小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第740回:スタビライザー付きカメラで新しい動画表現!? DJI Osmoに見る可能性
第740回:スタビライザー付きカメラで新しい動画表現!? DJI Osmoに見る可能性
(2016/1/20 10:00)
スタビライザー付きカメラという発想
最初に発表されたのは2015年のCESだったと思うが、今回はDJIのジンバル付き4Kカメラ「Osmo」(オスモ)を取り上げる。昨年10月に発売が開始されており今更感も漂うが、いつかレビューしとかないとと思いつつ今に至った。
DJIといえばPhantomシリーズで知られるドローンメーカーだが、ドローンの下に搭載されているブレ補正機構であるジンバルとカメラ部分を取り外し、ハンディで使えるようにしたのがOsmoという理解でいいだろう。
カメラのブレを補正するハードウェア機構としては、SteadyCamが元祖と言えるだろう。これは主にバネの力でカメラのブレを吸収する仕組みで、かなり大掛かりなものだ。現在は特許も切れ、他社からも多くの類似製品が登場している。
ジンバルの機構を使ったカメラリグシステムとしては、2013年に発表されたMoVIが知られるところである。それ以降、なるほどその手があったかと類似製品が多数開発され続けている。小型のものではGoPro用のスティックタイプのものが3万円程度で手に入るようになった。
DJI Osmoは、一般的によく知られている小型のタイプが「Zenmuse X3」だが、ジンバル部分からカメラ部までは、取り外して交換できる。元々Zenmuse X3のカメラユニットは、最新ドローン「Inspire 1」用のカメラユニットで、Osmoと共用なのである。
交換ユニットとしては、マイクロフォーサーズのレンズが使える「Zenmuse X5」、「Zenmuse X5 R」も販売されており、Osmoにも搭載することができる。今回はZenmuse X3搭載モデルをテストする。
定価85,000円で、カメラ+ジンバルとスマートフォン固定用のホルダ、バッテリ、充電器がセットになっている。既にカメラとジンバル部は持ってるという場合は、スティック部、スマホ用ホルダ、バッテリ、充電器のセットが36,000円だ。通販サイトでもこの価格で、値動きは少ない。画質や使い勝手など、詳しくチェックしてみよう。
よく作りこまれた設計
Osmoの本体は、全体で見ればスティック状だ。カメラという点ではかなり異形ではある。
カメラのスペックは、35mm換算で20mm/F2.8の単焦点レンズ。手前にはレンズカバーがはまっている。光学的な絞りはなく、シャッタースピードは8s~1/8000sまで、ISO感度は動画で100~3200まで、静止画で100~1600まで可変できる。
センサーは1/2.3インチのソニー製Exmor Rで、有効画素数は1,240万画素。動画では4K撮影が可能で、4,096×2,160/24pか、3,840×2,160/24p、30pでの撮影ができる。ビットレートはVBRで平均60Mbpsと、コンシューマ4Kとしては標準的だ。静止画の最高画素数は4,000×3,000ピクセル。
カメラ上部には吸気口、背面には放熱用ファンがあり、撮影時にはかなりファン音がする。カメラ左手にmicroSDカードスロットがある。
ジンバルは3軸で、持ち運び時にプラプラしないよう、ロック機構がある。起動時にはこのロックを外して、電源を入れる必要がある。
ハンドル部も見ておこう。グリップ部は滑り止めのラバーが貼ってあり、形状もオーガニックなので握りやすい。手前にはコントロール部があり、昔のPSPのジョイスティックのような平型コントローラがある。これでカメラの向きを操作する。赤いポッチは動画録画ボタン、一番下は静止画のシャッターボタンだ。右サイドには電源スイッチがある。
反対側には人差し指で操作するトリガーレバーがある。これを握るとロックモードとなり、カメラはハンドルの動きと関係なく常に一定方向を向く。ドローンではこちらの方がデフォルトの動きだが、Osmoではハンディ撮影が前提となるので、デフォルトはハンドルの動きに緩やかに追従するフォローモードになっている。レバーは他にも機能があるが、それは実写で見ていこう。
レバーの上の穴は、外部マイク入力だ。その右に小さく開いている穴が、本体内蔵マイクである。
左側面には三脚穴があり、別売のスマホ固定ホルダを取り付ける。グリップ底部はバッテリ挿入口となっており、長方体のバッテリを挿入する。
本体だけでも録画はできるが、モニタがないのでアングルが決められない。細かい設定変更も含め、スマートフォンとWi-Fiでダイレクト接続し、専用アプリでコントロールするというのが基本的な使い方だ。
アプリはドローンでの撮影と共通の「DJI GO」というアプリを使用する。最初にOsmoと接続すると、チュートリアルが表示される。一通り使い方を把握したら、撮影だ。
優れた補正能力
Osmoは電源を入れれば自動的に水平状態にキャリブレーションを行なう。あとは撮影するだけだが、前方にあるレバーの使い方を把握しておこう。通常はフォローモードだが、レバーを押し続けると固定モードとなる。2回押すとリセット、3回押すと自撮りモードだ。
一番気になるところは、やはりジンバルの補正能力だろう。4K/30p撮影モードで一般的な速度での歩行と、走りがなら撮影してみた。歩行時では、上下の揺れは多少感じるが、ブレも少なく安定した映像が撮影できる。走りながらの撮影では、逆に上下の揺れ幅が安定し、スピード感と相まって歩行時よりも安定した映像となっている。補正能力はかなり高い。
上下を逆さまにして持てば、自動的に吊り下げモードと認識し、画像の上下左右が反転する。本来ドローンに搭載する場合は吊り下げモードが標準なわけだが、Osmoではそもそも標準状態が上下逆になっているということである。
4Kの解像感としては、悪くない。空抜けの木の枝は、これだけ飛んでいるとフリンジが出そうなところだが、それも見当たらない。アクションカムのように画角をあまり欲張らなかったこともあり、周辺の歪みも少ない。
スピード感ということで自転車に搭載して撮影してみたかったのだが、あいにくハンドルに取り付けるための設備がなく、試すことができなかった。オプションで専用のバイクマウントも6,600円で販売されているが、スマホ固定ホルダを取り外せば普通の三脚穴があるだけだ。L字型のカメラ固定用器具があれば、ハンドル取り付けはそれほど難しくないだろう。
色々撮影して気付いたのは“近距離が苦手”ということだ。パンフォーカスでAF機能がないので仕方がないところではあるが、20mmというワイドレンズでは、近寄らないと撮りきれない小型の被写体も出てくる。最短撮影距離はスペックとして公開されていないが、だいたい40cm以上離さないとフォーカスが合わない。
続いてフォローモードの特性を調べてみよう。Osmoには親指部分にジョイスティックがあり、それを操作することでパン・チルト動作ができる。深く動かせば速く、浅く動かせばゆっくり動く。ただしWi-Fi経由でスマートフォンで見ている映像はどうしても遅延があるので、絵を見ながらここぞというところで止めても、実際にはカメラは行き過ぎている。いわゆる、「滑る」感覚だ。いいアングルで止めたい時は、止めたい位置の少し前で指を離すというテクニックが必要になる。
Osmoのハンドル部分を動かしてフォローモードでパン・チルトを撮影することもできる。ジョイスティックの機械的動作と違い、スロースタート、スローフィニッシュの動きになるので、柔らかいカメラワークが可能だ。ただこちらもモニターがディレイすることには変わりないので、止めたい位置の少し前で動きを止めるというテクニックが必要になる。
そのほか、スマホの画面を長押しして動かすことで、遠隔でパン・チルトの制御ができる。離れた場所で撮影する場合には便利な機能だ。
レバーの3回押しで自撮りモードとなり、また3回押しで元に戻るという機能は、撮影者自ら喋りながらレポートするような動画取材スタイルにもフィットする。ただ気になるのは、音声の品質だ。実際にテストしてみたところ、カメラからかなり大きなファン音がすること、マイクが前方にしかないことから、本体内蔵マイクを使って喋りながらの撮影はかなり無理があることがわかった。
一方外部マイクを使った収録では、かなり良好な結果が得られた。ただし音声のリアルタイムモニターができないことや、レベルメーターもなく、マイクレベルの調整もできないことから、撮影中に音声の状態が把握できない。テストでは音割れやフカレもあるが、現場ではそれを知る術がないことは課題が残る。
実際に使ってみて気になったのは、駆動時間の短さである。1箇所で数テイク撮影しただけで、10%ぐらい電池が無くなっていく。実働的には、1時間弱でバッテリが無くなってしまう印象だ。こまめに電源を切ればいいのかもしれないが、一度電源を切ると、撮影時にはWi-Fiの接続からやり直しなので、すぐに開始というわけにはいかない。
実際にフル充電した状態から、連続撮影時間を計測してみた。4Kでの撮影ではおよそ41分、HDでの撮影では55分でバッテリが無くなった。連続撮影時間としては結構長いとは言えるが、録画してもしなくても実働時間はあまり変わらない。現時点ではオフィシャルには外部給電する方法がないため、1日中あれこれ撮影するには、予備バッテリはかなりの数が必要になるだろう。
搭載された特殊機能
Osmoには特殊撮影用の機能も幾つか搭載されている。最もわかりやすいところでは、カラーモードがある。エフェクトなしを含め、10種類のモードがある。撮影中でもモードを変えると、モード変更ができる。
静止画撮影では、連写やパノラマ、インターバルやタイムラプス撮影も可能だ。パノラマは、ジンバル部が自動的に動いて複数枚の写真を撮り、パノラマとして繋げてくれるというものだ。フォワード180度、360度、セルフィー180度の3モードがある。フォワードとセルフィーは、撮影範囲が前か後ろかの違いだと思われるが、フォワードは360度と同じ挙動になってしまい、動作しなかった。
セルフィー180度では自分も入れてみたが、写真のつなぎどころがちょうど自分が立っているあたりに来るので、顔が酷いことになっている。通常セルフィーだと真後ろに顔が来るというのはわかっていそうなものだと思うが、そこをつなぎ目にしてしまうとは、ソフトウェアの作り込みとしてありえない甘さだ。
タイムラプス撮影もトライしてみたが、関東地方はあいにくの雪で気温がぐっと下がり、バッテリ電圧が下がってしまうのか、何度やっても1分程度で停止してしまった。ただ、タイムラプスぐらいならほかにも撮影出来るカメラはたくさんあるし、わざわざジンバルを動かした状態で撮影する意義は少ない。自動で少しずつパン・チルトしてくれるような機能があれば別だが、そのような機能はない。
静止画撮影でジンバルが付いていることのメリットは、手持ちでも長いシャッタースピードに耐えられるということである。夕暮れ時にマニュアルモードでISO 800、シャッタースピード1秒で手持ち撮影してみたところ、かなり綺麗に撮影できた。花が少しブレているのは、風で花の方が揺れたからである。通常手持ち撮影でシャッタースピード1秒などというのは考えられないが、やはりジンバルの威力は大きい。
総論
価格的にはカメラとジンバルがセットで85,000円と、気軽に買える……と言うほど安くはないが、Osmoでなければ撮影できない世界があるのもまた事実である。GoPro+ジンバルでも似たようなショットは撮れるが、GoProほど画角が広すぎない点で使い勝手がいい。また画質的にもレンズに無理がなく、歪みも少ないため、上質な映像が撮影できるのもポイントだろう。
一方で、元々ドローンに搭載するユニットなので、音声のことをあまり考えていない。外部マイクをつなげばなんとかいけるが、撮影しながらモニターができないし、レベルメーターもないので、音割れにも気がつかない。何かレポートとして使うのであれば、音は別のレコーダで収録したほうが無難だろう。
またドローンに積むカメラであるということからも予想ができたことだが、カメラ部は基本的に遠景を撮るためにチューニングされている。地上で手持ちカメラとして使う場合、物に近づいて撮影するケースはドローンよりも段違いに多いわけだが、近距離での撮影に弱いのは致命的だ。手持ちで持つカメラなら、もう少し撮影の最短距離を短く、せめて20cmぐらいは近づけるようにすべきだろう。
もう一つ懸念点は、バッテリの持続時間だ。ちょっと電源を入れて設定を変えてテストしていると、すぐ10%ぐらい減ってしまう。バッテリー容量が980mAhしかないので充電も1時間ぐらいで終わるのだが、今回の記事執筆中だけでもう8回ぐらい充電している。さすがに実運用では、バッテリ1本ではどうにもならないだろう。
実は先日のCESで、ドローンを集中的に扱うコーナーがあったのだが、そこでは各社とも似たようなドローンを展示するとともに、Osmoのようなカメラも幾つか展示されていた。もしかしたら類似品もこれから販売されるようになるのかもしれない。DJIとしても、これらの問題点を改良していかなければ、すぐ追いつかれるだろう。仁義なき戦いが、水面下で勃発しているようである。
DJI Osmo ハンドルジンバル (3軸手持ちジンバル 4Kカメラ搭載) |
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