第153回:文句なしの3D品質。三菱「LVP-HC7800D」

~明るく、低クロストークのDLP機が実売30万円で~



LVP-HC7800D/DW

 三菱電機はかねてからDLPテクノロジー推進派のメーカーとして知られ、業務用プロジェクタ製品はもちろん、民生向けのプロジェクタ製品に関しても、DLP採用製品を"きまじめ"に継続的に新製品を送り出してきている。

 一方、三菱としてはソニーのSXRDパネルを採用した反射型液晶(LCOS)プロジェクタ「LVP-HC9000D」をリリースしており、これが三菱としてのハイエンド製品的位置づけとなっていた。また、同製品は、三菱初の3D立体視対応機ともなった。ただし、2D画質の究極形を目指しつつ、3D立体視に関しては今振り返れば「時代の要求に応え、ひとまず対応してみた」という感じの画質だったように思える。

 一方、今回発売された「LVP-HC7800D」は、三菱が得意とする単板式のDLPプロジェクタ製品であり、三菱の民生向けDLPプロジェクタとしてはトップモデルとなる製品だ。

 そして、それだけでなく、LVP-HC9000Dを凌ぐ、品質の高い3D立体視画質を実現したことが、LVP-HC7800Dの特長として強く訴求されている。ある意味、三菱製民生向けプロジェクタの2トップのハイエンド製品と言うことになりそうだ。

 今回の大画面☆マニアでは、このLVP-HC7800Dの実力を、同社の同クラスLCOS機のLVP-HC9000Dと対比させつつ評価した。


■ 設置性チェック~天吊り設置前提のため投射仰角は大きめ

 LVP-HC7800Dは、ボディ色の黒(ミッドナイトブラック)と白(プレミアムホワイト)がラインナップされており、前者が「D」型番、後者が「DW」型番に対応する。

重さは5.6kg。見た目の大きさからくる印象よりは軽い

 ボディデザインは、LVP-HC9000Dは縦長形状だったが、LVP-HC7800Dは横長形状となった。見栄えは少々無骨で、インテリアとしてのおしゃれ感には乏しいが、威風堂々とした存在感はある。ボディサイズは、LVP-HC9000Dよりは若干小振りな396×328×142mm(幅×奥行×高さ)で、最近のホームシアター機としては標準的なサイズだ。

 底面には前面側に2つネジ式の高さ調整脚部があり、後部側は固定式のゴム足となっている。ゴム足部から前部の脚部までの直交距離は約19cm。意外にも前後設置距離は短いので、奥行きの乏しい設置台にも置くことは出来る。

 純正の天吊り金具は近年のLVP機伝統の2分割提供スタイルを踏襲する。

 LVP-HC7800Dの本体側に取り付けるアタッチメントとしては「天井用取付アダプター」(29,400円)が設定されている。そして、天井側に備え付ける天吊り金具「BR-2」(23,100円)は「天井用取付金具ベース」として設定されており、これは過去製品のLVP-HC7000/6800/4000/3800用として提供されたものと同一だ。つまり、これまで三菱製の過去のLVP機を天吊り設置してきたユーザーは、HC7800Dに専用設計された「天井用取付アダプター」だけを購入すれば、ボルトオンで交換設置できることになる。なお、投射位置にオフセットを効かせたい場合に利用する延長ポール「BR-1P」(26,250円)も、従来から提供されてきたもので、引き続き利用できる。


投射レンズは手動式のフォーカス調整、ズーム調整、シフト調整に対応した1.5倍ズームレンズ(f=20.6~30.1)を採用

 投射レンズは手動式のフォーカス調整、ズーム調整、シフト調整に対応した1.5倍ズームレンズ(f=20.6~30.1)を採用している。100インチ(16:9)の最短投射距離は3.1m、最長投射距離は4.6mとなっている。投射特性はLVP-HC4000/HC3800Dとほぼ同じとみて良さそうだ。傾向としては、「投射距離を多くとった状態での小画面投影は難しい」ということだ。

ンズシフトを行なうツマミは本体上面の扉の下にある。ただしシフト幅はごく僅かで簡易的なものだ

 レンズシフトの機能はほぼ「おまけ」という感じで、左右のシフトには未対応で、上下シフトにおいても上下±13%程度で、ほとんど「シフト調整」というよりは、「微妙な位置合わせ調整」に使えるレベルでしかない。

 また、かつてのLVP-HC4000/HC3800Dでもそうだったが、LVP-HC7800Dは標準でかなり上向きに映像が投射される特性を持つ。あえていうと、台置き設置時は、光軸に対して映像を下方向に振ることが出来ないのだ。具体的な数値で示すと、例えば、レンズシフトを下に最大に設定したとしても、100インチ(16:9)投射時には光軸に対して映像の下辺が上に24cmも上がってしまう。なので、台置きにこだわるのであれば、非常に背の低い台と組み合わせる必要がある。

 特性的には、天地逆転させた天吊り常設を想定した光学設計のようで「高い天井に天吊り設置しても、映像を低く降ろせる」という特性の方を訴求したいのだろう。購入予定者は「レンズシフト対応機だから」と油断せず、綿密な設置シミュレーションを行なった方がいい。

 なお、本体を傾かせて設置し、その上で台形補正を掛けることもできるが、台形補正はデジタル画像処理であり、表示映像を実質的に圧縮して表示することになるので画質は劣化する。なお、処理負荷の関係からか、3D立体視時は台形補正がキャンセルされてしまうため、台形補正を利用して本格運用はできないと考えた方がいい。

正面正面向かって右側面。スリットは吸気口正面向かって左側面。スリットは排気口

 エアフローは正面向かって右側面から吸気して、左側面に排気するというデザインだ。なので本体両側面には物を置いたりすることは避けるべき。投射軸方向に風の流れは起こりにくいので投射映像に塵や揺らぎが映ることはない。

 光源ランプは240W出力の超高圧水銀ランプ。公称スペックではランプモード「低」時には190Wに下がると記載されている。なお、LVP-HC7800では、高輝度モードを「ランプモード=標準」設定とし、低輝度モード「ランプモード=低」設定としている。LVP-HC9000Dでは高輝度モードを「高」と低輝度モードを「標準」としていたのと対称的だ。LVP-HC7800Dにとって高輝度モードが基準なのだ。

 3D対応機だけあって比較的、高出力対応の光源ランプとなるが、交換ランプ「VLT-HC7800LP」の価格は26,250円と、下位モデルのLVP-HC3800D/HC4000Dと変わらない。ランニングコストは比較的安価だと言える。

 消費電力は370W。3D対応で高輝度なモデルなのでやはり一般的な2D機と比較するとやや高めだ。

 騒音レベルは公開されていないが、ランプモード「標準」(高輝度)の時は、本体から1mくらい離れた位置でもファンノイズが聞こえる。一方、「低」設定では、十分な静粛性が得られている。プリセット画調モード「3D」の時は強制的に高輝度モードに移行するため、3D立体視の頻度が高いユーザーはなるべく視聴位置から離れたところに設置したい。

3Dエミッター。左は本体との接続用ケーブル。長さは1.8m

 さて、LVP-HC7800Dは、アクティブシャッター機構付きの3Dメガネを利用するフレームシーケンシャル方式の3D立体視に対応する。そのため左右の映像の表示タイミングと3Dメガネの液晶シャッターの開閉タイミングの同期を取るための3Dエミッターの機構が不可欠なわけだが、HC7800Dは、これが別体型として提供されている。

 底面に滑り止めのゴム素材が敷かれたスタンドに3Dエミッタ本体がくくりつけられた自立ユニットスタイルで、LVP-HC7800DとはSビデオ端子ケーブルのような丸形の5ピンミニDINケーブルで接続する。ケーブルの長さは1.8mなので、実質的にはスクリーン側ではなく、本体付近に設置することになる。

3Dエミッタ自体は上下左右の首振り式の角度調整が可能

 別体型なので設置スタイルとしてはあまり美しくないが、遮蔽物等をよけるなどして確実に3Dメガネとの同期が取れる最適な場所を探りつつ設置できるので、3D立体視の安定性を重視する向きには逆に好評なはずだ。

 ただ、LVP-HC7800Dに限ったことではないが、3Dエミッタ稼働時には、部屋中に赤外線信号が充満するため、LVP-HC7800D自身を含め、ほとんどの家電の赤外線リモコンの感度が低下する。最近、繰り返し言っているが、アクティブシャッター型の3Dメガネの同期にはそろそろ赤外線方式ではなくRFの電波式にした方が良いような気がする。



■ 接続性チェック。HDMIとコンポーネントのみの入力

背面接続端子パネル

 接続端子パネルは背面側にレイアウトされる。HDMI入力端子は2系統を装備。2端子に機能差はなく、両方とも3D立体視、そしてDeep Color入力に対応する。ただし、x.v.Colorには対応していない。

 アナログビデオ入力はRCAピン端子×3からなるコンポーネントビデオ入力端子が1系統のみ。LVP-HC9000Dには、コンポジットビデオ、Sビデオの入力端子があったのだが、HC7800Dではついに姿を消した。

 PC入力端子としてアナログRGB接続に対応したD-Sub 15ピン入力端子を1系統装備している。実際にXbox 360を用いて接続実験を行なったところ、640×480ドット、1,024×768ドットのような4:3画面モードはもちろん、1,280×1,024ドット、1,280×768ドット、1,280×720ドットのような横1,280ドットモードの全バリエーション、1,920×1,080ドットのドットバイドット表示に至るまで全ての画面モードを映し出すことができた。なお、D-Sub 15ピン入力端子は別売の変換ケーブルを利用することで追加のコンポーネントビデオ入力として利用することもできる。

 PCとはHDMI端子を利用して、デジタルRGB接続することも出来る。その際に問題となるHDMIの階調レベルの問題だが、こちらも“ユーザーメモリの画調モードに限って”は「アドバンスドメニュー」-「HDMI入力」の設定で正しいHDMI階調レベルを選択することができる。

 デフォルトは自動認識を行なう「AUTO」で、それ以外の手動設定として「エンハンス」「ノーマル」「スーパーホワイト」が選択できる。エンハンスは0-255、ノーマルが16-235スーパーホワイトが16-255の階調レベルに対応する。筆者の実験では、PS3側のメニューの「設定」-「ディスプレイ設定」の「RGBフルレンジ(HDMI)」の設定の確認を「フル」にしていると、LVP-HC7800Dの「HDMI入力=AUTO」では正しく認識できずにノーマル(16-235)設定と誤認されてしまっていた。PCやPS3を接続した際には明示設定をした方が良さそうだ。

 なお、上で「ユーザーメモリの画調モードに限って」と断りを入れたのにはわけがある。なぜか「シネマ」「ビデオ」…といったプリセット画調モードを選択していると、LVP-HC7800Dの「HDMI入力」設定はAUTO固定になってしまい、設定の変更が出来ないのだ。これは少々不便なので改善を望みたい。

オーバースキャン=100%が実質的なアンダースキャン。画面全域を表示するならばこの設定に

 もう一つ、ゲーム機やPCとのHDMI接続で問題となる重要なテーマに、微妙に拡大表示されてしまうオーバースキャン問題もある。こちらはプリセット画調モードでもユーザーメモリの画調モードでも、「信号設定」メニューの「オーバースキャン」設定で「100%」を設定することで、入力映像の全域を表示するアンダースキャン表示が可能となる。特別な理由がない限りは「100%」設定にしておいたほうがいいだろう。

 RS-232C端子は、サービスマン向けのメンテナンス用端子。Ethernet端子も搭載されているが、これは同一ネットワークに接続されたPC上のWebブラウザを利用してLVP-HC7800Dをリモート制御したり、状態管理をするために利用するものだ。


トリガー端子1、2のカスタマイズは「設置」設定にて行なう。ランプモードの設定もここだが、プリセット画調モード使用時は変更ができない

 トリガ端子は、ハイエンド機らしく、LVP-HC9000Dのように他機器との連動動作用の2系統を配備している。トリガ1は本機稼働時に常時12Vを通電するもので、トリガ2はアスペクトモードを「アナモフィック1」「アナモフィック2」に設定中に12Vを通電する仕様になっている。前者は電動開閉スクリーンや電動開閉カーテン/シャッターなど、後者は別売の電動脱着型のアナモフィックレンズと連動動作をさせるために活用することになる。

 この他、Sビデオとよく似た端子があるが、3Dエミッタを接続するための専用端子だ。


■ 操作性チェック~プリセット画調モードでパラメータの変更が出来ないなど、ややクセのある操作性

 LVP-HC7800Dのリモコンは、これまでの一連のLVP-HCシリーズと基本デザインは同じで、底面に2つの凹みを配したエルゴノミックデザインが特徴的なバータイプのものになっている。

本体正面には簡易操作パネルがあしらわれている

 持った感じの手への馴染みは良好なのだが、操作ボタンの上面に記載された機能名がほぼ全てアルファベット2-3文字の略称で、最初見た時にはビックリしてしまうかも知れない。[1/2]、[P.M.]、[F.R.C.]、[C.M.]、[CNT]、[BRT]、[C.T.]、[B.C.]、[A.P.]といったボタン群がどういった機能かはリモコン本体面側に記載された機能名であることはすぐに理解できるだろうが、初心者はちょっと戸惑ってしまいそうだ。

リモコン

 LVP-HCシリーズのこだわりなのか、歴代製品と同様、各ボタンは自照式でオレンジに発光するが、ライトアップボタンがない。何かのボタンを押すと発光するという独特の操作系が採用されている。実質的には、単体で押しただけでは意味をなさない十字方向キーを押すことがライトアップの操作系になるかと思う。ただ、オレンジの発光色は暗闇で見ても暗く、また、内蔵LEDの個数が少ないためか、リモコンの中央側と左右端のボタンでの明るさの差が著しく、端のボタンはほとんど明るくならずに質感が低い。そろそろ、このリモコンも改良が必要なのではないだろうか。

 電源オン操作から三菱電機のロゴ(スプラッシュスクリーン)が出るまでの所要時間が約22.0秒、HDMI入力の映像が出るまでが約48.0秒という結果になった。スプラッシュスクリーンの表示をオフ設定にするとHDMI入力の映像が出るまでの所要時間は約24秒となり、起動時間が半分に短縮する。

 入力切換操作は、対応する入力端子への個別ボタンを押して直接切り換える方式だ。PCは[PC]ボタン、コンポーネントビデオは[COMP]ボタン、そしてHDMIに限っては2系統のHDMI入力があるので[1/2]ボタンを押してのHDMI1←→HDMI2の交互切換操作になる。それにしてもHDMI入力の切り替えボタンのボタン名が[1/2]ボタンというのには、少々面食らってしまった。

 アスペクト比切換は[ASPECT]ボタンにより順送り切換式。切り替え所要時間は約4.0秒と遅めだ。また、切換のたびにいちいち画面が消えるのが煩わしい。用意されているアスペクトモードはLVP-HC3800D/HC4000Dと同一だ。

モード概要
4:3アスペクト比4:3映像をアスペクト比を維持して表示
16:9パネル全域に表示。アスペクト比16:9の映像向け
ズーム1アスペクト比4:3フレームにシネスコ(2.35:1)記録されている映像を字幕エリアを確保しつつ16:9パネルに拡大表示するモード
ズーム2アスペクト比4:3フレームにビスタ(1.85:1)記録されている映像を字幕エリアを確保しつつ16:9パネルに拡大表示するモード
ストレッチアスペクト比4:3の映像を疑似ワイド(16:9)表示するモード
アナモフィック1シネスコ(2.35:1)記録されている映像をパネル全域にマッピングしてアナモフィックレンズを通して視聴するためのモード
アナモフィック2アナモフィックレンズを通した状態でアスペクト比16:9などの映像を正しく見るためのモード

 アナモフィックレンズ使用時のアスペクト比切換が充実しているのは、LVP-HCシリーズの特徴だが、LVP-HC7800Dでは、[ASPECT]ボタンで切り換えられるのは上記中4:3~ストレッチまでとして、アナモフィック1、2は専用ボタンの[ANNAMO]ボタンでしか切り換えられないような操作系になった。地味ながら、アスペクトモードが多い本機ならではの仕様改善点といえる。

 メニューの画面デザインは、LVP-HC9000Dよりは、LVP-HC3800Dに近いため、基本的なメニューアイテムについての解説は本連載LVP-HC3800D編を参考にして欲しい。本稿ではHC3800Dから変わった点について触れることにする。

 LVP-HC3800Dでは、プリセット画調モードという概念がなく、「ガンマモード」という画調パラメータが実質的なプリセット画調モードとなっていた。LVP-HC7800Dではこれが改められ、他機種と同様なプリセット画調モードが用意されている。用意されているモードとしては「シネマ」「ビデオ」「3D」「AV MEMORY1」「AV MEMORY2」「AV MEMORY3」の6つ(AV MEMORYとインプレッションについてはそれぞれ後述する)。

ユーザー・ガンマモード

 ガンマモードは、LVP-HC7800Dでも、引き続きLVP-HC3800Dの時のような映像種別ごとに最適化されたプリセットガンマカーブが用意されているが、そのラインナップは微妙に変化している。ガンマモードの設定値は「シネマ」「2.0」「2.1(ビデオ)」「2.2」「3D」「2.4」「USER1」「USER2」が用意されており、これはLVP-HC9000Dの方と同じだ。USER1,2はいわゆるユーザーがカスタマイズできるガンマモードのことで、2%、4%、6%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、70%、90%の12ポイントにおいて基準ガンマカーブからの補正値として-99~+99の値を設定してオリジナルのガンマカーブをデザインすることができる。設定はRGB個別で設定することも、あるいはまとめて設定することも可能。ちなみに、HC3800Dではわずか3ポイントでの補正しか出来なかったので、それと比較するとカスタマイズ範囲が大幅に広げられたといえる。なお、HC9000Dでは15ポイントにおいて10ビットの出力値を直接設定する操作系だったので、UI的にも機能的にも微妙に異なる仕様となっている。

 ユーザーメモリ機能は、LVP-HC3800DともLVP-HC9000Dとも異なる機能設計となっており、結論から言えば、これまでのLVP-HCシリーズの独特な管理方式を改め、他機種で採用されているような形態になった。

 具体的にはユーザーメモリ機能は、"ユーザー画調モード"の体裁を取ることになり、各入力系統ごとに個別に用意されたAV MEMORY1~3に、各画調パラメータの調整結果を保存するスタイルになる。

 プリセット画調モードの切り替えは[P.M.]ボタンを押すことで「シネマ」、「ビデオ」、「3D」の各モードが順送り式に切り換わる方式で、その切換所要時間は約ゼロ秒で非常に高速だ(ユーザーメモリ側には切り替わらない)。ユーザーメモリであるAV MEMORY1~3については、個別に用意された[1]、[2]、[3]の3つのAV MEMORYボタンを押すことで直接切り換えることが可能となっている。こちらも切換所要時間はゼロ秒であった。

ユーザー・色温度モード

 色温度はプリセットとして「高」(9300K)、「標準」(6500K)、「低」(5800K)の3つと、ランプ特性がむき出しになる「高輝度」の合計4つが用意されている。LVP-HC9000Dにあった6000Kと7500Kの設定はない。色温度はLVP-HC3800Dの時と同じように、ユーザーカスタマイズができる「USER」モードも用意されている。USER色温度モードはR(赤)、G(緑)、B(青)の各色のコントラストとブライトを個別に設定するアプローチで作成する方式。色温度モードの作成で「コントラスト」と「ブライト」という伝わりにくいが、イメージ的には他機種の色温度作成機能で言うところの「ゲイン」と「オフセット」として考えると調整のイメージがしやすいかも知れない。

 歴代のLVP-HCシリーズに搭載されてきた「カラーマネージメント」機能はLVP-HC7800Dにも搭載されている。これは、赤、緑、青、シアン、マゼンタ、黄の6色に分類される色範囲について色調整を個別に行なうもの。調整結果は調整対象の色周辺色にしか影響を与えないデジタル次元での調整となる。

 カラーマネージメント機能は、LVP-HC7800Dでも、リモコンの[C.M.]ボタンから直接呼び出せるようになっている。

カラーマネージメント機能

 実際にLVP-HC7800Dを利用していて少々困ったことがあった。それは「シネマ」「ビデオ」「3D」といったプリセット画調モードにおいて、ほとんどの設定パラメータの書き換えが禁止になってしまう点だ。

 特に困ったのがHDMI階調レベルの設定である「HDMI入力」の設定だ。

 「シネマ」「ビデオ」「3D」のプリセット画調モードでは「AUTO」が固定となってしまうため、AUTOがうまく認識できなかった時には間違ったHDMI階調レベルで表示されたままになり、直しようがなくなってしまうのだ。例えばPS3側を「RGBフルレンジ(HDMI)=フル」設定にしているとき、LVP-HC7800D側を「HDMI入力=AUTO」では誤認してしまうので手動設定をしたいのだが、プリセット画調モード選択している限りは、これを直しようがないのである。

プリセット画調モードにするとほとんどのパラメータが変更不可能になってしまう(メニューアイテム自体が不活性表示になる)。画調パラメータだけでなく機能パラメータの変更が出来なくなってしまうのは困りもの当然だが、ユーザーメモリでは、全てのパラメータの設定変更ができる

 これ以外にも、プリセット画調モードでは、ノイズ低減機能、カラースペース、補間フレーム挿入の設定や、動的アイリスの設定など、ほとんどの設定や画調パラメータも変更できない。なぜ、こんな仕様にしてしまったのか理解に苦しむところだ。

 初心者から中級者くらいまでは「プリセット画調モードを基本にして調整していく」という活用スタイルが中心だ。また、画調パラメータをいじらないまでも、正しい表示にするための設定変更が出来ないのは困りものだ。

 仮に「LVP-HC7800Dではプリセット画調モードは使わずに、画調はユーザーメモリ機能を使って各自でカスタマイズせよ」という提案だとすれば、「LVP-HC7800Dは初心者向けではない」と言わざるを得ない。この制限はファームウェアなどで改善してほしいものだ。


■ 画質チェック~クロストークがほぼ見えない3D画質。秘密は新開発の3Dメガネにあり

画素描画品質は良好。色収差も少なく、フォーカス感も秀逸

 LVP-HC7800Dの映像パネルは0.65型のDarkChip3タイプのDMDチップとなる。単板式DLPプロジェクタなので、フルカラーは時分割表現になってしまうが、その根幹となる回転型カラーフィルタ(カラーホイール)は、RGBRGBの6セグメントタイプで、4倍速駆動させる高品位なものを選択している。

 開口率が90%はあるDMDチップの画素はさすがに面表現にも粒状感がなく美しい。画素を区切る格子線は100インチ程度の投射画面でも2mも離れればほとんど見えない。ここは透過型液晶プロジェクタにはないDLPならでは魅力だ。

 レンズシフト機構を制限して設置性を犠牲にした分、光学性能は高い。

 まずフォーカス性能が高く、画面中央でフォーカスを合わせれば画面全域にわたってクリアな描画が得られていた。

 黒背景にドット単位の文字を写しだしても、画面中央付近までは、色収差による色ズレが殆ど無く、1ドット1ドットが周辺画素に影響を出さずにくっきりとしたフルカラー表現を行なってくれている。「色収差は皆無か」というと、さすがにアナログな現象なのでそういうわけにもいかず、微妙にはある。具体的には、画面下に行くにつれて、緑が右下方向に少々ずれている。ただ、競合他機種と比較すれば、この色ズレの少なさは圧倒的だ。フルHDの映像を本当の意味でフルHD解像度で映し出せる数少ないプロジェクタだと言えるかも知れない。

 公称輝度は1,500ルーメン(ランプモード=標準時)で、標準的な1,000ルーメン程度のホームシアター機と比較するとかなり明るい。最大限の輝度パワーで投射することができる「ランプモード=標準」、「BRILLIANT COLOR=ON」、「オートアイリス=OFF」という設定状態であれば、蛍光灯照明下でもそれなりに見えてしまうほどだ。この明るさならば、ホームパーティで用いたり、データプロジェクタ的に活用することも十分可能だろう。完全暗室で使用する際など、明るすぎるという場合は、「ランプモード=低」とすればいい。1,000ルーメン程度の明るさになる。

ランプモード=低ランプモード=標準

 公称コントラスト比は10万:1。ただし、これは動的絞り機構であるオートアイリスを有効にさせた状態での値だ。なお、ネイティブコントラストは非公開とされる。ちなみにDarkChip2世代のLVP-HC3800Dはオートアイリス無しで3,000:1だった。通説では、DarkChip3はDarkChip2と比較した場合、+10%ほどの改善があると言われている。

 実際に明暗差の激しい映像を見てみると、明部方向のダイナミックレンジの広さでコントラストを稼ぐ、液晶テレビ的な画作りを感じる。絶対的な暗部の沈み込みは、LVP-HC9000Dのような近年のLCOS機と直接比較してしまえば「やや及ばない」と言わざるを得ないが、「黒浮きが気になる」というレベルではない。優秀だとは思う。

 LVP-HC7800Dのような時分割でフルカラー、階調を生成する単板式DLPというと、誰もが気になるのが階調性能だろう。

 単板式DLPという先入観を持ったまま見たとしても、階調表現力は優秀だと感じるはずだ。単板式DLPで問題となる最暗部付近の階調表現のチラツキはほとんど分からず、「スクリーンに顔を寄せて見てやっと分かる」というレベル。一般的な視聴位置であれば、必要十分なアナログ感に満ちた暗部階調が堪能できるはずだ。「ダークナイト」のチャプター20の夕闇を走る黒いボディの車両の陰影や、チャプター23のバットマンの黒装束の立体感なども、良好に描き出せていたことを付記しておく。

 発色は良好だ。純色も中間色も、ナチュラルな発色で、文句なしだ。純色を見てみても、赤が朱に寄ったり、緑が黄に振れたりもしていない。肌色も、水銀系ランプ特有の黄味の強さは感じられず、ハイライト付近は透明感ある白い肌が描かれ、間接光で浮かび上がるような肌からはほどよい暖かみを感じることができる。LVP-HC3800Dよりも色再現性能は向上していると思う。

 カラーグラデーションも時分割フルカラーとは思えないほどアナログ感のある表現になっている。補色同士を混合させるグラデーションでも目立った破綻はない。単色を黒にグラデーションさせた場合でも、最暗部付近でちゃんと色味が残っているのには感動する。

 単板式DLPと言えば気になるのが色割れ(カラーブレーキング)現象だが、これも皆無とは言わないまでも、日常的なシーンではほとんど問題がないレベルだ。例えば、動く俳優の頬の陰影に擬似輪郭が見えると言ったようなことはない。最も厳しい条件と言われる「黒背景の中を明るい物体が動いて、これを目で追う」というような特殊ケースでは、その動体の輪郭部分に色割れが見えることは見える。しかし、その見えるレインボーアーティファクトも、その面積が以前と比較すれば劇的に狭くなっており、「レインボーを見つけてやる」と身構えない限りは気にならないだろう。

BRILLIANT COLOR=OFF
BRILLIANT COLOR=ON。色が豊かになるだけでなく明るくなる。

 続いて、LVP-HC7800Dに搭載される特徴的な高画質ロジックについて見ていくことにする。

 HC7800Dでは、リモコンの[B.C.]ボタンを押すことで、メニュー操作をせずに直接BRILLLIANT COLORのオン/オフが出来るようになった。BRILLIANT COLORとは、DLP技術開発元のTIが自ら編み出した技術で、単板式DLPプロジェクタの中間色再現においてRG、GB、BRの混色までを動員することで、光利用効率を1.5倍に引き上げて輝度を上げ、色ダイナミックレンジも拡大させるものだ。

 オン時は中間色の艶やかさが向上し、明部階調のダイナミックレンジも拡大されるが、それと引き替えに中間階調付近の一部の組み合わせの2色混合グラデーションでマッハバンド(擬似輪郭)が発生する。なので、明るさ重視ならばオン、階調性重視ならばオフ…といった活用スタイルがいいだろう。HC3800Dでは、BRILLIANT COLORをオンにすると肌色の赤みが強くなったが、本機ではそうした現象はない。

カラースペース=ノーマルカラースペース=ワイド。主に緑と青の領域の色域が拡大される。写真でもその傾向の違いは分かるはず

 なお、これとは別に「カラースペース」という設定項目がLVP-HC7800Dには新設されている(LVP-HC3800/4000/9000Dにはない)。BRILLIANT COLORはDMDチップやカラーホイールの駆動にまつわる技術だが、こちらは映像エンジン側の処理によるものになる。「ワイド」と「ノーマル」の設定が選べ、「ワイド」はいわゆる広色域モードになり、一方「ノーマル」はsRGBに忠実な色域が採択される。「ワイド」では、傾向としては緑やシアン方向が鮮烈になり、同時に純色の鋭さが増すが、それほどどぎつくはないのでこちらを常用するのもいいと思う。

 動的絞り機構(オートアイリス)の設定は、リモコンの[IRIS]ボタンを押してから開く設定メニューにて、絞り開放の「OFF」や、映像の平均輝度を算出して動的に絞り量を増減する「AUTO1」「AUTO2」「AUTO3」が選択できるようになっている。LVP-HC9000Dにあった18段階の任意の絞り量で固定できるユーザーモードはLVP-HC7800Dには搭載されていない。

オートアイリス=OFFオートアイリス=AUTO1
オートアイリス=AUTO2オートアイリス=AUTO3

 取扱説明書では、AUTO3が一番絞り幅が多いと説明されているが、実機で確認した感じではAUTO1が絞り中、AUTO2が絞り幅大(=透過光小)、AUTO3が絞り幅小(=透過光大)というふうに見えた。つまり、明るさ重視のアイリス制御ならばAUTO3、暗さ重視ならばAUTO2、中間的な特性を望むならばAUTO1という感じだ。取扱説明書が間違えているのかも知れない。

 また、個体差なのかははっきりしないが、オートアイリスを有効にさせて実際に絞りが介入すると画面の左下が画面の他の領域と比較して暗くなる輝度ムラが発生する。緑単色の暗めなグリッドパターンなどでテストすると分かりやすい。これは、構造上の問題という可能性が高いので改善を要する。気になるユーザーはオートアイリスをオフにした方がいい。

オートアイリス=OFF。画面全域が均一の明るさオートアイリス=ON。画面左下が暗くなる

 LVP-HC9000Dに搭載されていた補間フレーム挿入を組み合わせた倍速駆動は、LVP-HC7800Dにも継承搭載された。

 「フレーム・レート・コンバージョン」(FRC)と命名されたこの機能は、「トゥルーフィルムモード」「トゥルービデオモード」「オフ」の3つの設定が選べるようになっている。1080/24p入力時に限っていうと「トゥルーフィルムモード」「トゥルービデオモード」は共に、補間フレームを3枚挿入してオリジナルフレームと共に4枚を表示し24×4=96Hz(96fps)で表示するモードになる。しかし、「トゥルーフィルムモード」の方が、「トゥルービデオモード」よりも補間フレームの支配率を下げたチューニングとなっているようだ。

トゥルービデオモードトゥルーフィルムモード

 よくこの手のテストに用いる「ダークナイト」冒頭のビル群のフライバイシーンを再生して検証したが、トゥルービデオモード、トゥルーフィルムモード、共に左奥の巨大なビルで窓枠がブルブルと振動してしまっていた。

 LVP-HC7800Dでは、こうしたアーティファクトに対処するために「FRCレベル」という調整パラメータを新設している。これは、補間フレームのブレンド強度を設定するもので1が最弱設定(原フレームが支配的)、5が最強設定(補間フレームが支配的)となる。いじってみた感じでは、デフォルトの4では、トゥルーフィルムモードでも振動が出るが、これを2にまで下げると振動が出なくなる。2がお勧めというつもりはないが、いずれにせよ、もし視聴している映像で補間エラーが目立つようならば、ここを少し下げてみるといい。

 なお、FRCを「オフ」設定とした場合は、1080/24pの映像ソースならばオリジナルフレームのみを4度描画しての96Hz(96fps)表示を行なう。いわゆるリアル24コマ表示に相当する表示になるので、フィルムジャダーのカタカタ感を忠実に味わえる。補間エラーに怯えるのが嫌なユーザーはこちらを活用するべきかもしれない。

LVP-HC7800D専用の3Dメガネ。フレーム部が厚いのは耐ショック性能を確保するためだと説明されている
スイッチは長押し操作などが不要な物理スイッチだボタン電池はCR2032を使用

 3D画質についても触れておこう。

 LVP-HC7800Dでは、アクティブシャッターグラス方式の3Dメガネの3D画質の弱点とされるクロストーク現象(二重像)を徹底排除するための対策が施されている。

 その根幹となっているのが、3Dメガネの液晶シャッターを、一般的なTN型液晶ではなく、強誘電型液晶を採用する工夫だ。

左が従来方式。RGBRGBの6セグメントの半分を使い、ブランキングしている。右のHC7800方式では、黒い円でかこった境目のスポーク部分が回転する僅かな時間で、3Dメガネのシャッターが開閉できる

 強誘電型液晶は自発分極する強誘電性特性がある液晶分子を応用した素子で、アナログ的な多段階調を作り出すことが難しいという弱点があったことからフルカラーディスプレイとしての実用化は進まなかった素材だ。しかし、応答速度に関しては、TN型と比較して数十倍も高速であるため(1ms未満。μsのオーダー)、3Dメガネのような液晶シャッターに応用するにはおあつらえ向きな液晶なのだ。今回の3Dメガネへの採用は、まさに三菱電機の英断と言ったところだが、量産効果の上がっていない素子であるため、3Dメガネ製品としては、競合他社製品と比較するとやや高価だ。'11年12月現在で実勢価格にして約1万8,000円なので、一般的な3Dテレビのアクティブシャッターグラス方式の3Dメガネの約2倍の値段といったところ。

 この高速応答を実現する3Dメガネのおかげで、左右の映像のどちらも表示していない黒表示期間(ブランキング)を極めて微小時間に抑えることに成功。このため、非表示期間を劇的に短縮し、3D映像の実効輝度を大幅に向上させている。

 実際の3D映像を見てみると、確かに、これまでのどの3D対応プロジェクタよりもクロストークは少なく、明るい。

 筆者の評価ではよく用いている「怪盗グルーの月泥棒」のジェットコースターのシーンの、一番クロストーク現象が目立つトンネル内のカットでも、ほぼパーフェクトといっていいほど、クロストークが抑えられていた。

 ただ、単板式DLPは時分割フルカラー表現となるとなるためか、色味は若干淡くなり、階調のダイナミックレンジもやや寂しくなる。特に明部が全体的に飛び気味になり、また、メガネの透過特性のためか青が弱まり、やや映像のホワイトバランスが黄に寄り気味になる。ただ、これはプリセット画調モード「3D」においてでの話なので、もし、この傾向が気に入らなければ、色温度やガンマを調整してみるといい。

・プリセット画調モードのインプレッション

【シネマ】LVP-HC7800Dにとって標準画調的な位置付け。発色はナチュラルで、階調にクセもない。肌色も自然だ。万能性の高い画調モードだ【ビデオ】中暗部から中明部の中間階調に多くのダイナミックレンジを割き、明るく立体的な投射が得られるやや輝度重視な画調だ。肌色には若干の黄味がのる傾向あり【3D】「ビデオ」以上に輝度重視が強まった画調モードだ。特に明色のダイナミックレンジの拡大幅は大きく、コントラスト感はとても強くなる。意外にも肌の黄味は「ビデオ」よりは少なめ。CG映画やゲームとの相性は良いかも知れない

・表示遅延について

 表示遅延の計測は、今回もリファレンス製品は業界最速の呼び声が高い、表示遅延0.2フレーム(3ms)の東芝レグザ26ZP2を使用して計測している。

 結論から言えば、LVP-HC7800Dは近年のプロジェクタ製品にしては表示遅延性能にブレがあるようだ。

 特に大きいのがプリセット画調モードの「ビデオ」で、約9フレーム(約150ms)の表示遅延が確認された(※26ZP2との相対比較)。同じく「シネマ」は約6フレーム(約100ms)とこちらも遅い。「3D」モードをあえて2D視聴時に用いて計測してみたところ、幾つかの高画質化ロジックがキャンセルされるためか、ほんの僅かだけ早くなった。ただし、それでも約5フレーム(約84ms)の遅延がある。

 なんとか表示遅延を短縮できないものか、と実験を繰り返してみたところ、ユーザーメモリのAV MEMORYを用い、フレーム補間機能であるFRCをオフにしたときには、約2フレーム(約33ms)にまで縮まることが分かった。ゲーム用途に利用するには、この設定がお勧めだ。とはいえ、次期モデルにはプリセット画調モードとしての「ゲーム」モード欲しいところだ。

 3D立体視時の計測も行なったが、こちらはプリセット画調モードの「3D」モードでも、FRC=オフとしたAV MEMORYでも共に表示遅延は約3フレーム(約50ms)で、両者変わらず。

 下記に高速度カメラで撮影したスチル写真を示す。

シネマ(2D視聴時)ビデオ(2D視聴時)3D(2D視聴時)
AV MEMORY(FRC=オフ、2D視聴時)3Dモード(3D視聴時)3Dモード(FRC=オフ,3D視聴時)

※上がLVP-HC7800Dの映像。下が26ZP2の映像


■ おわりに~3D画質なら文句なしにLVP-HC7800D

 LVP-HC7800Dの実勢価格は30万円前後、LVP-HC9000Dの実勢価格は39万円前後。ともに3D対応のフルHD機だが、両者は性格や目指しているところが微妙に異なる。どちらにすべきが悩んでいるのだとすれば、どこに重きを置くかで決めるといい。

 3D画質を重視するならば、文句なくLVP-HC7800Dだ。民生向けのホームシアター・プロジェクタで得られる3D画質としては文句なしにトップクラスだ。映画館以上の明るく見やすい3D映像が楽しめるのは家族にもウケがいいはずだ。3D時の発色についてはもう少しチューニングを進めてほしいとは思うが。

 一方で、2D画質の優劣はやや決めづらい。LVP-HC9000Dのアナログ感のある階調表現力はSXRDならではの味わいだし、一方で、LVP-HC7800DのDLP方式ならではの輝度方向に振ったコントラスト感重視の画質は迫力があるし、なにより明るい輝度性能は一般家庭のリビングユースに心強い。

 設置性に関して言えば、圧倒的にLVP-HC9000Dだ。制限の厳しくないレンズシフト機能が使えるので、台置き設置やオンシェルフ設置もやりやすい。LVP-HC7800Dは、天吊り設置前提の光学系なのでどうしても設置環境を選ぶ。

 いずれにせよ、3D対応のフルHD機を、DLPとSXRDでラインナップした今期の三菱電機の布陣は強力だ。過去の720p機のLVP-HCファミリーのユーザーは今が買い時だ。

(2011年 12月 22日)

[Reported by トライゼット西川善司]

西川善司
大画面映像機器評論家兼テクニカルジャーナリスト。大画面マニアで映画マニア。本誌ではInternational CES他をレポート。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。映画DVDのタイトル所持数は1,000を超え、現在はBDのコレクションが増加中。ブログはこちらこちら。近著には映像機器の仕組みや原理を解説した「図解 次世代ディスプレイがわかる」(技術評論社:ISBN:978-4774136769)がある。