroSDに対応し、最大ストレージ容量を256GBとした。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は12万円前後。

NW-ZX2

 2013年12月発売のNW-ZX1の上位モデルで、デジタルアンプ「S-Master HX」の搭載や192kHz/24bitハイレゾ対応、DSDのPCM変換再生などの特徴を継承しながら、新たにDSD 5.6MHzへの対応や、アルミ+銅によるハイブリッドシャーシの採用、電源強化/信号回路のブラッシュアップなどによる音質向上を図った。

 音質強化だけでなく、microSD対応や、独自のBluetoothコーデック「LDAC」対応なども特徴。また、ハイレゾ音源(192kHz/24bit)再生時のバッテリ駆動時間もZX1の16時間から、ZX2では33時間まで向上した。OSはAndroid 4.2。なお、ZX2の発売以降もNW-ZX1は併売される。

NW-ZX2
ハイブリッドシャーシを採用
側面のボタン部

NW-ZX2NW-ZX1
メモリ容量
(本体)
128GB128GB
microSD
スロット
-
シャーシアルミ+銅アルミ
アンプS-Master HX
再生可能
ファイル
FLAC、WAV、DSD(PCM変換)
AIFF、Apple Lossless、MP3、
WMA、AAC、HE-AAC、ATRAC
DSD対応
(PCM変換)
2.8/5.6MHz2.8MHz
Blutooth
(LDAC)
バッテリ
駆動時間
(96kHz/24bit
FLAC)
33時間16時間
外形寸法131.2×65.1×18.5mm122.8×60.7×15.3mm
重量約235g約139g
直販価格約12万円75,000円
NW-ZX2とZX1

基本設計から音にこだわり改善

 最大の強化点は「音質の向上」だ。NW-ZX1の基本設計は踏襲しながらも、NW-ZX2では(1)新開発のシャーシの採用、(2)電源強化、(3)オーディオラインの最適化、(4)クロックの最適化、などにより音質に徹底的にこだわり設計/開発が行なわれたという。

 これに伴い、外形寸法/重量は131.2×65.1×18.5mm/約235gと、NW-ZX1(122.8×60.7×15.3mm/約139g)より一回り大きく重くなっている。

NW-ZX2とNW-ZX1の比較
NW-ZX2とNW-ZX1の比較

 シャーシは、総削りだしアルミフレームに金メッキを施した銅板による「ハイブリッドシャーシ」を新採用。アルミにより大幅に抵抗値を低減、金メッキ採用により接触抵抗の低減と酸化防止を実現し、音質面においてクリアで力強い低音域を実現しながら、高剛性化を図ったとする。

ハイブリッドシャーシを採用

 電源部も大幅に強化。バッテリからアンプに電力供給する大元のラインに電気二重層キャパシタを追加。瞬間的な大電力供給を可能にし、急激な電圧降下を抑制することで、正確な信号出力を行ない、クリアな低音域を実現するという。

新開発のバッテリパック

 電池パックは、容量の増強と保護回路の低抵抗化を行なった専用開発のものを採用。容量をZX1の2倍となる1,860mAhに、抵抗値は約1/2の19mΩとし、ボーカルや楽器の透明感向上や音の立ち上がりやスピード感を強化しているという。

 また、ヘッドフォンアンプのPHA-2と同様に電源基板に厚膜銅箔プリントを採用。ボーカルの定位向上や音場空間の向上などが図られたという。アンプ部のチャージポンプ電源も高音質パーツを追加。POSCAP(3個)を高音質コンデンサの「OS-CON」に変更したほか、フライングコンデンサにフィルムコンデンサを新採用した。OS-CONは合計7個搭載している。

7つのOS-CONを搭載

 オーディオラインの最適化については、ヘッドフォン出力のLCフィルタにデジタルアンプ用大型コイルを採用し、低歪み、低抵抗値化を図った。高品質メルフ抵抗も採用し、熱雑音を抑え、ノイズレベルを低減した。これらの対策により全周波数帯域に渡って解像感を向上している。

 また、信号経路にも手を入れ、アンプからヘッドフォンジャックへのGND線材を、LRで分離して配置。これによりGNDにかかる共通インピーダンスを低減し、ステレオ感の向上と音の歪みを低減した。

 最近のハイレゾオーディオプレーヤーの上位機種では、バランス接続対応製品も増えているが、NW-ZX2のヘッドフォン出力はアンバランス仕様だ。ただし、ヘッドフォン出力端子は3.5mmの4極端子となっているようで、編集部で用意した4極端子のケーブルと、ヘッドフォンのMDR-1Aを組み合わせてテストしたところ、音が出ることが確認できた。当然メーカーの保証外だが、今後きちんとしたケーブルなどが発売されれば、バランス接続でも利用できそうだ。

 オーディオ回路のレイアウトも最適化。GND面積を2倍とし、回路全体の安定性を向上することで、ボーカルの艶や伸びなどの中域特性を改善。さらに、A10シリーズと同様に高音質無鉛はんだを採用することで、音のバランスがより自然になったという。

 クロックも強化。従来の48kHz系だけでなく、44.1kHz系専用の水晶発振器を追加し、クロック切替に対応。44.1/88.2/176.4kHz再生時には44.1kHz系を、48/96/192kHz再生時は48kHz系クロックを利用し、それぞれの信号に同期し、ZX1よりも透明感ある音を実現できたとしている。

AK240、AK120II、NW-ZX2、NW-F880
NW-F880と比較
AK120IIと比較

DSDゲイン設定、バッテリ強化など

 ディスプレイは4型/854×480ドット液晶でタッチ操作に対応。本体の右側面には、ボリュームのほか、再生/停止、曲送り/戻しボタンを装備し、画面を見ずに再生/停止などの基本操作が行なえる。ボタンは側面にえぐれた形状とすることで、誤操作を抑制しているほか、付属の本体カバー装着時の操作性に配慮している。

側面に操作ボタン

 対応音楽フォーマットは、FLAC、Apple Lossless、AIFF、WAV、MP3、AAC、WMA、ATRAC、DSDとなる。楽曲管理ソフトウェアはWindows用に「Media Go」を提供する。新設されたmicroSDスロットは、最大128GBのカード(microSDXC)に対応する。

WM-Port右にmicroSDスロットを装備
DSD再生時は、2種類のデジタルフィルタや3dBのゲイン切替に対応

 ハイレゾ楽曲は、192kHz/24bitのFLAC、Apple Lossless、WAV、AIFFなどと、2.8/5.6MHzのDSDのPCM変換再生に対応する。多くのDSDファイルにおいては、3dB分のマージンが設けられており、それを単純にPCMに変換すると音量が下がってしまう。そのため、NW-ZX2では、DSD楽曲のゲイン設定を0dBと-3dBで選択可能とし、若干小さめになりがちなDSDの音量をPCM系音源に揃えて補正できるようになっている。

 またDSDの楽曲やジャンルに合わせ、2つの音質特性を選べるデジタルフィルタを新搭載。DSD特有の柔らかさや温かみのある音で、ボーカルや弦楽器に適しているという「スローロールオフ」と、明瞭なアタック感やエネルギッシュな音が特徴な「シャープロールオフ」が選択できる。

 ヘッドフォン出力は15mW×2ch(16Ω)。この出力スペックは、他の高級ポータブルオーディオプレーヤーと比較すると見劣りするが、アンプデバイスが従来と同じS-Master HXのため、今回はスペック上はNW-ZX1から変更はないという。ただし、ZX2で行なわれた各種最適化により、実際の出力レベルは向上しているという。

 圧縮音源やCD音源などをハイレゾにアップコンバートしながら高域補間などを行なうことで、音質を向上する「DSEE HX」も搭載。音源を24bitにビット拡張した後、192kHzにアップサンプリングし、内部では192kHz/24bitで処理を行なう。これにより、圧縮で消えがちな微小な音の再現性を高めているという。

ヘッドフォン出力
microSDスロットやWM-Portを装備

 なお、NW-ZX2ではイヤフォン/ヘッドフォンは付属せず、ユーザーが好みのものも用意する必要がある。ハイエンド機を購入するユーザーは、好みの製品をすでに持っていると判断しているため。

BluetoothはLDAC対応。アプリ領域は2GBに

 CPUは、OMAP 4 Coretex-A9 1.0GHz(デュアルコア)で、NW-ZX1と共通。OSにはAndroid 4.2で、Google Playによるアプリ追加に対応する。アプリケーション領域はZX1/F880シリーズの1GBから、2GBに増やされた。ソニー独自のW.ミュージックなどのアプリを搭載する。なお、NW-ZX1では本体にはスピーカーを内蔵していたが、NW-ZX2では省かれている。

 動画再生にも対応し、MPEG-4 AVC/H.264(mp4/m4v、最高1,920×1,080/30fps、20Mbps)、MPEG-4、WMVなどに対応。ソニーBDレコーダからのおでかけ転送にも対応する。ただし、microSDカードへのおでかけ転送はできない。

 無線LANはIEEE 802.11a/b/g/n準拠で、2.4GHzと5GHzに対応。Bluetooth Ver.3.0に準拠し、プロファイルはA2DP/AVRCP/OPP/HID/SPPをサポートしている。

 さらに、ソニーが提案する新Bluetoothコーデック「LDAC」に対応。対応機器間同士で、既存のSBCコーデック(44.1kHz/328kbps)と比べ、約3倍の990kbpsで伝送できるというもので、より高音質なワイヤレス音楽再生を可能にするもの。

 15日時点では正式な対応製品は発表されていないが、米国で開催されたCESではワイヤレスピーカーやヘッドフォンなどのLDAC対応製品が展示されており、今後国内でも順次発売される見込みだ。

背面。NFCに対応

 本体にはGPSレシーバーや加速度センサーのほか、NFCリーダ/ライターも装備。NFC対応スピーカーとワンタッチするだけで、Bluetoothのペアリングから接続までの設定が可能。切断もワンタッチで行なえる。

 パソコンや外部機器と接続する際に利用する「WM-Port」は、デジタル音声出力に対応。ポータブルアンプ「PHA-3」などの対応機器にデジタル信号のまま出力できる。

 バッテリ駆動時間は、MP3(128kbps)で約60時間、DSDが16時間(5.6MHz)/22時間(2.8MHz)、FLACが43時間(96kHz/24bit)/33時間(192kHz/24bit)。外形寸法は131.2×65.1×18.5mm(縦×横×厚み)、重量は約235g。付属品はUSBケーブルやスペーサー、キャリングポーチなど。

 専用の本革ケース「CKL-NWZX2」も2月14日に発売。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は1万円前後。左開きのフタ付き構造で、片手でウォークマンの操作が可能で、ケースを装着したまま各種端子が利用できる。

CKL-NWZX2
左開きのフタ付き
側面に操作ボタン
BCR-NWH10利用イメージ

 また、NW-ZX2のほか、ZX1、A10シリーズ、F880シリーズで利用できるハイレゾ対応クレードル「BCR-NWH10」も2月14日に発売。店頭予想価格は15,000円前後。

 ウォークマンを充電しながらデジタル出力できるクレードルで、クレードルの電源部に「OS-CON」を搭載している。PCとのUSB接続時にはウォークマンへのデータ転送に対応。クレードル接続時でもヘッドフォン出力が行なえる。ACアダプタとmicroUSBケーブル、S/M/Lのアタッチメントが同梱される。

BCR-NWH10
利用イメージ
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NW-ZX2

(臼田勤哉)