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ソニー、テレビ事業を分社化。4Kを軸に'14年度黒字化へ

モバイル/SCEのような独立経営をTVビジネスに

テレビ事業分社化などを発表するソニー平井社長

 ソニーは6日、テレビ事業を構造改革し、7月1日を目処にテレビ事業を分社化する方針を発表した。2012年の平井一夫社長兼CEO体制以降、2013年度のテレビ事業黒字化を必達目標に掲げてきたが、達成は困難となったため、さらに抜本的な対策へ踏み切る。ただし、'13年は4Kなどの高付加価値製品が高いシェアを獲得するなど、収益性は改善しており、「テレビビジネスは正しい方向、軌道に乗っている。現在の事業方針に大きな変更は無く、分社化することで、より現場に権限を与え、経営スピードを上げていく(平井社長)」と説明している。

 分社化後の社名は未定だが、ソニー100%子会社となる。新会社の代表には、現ソニー 業務執行役員SVP ホームエンタテインメント&サウンド事業本部長の 今村昌志氏が就任予定。

'13年黒字化は達成不能に。4Kシェアを活かした高付加価値を加速

テレビビジネスは大幅改善も黒字化は達成できず

 ソニーのテレビ事業は、2011年11月に発表した収益改善プランに基づき、液晶パネル関連コストの改善や、研究開発費の効率化などコスト面での施策や、商品力強化とオペレーション改善により限界利益率の改善に取り組んできた。これにより、2011年度の営業損失1,475億円から、'12年度は696億円に縮小し、'13年度は250億円程度まで圧縮する見込み。しかし、黒字化は困難な状況という。黒字転換が果たせなかった理由については、新興国の市場成長の鈍化や通貨安など要因を上げている。

 一方で、この2年間の施策を通じて、「テレビ事業の再生への道筋は見えてきている」としており、特に商品力については、国内の4Kテレビで75%以上のシェアを獲得(2013年12月末時点、ソニー調べ)し、米国でも4Kテレビで年間ナンバー1シェア(2013年、金額ベース)を獲得するなど、高付加価値化へのシフトが着実な成果をあげた。この方針を継続しながら、2014年度の黒字化を目指す。

 テレビという商品カテゴリについては、「引き続きリビングルームにおける視聴体験を実現する上で重要な役割を果たし、その技術的資産は、他の商品カテゴリーにおいてもソニーの差異化技術として活用されている」とし、2014年度以降も安定的に収益が出せる体制の構築を目指す。

 '14年以降の製品展開は、4Kにおけるリーディングポジションを確固たるものにすべく商品ラインアップを一層強化。4Kだけでなく、広色域・高画質技術などを搭載した2Kモデルなど、高付加価値商品の販売構成比を高める。また、成長が見込まれる新興国市場では、地域ごとの市場のニーズに適した機種を企画、導入していく。

 分社化とともに、同時に発表されたPC事業の撤退や、本社間接部門、PC/テレビ販売、製造部門の規模の適正化などの経営改善策に着手。販売会社については国や地域ごとの注力カテゴリの厳選や、間接機能見直し、アウトソーシング推進などで、2015年度までに全体で20%の費用削減を実施。本社機能や間接部門についても規模の適正化を進め、2015年度までに約30%の費用削減に取り組む。上記施策により、2014年末までに約5,000名(国内1,500名、海外3,500名)の人員減を見込む。また、構造改革費用として新たに200億円追加する。

子会社でもOne Sony。テレビビジネスの売却予定は「全くない」

 平井一夫代表取締役社長兼CEOは、「(テレビ事業を)分社化すれば黒字になるというものではない。ただし、テレビビジネスは、4K中心に高付加価値路線がかなり功を奏している。来年以降も4Kが伸びる。2013年4月の37型以上の単価は市場平均と比べると35,000円以上高く、それが2014年1月は約5万円に上がっている。トリルミナスやX-Reality Proなどの機能も評価を集めている。同時に分社化し、経営スピードを上げていくことで、それが加速していくのではないか」と説明。また、Xperiaなどスマートフォンを手がけるソニーモバイルやゲームのソニー・コンピュータエンタテイメント(SCE)も同様にソニー100%子会社であることに言及。「ソニーモバイル、SCEの2つともスピーディに判断して、経営を行なっている。これをテレビビジネスにも持ち込みたい」とした。

 また、「ソニーモバイルもSCEも、それぞれ会社としては違っていても、私がいつも申し上げている“One Sony”のスピリットは共有している。テレビも子会社化するが、One Sonyのスピリットでやっていくという方針は変わらない」と強調した。

 テレビビジネスの売却可能性については、「一般論としては、将来的にはいろいろな可能性があり、場合によっては考慮する。ただし、今は具体的なプランは『全くない』」と明言した。

 なお、パソコン(VAIO)事業撤退決算概要については別記事で紹介している。

(臼田勤哉)