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エプソン、MOVERIOなどウェアラブル事業「100億円規模へ」

10年で「普通のメガネに」。リストバンド型なども

 エプソンは19日、メディア向けに同社のウェアラブル事業の取り組みについての戦略説明会を開催。透過型ディスプレイを備えたスマートグラス「MOVERIO BT-200」のほか、リストバンド型デバイス「PULSENSE」などを展示した。セイコーエプソンの碓井稔社長はウェアラブル事業について、「数年以内に100億円規模の事業に育てたい」と述べ、新しい成長領域として注力していく姿勢を示した。

MOVERIO BT-200やPULSENSEを身につけて説明するセイコーエプソンの碓井社長

 碓井社長は、「ウェアラブル機器市場は拡大し続けており、3年後には市場規模が2倍になると予測されている」と述べ、同社のウェアラブル事業の取り組みについて、「時流に乗って事業化したのではなく、エプソンの起源は“ウォッチ(時計)”であり、これまでに数多くのウェアラブル機器を創出してきた」と説明。1969年に発売したクオーツウォッチや、1982年のテレビウォッチ、1985年のリストコンピュータなどを例として挙げ、「ウェアラブルはエプソンのDNAである」とした。

ウェアラブル機器市場推移の予測
エプソンが過去に発売したテレビウォッチなどのウェアラブル機器

 ウェアラブル製品は、Googleの「Google Glass」など競合の多い分野であるが、「ハードの開発力や技術力で他社との差別化を図る」と説明。ジャイロセンサーや省電力化技術などのデバイス技術や、プロジェクタ開発で培った光学技術などの「コア技術」をウェアラブル製品の開発に投入し、「エプソンにしかできない製品を提供していく」という。コア技術を搭載するデバイスは他社への供給を行なわず、あくまでエプソンブランドの製品として販売し、サービスも含めたソリューション提案と合わせて、「数年以内に100億円規模の売上を目指す」と述べた。

センサーなどのコア技術の説明
エプソンならではの製品を追求する

ウェアラブルを3つの分野で展開

 エプソンのウェアラブル事業は、「MOVERIO」を中心とする「ビジュアルコミュニケーション分野」、リストバンド型脈拍機器「PULSENSE」を使ったソリューションを提案する「健康・医療分野」、GPS機能付きのランナー向け腕時計やゴルフ用モーションセンサー機器などをラインナップする「スポーツ分野」の3つの領域で展開する。

MOVERIO BT-200などのビジュアルコミュニケーション分野
PULSENSEを使った健康・医療分野
M-Tracerなどのスポーツ分野

 MOVERIOの最新モデル「BT-200」は、シースルータイプの眼鏡型HMD。2014年1月の製品発表から2度の発売延期を経て、2014年6月末に発売される。直販価格は64,797円。同製品はAndroid OSを搭載しており、アプリを追加することで機能を拡張できることが特徴。同社はBT-200を、個人で映像などを楽しむコンシューマ用途だけではなく、機械の操作や修理の手順などを表示し、作業従事者をサポートする業務用途などにも積極的に展開していくという。使用用途として、街を歩いたときにショップ情報を表示したり、パソコン修理時の作業手順を表示する様子などを紹介した。

 同製品の今後の方向性として、「MOVERIOは、2011年の初代から3年で60%軽量化できたが、最終的には普通の眼鏡のように身につけられることが目標。10年くらいあれば実現できると思う」と述べ、更なる小型化・軽量化に向けて意欲を示した。

MOVERIO BT-200を通した視界をビデオカメラで撮影したところ。左のモニタに映っているように、風景に映像などを透過表示できる
用途を紹介したムービー。街を歩くとショップ情報を表示
業務用途の紹介。修理の手順を表示し作業に慣れていない者でも修理を行なえる

 「PULSENSE」は、2014年1月に米国で開催されたCES 2014で初めて披露されたリストバンド型脈拍測定機器。手首の血流から脈拍を測定する光センサーを備え、スマートフォンアプリと連携して、ダイエットのサポートや健康管理などに役立てることが可能。Webアプリケーションや指導員によるアドバイスなど、総合的な「生活習慣改善プログラム」のソリューション展開も想定している。日本や米国などで'14年夏の発売としていたが、'14年度内発売に延期された。想定価格はバンド型が130ドル前後、モニタ付きの腕時計型が200ドル前後としている。

リストバンド型脈拍測定機器「PULSENSE」
生活習慣改善プログラムなどのソリューションを提案

 スポーツ分野の製品は、エプソンブランドで発売しているGPS内蔵のランニングウォッチ「GPS Sports Monitor」や、4月に発売されたゴルフスイング解析デバイス「M-Tracer For Golf」(直販価格29,800円)が紹介された。M-Tracerは、ゴルフクラブのグリップにモーションセンサーを取り付け、センサーのデータをスマホアプリに送信することで、自分のスイングを可視化したり、正確にボールを飛ばすためのアドバイスを受けられるというもの。販売は好調で、「当初の計画の数倍の勢いで売れている。今年度内に1万台くらい売れると推測している」(碓井社長)という。

ゴルフスイング解析デバイス「M-Tracer For Golf」
GPS内蔵のランニングウォッチ「GPS Sports Monitor」

(一條徹)