レビュー

熟成の4K画質が変える映像体験。4K REGZA「58Z8X」

使い込むほどに見える4Kの魅力と地デジ高画質への執着

 4Kテレビが好調だ。GfKジャパンによれば、4Kテレビの販売増により、薄型テレビの販売金額は9月第1週に週次ベースでプラス成長となったという。これは、アナログ放送が停波した2011年7月以来、2年1カ月振りという。

 東芝、ソニー、シャープらが'12年末から4Kテレビの製品展開を本格化し、2013年6月以降にはインチ1万円を切る製品も登場。この秋にはパナソニックも4K液晶テレビに参入したほか、三菱電機も4K対応テレビの試作機を投入、LGも発売を示唆するなど、テレビメーカー各社の4K対応はますます進んでいきそうだ。

58Z8X

 ただ、4Kに焦点が当たるにつれ、「本当に4Kが必要なの? フルHDでいいのでは? 」という声も上がっている。テレビの主役たる地上デジタル放送がHD(1,440×1,080ドット)で送られてくる中、その4倍以上の解像度が必要なのか? という疑問だ。

 一方で、大画面化が進むことで、画素(ドット)が見えてしまうという不満が高まっていたのも事実。そもそも、フルHDテレビはだいたい50型を前提として開発されていたこともあり、60〜70型テレビを間近でみると、1m少々離れても画素が見えてしまったり、あるいは斜め線が段差になって見えたりしてしまう。つまり、50型を超えると「大画面の迫力」が「映像の粗さ」により損なわれるという問題がある。

 もちろん、4Kテレビのポテンシャルをフルに活かすのであれば、4Kコンテンツがあるのが理想的だが、現状は、放送もBlu-rayもフルHDが上限。そのため、4K映像だけでなく、地デジやBDビデオなど「既にあるHD映像をいかに高画質に4Kにアップコンバートし、再生できるのか」が、4Kテレビの満足度を決める重要なポイントといえる。

 今回は、実際の家庭での利用を想定し、東芝の58型4K REGZA「58Z8X」を約2週間使用した。4Kテレビを“普段使い”することで、2013年秋の4Kテレビの使いこなしを考えてみよう。

地デジは当面4Kにならない

 58Z8Xのレビューに入る前に、まず「4Kテレビ」について、いくつかの誤解があるので、その部分を解説しておきたい。強調したいのは「地デジは当面4Kにならない」ということだ。

 2013年に入り、総務省が主導して、放送業界も機器メーカーも協力し、「2014年に4K放送を開始し、2016年には8K放送を、2020年には4K/8Kを多くの視聴者が楽しめるようにする」というロードマップが作られた。

 そのためか、「地デジがすぐに4K/8Kになる」という誤解が広がっているようだが、それは誤りだ。現在ロードマップが組まれている4K/8K放送は、基本的にCSなど衛星放送を皮切りに、IPTVやCATVといった伝送路を使うことが前提となっている。

 つまり、地デジ放送は当面大きく変わることはない。だから、いま4Kテレビを買う場合は、地デジがいかに高画質に見えるかは、重要なポイントといえる。

上品な地デジ画質。4Kシネマシステムが支える高画質

 前置きが長くなったが、今回の4Kテレビ体験に58Z8Xを選んだ理由は、その「地デジ画質」だ。

58Z8X

 各社製品と地デジ画質を比べた時に、一見してノイズ感が少なく、クリアで見通し良い画質が印象に残ったためだ。4Kテレビを“普段使いする”という点では、最も適した選択肢と感じたからだ。

 REGZA Z8Xシリーズについては、すでに「大画面マニア」で画質についてのレビューを行なっているほか、開発者インタビューもお届けしているので、それらの記事も参照して欲しいが、地デジを中心としたHD映像のアップコンバートにこだわり、専用の映像エンジン「レグザエンジン CEVO 4K」を新開発/搭載した4Kテレビ。東芝4Kテレビとしては第3世代となる。

 58型というサイズは、約10畳の部屋に設置するとかなりの迫力がある。ただし、58Z8Xはベゼル幅が約12mmと狭く、前面は「ほぼ画面」というデザインなので、設置面積としては数年前の55型以下だ。スタンドを含む外形寸法は130.6×37.4×85.7cm(幅×奥行き×高さ)。

 また、4Kテレビは、視聴距離が近くてもよい、というのもポイント。一般的にフルHDテレビでは、画面の縦の高さの3倍「3H」での視聴が適切で、4Kテレビになると半分の1.5倍「1.5H」で迫力ある映像が楽しめる、といわれる。58Z8Xの画面高さは76.3cmなので、3Hで2.3m、1.5Hで約1.15mとなるが、1.5Hで見ても画素は全く見えない。というより、50cmまで近づいてもほとんど画素として認識できない。今回は主に1.5mくらいの距離で視聴している。

 画質モードは、「おまかせ」と[標準]を中心に調整したが、地デジを中心に見るのであれば、基本的におまかせモードでいい。画質はさすがに4Kならではの魅力がすぐに体験できる。

 地デジの場合、1080i(1,440×1,080ドット/インターレース)映像を3,840×2,160ドットの液晶パネルで表示するため、元映像の4倍以上の画素数にアップスケールして表示するわけだが、この画質がとても自然で、かつノイズがしっかり抑えられているため、見通しの良い地デジ映像が楽しめる。

4K超解像 微細テクスチャー復元

 例えば、ニュース番組のアナウンサーを見てみると、服のシワや陰影がきっちりとわかる。サッカー放送では、芝目と刈り込んだ模様も判別できるし、周囲のトラックの凹凸感も感じられる。4Kという情報量を活かした高画質が確かに体感できた。

 中でもわかり易いのがテロップなどの文字周りのノイズ感の少なさだ。フルHDテレビでも、テロップ周りのノイズや輪郭の崩れは気になるが、58Z8Xではブロック/モスキートノイズが綺麗に抑えられ、輪郭のドット感が消えて、しっかりと線として見える。それにより、くっきりと文字が見え、視力が良くなったように感じられる。

デジタル放送アップコンバートノイズクリア

 この辺りは、東芝がずっと力を入れてきた超解像技術「レゾリューションプラス」や、Z8Xシリーズで新搭載した、デジタル放送のMPEG-2映像に特化したノイズ低減と4K化を行なう「デジタル放送アップコンバートノイズクリア」などの効果だろう。かなりアグレッシブに映像処理を行なっているはずなのに、目立った破綻は感じられない。気になったのは、文字テロップの早めの横スクロール時に、文字が若干尾を引くことぐらいだ。

 ドット感が無いのはもちろんだが、フルHDテレビと比べると、全体的に、輪郭のキツさがなく、「品がある地デジ画質」という感触を覚える。

 よく見てみると、映像のエリアに合わせて超解像の効果が異なっていることがわかる。例えば、ゴルフのフェアウェイの芝の精細感がきっちりと出ている上、クリアな空、テロップ部周辺のきれいな線表現など、1枚の映像のなかでも精細感の表現がかなり異なっていることに気づく。そして、それが映像に立体感を与えているように感じる。

 これは、Z8Xシリーズから導入された「絵柄解析 再構成型超解像技術」の効果によるものだろう。従来も、超解像処理レベルをフレーム単位で調整していたが、新レグザエンジンCEVO 4Kでは、1画素毎に周囲の画素を参照し、周囲の映像情報にあわせて、1画素毎に精細度を調整するようにしたという。

絵柄解析 再構成型超解像
レゾリューションプラス

 もちろん、元映像に情報が残っていない場合は、ほとんど超解像は行なっていないようで、例えば「世界柔道」の特定のカメラ位置では、畳のディテールが殆ど残っておらず、その部分は情報量が上がっているようには見えない。しかし、周囲の看板だったり、テロップにはかなり積極的に精細化処理が行なわれているように見える。

 この効果を確かめるために、超解像やノイズリダクションをOFFにして比較してみたところ、映像がやや平板に感じられ、また、輪郭周囲の毛羽立ちやテロップ周囲のノイズも目立つようになる。REGZA Z8Xシリーズのユーザーは、是非この効果を一回試して欲しい。

おまかせ-レゾリューションプラス オフ
おまかせ-レゾリューションプラス オン

 画質設計を担当したTV映像マイスターの住吉肇氏が「そこにだけ注力した」というぐらい、Z8Xシリーズでこだわった地デジ画質。これを実現するのが、新開発の映像エンジンである「シネマ4Kシステム」だ。というか、そのためにシネマ4Kシステムのスペックや構成が決められた、ともいえる。

シネマ4Kシステム。3つの基板で構成される

 4K用に新開発した「レグザエンジンCEVO 4K」と、メインボードとタイムシフト用基板のそれぞれに「レグザエンジンCEVO」を搭載。CEVO 4Kはクアッドコア、CEVOはデュアルコアCPU搭載のため、東芝では「オクタコア搭載液晶テレビ」と謳っているが、地デジ高画質化の実現には、ここまでのシステムが必要だという。

レグザエンジンCEVO 4K
タイムシフト用基板
メイン基板にもレグザエンジンCEVO

 インタビュー記事に詳しいが、58Z8Xの地デジ高画質のポイントは、「まずCEVOで2Kにアップコンバートしたあと、CEVO 4Kで4Kにする」ということ。それぞれの回路に超解像やノイズリダクションなどの同じような機能があるが、「重複する部分をベストミックスする」ことがキモなのだという。

 というのも、当初はCEVO 4Kだけで地デジ高画質にチャレンジしたものの、(2Kの)REGZA Z7に敵わなかったという。その結果わかったことが、地デジでは2Kを4K化する前段、つまり、放送波の横1,440ドットを1,920ドットにする部分をしっかりやらないといけないこと。これまで培った再構成型超解像技術を使って、1,440を1,920にするというプロセスを通さないと、精細感や、立体感に大きな差が出てくることが判明したという。

 コスト面を考えれば、CEVO 4Kワンチップでこなしたほうがいいのは明らか。「地デジ画質にこだわる」が至上命題だったZ8Xだからこそ、こうした無茶な回路構成ができたといえるだろう。もしくは、東芝が4Kテレビについて、第3世代まで世代を重ねたことで、具体的なユーザーの用途にフィットした機能に本腰を入れられるようになった、といえるのかもしれない。

 ともあれ、58Z8Xの地デジ画質は、4Kテレビの成熟を感じさせるものだ。「地デジ見るのに4Kは要らない」という人も、是非一度見比べて欲しいと思う。

 また、シネマ4Kシステムで重視したもう一つの大きなポイントが、「階調性や微小な振幅が失われないよう、内部のバス幅を広くとり、最後まで12bit処理する」ことという。もともと優秀な階調表現は地デジでも確認できたが、その恩恵はBDビデオ再生時のほうがより大きいように感じられた。

BDビデオに感じるリアリティ。4K映像の“立体感”に驚く

 BDビデオも何本か視聴した。「映画プロ」とコンテンツモードは「高解像度シネマ」を中心に、アニメなどでは「標準」や「おまかせ」でコンテンツモード「高解像度アニメ」などを選択しながら視聴した。

 デジタル放送と異なり、BDビデオでは映像自体にノイズは殆ど無いため、地デジのような超解像レベルの違いはそれほど感じない。

 「ダークナイト」を見てみたが、冒頭から情報量の豊かさに圧倒される。何度も見ている作品ではあるが、建物の壁や調度品のディテール、そして肌の質感など、「フルHDのBDビデオにここまでの情報が入っているのか」と唸らされる。夕暮れ時のグラデーションの美しさ、ジョーカーの白いメイクに赤い口紅という色の鮮烈なコントラストなども印象的だ。鮮鋭な映像を4Kに求めるのであれば、その実力を十分に体験できるはずだ。

 また、BDビデオ「わたしを離さないで」の印象がとても良かった。強烈な明暗のコントラストがあるわけでなく、しっとりとした淡い色調で、フィルムの質感たっぷりの映画なのだが、フルHDテレビで見た時よりも、立体的に見えるように思えた。とにかく、薄暗い教室の中における生徒たちの服のディテールや顔の陰影、そしてグラデーションがとても豊かで、圧倒的にリアルに感じられる。

 チャプタ21で、薄暗い部屋の中に佇むトミーが着ているカーディガンの編み目の細かさ、表情など、少ない色の中のグラデーションがとても自然なのに、鮮烈な印象を残す。チャプタ25の家の門の前で話しかけるシーンでは、背景の海、門扉と門の柱と、人物のそれぞれ異なる質感がきっちり把握でき、とても立体的な映像に感じるのだ。この見え方には新鮮な驚きを覚えた。

 「わたしを離さないで」は、フィルムグレイン(フィルム固有の粒状感)がかなり多い映画なのだが、このグレインの見え方が綺麗なことが、とても印象に残る。その性質上、グレインは、映像の上でノイズのようにちらついて見えることが多いのだが、58Z8Xでは、グレインがノイズとは全く別の情報として描き分けられている。これも、4K化により、1画素ごとにより細かな表現が可能になった恩恵だろう。

 BD自体の映像情報はフルHDのはずだが、テレビが4K解像度になり、画素が細かくなったことで、映像の見え方が明らかに変わってきていると感じさせる。「4Kの強烈な解像度」だけではない、4Kならではの映像表現というものが確かにあると認識させれられた。

 アニメは、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q EVANGELION:3.33 YOU CAN (NOT) REDO.」や「コクリコ坂から」をコンテンツモード=高画質アニメ(BD)にして見たが、輪郭線の滑らかさや階調表現の豊かさ、単色で塗られた領域の鮮やかな発色など目を奪われる。映画では立体感が違うと書いたが、アニメの場合1枚1枚の絵の精細度がアップしたような、よりインパクトのある映像体験に感じられた。

4Kでもサクサクの操作感。機能面も最上位

 画質の強化に注力して開発された「レグザエンジンCEVO 4K」だが、その恩恵は画質だけではない。処理能力が向上したことで、全体的な操作レスポンスが向上し、チャンネル切り替えや番組表の起動などがほぼ瞬時に行なえるのが魅力だ。たまたま編集部に来たライター氏(REGZA Z9000ユーザー)が、4Kテレビを見て最初に驚いたことは、画質ではなく、番組表のレスポンスの良さだった。

 フルHDモデルのZ7でも高速だったが、重要なのは「フルHDから4Kになっても何ら変わらず使える」こと。例えば、地デジ初期のテレビは、アナログテレビに比べ、起動やチャンネル切り替えなどのレスポンスが非常に悪かったが、Z8Xにおいては、4Kになったからといって、通常使用で重要な操作感が全く損なわれていない。このあたりが、“普段使い”のテレビとしてとても重要な部分といえる。

過去番組表

 また、最大6チャンネルの地デジ番組を常時録画できる「タイムシフトマシン」機能も搭載。タイムシフトマシン用HDDは別売のため、同機能の利用にはHDD購入が必要となるが、9月25日までにZ8Xシリーズを購入した場合、容量4.5TB(タイムシフトマシン4TB、通常録画500GB)の専用HDD「THD-450T1」をプレゼントするキャンペーンが実施されている。4TB HDDでタイムシフトマシンを使う場合、約80時間分、3日強のタイムシフト番組録画が行なえる。

 タイムシフトマシンについての詳細はZ7の時にレビューしているのでそちらを参照して欲しいが、Z8Xになってもレスポンス良く、さくさくと動作する。HDD「THD-450T1」利用時には、3日強の番組がすべて録画されているので、過去番組表からの録画番組視聴で追従できる。また、リモコンのボタンを押すことで、タイムシフト録画番組から、ユーザーの好みに関連性の高い番組を画面上でおすすめする「ざんまいプレイ」にも対応。自分が見ているドラマやバラエティ番組に関連が深そうな番組をチェックできるので便利。タイムシフトマシンは、地デジ番組の接触率を高める機能だが、こうした機能と、地デジ画質というZ8Xのこだわりが、きっちりと融合している。

ざんまいプレイ
背面にTHD-450T1を装着

 通常録画用に地デジ×3、BS/CS×2チューナを装備しているので、単純に録画テレビとしても利用できるし、DTCP-IP/DLNAサーバーの「レグザリンク・シェア」に対応しているので、ホームネットワーク内のDTCP-IP対応機器で録画番組も視聴できるなど、基本的な機能も充実している。

 地デジやBD以外のコンテンツという意味では、写真は1度は見ておきたい。58Z8XのメディアプレーヤーからUSBメモリを選び、写真を表示すると自動的に「フォト」モードに切り替わる。高解像度を大画面で体感できる、という素朴な感動もあるのだが、明暗差のある写真では、その階調表現能力にも目を奪われる。PCディスプレイともプリントアウトとも違う、写真の魅力が感じられる。なお、写真は1枚あたり24MB以内で、横解像度4,096ドットまでのJPEGに対応する。

Hybridcastに対応

 また、VODなどのサービスを利用できる「クラウドメニュー」やクラウドサービス「TimeOn」なども引続き搭載。さらに、NHKが9月2日にスタートした「NHK Hybridcast」にもテレビとして初めて対応しているなど、機能面での充実も申し分ない。Hybridcastについてのレビュー記事は別途掲載しているので、そちらを参照して欲しいが、現在考えられる機能をほぼすべてカバーしているというのは心強い。

何にも劣らず、最高の画質。4Kならではの画質体験を

 この年末に向けて4Kテレビの市場が本格化するのは間違いなさそうだが、58Z8Xが魅力的なのは、明らかに画質は一段上の領域に入っているにもかかわらず、機能や操作面でもREGZAで最高のものに仕上がっていること。「次世代テレビ」だから、なにかのトレードオフがあるのではなく、最上位モデルに、最高の画質と機能が備わっているという安心感がある。

 正直使う前から58Z8Xの地デジ画質の良さはわかっていたのだが、レスポンスの良さやタイムシフトの利便性など、その画質を損なわないために、テレビシステム全体が細かく磨かれていることが実感できた。細かな積み重ねや新エンジンに起因する部分だと思うが、4Kでも世代を重ねたノウハウと洗練を58Z8Xから感じることができる。

 また、IFA 2013では、Z8XシリーズのHDMI 2.0への年内対応も発表された。これまではHDMI入力が4K/30pまでという点が、「将来性」を考えると若干不安ではあったが、HDMI 2.0に対応により、4K/60pもサポート可能になる。将来の4K放送向けのチューナやプレーヤーなどとの接続にも対応できるというのは安心で、歓迎したいアップデートだ。

 だが、今回一番驚いたのはBDビデオの画質。解像感だけでなく立体的でリアリティある映像を見ているとフルHDソースでも「4Kでしかできない画質」があると実感した。機能面での魅力も多いのだが、最大の魅力が画質であるというのは間違いない。

(臼田勤哉)