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ソニー、ラケットに装着しショットを即時分析するテニス用センサー。音響解析技術活用
(2014/1/20 15:19)
ソニーは、テニスのショットを分析し、上達に繋げられ、新しい楽しみ方も提供するラケット装着型センサー「Smart Tennis Sensor SSE-TN1」を5月下旬に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は18,000円前後。スポーツ用品店やテニス用品店で販売する。
テニスラケットのグリップエンド部分に装着するセンサー。フォア/バックハンド、スマッシュ、サーブなどのスイングの種別や、ラケット上でボールを捉えた位置、スイング速度、ボールの速度と回転などのデータを検出できる。ショット数のカウントや、ラケットスイングの速度、ボールの回転なども検出可能。
Bluetooth通信機能を備えており、Android/iOS機器向けに提供される専用アプリ「Smart Tennis Sensor」をインストールする事で、ショットの内容を即時に分析し、アプリ上でわかりやすく表示するという。前述のような、従来は容易に可視化できなかったデータをその場ですぐ確認でき、上達に繋げられるとする。対応OSはAndroid 4.1以降、iOS 6.1以降のiPhone/iPad(iPhone 3GS除く)。
データは、その日のプレイの平均などのほか、1つのショット内容を詳しく表示したり、バックハンドのデータだけを抽出表示するといった選択も可能。“ここからここまで本気で練習した”というように、抽出するデータの範囲を指定する事もできる。
なお、Bluetoothの通信範囲は見通し10m程度だが、ソニーがテストしたところ、テニスコート(10.97×23.77m)付近にあるベンチや待機スペースであれば接続できるという。また、室内コートでは電波が反射するため、屋外と比べるとより接続しやすいという。NFCには対応しない。
SSE-TN1本体はIPX5相当の防水、IPX6相当の防塵性能を有しており、外形寸法は31.3×17.6mm(直径×高さ)、重量は約8g。連続使用時間はBluetooth ON時で約90分(60分で500球のペースで打ち続けた場合)/OFF時で約180分。ONの場合、ショットを打つごとにスマホにデータを転送し、解析表示を行なうが、プレイしていない時にはスリープモードに移行してバッテリ消費を抑える。Bluetooth OFFでもショットのデータは内蔵メモリに約12,000球分保存でき、後でスマホにBluetooth転送し、解析・表示するといった使い方も可能。
充電は付属の小型充電台に設置して行ない、USB経由で充電が可能。充電台には栓抜きのような穴も空いており、ラケットに取り付けたセンサーが硬くて外れない場合に、穴にセンサーを入れて回して外すための器具も兼ねている。センサーを装着する部分は、通常ラケットメーカーのロゴなどがハメ込まれているが、ラケット内部に入ってしまった砂を抜く時などのために取り外す事ができる。その部分に、センサー付属のアタッチメントを装着し、そのアタッチメントにセンサーを取り付けるカタチになる。
対応するラケットはYONEXの「VCORE Tour G」、「VCORE Xi 98」、「VCORE Xi 100」、「EZONE Ai 98」、「EZONE Ai 100」、「EZONE Ai LITE」。その他のラケットや、他社のラケットへの対応も検討されている。
また、アプリは動画の撮影機能も備えており、自分がテニスをしている姿を仲間などに撮影してもらい、前述のデータと共に同期させて再生する事も可能。バックハンドでショットしたシーンのみを抽出し、映像と共にデータをチェックするといった使い方も可能。プレイ内容を自身で客観的に振り返る事ができるほか、データをコーチや仲間とFacebookを通じて共有する事もできる。
動画はフルHDや720pなど、アプリから解像度を設定できる。録画した動画は、アプリからのみ再生可能。アプリは現在開発中であり、反響や意見を取り入れながらバージョンアップしていくという。
ショットのデータをどのように取得するのか
センサーの中には、振動センサーとモーションセンサー(加速度/ジャイロセンサー)を搭載している。ラケットにテニスボールが当たると、ラケットが振動。それを振動センサーが検知。ソニーがAV機器で培ってきた音響解析技術を用いて、振動から、ラケットのどの部分にボールが当たったのかなどを判別できる。
モーションセンサーは、どの程度の速度でラケットを振ったのか、どのような向きで振ったのかなどを検出。それらの情報をBluetoothでアプリに送信し、アプリ側で処理し、情報としてユーザーに表示する仕組み。実際のデモでは、ショットした後、1秒程度でスマホ側に情報が表示されていた。
データはクラウドに保存でき、IDとパスワードでログイン。過去のデータに遡って閲覧できる。そのため、スマートフォンを機種変更した場合にも、データがクリアされる事は無く、同じIDでログインすれば引き続き利用できる。
振動を検知するため、形状の異なるラケットでは、同じようにショットしても、センサーに伝わる振動は変わってくる。そのため、あらかじめラケットを解析し、“Aというラケットの場合は、このような振動が伝わってくる”という振動データをライブラリとしてソニー側が構築しておく必要がある。その振動データが用意されているのが前述の“対応ラケット”となる。そのため、利用時にはあらかじめ、ユーザーが使用するラケットをアプリ側に設定しておく必要がある。
新しいラケットに対応する場合も、アプリのバージョンアップだけで対応できるといった利点もある。
ショットのデータをどのように取得するのか
業務執行役員 SVP UX・商品戦略本部長の古海英之氏は、 平井一夫社長兼CEOが、国際的な展示会の基調講演などにおいて、“お客様の体験を軸にした商品提案”をメッセージとして発信している事を紹介。2014年のCESでは“Play”をキーワードにした事を振り返り、「Playという言葉は受動的というよりも、能動的に色々な事を体験するという意味合いが強い。プレイミュージック、プレイゲーム、プレイスポーツなど、広がりのある言葉。我々は技術を体験としてご提供したいと考えており、今回はプレイスポーツという切り口になる」と、センサーを紹介。
「これまでは、テニスを客観的に分析するのはなかなか難しかった。そこで、独自技術をふんだんに盛り込み、データを見る、皆で盛り上がる、そして自分のプレイが上手くなる。よりテニスを楽しんでいただく、お手伝いをしたい」と魅力を説明。
はセンサーを販売するビジネスモデルで、アプリのダウンロードや利用は無料。今後の可能性として、クラウドのデータを活用してアドバイスを行なうコーチングサービスや、テニスコーチが指導してくれる授業のツールとして活用するなどのビジネス展開も検討しているという。
また、テニス以外のスポーツへの展開についても、「センサーを使ってどのような情報が取得できるのか、そのスポーツの市場性はどの程度あるのかなど、慎重に検討しながら展開していきたい」という。
具体的にどのスポーツへ展開していくかは未定だが、UX・商品戦略本部 SE事業準備室の中西吉洋氏によれば、様々なスポーツ展開の可能性を考える中で、テニスと同じボールを打つスポーツとして、ゴルフクラブにセンサーを取り付け、データが上手く取得できるかというテストをした事もあるという。
中西氏によれば、今回のセンサーはテニス好きの技術者が、“ラケットにセンサーを取り付けたらどんな情報が得られるだろう?”と考え、開発を開始。そこに、ソニーテニス部の面々が「面白そうだ」と次々に参加。試行錯誤と実際のテストを繰り返し、完成したものだという。