ディスコレ
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期待の再スタート「アメイジング・スパイダーマン」
ヒロインやキャラ変更などで新たな楽しみも
(2012/12/14 10:00)
「ディスコレ」(Disc Collection)は、Blu-ray/DVD/CDなどから、ジャンルを問わずに選んだ作品のショートレビューコーナーです
原作が有名で、映画も大ヒットした「スパイダーマン」。これを新たなシリーズとして生まれ変わらせることは、どう見ても困難に思える。サム・ライミ監督は「スパイダーマン3」までの3作で一つのスタイルを築き、主演のトビー・マグワイアも回を重ねるごとに「ピーター・パーカーはこの人しかいない」という存在となっていった。こうした財産を使わず(使えず)に、原作コミック誕生からちょうど50周年となる2012年に、新シリーズとして作られたのが「アメイジング・スパイダーマン」だ。
劇場公開時から「闇の部分が控え目になって、ラブストーリーの要素が強くなった」とは聞いていたが、主演の2人が実際に恋人同士になったことから、「2人にあやかって恋人同士におすすめ」といった噂(プロモーション?)が一部で聞かれたときは「本当に映画として大丈夫なのか?」と心配にもなった。それだけ注目され、期待されていた作品ということだろう。「アメイジング」は、主人公の高校時代までさかのぼり、スパイダーマンが誕生するまでを新たな視点で描いている。
BD/DVDは4種類。価格は、3D本編も収めた5枚組で、フィギュアやTシャツを同梱した「アメイジング BOX」が24,800円、特典グッズや特典ディスクを一部省き、同じく3D本編も収録する3枚組の「IN 3D」が5,980円、2D本編のみとなる3枚組の「ブルーレイ&DVDセット」が4,980円、DVDの単品版「コレクターズ・エディション」が3,990円。
「アメイジング BOX」は3,000セット限定。なお、Amazon限定で、「アメイジング BOX」から封入特典を省き、ケースを、変身スリーブ付デジパック仕様にしたバージョンも発売される。なお、既報の通り、作品で使用したコスチュームやサイン入り台本などをセットにした世界で1つの「アメイジング BOX」もYahoo! オークションに出品。これは1,401,000円で落札されたという。
今回は、2D本編の「ブルーレイ&DVDセット」を視聴。これまでコミックを含め様々なバリエーションが存在するスパイダーマンが、今度はどんな顔を見せるのか、不安もありつつ期待して視聴した。
ピーター・パーカーは、ちょっとサエナい高校生。正義感は強いが、女子にはモテない。両親は彼が幼いときに謎の失踪をとげ、以来ベンとメイの伯父夫婦に育てられてきた。
ある日ピーターは父の消息を探るため、オズコープ社で遺伝子を研究するコナーズ博士を訪ね、実験中の蜘蛛にかまれてしまう。翌日、ピーターの人生は激変する。蜘蛛のように自由自在に動き回れるパワーとスピード、超感覚で危険を感知する“"スパイダーセンス”を身につけたのだ。ピーターはその能力で悪と闘い、“スパイダーマン”と呼ばれるスーパーヒーローとなっていく……。
現代風のヒーローへと大胆アレンジ
監督は、「(500)日のサマー」のマーク・ウェブで、今回のような大作の監督は初めてとのこと。主演は、「ソーシャル・ネットワーク」でマーク・ザッカーバーグの親友・エドゥアルド・サベリンを演じたアンドリュー・ガーフィールド。今作のヒロイン・グウェンは、「ゾンビランド」などのエマ・ストーン。
ピーター・パーカー(スパイダーマン)役のガーフィールドは、トビー・マグワイアとはジャンルの違った、現代風のイケメン。クラスメイトにからかわれるところや、明晰な頭脳を持つ点などは同じだが、校舎内でスケボーに乗るやんちゃな一面など、どこか飄々とした雰囲気も持つ。これが“今の時代に合ったパーカー像”ということだろうか。
全体を通して印象的だったのは、これまで積み重なってきた複雑な人間関係などの要素を大胆に削ぎ落とし、シンプルにメッセージを伝えることに注力していること。
これまでの思い入れから言うと、ヒーローの孤独さや、内面にある闇の部分をイヤというほど描いた前シリーズは見応えがあって好きだ。例えばパーカーが表では平然とした顔をしつつ心はひどく傷ついているようなシーンは、トビー・マグワイアの演技とも相まって、胸を打つものがあった。
「アメイジング」でも、パーカーの心に潜む闇をおろそかにしているわけではないが、時折見せる屈託のない笑顔からは、どこか「現実とうまく折り合いをつけている」と思わせる部分もある。“力を持つことに伴う責任”という重大なテーマは受け継ぎつつ、困難を飛び越える“軽やかさ”もパーカーの魅力の一つとして加わったようだ。最初はモテなそうだった従来版とは違って、どんどんヒーローとしてカッコよくなっていく様子は、急に別の世界の人になったような寂しさも少し感じた。
シリーズの要所であるアクションもパワーアップ。従来作でも、回を重ねるごとに実写とCGが自然に溶け込んできたと感じたが、「アメイジング」でも、シーンがCGだと意識させない精密な作りで、ストーリーにも入り込みやすい。ビルの間を“スイング”しながらくぐり抜けていくシーンは、CGであることを活かしたダイナミックなカメラワークの効果もあり、高所の怖さも感じられる見どころだ。
CGだけでなく、実際にニューヨークの高架下にワイヤーを吊るしてスパイダーマンが左右にスイングするロケも行なったとのこと。スタントマンによる人間的な動きが、超人であるスパイダーマンの存在にリアリティを持たせ、アクションに深みが加わっていると感じた。やはり、従来シリーズとは別の、新しい物語ととらえるのが良さそうだ。手から糸が出る仕組みもライミ版から変更されて(原作に沿って)いて、こうした細かな違いに着目して、ストーリーにどう影響するかを想像するのも楽しみの一つだ。特典ディスクには、CGやスタントの舞台裏などが収められているので、本編を観た後にも楽しめる。
もう一つ、大きな違いは、作品の重大な要素であるヒロインが、幼馴染みのMJから、ステイシー警部の娘・グウェンに変わったこと。ただ守られているだけでなく、時に勇ましく行動するところはちょっと新鮮だ。原作から見ると「グウェンこそヒロイン」との声もあるが、従来作からは大きな転換となった。MJももちろん魅力的ではあったが、これまでの他の男性とのイザコザには、正直ついて行けなかった部分もあり、こうしたゴタゴタを引っ張らずにリフレッシュしたことは歓迎したい。今後MJも出てくるとの話もあるが、どうなるか気になるところだ。
ライミ版で欠かせない存在となっていた口うるさい新聞社の社長や、いつも家賃を要求するアパートの大家など、コミカルな役割のキャラクターはあまり登場しない。彼らのアクの強さや、時々見せる“いい人”な部分も前作の魅力ではあったが、登場人物を絞り込んだことで、個々をもっと深く描こうという意図があったのかもしれない。ただ、敵キャラクターの存在については、従来シリーズと比べてしまうとやや印象が軽く感じた。敵ながら思わず同情してしまうような魅力を期待していたせいか、物足りなさがあった。
これまでのシリーズの積み重ねをベースに期待していると、色々な意味で裏切られるかもしれない。ただ、リセットされたことにより、これまで観ていなかった人も予備知識なしですぐ入り込めるし、知っている人も、別の世界の物語として新鮮な気持ちで観られるだろう。描き足りないところがあるとは思うが、無理に原作の要素を尺の中につめこむというのは期待されていないはず。ヒーローが成長していく様子を、続編でもじっくり楽しませてほしいと感じた。
「アメイジング・スパイダーマン」の評価ポイント(5段階) | |
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アクションの迫力度 | ★★★★ |
アメイジング度 | ★★★ |
続編への期待度 | ★★★★★ |
価格:4,980円 発売日:11月14日発売 品番:BRL-80246 収録時間:本編約136分、特典約294分 画面サイズ:シネスコ 音声:(1)英語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch) (1)日本語(DTS-HD MasterAudio 5.1ch) 発売元・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント |
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