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V-Lowマルチメディア放送の基地局計画認定。11月福岡からサービス開始へ。チューナ100万台無料配布

 総務省は6月25日、99~108MHzの周波数を使ったV-Lowマルチメディア放送に関連し、その特定基地局開設計画について、電波監理審議会から、開設計画の認定を適当とする旨の答申を受けたと発表。これを受けて、エフエム東京が100%出資する株式会社VIPが全国で基地局を開設。V-Lowマルチメディア放送は、11月の福岡からサービスを開始する予定。対応端末は、2018年度末までにスマートフォンなどで合計1,122万台を見込んでいる。

V-Lowマルチメディア放送の周波数帯域

VHF-Lowマルチメディア放送とは? 経緯と事業主体

 地上アナログテレビ放送終了後に空いたVHF-Low帯(VHF 1~3ch)を使ったマルチメディア放送については、デジタルラジオの実用化試験放送が2011年3月31日で終了。そのノウハウがV-Low(VHF-Low帯)マルチメディア放送に引き継がれた。

 その後、VHF-Low帯マルチメディア放送推進協議会が、VHF-Low帯マルチメディア放送の運用規定策定を目的として活動していたが、各社の足並みが揃わず、昨年7月31日で解散。エフエム東京グループらが中心となったマルチメディア放送ビジネスフォーラムが、サービスモデルの検討や実験などを行なってきた。

 V-Lowマルチメディア放送を推進するため、エフエム東京は持株会社のBIC株式会社を設立(資本金48.1億円/エフエム東京が25億円、その他企業が約26.1億円出資/※認定後の増資で約51.1億円まで強化予定)。そのBICが、100%出資したのがVIP。基地局などを整備するハード事業者として、VIPが全国での基地局開設計画を推進する。

 放送するコンテンツは、今後のソフト事業者の認定によって決定する。ソフト事業の認定申請は、ハード開設認定の後になる。なお、TOKYO FMとJFN、JFN加盟各社はソフト事業者となるべく、2009年に東京マルチメディア放送、北日本マルチメディア放送など、全国を6ブロックに分けた、ブロック別ソフト会社を設立している。

デジタルラジオ+情報サービス展開

 V-Lowマルチメディア放送は無料放送が中心で、クリアな音声のデジタルラジオのほか、地域情報や災害情報の提供、交通情報などが予定されているほか、タブレットなどへの電子チラシや、バス内・街中にあるサイネージへの情報提供も予定されている。通常の音声放送だけでなく、5.1chサラウンドでの放送や、音声に各種データ(リアルタイム型/蓄積型)を組み合わせての放送、より高音質な音楽の放送なども実施予定。

 受信機の種類と発売開始見込みは、チューナ内蔵のスマートフォン/タブレットが2015年度、車載器が2016年度に登場予定。それらに先駆け、安全安心端末が2014年9月頃に製品化されるという。5年間での普及見込みとしては、スマホ/タブレットが983万台、車載器を70万台と見込んでいる。

 さらに、チューナを内蔵していないスマホ/タブレット向けに、BIGがWi-Fiチューナを7年間で100万台無料配布する予定。このチューナはV-Lowマルチメディア放送の受信に対応しており、受信したデータをスマホ/タブレットに転送、受信アプリを用いて楽しむもの。2015年度から市販品も発売される見込みだという。

 こうした施策を経て、2018年度末までにスマホなどで合計1,122万台の対応機器普及を見込んでいる。

受信端末とサービスイメージ

 特定基地局の事業開始予定時期と設備投資額は、九州・沖縄が2014年11月19日開始で32億円、近畿が2015年1月17日で13億円、関東・甲信越が2015年3月11日で29億円などで、合計174億円の投資となる。VIPの資本金は現在100万円だが、今回の認定後BICからの出資により40億円まで増資予定。さらに、借入により76億円の調達を計画。BICも出資により51.1億円、借入により80億円の調達を計画している。

 5年間で大規模・中規模の特定基地局を62局、小規模特定基地局(高速道路のサービスエリア/パーキングエリア)133局を設置。認定から5年以内に世帯カバー率、九州・沖縄で70%、中国・四国で60%、近畿で80%、関東・甲信越で80%などを目指し、各放送対象地域内のサービスエリア、パーキングエリアでも50%以上のカバー率を満たす計画。

ハード整備の進捗と世帯カバー率

(山崎健太郎)