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西田宗千佳の
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東芝開発陣に聞く「REGZAブルーレイ」への道のり

「RDの名を持つBlu-ray」に込めたこだわり


片岡氏(左)と桑原氏(右)

 ようやく今秋、「RD」型番を関したBlu-ray Discレコーダーが登場する。東芝は9月下旬より、ブルーレイディスク・レコーダー「RD-X10」および「RD-BZ800」「BZ700」「BR600」を出荷する。

 今年2月、「ブルーレイVARDIA」として登場した製品は、東芝伝統の「RD」でなく「D」型番であり、あくまでエントリー機であった。その時から、「RD型番のブルーレイを出荷する」ことは予告されており、今回の製品群は、その公約を果たしたものである。ブランド名も「VARDIA」ではなく、テレビに合わせた「REGZAブルーレイ」へと変化した。最上位モデルRD-X10のコードネームは「ムラサメ」だ。

 では、Blu-ray世代のRDは、どのような経緯を経て登場したのだろうか?企画のキーマンである、東芝ビジュアルプロダクツ社・TV&ネットワーク事業部 DAV商品企画部 部長附の片岡秀夫氏と、東芝デジタルメディアエンジニアリング・デジタルメディアグループ デジタル機器開発技術担当マネージャーの桑原光孝氏に話を聞いた。


■ 「RD」=「編集とas isでのダビング」を再現するために開発工数をかける

初代REGZAブルーレイ

 インタビューに入る前に、まず「初代」REGZAブルーレイの概要をおさらいしておこう。2月に発売された「Dシリーズ」はごくシンプルな製品だったが、今回発表された5モデルのうち、RD型番で始まる前出の4機種についてはそうではない。

 RDの持つ、プレイリストを生かした編集やダビング、おまかせ自動録画にネットdeナビと、ほとんどの機能がそのまま実現されている。具体的に言えば、DVD世代のRDシリーズ最後の機種となった「RD-X9」の仕様の多くがそのまま引き継がれている。違いの中で目立つのは、「DVD-RAMへの書き込み」ができなくなったことと、「HD Rec(DVDにHD記録するDVDフォーラム規格)での書き込み」ができなくなったことといったところだろうか。もちろん、どちらも読み込みには対応する(HD Recは後日のアップデートで対応)。


RD-X10 RD-BZ800 RD-BZ700

 

型番 HDD 3D対応 W録 特徴 発売日 店頭予想価格
RD-X10 2TB レゾリューション
プラスXDE
USB HDD
12倍録画
スカパー! HD録画
11月下旬 22万円前後
RD-BZ800 1TB ○(バージョンアップ
キット別売)
9月下旬 15万円前後
RD-BZ700 500GB 11万円前後
RD-BR600 500GB × 10月中旬 9万円前後
D-BZ500 320GB - 8倍録画 9月下旬 8万円前後

 「そんなのは当たり前だろう」と思われがちだ。機能の多くがRD-X9に酷似しているため、「RD-X9をベースにドライブだけBDに変えた」とも思えるからである。

 だが、決してそうではない。ビデオレコーダにとって、「記録フォーマットの違い」はアーキテクチャの根幹に関わるものであり、パソコンと違い、ドライブを変えれば終わり、といった単純なものではない。

東芝ビジュアルプロダクツ社 TV&ネットワーク事業部 DAV商品企画部 部長附 片岡秀夫氏

片岡氏:(以下敬称略)RDの編集に関する仕様をブルーレイとマッチングさせるには、相応の開発コストがかかっています。元々RDは、HDD内部での映像記録のフォーマットを、DVDへのダビングに特化した形で用意していたからです。

 例えば、「おまかせ自動録画」なり、EPGなりの機能は、映像フォーマットに関わる部分でないので、ほとんどX9のものをそのまま残した、というかそのまま使っている形です。しかし、編集部分はそうではない。問題はそこにあるんです。

 事は「製品開発」に関する、技術的な問題のように思える。だが実際には、そこで下された数々の決断というのは、「RD」という製品のコンセプトに関わる、根幹ともいえるものであったようだ。

片岡:元々、最初のモデルからHD DVDまで、なんら変わっていないポリシーがあります。それは、「HDD」というのはパソコンでいえば「作業場」である、ということ。そのまま見てもいいし、編集してもいい。

 それに対し「光ディスク」というのは「残すための手段」。その時に、「as is」(そのまま)でHDDから光ディスクへ、ファイルコピーができる、というのが、元々のRDの思想なんです。もちろん、レート変換などのコンバートは、逐次必要に応じてやればいいでしょう。できなきゃまずいよね、というくらいで。プライオリティは、まず「as is」でのファイルコピーができるか否か。

 HDD側にどんなコーデック・フォーマットとして持つか。これがまさに、(録画機の)アーキテクチャに非常に大きく関わってくる部分なんです。

 実は調べていくと、(BDの)規格にはいろんなコーデックがあって、それぞれにポテンシャルがあります。中には「あれ、こんなこともできたんだ」と思うものもありました。その中でどれを採るのか? 例えば「これは互換性が取れる」とか「これでは互換性取れない」とかあるわけです。

 BDといえば互換性に問題がないように思われているが、ご存じの方も多いように、実際にはそうではない。ROMに関してはともかく、録画ディスクについては、特に音声記録などで各社微妙に仕様が異なり、再生互換性に問題がある場合があった。一見利用者には関係がなさそうなHDD内での映像フォーマットだが、「ダビング」を考えた場合、無視できない影響がある、というのが現実なのだ。

片岡:ここを他社の製品がどのようにやっているかを見ると、BD側のフォーマットにHDD側をあわせたメーカーさんと、逆に旧来のDVD側のままのメーカーさんがあります。

 そうすると、DVDに焼くときとBDに焼くとき、もしくは録画番組がデジタル放送か、いわゆる旧来のDVD規格の映像(アナログ放送やアナログ入力の録画)なのか。この4つどもえといいますか、たすき掛けと平行と、という関係が、実はすごく重要なものになるんです。

 我々のポリシーはさきほど申しあげたように、いかに高速無劣化ダビングをしていくか、ということ。そういう方向ですべてを導いているわけです。単なる機能の話じゃないんです。ポリシーとしてas isでコピーする、という思想からきたからこそ、「規格が変わったのでas isはできません」という話ではない。そういう思想がそもそも私は嫌いなんです(笑)。

 だから、REGZAブルーレイでは、BDへの高速ダビングはもちろん、DVDへAVCRECフォーマットで「MPEG-2 TS」形式でもダビングできます。

 しょせん4.7GBだから、AVC以外で記録する人なんていないだろう、と(他社は)考えているかもしれません。でも、使う側からすれば、5分のビデオクリップをきれいに残すならTSでDVDに記録したいと思うかもしれない。30秒のCMを残すのならば、DVDでも何十本も入りますからね。その時、なんで25GBのBDだけなのか、AVCだけなのか、という話になるわけです。AVCでトランスコードするとそのための時間もかかるし、その劣化がいやだ、という人もいる。

 それを担保するためにアーキテクチャをどうするべきか、ということを考えて、HDDの中での持ち方を含めて整えました。

 すなわち、「編集性」と「ダビングのためのフォーマット」を両立できる形でアーキテクチャを変えて作られたのが、BD版のRDである「REGZAブルーレイ」、ということになるわけだ。

 


■ 時間・コストの制約も厳しかった「REGZAブルーレイ」への道のり

USB HDD録画などのBD以外の主要な機能はRD-X9から多くを引き継いでいる

 他方、REGZAブルーレイの機能の多くがRD-X9に酷似しているため、「RD-X9をベースにドライブだけBDに変えた」と思われがちな部分がある。すでに述べたように、それは正しくない。また、「RD-X9をベースに開発した」という事実は間違いではないものの、それ以外の色々な事実もあるようだ。

片岡:RD-X9開発の頃から、BD版RDに関して準備をしていた……というと格好いいのですが、実際のところを言うと、X9の時には、まだブルーレイを出すということは確定していなかったんです。だから、「X9はベースにBDを作ることを前提に開発された」という見方は間違いです。


東芝デジタルメディアエンジニアリング・デジタルメディアグループ デジタル機器開発技術担当マネージャー 桑原光孝氏

桑原氏:(以下敬称略)RD-X8とX9で、開発基盤が違います。よく似ていますが。厳密に言うと、X8とX9の間で開発プラットフォームが変わっているんです。

 すなわち、X9の技術をベースにREGZAブルーレイを開発したのは事実だが、それは一つの結果論に過ぎない、ということになる。

片岡:大人的な事情からすれば、いかに投資コストを抑えてBDを実現できるのか、ということだったのです。

 経営的に言えば、最後発での参入じゃないですか。まずは市場ニーズ、営業ニーズとして、「BDのRDを出さないと話にならない」ということ。そういうベクトルにあり、最短距離で行なうためにはどうしたらいいか、となります。

 そこで我々は「最小限でもなんとかなります」と言わなきゃいけないわけです。お金も時間もいっぱいかけていいのであれば、そりゃあなんでもできますが、それでやっていけなければ意味がない。

 その時に、旧来の資源で使えるものは最大限生かして、下手なところに体力を使わない、という形にしないと、実現の確率が下がりますよね。結果的に、X9とほぼ同じ機能が実現できたわけですが。

桑原:ハード的な面から言うと、X8からX9、いろんな意味で完成度を高めてきていました。ブルーレイをやりましょう、といった中で、開発のための投資をミニマムにして、機能なりRDとして望まれるべきものを実現しようとした場合には、X9をベースとして、結果的にはそこへ落とし込んでいくというのが、レコーダとしては一番シンプルだろう、と考えた、ということです。

片岡:全員の気持ちとしては「どう実現できるか」「(発売の)確率を上げるか」、その気持ちで選択された、結果論ということになります。

 たまたまそうなったわけであって、よくよく分析してみると、最小限のコストで手に入るものがこれだった。基板を起こし直すとその分時間もコストもかかりますからね。開発期間が長いと原価がかかるわけです。

 


■ 「AVCでW録」と「AVCで2倍速トランスコード」の間にあるもの

 とはいえ、そこで妥協せねばならなかった点も存在する。その最たるものが、「AVCによる2番組同時録画」だ。他社のBDレコーダが続々とAVCによるW録を実現している一方、REGZAブルーレイはAVCのトランスコーダを1系統しか持たないため、AVCでのW録ができない。

 「言い訳ですけれど」と韜晦しつつも片岡氏は、REGZAブルーレイにおけるAVCトランスコーダの機能と選択について、開発上「RDの存在意義に関わる部分」が大きい、と話す。

片岡:一つ目は「開発工程」の問題です。Wチューナというのは、要は内部的には「レコーダ1号」「2号」なんですが、ここにAVCエンコーダがからむと、さらに録画系統が「1号」「2号」「3号」のような、わかりにくい形になってしまいます。

 他社のように、黒子にして全部裏側に隠してしまって、「裏側で走っている録画はいじれません」的にする方法もありますが、コントロールが難しい。RD-X9までで採用していた我々の方法は、全貌を把握しないと使えないけれど、そうすれば自由に使える、という形です。

 それを大幅に変更するには行程がかかる。BDをやるんだったら、そんな大規模改革と同時にはできない。それをやると、BD版RDを出せる確率がおもいっきり下がりますから。トランスコーダを2つ入れれば、理解はしやすくなります。ですが今度はコストがかかる。

 AVCを2つ載せるのはいいんですが、MPEG-2は1つしか載っていません。そちらも2つにしないといけなくなる。じゃあ、スカパー連動はずすのか、ライン入力とっちゃうのか。ライン入力からのエンコードはAVCだけでいいのか、ということにもなるわけです。

 もちろん、シンプルにそうしてしまうことはできます。AVCを軸にすえると、こんどはもっと面倒なことも起きます。例えば、AVCからMPEG-2へのトランスコーダを作らないといけない、とか。スカパー連動でDVDビデオに焼く時に、もう一度(MPEG-2へ)レート変換ダビングしないといけないのか? BDにだけダビングできればいいのか?

 もちろんそれでいいです、というお客様もいるでしょうが、安いDVDでやってきたこと、どこでも使えるDVDの良さというのを捨ててしまうというのは、違うのではないかと思うのです。ネットで議論されるレベルとは別の話で、DVDしか使えない方は着実にいらっしゃる。スカパー連動があるし、外部入力でVHS入れてまだDVDを焼きたい、というよりカジュアルな方もいるわけです。また、「高速無劣化でコピーできる」という選択肢を奪えない。

 開発速度と自由度の問題、両方を満たすために考えたのが、「MPEG-2エンコーダも残し、AVCトランスコーダは1つ」という解だ。ただし、他社と違うのは、トランスコードを「倍速対応」にするということだった。トランスコーダのLSIそのものは、X9世代のものと同じではなく、新しいLSIに変更されている。

新トランスコーダの搭載により、HDD内で2倍速のAVC変換が可能になった

片岡:どうしても1個しかないけれど、結局自由度を上げるためには、後で高速でできればいいじゃないか、と考えました。

 例えば、「RD-Z1を持っているけれど、ようやくZ1からi.LINKで転送してBDに焼ける」というお話も聞きます。そういった方々の場合、録画した映像は別にAVCになってないわけです。

 その人にとって大切なのはi.LINKから渡すこと。だとすれば、AVCが2個あるかどうかよりも、i.LINKで転送後に高速にAVC化して、BDへコンパクトに保存できることが重要でしょう。

 そういう視点で見ると、高速AVCトランスコードというのは、旧RDユーザーさんの「TSでHDDに貯めていただいていて、それをi.LINKで吸い込んでBDにもっていく」というプロセスに最適化しているアプローチを提供したつもりなんです。

 だからBDを出すと決まった時からずっと、「いかにエンコードが速くなるか」を検討していたんです。技術陣が「できる」というので、導入しました。もちろん社内的にも「なにかウリになる機能が欲しい」という話はあったのですが。

 そのような「プロセスの最適化」を考えた際、どうしてもTIPSとして紹介しておきたいことがある、と片岡氏は言う。

DVDビデオ再生範囲化(写真はRD-X6のもの)

片岡:実は、i.LINKを使い、ストリーミングで映像を機器間転送する時、途中でコーデックが変わると、事故が起きやすいんです。なので事故を防止するために、信頼できない部分を捨て去っています。

 結果、映像を編集している場合、一部が欠損するんです。どのメーカーさんも、そこが欠けるのは仕方ない、としています。うちは、映像の頭だけ先に送って、もう一度送り直す、といった対処をしているんですが。これはあまり知られていませんね。

 といっても、旧機種では新機種ほどの応答性がないので、限界はあります。そこで考えたのは「DVDビデオ再生範囲化」という機能の利用です。チャプター編集のGUIの中にあるものなのですが、要は、編集段階では隠れているGOPを表示するものです。

 DVD-VRモードで録画した映像を編集してDVDビデオモードで書き出す際、カットしたはずの部分がGOPの関係で出てきますよね? 元々は、それがどのくらいあるのかを確認したい、という人のために、隠していた部分を出すために用意したものです。

 旧機種は再送信などができないので欠けてしまうんですが、この機能を使って、あらかじめ隠れていたGOPを出しておくと、出現した部分が欠けることになるので、影響を最小限に抑えることができるはずです。保証はできませんが、ほとんどの場合大丈夫でしょう。

 面倒な部分ですが、こうしておくと、最後のサポートでお客様が救われるんです。他社さんは「それは新しいものだからしょうがない」という話になっているかもしれない。でも、うちはそういうことにこだわる、ということです。だって、欠けるのイヤでしょう?(笑)

 


■ 画質傾向は「超解像」導入で「絵作り重視」へシフト

 REGZAブルーレイは、RD-X9世代に比べると、映像・音声出力面で大幅な改善が図られている。それにはやはり「ブルーレイ」搭載であるから、というこだわりがあった。

桑原:HD DVD撤退以後も、私はDVDのレコーダでXシリーズなどを手がけてきました。しかし、BDが再生できないとなると、他社の最上級機と比べてはもらえないんです。BDであれば、少なくとも、また同じ土俵には登れる、と考えています。

 そのために、画質・音質をどう高めるか、正確にはBDのクオリティをどう扱うか、ということには気をつかいました。

 そこでポイントとなったのが「REGZA」の名前である。REGZAといえば「超解像」。REGZAブルーレイでは、「レゾリューションプラスXDE」による超解像処理が導入される。ただしこれは、これまでの同社のDVDレコーダとは異なる方針である。

桑原:従来当社のプレーヤーなりレコーダなりの考え方というのは、「ディスクに入ったものをそのまま出そう」というもの。いかに劣化なく取り出すか、ということを考えてやってきました。それはアナログにしてもデジタルにしても同じです。

 超解像をやる場合、そこに「絵作り」という考え方が必要になってきます。「ブルーレイは元々きれいなんだから超解像は不要なのでは」という話も聞きます。しかし、そうでもない。

 BDは最高のコンテンツと言われていますが、作品によって全然クオリティが違う。本当にトップクラスのクオリティのものであれば、超解像の必然性はない、といえるかもしれない。でも、「これが本当にBD?」と思うものもあるのは、残念ながら事実です。

 そういうタイトルでもBDらしさを感じてもらいたい。それであれば、積極的な絵作りにも価値があるのではないか、という考え方です。超解像って、テレビ側でもやっていますが、常時かけておいても、画質的にはなんの問題もないんです。それがデフォルトになってしまうと、(超解像がかかっていない)そうでないものが、なんか色あせて見えるんです。

片岡:眠く感じることが多いですね。

桑原:そう。そこも含めて「色あせて」感じる。やっぱり、本来きれいになって欲しい期待値があるものについては、レコーダ側でもなにかしっかりやるべきなのではないか、と思うのです。

 


■ 「X10」ではハイエンドユーザー向けに「アナログ出力」にこだわる

「RD-X10」という最上位機種に着目すると、X9に比べ大幅な改良点が目立つ。特に目立つのが、アナログによる7.1ch出力だ。

桑原:音についても、ブルーレイを出す時、中でも最初のRD型番の製品を出すにあたって、なにかしらの高級機で培ってきたもの、しかも従来のXにはなかった部分というのを入れたいな、という思いがありました。

RD-X10の背面

 評論家の方やスーパーマニアの方々とお話をしてみると、彼らが言うのは、「HDMIはどうなの?」という話になるんです。彼らは数百万円のシステムを持っているので、HDMIのアンプでいい音がするかどうか、そこに懐疑的なんです。「アナログ出力の付いた、いい製品はないの?」と言われることが多いのです。

 今回はESSの高性能DAC(ES9016 SABRE32)を使ってみることにしましたが、品質の面でブレイクスルーできたのかな、と思っています。今回のX10の筐体からかなりのことができるな、東芝だけの高品質アナログ7.1ch出力ができるな、と考えたわけです。これはXならではだし、ぜひやりたいと考えて、商品企画担当も含めて煮詰めてきたのです。

 今回入れた回路というのは、リファインはされていますが、RD-A1で培ったフルタイムアップサンプリングとかを生かしているわけです。特にフルタイムアップサンプリングについては、192KHz/32bitのデータにしています。おそらく、本当に32bitのデータをそのままD/Aに入れているのはこの製品だけだと思います。内部では32bit演算も、32bitのまま入力しているところはほとんどないはずです。出てくる音については、Xという型番はついていますが、「Z」とか「A」の伝統を受け継ぐものかな、と。

 


■ レコーダーの「テレビ内蔵」は必然?! 「単体レコーダ」のアイデンティティ

 今回、ユーザーインターフェイス面では、極端に大きな変更は行なわれていない。画面デザインが「CELL REGZA」に合わせてブラックを基調にしたものに変わったが、基本的にはそういった点は同じである。

番組ナビのトップページ

片岡:色はCELL REGZAに合わせているんですが、それ以上に大きいのは、番組表の高精細化です。

 とはいえ、表示領域がまだレグザのEPGに比べると狭いじゃないか、と言われると思います。しかし、外部出力を持つ箱(単体レコーダ)としては、アナログのテレビもまだありますので、セーフエリアを見ないといけない。例えば、アナログテレビだと、今でも一部メニューの左二文字が欠ける、という意見も実際にあるんですよ。セーフエリアを守っていてもそうなるので……

 いろんな議論の末に、アスペクト比を見直し、空いたスペースに情報を広げました。実際には「行数を増やして欲しい」という要望もあるのですが、そこを直してしまうとBD製品をいち早くだそう、というところに響いてしまうので……。

番組表 文字サイズを変更可能 見るナビ

 RDには常に「機能が難しい」との批判もつきものだ。他方、テレビであるREGZAを中心に「録画機能搭載」のものも増えている。すでに、テレビにBDとHDDを搭載した製品も、複数生まれ始めている。「録画機」という商品の位置づけが問われている、といってもいいだろう。その中で、ある程度操作を覚えねばならない「RD」という製品の位置づけは、どのようなものになると考えているのだろうか?

片岡:元々最初のRDを出した時から、私の中では「歴史はこうなる」というのは決まっているんです。テレビがよりカジュアルな機能を取り込んでいくのは間違いない。それは、Windowsが最初は単なるOSだったのに、どんどん付加機能を取り込んでいったのと同じ流れです。つまり何事も、ベースになるものは成熟してくると他の機能を取り込んで行くわけです。お客様の視点から見ても、配線の手間がいらないとか、これ買えば一個で済む、というような「お手軽さ」には価値がある。長い目で見ればそうなっていくだろう、ということはわかっていたんです。

 だからこそ、そうなっても(RDに)存在意義があるとすれば、パソコンがそうであるように、それが本当に必要な人にとって便利に使えるものであることに特化していくことだと思うんです。具体的に言えば、プレイリストの編集であり、そこからのダビングであり、スカパー連動であり……。

 「テレビの録画機能だからそこまではいらない」というのは当然言われるでしょうし、それでいいと思います。ところが、そういうところがないと困るヘビーユーザーがいる。

 逆にいえば、そこを我々が捨てた時点で、自ら「箱もの」の存在価値を否定しているわけです。カジュアルなレコーダだけでいい、と言っちゃった瞬間に、じゃあテレビでいいじゃない、ということになる。

 必ず「機能をシンプルにする」という話は出てくるんです。例えば「編集ナビ」をなくしてしまおう、とかね。

編集ナビ

 実は、現在の「編集ナビ」、「番組ナビ」、「見るナビ」、「番組ナビ」という4つの構造は、アプリがプレインストールされている、というメタファーなんですよ。編集ナビをカットして、必要な人にだけダウンロードで「アプリ」のように販売できるようにする、という構造は、すでに可能です。以前にも検討したことはあるんですが、種々の事情で実現されていません。

 もちろん、ヘビーユーザー向けの機能だけででいい、とはいいませんよ。それは「コア」です。それが存在価値・レゾンデートル。それを失った録画機を出した瞬間、どんどんオールインワン化の流れが加速する中で「なんのためのこの市場にいるの?」という話になる。

 私は現在、他のプロジェクトにも関わっているため、RDだけを担当しているわけではありません。しかし、今回BDにアーキテクチャ変更する上でも、そこを見失わないでやろう、という議論については、もっとも濃く参加しました。細かい製品のいろんな仕様については、各担当がきちんとやってくれた。私だけでなく、そういう各人の努力があってこそ、できあがった製品なんです。

 REGZAブルーレイは、純粋に「機能」で見ると、AVCのW録やBDXLなど、他社に比べまだ「周回が追いついていない」部分が見られる。しかし、シンプル化する機種が多い中で、あえて「単純な機能の絞り込み」にはいかないところが、いかにも「RD」らしい点でもある。

 ようやく、という感があるが、主要メーカーのBDレコーダがこれで出そろった。各社のキャラクターは、DVDレコーダ全盛期よりも、かなり異なっている。そういう意味では、単純に機能より「どのような使い道を求めるか」で選びやすくなった、といえる。REGZAブルーレイに限らず、録画機能内蔵テレビまで含め、レコーダ選びはいよいよ「本番」に入った、といっていいだろう。

(2010年 8月 31日)


= 西田宗千佳 =  1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「iPad VS. キンドル日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏」(エンターブレイン)、「iPhone仕事術!ビジネスで役立つ74の方法」(朝日新聞出版)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]