“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第585回:見る事の効率化をめざしたソニー「BDZ-ET2000」
~テレビを拾い読みするBDレコーダ。Tablet連携も~
■これからは、「見る」がポイント?
かつて一斉を風靡したDVDレコーダというのも、不思議な商品であった。登場したての頃にはDVDに残すということが主流であったが、地デジの普及に従って、次第にメディアに残すという行為は、メジャーではなくなっていった。それでも、光学ドライブは付いてないと売れない、という現象が永らく続いた。
現在売れているレコーダの大半はBlu-ray搭載となっているが、その多くはアナログレコーダやDVDレコーダからの乗り換えである。今頃? と驚かれるかもしれないが、いよいよレイトマジョリティ層への普及が始まったという見方ができる。
ただ、現在はレコーダが唯一の録画手段ではなくなってきているのも事実だ。テレビも録画機能を備え、nasneのようなストレージとテレビ録画を一体化した商品も今後はメジャーになっていくだろう。
レコーダはその中でも、録画専用機という位置づけになってくる。専用機であるからには、それを使うだけのメリットが求められる。
これまではテレビ録画に対して尖った人がターゲットであったが故に、画質が最優先された。そこが一段落したのち、次は録画機会損失をカバーする自動録画アルゴリズム、全録といった具合に変遷した。
そして次のトレンドは、上記の項目を押さえつつ、録ったものをいかに効率的に見るかというところにポイントが集まりそうな予感がする。その点でソニーが新しく導入してきたのが、「もくじでジャンプ」機能である。
番組メタデータを活用したこの機能は、多くの人が注目している。さっそく新しいテレビの見方の提案を体験してみよう。
■3チューナーの最上位ET2000
この秋発売のソニーBDレコーダは、合計7機種にも上る。フラッグシップのEX3000は、4Kへのアップコンバート機能やバーチャルサラウンドなど、どちらかというとテレビ視聴よりは最高級Blu-rayプレイヤー的な要素が強い。価格も店頭予想価格で30万円と、なかなか勇気がいるモデルだ。
型番 | HDD | チューナ | 画質 | ワイヤレス おでかけ転送 | 店頭予想 価格 |
BDZ-EX3000 | 3TB | 3 | CREAS Pro 4Kアプコン | ○ | 30万円 |
BDZ-ET2000 | 2TB | CREAS 4 | 13万円 | ||
BDZ-ET1000 | 1TB | 11万円 | |||
BDZ-EW2000 | 2TB | 2 | - | 105,000円 | |
BDZ-EW1000 | 1TB | 85,000円 | |||
BDZ-EW500 | 500GB | 7万円 | |||
BDZ-E500 | 1 | - | 6万円 |
一方、その下のET2000は、4Kや新バーチャルサラウンドには対応しないが、同じ3チューナを備えながら13万円と、かなり狙い目の製品だ。ネットの通販サイト最安値では11万円半ば強といった値頃感となっている。HDDも2TBで、十分な量だ。今回はこちらのモデルをお借りしている。
まずボディデザインだが、これまでのシンプルな箱形路線は継承しつつ、フロントパネルに逆傾斜を持たせたデザインとなっている。DVDレコーダ時代はいろいろ凝ったデザインが各社から登場したものだが、その時代を彷彿とさせながらも、ゴテゴテしないセンスでまとめている。
シンプルながらアクセントのあるデザイン | フロントパネルは斜めに切り立っている |
天板に各規格のロゴがプリントされてはいるが、ガンメタリックにダークシルバーのプリントなので、光の反射で見えるという程度だ。このあたりもスッキリ感に繋がっているのだろう。
ボタン類は上部の面取り部分に電源とBDドライブの開閉ボタンがあるのみ。フロントパネルを開けると、番組おでかけとカメラ取り込みボタンがある。
3チューナ搭載で、同時3番組AVC録画に対応する。また3番組録画中にBDへの高速ダビングも可能。
相変わらず表面に出ているボタンは少ない | フロントパネル内にB-CASカードスロットがある |
背面端子もシンプル |
リモコンも新機能に合わせてマイナーチェンジ |
背面もシンプルだ。アナログAV入力が1系統あるのみで、あとはアンテナ端子、Ether端子、HDMI出力、光音声出力、増設HDD用のUSB端子があるだけ。ネットワークは無線LANも内蔵しており、ワイヤレスでホームネットワークに接続できる。
リモコンは基本的なデザインは継承しつつ、新機能「もくじでジャンプ」機能に合わせて、「コーナー目次」というボタンが増えている。録画番組一覧を一発で表示する「録画リスト」ボタンも、意外なことに今回初めて搭載された機能だ。「らくらくスタート」や、オプションボタンに「便利機能」と注意書きを書いているあたりに、エントリーユーザー層への配慮を感じる。
■強力な自動録画
ではまず録画予約のシステムから見ていこう。ソニーのレコーダをレビューするのも久しぶりなので、読者もどんなのだったか忘れていらっしゃる方もあるかもしれない。まずはオーバービューで全体の構成を見ていこう。
レコーダのメインのGUIは、PS3などでおなじみのクロスメディアバー(XMB)だ。ホームボタンで起動する。すべての機能はここからアクセスできるのだが、このGUIでは煩雑だという方のために、「らくらくスタートメニュー」がある。シンプルなレコーダとして使いたい方は、こちらだけを使ってもなんとかなるようになっている。
メインのGUI、クロスメディアバー | 最低限の機能だけを集めたらくらくスタートメニュー |
番組予約は、どちらのGUIを使っても最終的には同じ番組表に行き着くわけだが、お勧め番組や自分で設定したのキーワードを一覧で見せてくれる「My! 番組表」がある。これはわかりやすくていい機能なのだが、簡単なほうの「らくらくスタートメニュー」からは行けない。
番組表はどちらから行っても同じ | お勧め番組を紹介してくれる「My! 番組表」 |
なぜかビデオ列にある「x-おまかせ・まる録」 |
キーワードによる自動録画に強いのもソニー機の特徴で、「x-おまかせ・まる録」は人気の機能だ。基本的には検索+予約機能なのだが、なぜか録画済み番組を示す「ビデオ」の列にある。一方番組検索は放送波カテゴリにある。この違和感はもう何年もこのままになっているが、久しぶりに使うといつも面食らう。
これはおそらく、入れるところがここしかなかったというGUIの矛楯だろう。XMBでは放送波ごとに列ができるので、列全部に「x-おまかせ・まる録」の機能へのアイコンを入れないといけなくなるからだ。本来ならば、テレビ放送を俯瞰した列があれば済む話だが、なるべく階層化しないというルールがあるため、苦肉の策ということかと思われる。
番組検索は、キーワードに対する解釈が広いというのもポイントだ。例えば「ダウンタウン」で検索すると、コンビで出ている番組だけでなく、浜田雅功と松本人志それぞれが出ている番組も検索できる。当然「x-おまかせ・まる録」による自動録画も、同じアルゴリズムで動く。
ただ、ジャニーズの"嵐"を検索すると、サブタイトルに「嵐を呼ぶ~」とか「嵐の~」みたいなものが入っているだけで全部引っかかってくるので、なかなか一般名詞のグループは難しい。
「ダウンタウン」の検索結果。両氏それぞれの番組も見つかる | 「嵐」の検索結果。タレント以外のキーワードも当然見つかる |
AKB48も単独で出る機会は多いが、大抵はタレント名の前に「AKBの~」が付いているので、あまり効果が発揮できていない。逆にNMBやHKTなど関連グループまで全部検索したい場合は、「48」で検索すると全部出てくるなど、いろいろ楽しめる機能に仕上がっている。
また今回は、外付けHDDの使い勝手がかなりよくなった。「x-おまかせ・まる録」による自動録画は、ダイレクトに外付けHDDを指定できるようになった。Xperia Tabletへの番組伝送なども、外付けHDD対応だ。
「AKB」で検索。関連グループまで見つかる | 「x-おまかせ・まる録」の録画先をUSB HDDに指定できる |
■強力な「もくじでジャンプ」
録画番組は「ビデオ」列にずらずらと並ぶだけ |
では、見る機能についてチェックしてみよう。XMBで録画番組にアクセスすると、「ビデオ」列にただずらずらと録画番組が展開されるだけで、非常に探しにくい。これは前段でも述べたが、XMBには極力階層化しないというコンセプトがあるからである。いちおうジャンル別表示などもできるが、縦にずらずら並ぶのは同じだ。
ゲームのタイトルならずらずらと並んでも大した数にはならないが、録画番組となると最大で999番組がここに並ぶことになる。とても目視で探しきれるものではない。
そこで、録画番組をジャンルやキーワードで検索する機能が新しく付けられている。詳細条件検索では、放送波や放送時間帯、ジャンルなどを使って絞り込み検索ができる。ただ、検索対象メディアを本体HDDと外付けHDDに分けて検索する必要がある。このあたりも、シームレスに一括で検索できるとよかっただろう。
録画済み番組の検索機能を搭載 | 複数条件の絞り込みにも対応 |
まあ新機能とはいっても、他社では最初から最新録画や未視聴などフォルダ分けされていたりするし、条件を指定していくのも面倒だという人もいるだろう。これも階層が深くなることを認めないXMBの呪いみたいなものになんとか対処しようとした結果で、本質的な解決とは言えない。
一方で見たい番組が見つかったら、そこから先はかなりよくなっている。番組の再生中にリモコンの「コーナー目次」ボタンを押すと、番組メタデータをその場でダウンロードする。
一番の目玉は、番組目次を選ぶとその部分に一気にジャンプする、「もくじでジャンプ」機能だろう。単なるCMスキップに留まらず、最近バラエティで流行のネタ見せ番組やコンテスト番組では、見たいネタを選んでダイレクトに見ることができる。
番組の中味がもくじとして分けられる | ニュース番組では、話題の項目が把握できる |
ニュースで取り上げられた商品情報も得られる |
またニュース番組では、自分の気になるニュースをピックアップして見ることができる。そもそも、どんなニュースを取り上げているのかが俯瞰できるというのは、画期的だ。さらに番組詳細や関連するお店、販売情報などにもアクセスできるなど、単にテレビを見ているだけでは得られない情報も詳しく知ることができる。ただ購入までの導線はないので、そこは今後の課題と言えそうだ。
同様の機能は、パナソニックDIGAにも「シーン一覧」という機能がある。ただこれは別途、ネット上のMeMORAというサービスに加入し、月額315円の費用がかかる。シーン一覧を見るだけなら無料だが、一覧から該当場所までジャンプする機能が有料になる。
一方ソニー機の場合は、別サービスの契約などなにもなく、レコーダがネットに繋がっていれば無料で使える。テレビのメタデータは当然外部の提供会社から買うわけだが、その費用はソニー負担というわけだ。おそらく番組を再生しているときに、利用したいユーザーがその都度ダウンロードするので、データ利用料はそれほどの額にならないと見ているのだろう。
ただ、カバーエリアは今のところ限られており、関東、東海(静岡県除く)、関西(一部番組除く)で、その他の地域ではキー局放送番組のみの対応となる。
■こちらもワイヤレス視聴に対応
先週Xperia Tablet Sとnasneを使って、ワイヤレスでの視聴とおでかけ転送をテストした。nasneの代わりに本機を使っても、ほぼ同じ事ができる。
Xperia Tablet Sのアプリ「ムービー」を使うと、録画番組のワイヤレス視聴やおでかけ転送が可能だ。外付けHDDに録画された番組も、同じ扱いである。
Xperia Tablet Sとの連携も可能だ | 外付けUSBも一つのフォルダとして表示 |
ただ、番組操作のレスポンスにはかなり違いがある。nasneは番組位置のスクラブで高速に再生が可能だが、本機では再生開始まで数秒待たされる。ただしレコーダの特徴として、録画番組にかなり正確にチャプタが打たれているので、スキップ動作によるCM飛ばしは楽ちんだ。
「ムービー」はタブレット開発チームによるアプリだが、レコーダ開発チーム側のアプリ「RECOPLA」でも同様にワイヤレス視聴やおでかけ転送が可能だ。ただしおでかけ転送だけは、10月以降のアップデートで対応する。さらに、「もくじでジャンプ」の「コーナー目次」機能もRECOPLAで使えるという情報もあるが、お借りした現時点のバージョンでは動作確認出来なかった。
タブレットからレコーダをリモート操作している時に、タブレットでも「コーナー目次」機能が使える |
なお、後日動作可能機で検証したところ、タブレットでのストリーミング再生時ではなく、レコーダーのリモート再生時にのみ、目次情報が手元のタブレットで見える、という機能であることがわかった。もちろん「もくじでジャンプ」機能も使える。どちらかというと、レコーダを手元のタブレットで操作する機能を、さらに強化したという扱いのようだ。
番組のライブストリーミングは、レコーダ側の電源がONの場合は、1系統までの番組録画中であれば可能だ。これは電源ONの場合、レコーダの出力でも放送中の番組を出力しないといけないので、そこでチューナーが1個取られるからである。レコーダの電源がOFFの場合は、2番組同時録画までならライブ試聴ができる。
なおRECOPLAは、ソニー製タブレット以外にも、一般のAndroid端末でも動作する。さらに10月には、iPad版もリリース予定だ。ただ一般AndroidとiPadでは、録画番組やライブ番組の視聴や転送はできず、録画タイトルの消去やリモコン機能のみとなる。リモート予約は、別途WEBサービスであるCHAN-TORUを利用すれば可能だ。
■総論
マルチタスクでの動作は、パナソニックが制限の撤廃に意欲的だった。その点でソニー機はずっと遅れていてマイナスイメージが付いていたが、今はもう差はなくなっている。
ネットワーク機能も、Xperia Tabletとの組み合わせで番組のワイヤレス視聴や持ち出しが可能になり、ただテレビの前に座って使うだけではない、新しい楽しみも可能になった。基本的にはソニー製のタブレットのみとなるが、それは一般のタブレットの多くがDTCP-IPに対応していないからである。まあ元を正せば、無料放送にDRMをかけているのが悪いという事である。
注目の「もくじでジャンプ」は、想像以上に強力な機能だ。「テレビを拾い読みする」という機能をレコーダに付けたという点で、画期的である。テレビ番組を作ってきた筆者から見ると、この目次機能は番組キューシートのように見える。
これまでテレビを見る効率とは、いかに番組を探すかということに集約されていて、テレビの番組の中までは踏み込んでいなかった。メタデータを使えばこんなことが可能になる、という一例である。
ある意味データベースを買ってくればできる機能ではあるが、それをユーザーに月額で払えというのではなかなか普及しない。これをソニー側負担で提供したというところに、大きなポイントがある。
これからテレビは、より分析的な目で見られることになるだろう。テレビ放送がデジタル化して、ようやくテレビも探せる情報の一つになった、と言えるかもしれない。
Amazonで購入 |
BDZ-ET2000 |