レビュー

外出先からリモートアクセス。nasne「Ver.2.00」を試す

Vita/Androidに対応。nasne同士のデータ共有など

nasne

 ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、ネットワークレコーダ/メディアストレージ「nasne」の最新システムソフトウェア「Ver.2.00」を10月10日に提供開始した。対象機種は10日発売のHDD 1TBモデル「CECH-ZNR2J」と既発売の500GBモデル「CECH-ZNR1J」で、インターネット接続環境があれば無料で2.00にアップデートできる。

 一般的にソフトウェアのアップデートでは、小数点ではなく整数の数字が上がるアップデートがメジャーアップデートと位置付けられている。今回2.00となったnasneもメジャーアップデートにふさわしく、数多くの新機能が搭載されたが、その内容はnasneのメイン機能であるレコーダ機能ではなく、「nasne」の名前にも含まれるNAS機能の強化が中心だ。Ver.2.00で強化されたnasneの新機能をチェックした。

NAS機能を大幅に強化。外出先からのリモートアクセスに対応

 2.00以前のnasneも、保存したファイルを共有できるNAS機能やDLNAサーバー機能などを備えていたものの、非常にシンプルなものだった。今回のアップデートでは新たにインターネットを経由してnasne内のファイルへアクセスできるリモートアクセス機能「Anytime Access(エニタイムアクセス)」を搭載。外出先など自宅以外の環境からもnasneに保存したファイルを利用できるようになった。

 なお、Anytime Accessでリモートアクセスできるのは静止画や音楽、録画番組以外の動画といったファイルが対象で、nasneで録画したテレビ番組は対象外。DTCP+のように、外出先から録画番組を視聴できるわけではない点は注意が必要だ。また、Anytime Accessの対応機器は現状のところSCEの携帯ゲーム機「PlayStation Vita」とAndroidスマートフォンのみで、iPhoneやPCは対象外となっている。

 このほか、インターネットを経由して2台のnasneを同期する「nasneシェア(ナスネシェア)」機能も搭載。特定のフォルダーを指定し、お互いのnasneを指定してnasneシェアを設定することで、同じフォルダー内に保存されたファイルを異なる場所にある2台のnasneから利用できるようになる。

 ソニーの電子書籍ストア「Reader Store」とnasneの連携機能も搭載。こちらは対象機器がPS Vitaのみとなり、PS Vitaで購入した電子コミックをnasneに保存できる。保存した電子書籍は宅内のネットワークのみで、Anytime Accessのように外出先からインターネット経由で閲覧することはできない。

 2.00へのアップデートは、ブラウザからnasne本体にアクセスすると表示される「nasne HOME」から可能。nasne HOMEへのアクセスは公式サイトに機種ごと細かな解説が用意されており、PS VitaやPS3のほか、PCやスマートフォンからのアップデートも可能になっている。

DLNAを外出先から利用する感覚のPS Vita「naspocket」

 まずはアップデートの中心であるAnytime Accessから見てみよう。Anytime Accessを利用する場合、PS Vitaは「naspocket(ナスポケット)」をPlayStation Storeから、AndroidスマートフォンはGoogle Playから「nasne ACCESS(ナスネアクセス)」をダウンロードしてインストールしておく。どちらも無料でインストールできるが、AndroidはOSがAndroid 2.3.3以降のスマートフォンのみが対象だ。なお、11月14日発売予定のPS Vita TVでも利用できる。

 Anytime Accessの利用にはnasneと同一のネットワークに接続した状態で事前の機器登録が必要。naspocketの場合は初回起動時に設定画面が表示され、画面に従ってnasneを登録すればいい。

naspocket
naspocket初回起動時にはガイドを表示
利用には接続するnasneの事前登録が必要
naspocketのメイン画面

 PS Vitaのnaspocketは、nasneに保存されたファイルを「静止画」「音楽」「動画」に区分して再生が可能。イメージとしては宅内のDLNA接続をインターネット経由でも利用できる、という感覚に近い。

 静止画は一覧表示のほか撮影日やフォルダー単位で表示することが可能で、表示はリスト形式またはサムネイル形式の切り替えが可能。フォルダーや撮影日単位でのスライドショー再生機能も備える。

写真はフォルダーまたは撮影日ごとに表示可能
リスト表示とサムネイル表示の切り替えが可能
スライドショー再生にも対応

 音楽機能はアーティスト、アルバム、ジャンルによるソートに加えてフォルダー単位での表示も可能。再生時は再生/一時停止、早送り/早戻しのほかリピート再生が可能だが、シャッフル再生には非対応。また、プレイリスト再生にも対応していない。再生中の音楽を止める場合は再生中画面のほか、画面右上の矢印をタッチすると「静止画」「音楽」「動画」の一覧に合わせて再生中の楽曲名と一時停止/再生ボタンが表示され、ここから操作することもできる。

音楽はアーティストやアルバム、ジャンルごとに再生可能
再生画面
画面右上のメニューから再生中の楽曲表示や操作が可能

 再生ファイルはMP3およびAACに対応。iTunes StoreおよびMoraで購入したDRMフリーのAACも問題なく再生できた。WMAおよびATRACはPS Vita本体が非サポートのため再生できず、ファイルとしても認識されなかった。

 動画はジャンルと日付、フォルダー単位での表示が可能。こちらは再生/一時停止のみで、早送り/早戻しボタンは次の動画が再生されるため、動画内でのトリックプレイは画面に表示されるタイムバーを利用することになる。

動画はフォルダーのほかジャンルと日付でソートできる
動画の再生画面。再生ボタンの左右は早送り/早戻しではなく他の動画を表示する頭出し機能
フルHDサイズの動画は表示できない

 動画の再生はMPEG-4およびMPEG-4 AVC/H.264に対応するが、画面サイズが大きいと再生できないようで、手持ちの動画ではHDサイズでは再生できたものの、フルHDサイズはファイル破損のアイコンが表示され再生できなかった。また、HDサイズでもビットレートが高い場合は映像が途切れてしまい視聴に耐えなかった。宅内でフレッツ光向けルータ「RV-A340NE」を経由してnasneへ接続したところ、手持ちの動画では1Mbps程度であればスムーズに再生できるが、9Mbps近い高ビットレートの動画は約10秒ごとに途切れてしまった。

 再生はタッチ操作が中心だが、PS Vita 1.80以上で対応したボタン操作をオンにすることでL/Rボタンや十字ボタン、○×ボタンを使った操作も可能だ。ただし、音楽再生中に他の画面へ遷移するとボタン操作で直接止めることはできず、前述のメニュー画面から再生中の楽曲を表示して一時停止することになる。

本体設定からボタン操作が可能
ボタン操作の場合カーソルが当たっている部分が青く囲まれる

 なお、再生はnaspocketのアプリ起動時のみで、Vitaのホーム画面では再生されないほか、画面がスリープになった場合も再生されない。アプリを起動している場合は本体のスリープ設定がオンになっていても再生し続けるので基本的には問題ないと思われるが、音楽を再生しながら他のアプリを利用する、というバックグラウンド再生はできないようになっている。

 各ファイルはストリーミング再生のほかダウンロードも可能。画面右下のボタンから「メモリーカードへコピー」を選ぶことでPS Vita内にファイルを保存できる。同一アルバム内の楽曲など同じ画面に表示されるファイルであれば複数選択でダウンロードすることが可能だ。

本体の「コンテンツ管理」アプリからPS Vita内のファイルをnasneにアップロードすることもできる

 また、nasneへのファイルアップロードはnaspocketからは利用できないが、本体の「コンテンツ管理」アプリから設定を行なうことでファイルアップロードも利用できる。ただしこちらは宅内向け機能のため、インターネット経由でのアップロードは利用できない。

 操作感は非常に快適。自宅、外出先ともにフレッツ光の環境からインターネット経由でアクセスした際も、自宅内で接続するのと変わらないスピードで操作できた。自宅に保存しておいた写真や音楽、動画を外出先で楽しむ手段として重宝しそうだ。

nasneをオンラインストレージとして利用できるAndroid「nasne ACCESS」

 Androidアプリのnasne ACCESSも、宅内やインターネット経由でnasneの静止画や動画、音楽が楽しめる点はnaspocketと同様だが、これらの形式以外のファイルもすべてアクセスできる点が違い。また、スマートフォンのカメラで撮影した写真をインターネット経由で自動でnasneに保存するバックアップ機能もnasne ACCESSでは利用できる。

 利用の際はnaspocketと同様に事前登録が必要。nasne ACCESSを起動し、チュートリアルの後に表示される登録機器一覧画面から「新規登録」で機器登録が完了する。

初回起動時に表示されるチュートリアル
利用には機器登録が必要

 ファイルの閲覧は「フォルダー」「フォト・ビデオ」「ミュージック」という3つのカテゴリになっており、フォルダーはnasneに保存したファイルへすべてアクセス可能。「フォト・ビデオ」は日付のみで表示でき、スライドショー機能などは備えない。一方、「ミュージック」は画面下部に専用のタブが追加され、曲名やアルバム、アーティスト、ジャンルのほか、リリース年やファイルの種類、フォルダー、保存されているnasne単位での表示も可能と、多彩なソート機能を備えている。

フォルダーからはnasneに保存されているすべてのファイルにアクセスできる
新規のフォルダー作成も可能
写真と動画は日付のみソート可能
音楽再生はアルバムやアーティスト、ジャンルでのソートが可能
メニューからリリース年やファイル形式、どのnasneに保存されているかでもソートできる

 静止画はnasne ACCESS上でも1枚単位でポップアップによる簡易表示が可能だが、音楽や動画の再生はAndroidにインストールされているプレーヤーアプリを利用する形式になっている。フォルダー機能でアクセスできるファイルはPS Vitaのnaspocketより多いが、スライドショー再生やアーティスト単位での連続再生ができないなど、再生周りではnaspocketのほうが優れていると感じた。

写真は1枚単位でポップアップ表示
音楽や動画は別のプレーヤーアプリで再生する

 ファイルを長押しすることでフォルダーの移動やコピー、スマートフォンへのダウンロードも可能。メニューから「複数選択」を選ぶことで、複数ファイルをまとめてダウンロードすることもできる。FacebookとTwitterへのシェア機能も標準で搭載するほか、「送信」機能からAndroid内の他のファイルへインテントで共有することも可能だ。

ファイル長押しでコピーや本体ダウンロード、FacebookやTwitterへのシェアが利用できる
メニューから複数選択することで複数ファイルのダウンロードも可能

 アップロードについても、nasne ACCESS自体には機能が搭載されていないものの、Androidのインテント共有を利用してアップロードすることが可能。ファイルを指定して「共有」を選択するとインテント一覧にnasne ACCESSが表示され、任意のフォルダーへファイルをアップロードできる。こちらはnaspocketと異なりインターネット経由でもアップロードが可能だ。

インテントのファイル共有先にnasne ACCESSが表示される
保存先を指定してアップロード

 写真を撮影するたびにnasneへアップロードできるオートアップロード機能も搭載。同様の機能はFlickrやPicasaといったオンラインアルバム機能にも用意されているが、nasne内の写真は1枚ごとファイルとしてアクセスできるため、DropboxやPogoplugの同機能に近い。

 アップロードは設定が終わった後に撮影された写真が対象で、アップロード方法は常時またはWi-Fi接続時の2種類から選択できる。LTEスマートフォンの月内容量制限が気になる人はWi-Fi接続時のみにすると、外出時にはアップロードを行なわずに自宅でまとめて写真をアップロードするという使い方が可能だ。

写真のオートアップロード機能。常時アップロードかWi-Fi接続時かを設定できる

 ただし、Wi-Fiの細かな指定はできないため、モバイルルータやテザリングを利用している場合もWi-Fiとして認識され、自動アップロードが始まる点は注意が必要だ。こうしたオートアップロード機能全般に言えることだが、モバイルルータを運用するユーザーのためにも、Wi-FiはSSIDを指定できる機能が欲しいと感じた。

 検索機能も搭載し、宅内にあるnasneを最大8台までまとめて検索できる。検索は1文字入力ごとに検索結果を返すインクリメントサーチだが、動作が速く待たされる感覚は無い。音声検索にも対応しており、入力した音声の候補を複数表示するなど誤認識の対応も考えられていて使いやすい。

検索機能。宅内にあるnasneを最大8台までまとめて検索できる
音声検索にも対応
音声検索の結果。候補が複数表示される
Android本体に保存されたファイルを管理するファイラーアプリとしても利用できる

 nasne ACCESSではnasneだけでなくAndroidスマートフォン内のファイルも管理可能。カテゴリも「内部ストレージ」ですべてのフォルダーにアクセスできるほか「カメラ」「フォト」「ムービー」「ミュージック」「ダウンロード」などファイル形式ごとアクセスすることも可能。シンプルなファイラーアプリとしても十分使いやすい。

 naspocket同様、宅内でもリモートでも反応速度は非常に速く快適に使える。Androidスマートフォンの場合は端末スペックにもよるが、クアッドコアCPU搭載の「ARROWS NX F-06E」からフレッツ光回線を経由して操作したところ、ほとんど待たされる感覚がなく本体内のファイルと同等の感覚で利用できた。

Androidウィジェット

 Androidウィジェットも対応しており、ホーム画面に設置しておくと新規にファイルが追加された場合に通知してくれる。1人でnasneを利用している場合はあまり必要がないかもしれないが、家族でnasneを共有していたり、後述するnasneシェアを設定している場合は便利な機能だ。

 naspocketと比べると再生周りでコンテンツを楽しむ部分は弱いものの、nasneに保存したファイルへ外出先からアクセスできる機能は非常に魅力的。こうしたリモートアクセス機能はバッファローやアイ・オー・データ機器などのNASでも搭載されているが、そうした製品と比べても操作感や使いやすさなど含めて十分な利便性と感じた。

nasne間で1対1のフォルダー共有が可能な「nasneシェア」

 nasneユーザー同士でファイルを共有できる「nasneシェア(ナスネシェア)」は、アップデートと同様「nasne HOME」から設定を行なう。ユーザー同士がnasneシェア用のIDを発行し、お互いに登録することで特定のフォルダーを共有することが可能だ。

 シェアは1対1に限定されており、異なるユーザーごと複数のシェアを作成することは可能だが、3人以上で1つのフォルダーを共有することはできない。また、共有できるのは設定時に新規作成するフォルダーのみで、既存のフォルダーに対して共有をかけることもできない仕組みになっている。

nasneシェアの設定手順

 シェアしたフォルダーに保存したファイルはユーザー間で自由にアクセスが可能で、DropboxやPogoplugといったオンラインストレージのファイル共有に近い。共有フォルダーは通常のフォルダーと外見は同じで見分けがつかないが、nasne HOMEからどのフォルダーにnasneシェアを設定しているかを確認できる。

 お互いにnasneを所有するユーザーという条件に加えてお互いのIDを設定するという手間もかかるが、設定が済めば非常に便利。Dropboxのようなオンラインストレージと比べて自宅のHDDであれば利用できる容量も大きく、遠く離れた家族とのやりとりはもちろん、ビジネスシーンでも十分に魅力的な機能と感じた。

購入済みの電子コミックをnasneに保存できるVita向け機能

 電子書籍ストア「Reader Store」との連携は、PlayStation Vita向けアプリ「Reader for PlayStaton Vita」の最新バージョン「1.40」が必要。あくまでVita向けのバップアップ機能になっており、Reader Storeのアカウントとnasneだけでは利用できない。

バックアップにはReader For PlayStation Vitaから事前登録が必要

 バックアップの利用にはAnytime Accessと同様事前の機器設定が必要で、nasneと同一のネットワークに接続した状態から全体設定の「nasne設定」でバックアップ先のnasne機器を登録する。登録が完了すると右下のメニューに「コピー」というメニューが追加され、ダウンロード済みのコミックをnasneにバックアップできる。コピーするには一度Vita内に書籍をダウンロードする必要があり、直接nasneに保存することはできない。

コミックごとnasneへバックアップできる。バックアップ済みのコミックを削除することも可能

 閲覧のスピードは同一ネットワーク内のみの機能ということもあって非常に快適。フレッツ光向けルータ「RV-A340NE」経由でnasneへアクセスしたところ、Vita内に保存されているファイルとさほど変わらない速度で読むことができた。操作方法もVita内、nasne内を意識することなく共通で利用できるのも便利だ。

 なお、前述の通り本機能は同一ネットワーク内を対象としたもので、外出先など異なるネットワークからは利用できない。外出先での起動時はnasneにバックアップしたコミックは未ダウンロードという扱いになり、再度ダウンロードしなければ読むことができないようになっている。

 電子書籍を頻繁に利用しているユーザーにとって、容量の大きいコミックは端末のストレージ容量を圧迫するため、すべてのコミックを端末に入れておくのは難しい。一度購入した書籍は何度でもダウンロードできるとはいえ、読みたいときに都度ダウンロードするのは手間がかかる。その点このnasne連携は、読み終わった書籍はnasneにバックアップしておくことで、自宅内であればいつでもコミックを読むことができる。電子書籍(Reader Store)のヘビーユーザーとしては非常に魅力的な機能で、ぜひ同様の機能をAndroidでも搭載して欲しいところだ。

NAS機能の大幅強化でより魅力的な製品に。対応端末の拡充を期待

 冒頭でも触れた通り、これまで簡易的な機能に留まっていたnasneのNAS機能だが、今回のアップデートでNAS周りが大幅に強化されたことで非常に使いやすく便利になった。特にAndroidスマートフォンのユーザーであれば、自宅に保存したファイルへ外出先からいつでもアクセスでき、端末内のファイルと同じ感覚で利用できるのは非常に嬉しい機能だ。

 一方、宅外の機能は大幅に強化されたが、宅内の利用に関しては市販のNASと比べてユーザーアカウントによる管理機能が無いなど機能面で劣る部分もある。家族など複数ユーザーで1台のnasneを共有することも考えると、ユーザー管理機能なども今後は搭載して欲しいと感じた。

 対応端末の拡充も期待したい点だ。現状のリモートアクセスはPS VitaとAndroidスマートフォンのみのため、せっかくの便利な機能もiOSユーザーにとってはまったく利用することができない。また、同機能がPCに対応すれば、DropboxやPogoplugといったオンラインストレージを利用しているユーザーにとっても非常に魅力的になるだろう。

Amazonで購入
nasnePlayStation Vita

甲斐祐樹