ニコニコ動画のコメントが劇場の大スクリーンに

-「イヴの時間」上映会開催。客席からも書き込み


上映中の様子。客席からの書き込みも許可された上映となった
(C)2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc

 2月25日、ユナイテッド・シネマ豊洲のスクリーン1において、アニメ映画「イヴの時間 劇場版」の上映会が実施。同時刻にニコニコ動画でも有料配信され、その動画につけられたコメントを、そのまま劇場のスクリーンにも表示する、業界初のイベントが行なわれた。


映画『イヴの時間 劇場版』
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 このイベントは、ニワンゴの「ニコニコ動画(原宿)」で映画を配信している「ニコニコ映画上映会」において、「イヴの時間 劇場版」を有料配信。同時刻に劇場でも上映し、オンラインで鑑賞している人からのコメントを、劇場の映像にも重ねて投写するというもの。オンライン視聴者からのコメントだけでなく、劇場内客席からのコメント書き込みも許可され、鑑賞している人が、自身のスマートフォンなどの端末から書き込み、自分のコメントが目の前のスクリーンに表示されるのを楽しむ事もできるイベントとなった。

 また、本編上映前にはトークショーも実施。「イヴの時間 劇場版」の吉浦康裕監督と、小説版「イヴの時間 another act」の著者である水市恵氏、声優の佐藤利奈さん、MCの氷川竜介氏らが登壇し、作品への思いを語ったほか、吉浦監督の次回作となる「サカサマのパテマ」についてのトークも繰り広げられた。



 中国4大都市で「イヴの時間」をテーマに講演を行なったというのは、アニメ研究家で、MCも担当した氷川氏。作品については、「日本を代表すべき作品」と絶賛した上で、その特徴として、ニコ生のようなネットサービスと連携して人気を博してきたことに触れ、「IT系サービスとリンクして育っている。今、デジタルコンテンツはコピーされて終わりみたいなことが多くなってきたが、その中で『イヴの時間』のように周りを巻き込んでいくというのはすごく大事」と語る。

 吉浦監督は「(ファンと)相互に育て合いながら長く愛されているなと。リアルのイベントと関わるのがポイント。こうやって場を作れるのが嬉しいし、それが作品の寿命の長さにつながる」と作品のロングヒットの理由を分析した。

トークショーの様子。左から水市恵氏、吉浦康裕監督、佐藤利奈さん、氷川竜介氏
(C)2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc
来場者は自身の端末から書き込みを行なった

 作品の主要キャラ・ナギの声優を務めた佐藤利奈さんは、iPhoneアプリとしてリリースされている「イヴの時間 atc0X」の台本の一部を会場で朗読。このファンサービスに、大量のコメントが寄せられ、スクリーンを流れていった。

 その様子を見た吉浦監督は、「ニコニコ動画(β)から見てるヘビーユーザーです。こうやって関われるとは」と感激した様子。水市氏も「コメントがこんな大画面で見えるなんて。目で追えるか心配だったけど意外と目に優しい」と語り、その後はしばらく登壇者と視聴者のコメントを通してのやりとりが行なわれた。

 トークショーの後は、本編の劇場・ニコ生同時上映がスタート。ニコ生から書き込まれたコメントが劇場スクリーンに反映されるのはもちろん、会場内からPCや携帯電話を使った書き込みも行なわれたため、場内に微かにPCのタイプ音が響き、液晶画面の明かりが灯るという、通常の映画上映とは少し違った雰囲気での上映となった。

 さらに、上映中は吉浦監督と水市氏によるコメンタリーもテキストで流れ、各シーンのこだわりや、制作秘話も披露。視聴者、観客、監督の三者がコメントを通してコミュニケーションを図る新しい形の上映イベントとなった。


吉浦監督

 上映終了後のトークでは、吉浦監督の新作となる「サカサマのパテマ」に関しての新情報も発表。既報の通り、同作品は2012年に劇場公開が予定されており、その序章にあたる「サカサマのパテマ Beginning of the Day」の第1話が、2月25日からニコニコ動画とGyaO!にて無料配信が開始されている。

 作品について吉浦監督は、「今回はたまねぎみたいに一個一個むくごとに新しいものが見える作品。イヴは店の中での話が多かったんだけど、今度は外での話にしたい」と語る。さらに、「イヴの時間」についても、「まだまだ描けてないところもあるので、これから描いていこうと思います」と、今後の展開に意欲を示した。


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(2012年 2月 28日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]