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ハイレゾロゴ取得オーディオPC「ADIVA」。オンキヨーが協力、独自仕様のfoobar採用

 アビー(Abee)は、オンキヨーとの協力で製品化したハイレゾ音源対応のオーディオ用PC「ADIVA(アディーバ)」を発表した。「K1(AD-K1A-SV)」と、K1にオンキヨーのUSB DACもセットにした「K10(AD-K10A-SV)」を2月22日に発売する。いずれもオンキヨー製のスピーカーが付属し、価格は、K1が17万9,800円、K10が25万9,800円。スピーカーレスモデルも用意し、K1のスピーカーレス(AD-K1N-SV)は15万9,800円、K10のスピーカーレス(AD-K10N-SV)は22万9,800円。本体カラーはいずれもシルバー。直販サイトで購入可能なほか、5月以降に量販店などでも販売される予定。

K10(AD-K10A-SV)

 ADIVAは、パソコンで初めて日本オーディオ協会のハイレゾロゴを取得したオーディオ用のデスクトップPC。アビーは、PCメーカーで初という、同協会の正会員。「本格オーディオシステムのような機器の難しい組み合わせも、複雑なケーブル配線もなく、セッティングも操作も一般的なデスクトップPCとほとんど変わらない。1台で、簡単に本格オーディオシステムに迫るハイクオリティなサウンドを楽しめる」としている。

K1(AD-K1A-SV)

 製品化にあたり、オンキヨーが技術協力。上位機のK10はオンキヨー製DAC「DAC-1000」を別筐体でセットにしている。一方、K1の本体にはオンキヨーの「VLSC」回路を備えたPCIオーディオカード「SE-90PCI」を搭載する。

 また、K1/K10の標準モデルに付属するスピーカーは、オンキヨー製のアンプ内蔵「WAVIO」の製品。K1とK10で付属するスピーカーが異なり、K1には「GX-100HD」、K10は「GX-500HD」を採用している。

K10(AD-K10A-SV)。オンキヨー製の「DAC-1000」(上段)も同梱する

 PC本体はBDドライブ(パナソニック製)を備え、CDリッピングした楽曲や、ハイレゾ配信サイトからダウンロードした楽曲などを再生可能。CDや圧縮音源もアップサンプリングで補完する「DiMO」機能も利用可能。

 OSはWindows 8.1で、K10のCPUはAMD E1-2100 デュアルコア APU(1.0GHz)。メインメモリは4GB(4GB×1)で、2スロットを備え、最大8GB(4GB×2)に対応。ストレージは256GB SSD。K1はIntel Celeron J1900 クアッドコア(2GHz)を使用し、メモリは最大32GB(16GB×2)に対応。ストレージは256GB SSD。なお、BTOで本体仕様のカスタマイズも可能で、SSDは最大1TBまで選択できる。

 両モデルとも出力はHDMIとアナログRGB(D-Sub 15ピン)を装備。K1の拡張スロットはPCI(オーディオカードのSE-90PCIで使用)を装備。K10はPCI Express 2.0の空きスロットを備える。

K1本体
K10本体(下)と、オンキヨーUSB DACの「DAC-1000」(上)
K10のシャーシ構造

 メディアプレーヤーはfoobar 2000を使用。フリーのプレーヤーだが、ADIVA独自にカスタムして採用した。WAVやAIFFは最高384kHz/32bit、FLACは最高192kHz/24bit、ALAC(Apple Lossless)は最高192kHz/32bit、DSDは11.2/5.6/2.8MHzに対応する。前述のアップサンプリング機能「DiMO」は、CDやMP3などハイレゾではない曲のファイルを、192kHz/24bitなどに指定して変換できる機能。リアルタイム変換再生ではなく1曲ごとの変換だが、変換後に別ファイルとして保存し、スマートフォンなどに持ち出して再生することも可能。

foobar 2000をカスタマイズして搭載
ハイレゾではないファイルも、任意のフォーマット/スペックに変換して再生可能
主な再生対応フォーマット

 さらに、ADIVAのWebアプリ「aLink」により、スマートフォンやタブレットから楽曲の選択、再生/一時停止、音量調節などの基本操作が可能。iPhone/iPadのSafariや、Androidの標準Webブラウザ、Chrome、Firefox、Operaに対応する。「これまでのPCオーディオのようにデスクに拘束されることもない」としており、ワイヤレスキーボード/マウスとの組み合わせでリビングなどへの設置も想定。

Webアプリの「aLink」
再生画面
PCで作ったプレイリストを表示したところ

 K10に同梱するオンキヨーの「DAC-1000」は、192kHz/32bitのTI/バーブラウン製DACチップ「PCM1795」をL/Rチャンネルそれぞれに搭載。入力端子は光/同軸デジタルを各2系統、AES/EBUとUSBを各1系統装備。出力は光デジタルとバランス(XLR)、アンバランス(RCA)を各1系統備える。PCとUSB接続することでUSBオーディオとして動作。アンプ側のオーディオ専用クロックを使用したアシンクロナスモードでコントローラを動作させ、ジッタの少ない再生が可能になる。

 本体はファンレス仕様。PCパーツからの電磁ノイズを抑制するため、アビーの持つ筐体設計技術を集約。制振性や放熱性の高い肉厚の硬質アルミニウムを採用したほか、制振スポンジラバーシート/ワッシャー、アルミ削り出しインシュレータ、旭化成の非磁性体シート「パルシャットMU」なども使用。オンキヨー製スピーカーに合わせた音質チューニングも行なっている。

シャーシのカバーに非磁性体シート「パルシャットMU」を使用
パーツや設計の見直しによりノイズを低減
背面

 本体の外形寸法と重量は、K10/K1のいずれも215×290.5×106.3mm(幅×奥行き×高さ)、3.1kg。電源はACアダプタを使用する。K10とDAC-1000の接続は、AudioQuestのUSBケーブル「Forest2」で行なう。

 K1/K10のほかに、PC本体とパイオニアのUSB DAC/ヘッドフォンアンプ「U-05」がセットになった「P10」というモデルも、シリーズ最上位機として6月に発売予定。P10のPC本体スペックや価格は未定。

パイオニアのUSB DACを同梱したP10も6月に発売予定

“難しい”オーディオを1つにまとめて、ハイレゾ初心者にも

アビーの坂口信貴社長

 ADIVAの発表会は、東京・八重洲のGibson Brands Showroom TOKYOの試聴室「マリンシアター」で開催。アビーの坂口信貴社長が、オーディオ向けPCを手掛けた背景などを説明したほか、K10を使ったハイレゾ楽曲の再生デモも行なわれた。

 PCケースやモバイルアクセサリなどを手掛けているアビーは、'13年から3Dプリンタにも参入するなど、事業展開を広げている。坂口社長がハイレゾに出会ったのは'13年の終わりごろで、普段はiTunesやiPhoneでMP3などを聴いていたという坂口氏が、友人の勧めでハイレゾ音楽を聴いたところ「衝撃が走った。これを世の中に広めたいと思い、ハードウェアメーカーとしてできることは何かと考えた」という。

 坂口氏は「オーディオの世界は、良く言えば“深い”が、実際は“難しい”。PCオーディオも同じで、ハイレゾを聴く環境を構築する際にどのDAC、アンプがPCに合うかはほとんどの人にはわからないと思う。それが、普及につながっていないところが今もある」と指摘。自身もオーディオを難しいと感じていたという立場から、その解決策として「自分が一番欲しいものを作った。複雑な機器を一つにまとめるにはPCが一番いい」とオーディオ向けPC製品化の理由を説明した。これまで主にCDだけを聴いていた人など、ハイレゾの初心者を主なターゲットとしている。

 会場でハイレゾ楽曲のデモ再生も実施。ハイレゾ配信サービス「e-onkyo music」を運営するオンキヨー&パイオニアイノベーションズの黒澤拓氏が、最新のハイレゾ曲を中心に、タブレットからの操作でADIVAを再生した。山中千尋の「八木節」(ライヴ・アット・ブルーノート東京)など、CD未発売で配信先行の作品も最近登場している点や、カラヤンとベルリンフィルによる、アナログテープをマスターとした楽曲などを紹介した。

 なお、e-onkyo musicでは一部のNASやBDレコーダと連携した、購入楽曲の自動ダウンロード機能も提供している。アビーの坂口社長は、こうした最新の機能についても今後搭載に向けて検討するとしている。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズの黒澤拓氏
K10で再生デモを行なった

(中林暁)