Gracenote、アーティスト写真など音楽DBを強化

-クラウド型配信などへの取り組みを説明


ブライアン・ハミルトン社長

 CDDBなどのデータベースと、それを活用したコンテンツビジネスを展開するグレースノート(Gracenote)は10日、日本におけるビジネスについての記者発表会を開催。日本法人のブライアン・ハミルトン社長らが、これまでの製品/サービスへの活用事例や、今後の展望などについて説明した。

 グレースノートのCDDBは、現在、iTunes/x-アプリなど多くのパソコン用音楽再生ソフトや、HDDカーナビの音楽プレーヤーなど多くの機種に活用されている。音楽用のメタデータとしてはワールドワイドで800万枚分のCD、1億トラック、40万アーティストにおよぶデータを持っており、「雑誌の付録なども含め「CDのほぼすべてをカバーしている」(同社)という。


同社が提供する主なコンテンツ

 また、ビデオに関しても他社との協業などを加えてDVDは25万、Blu-ray Discは9,000、映画としては80万作品のメタデータを利用可能。ソニーやLGのBDプレーヤーにおいて、作品に関するデータベースが閲覧でき、同じ監督の他作品を検索するといった使い方も可能となっている。そのほか、トリビューン・メディア・サービスとの提携によりEPGメタデータのサービスも展開している。

 同社は新たな取り組みとして、アーティストの写真データをジャケット写真とともにデータベース化して国内で提供開始したことを発表。音楽/映像プレーヤーなどにおいて、従来のジャケット(アルバムアートワーク)表示と同様に、歌手やバンドなどのアーティスト写真も表示可能となるため、音楽データにジャケット写真が無い場合にも補完的に利用でき、検索性を高められる。アーティスト写真の利用に対応した製品は、国内ではまだ採用例は無いが、海外では既にクラリオンのカーナビで採用されている。

 今回のデータベース化は、ソニー・ミュージックエンタテインメント、エイベックス・マーケティング、ビクター エンタテインメント、VIPタイムズ(「日本タレント名鑑」発行)との契約締結により実現。なお、既に海外ではワーナーやユニバーサルとも提携している。



■ 主要なクラウド型配信に採用。歌詞利用のサービスも予定

パソコン、家電、モバイル、車載の各方面に展開

 グレースノートの創立は1998年。日本法人は2003年に設立され、続いて韓国、台湾、ドイツに事務所ができた後、2008年に米ソニーにより買収、100%子会社となっている。事業分野としてはパソコン、家電、モバイル、車載の各方面に展開。46件の特許(アメリカ/国際特許)を持っている。

 パソコン向けでは、iTunesにおいてCD認識技術「MusicID」により、ジャケット写真などの検出が行なえるほか、楽曲をジャンル分けしてレコメンドする「Genius」機能にも同技術が活用されている。また、ソニーのクラウド型音楽配信「Music Unlimited powerd by Qriocity」(日本では未展開)についてもMusicIDが使われているほか、ユーザーに対する楽曲レコメンド機能「Discover」も搭載されている。そのほか、GoogleのMusic BetaやAmazonのCloud Playerのクラウド音楽サービスにもグレースノートの技術が活用されている。

iTunesや、Qriocity音楽配信(日本未展開)において活用されている技術Qriocity音楽配信では、楽曲の分類においてジャンルや年代のほか、聴く人の気分などにあわせられる「SenseMe」という区分も設けている

 家電では、ソニーの液晶テレビBRAVIAの一部機種で採用されている「TrackID」に、MusicIDやCDDBが活用されており、映画やテレビ番組、CMなどで流れた楽曲の情報を閲覧できる。また、ソニーのBlu-ray Discプレーヤー「BDP-S470/370」においては、視聴しているBDのジャケット写真のほか、関連する他作品の情報やジャケット写真などもインターネット経由で取得できる機能を実現している。

 モバイルでは、auの「LISMO」や、ソニー・エリクソン製Android端末向け「TrackID」、GNTが公開しているiOS/Androidアプリの「mobion music」に、楽曲認識機能を提供。検索した楽曲の購入に結び付くサービスの実現に寄与している。車載では、パイオニアのHDDナビにおいて、CDDB(一部)を収録して提供する方式が最初に採られて以来、市販・純正の各ナビでプレイリスト作成機能などに活用されている。

ソニーBRAVIAに採用されている、MusicIDなどの技術MusicIDを活用した「TrackID」は、リモコンにも専用ボタンとして設けられている
ソニーやLGのBDプレーヤーにも活用「シュレック3」のBDを入れてジャケットなどの情報を表示。そこから、同じくクリス・ミラー監督作品の「くもりときどきミートボール」を検索/情報表示された
スマートフォンなどへの活用例mobion musicで、流れる音楽を認識曲名などの情報が表示された
渡辺泰光氏

 そのほか、海外においては歌詞のデータベース提供も始めている。日本ではまだ歌詞提供はまだ始まっていないが、取締役最高技術責任者である渡辺泰光氏は「歌詞に関する権利処理を行なう企業と組むことで、今年中、遅くても来年早々には発表できるのでは」とした。なお、前述のアプリ「mobion music」は歌詞表示機能も備えているが、これに関してはGNT側で導入したものだという。

 日本市場での取り組みについて、ブライアン・ハミルトン社長は「日本の権利者/企業は、比較的コンサバティブだが、これまで『市場を一緒に作っていきたい』という話し合いを重ねてきた。そして、エンドユーザーにとってのコンテンツの楽しみ方を変えていき、長期的には、権利を持つパートナー企業とともに収益を上げていくことを考えている」と述べた。

 加えて、「AppleのiCloudなど、ここ数週間でクラウド型の音楽配信に関する大きな発表がいくつもなされてきた。クラウド型音楽配信を行なう企業に対して、グレースノートが提供する技術が重要になってきている」と、新しいコンテンツサービスの形態に対して積極的な姿勢を見せた。



(2011年 6月 10日)

[AV Watch編集部 中林暁]