藤本健のDigital Audio Laboratory
第730回
ローランド久々のUSBオーディオ「Rubix22」。新シリーズ1万円台モデルの実力は?
2017年7月10日 13:04
ローランドから新しいオーディオインターフェイス、Rubixシリーズの第1弾となる「Rubix22」が発売された。最高で192kHz/24bitに対応し、2IN/2OUTで、MIDIの入出力も装備したという製品で、オープン価格で実売価格は17,000円前後。これまでのローランドの主力製品QUAD-CAPTURE(UA-55)から数えると6年ぶりとなる新製品だ。発売されたばかりのRubix22をさっそく試してみたので、そのオーディオ性能やレイテンシーなどについてチェックしていこう。
ようやく発売されたRubixシリーズ
Rubixシリーズの製品発表があったのは、世界最大の楽器系見本市、NAMM Show 2017が開催された1月。今回取り上げるRubix22の上位モデルとして2IN/4OUTの「Rubix24」、4IN/4OUTの「Rubix44」の3機種があり、1月6日のニュース記事でも記載されていた通り、当初はいずれも2月下旬の発売予定となっていた。しかし、生産側の体制を整えるのに想定以上の時間がかかってしまったようで、4カ月ちょっと遅れてRubix22が発売。Rubix24とRubix44はさらにもう少し時間がかかるようだ。
3機種の違いは単に入出力数だけではない。Rubix24とRubix44にはコンプレッサ/リミッタが搭載されており、ある程度の音作りまで可能になっているのだ。Rubix22には、そうしたエフェクト機能は入っておらず、シンプルな入出力という構成ではあるが、金属ボディのかなりガッチリした構造になっている。
まずはそのRubix22の外観から見ていこう。外形寸法は145×165×46mm(幅×奥行き×高さ)とコンパクトな本体に、フロントにはコンボジャックの入力が2つとヘッドフォン出力がある。コンボジャックなので、TRSフォンおよびXLRのキャノンのケーブルとの接続が可能になっており、ライン信号、マイク信号が受けられる。
左右にあるSENSツマミを用いて、それぞれの入力ゲインを調整することができ、左側はHi-Zボタンをオンにすることでギターやベースなどと直結することが可能だ。また右にある+48Vボタンをオンにすると、左右ともにファンタム電源が供給されるので、コンデンサマイクとの接続が可能になる。
ユニークなのは、各SENSツマミの上に取り付けられているLED。これは入力レベルを示すもので、何の入力もなければ消灯しており、適正なレベルでの入力があれば緑に点灯し、レベルオーバーすれば赤く点灯する。
こうしたインジケーターが搭載されているオーディオインターフェイス自体は珍しくはないが、Rubix22にはシャーシの上に切り込む形で取り付けられているので、上から見ても分かるし、遠くから見ても、状況が確認しやすい。実際に使ってみても、離れた位置、またオーディオインターフェイスの後方からでもレベルオーバーしたことや信号が入っていることが一目で分かるのは、なかなか便利に思えた。
一方、右側にある大きいツマミがメイン出力のレベル調整、そして一番右側にあるツマミがヘッドフォン用のレベル調整だ。メイン出力もヘッドフォンも信号自体は同じだが、独立してレベル調整できるようになっているのだ。
iPad接続対応。Lightning接続でMIDI入出力も
リアパネルを見ると、メイン出力が右側にある2つのTRSフォン端子。TRSなのでバランス信号として取り出すことが可能。その左にある上のスイッチはダイレクトモニタリングを司るもの。通常はOFFにしておくがSTEREOに設定すると左chから入力されたものは左、右chから入力されたものは右へと、そのままダイレクトにモニター出力される。PCを経由しないからレイテンシーゼロでのモニターが可能になるのだ。これをMONOに設定すると左chから入力された信号も右chから入力された信号もセンターに定位する形でのモニター出力となる。ギターやボーカルマイクなどをダイレクトモニタリングするならば、MONOを選べばいいわけだ。
その下のスイッチであるGROUND LIFTはUSB接続の音源などと接続した際、グランド信号がループして発生するノイズを遮断するためのものだ。PCとRubix22だけ使っているときはあまり問題にならないが、PCにRubix22以外に別のオーディオインターフェイスやMIDI音源モジュールなどを接続し、それらをミキサーなどを介して接続すると、グランドがループして、ハムノイズなどが発生してしまうことがある。そんなときにGROUND LIFTをNOR(ノーマル)からLIFTに設定することで、マスター出力ジャックやTRSフォンのSLEEVE(GROUND)部分がグランド、つまりシャーシ部分から完全に切り離され、グランドのループを遮断することができる。いわゆるダイレクトボックス(DI)を使うのと同様の効果を得られるのだ。
さらに、その左側にMIDIの入出力、そしてUSB-Type B端子、そして一番左にmicroUSB端子が用意されている。WindowsやMacなどのPCとの接続にはUSB-TypeB端子を使い、間にあるPOWER SOURCEスイッチはUSB-TypeB側にすることで、PCからの電源供給のみで動作する形になる。バンドルソフトとして、Ableton Live Liteのライセンスが付属する
Rubix22はUSBクラスコンプライアントなデバイスであるため、PCだけでなくiPadと接続して使うことが可能になっている。iPadと接続するためにはLightning-USBカメラアダプタが必要となるが、iPadからのUSBバスパワー供給だけではRubix22を駆動させることはできない。そこで、microUSB端子にACアダプタ経由で電源供給するとともに、POWER SOURCEスイッチをmiciroUSB側にするのだ。こうすることで、先日購入したiPad Pro 10.5インチも使うことができた。
ローランドのWebサイトにはiPadとしか記載されていないが、USBクラスコンプライアントであればiPhoneでも動作するはず。そこで、iPhoneで試してみたところ、こちらもまったく問題なく使うことができた。
ちなみにiPadでもiPhoneでもiOSデバイスを使ったときに嬉しいのがオーディオインターフェイスでありながら、MIDIインターフェイスでもあるという点。つまりLightning端子での接続1つでオーディオもMIDIも入出力できるようになるのだ。実際にMIDIの入出力ができることはMidi Tool BoxのI/O Setup画面からも確認できる。
オーディオ性能をテスト。激戦区2IN/2OUTモデルの注目機
いつものようにRMAA Proを用いてオーディオ性能をチェックしてみよう。あらかじめTRSフォンのメイン出力をそのまま3端子のバランスケーブルを用いてフロントのコンボジャック入力に接続。この状態で音量バランスを整えた上でテストするのだ。44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzの4つのパターンで試した結果が以下のものだ。
このボリューム調整ではメイン出力をフル出力にしているが、入力が側を左に絞った状態ではレベルが足りず、プリアンプを用いてある程度ゲインを上げる設定にしていたが、周波数特性もダイナミックレンジも、高周波歪も、非常にいい結果となっている。「THD + Noise, dB (A)」だけが若干低めではあるが、いずれのサンプリングレートにおいても、好成績となっている。
では、レイテンシーのほうはどうだろうか?これも44.1kHz、48kHz、96kHz、192kHzのそれぞれでテストしている。このレイテンシーテストにおいては、バッファサイズが大きく効いてくるのだが、ローランドのドライバでは直接バッファサイズをサンプル単位で指定するのではなく1~7の7段階で指定するのがこれまでの慣例。今回のRubix22も従来通りこの形となっているので、すべてのサンプリングレートで最低バッファサイズの1段階を設定している。
ただし、この連載においては44.1kHzの場合のみ、比較のためバッファサイズ128サンプルでも測定してきた。そこでRubix22でも同様の測定をしようと試みたが128ピッタリにはできなかった。1段階だと80サンプル、2段階だと144サンプルとなってしまうのだ。そこで、ここでは128サンプルに近い2段階での測定を行なっている。
結果を見ると、やはり44.1kHzでバッファサイズが80サンプルあるだけに、他社の超低レイテンシーを謳う製品と比較すると負けてしまう。とはいえ、レイテンシーが6~7msec程度であれば、ほぼゼロレイテンシー感覚で使うことができるので、実用上はまったく問題なさそうだ。
以上、ローランドの新オーディオインターフェイス、Rubix22についてみてきた。現在、2IN/2OUTのオーディオインターフェイスは、Steinberg、TASCAM、M-Audio、Focusrite、PreSonus……と各社の競争も進んでいる激戦状態。こうした中にローランドが久々に新モデルを投入してきたことで、この価格帯の製品はさらに注目されそうだ。
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