ミニトピ

「AirPods」で注目度アップ! 5千~1万円台の左右分離型イヤフォン5製品を試す

 Appleの「AirPods」の登場で俄然注目を集めるようになったのが、左右分離型のイヤフォンだ。一般的なBluetooth接続のワイヤレスイヤフォンと異なり、デバイスとの間をつなぐケーブルだけでなく、左右のピースをつなぐケーブルも排したことから、「完全ワイヤレスイヤフォン」と呼ばれることも多い。

AMPS AIRとAirPods

 これらの製品はケーブルがないため、本体に相当するのは「左ピース」「右ピース」の2つの部品で、それらを収める専用の収納ケースを含めた3点がワンセットとなっている。仕組みとしては左右どちらかのピースが親機となってデバイスから音声を受け取り、それを子機に当たるもう一方のピースに飛ばす形になる。

 デバイスとの間はBluetooth、左右ピース間は独自方式での伝送となるが、いずれにせよ有線型のイヤフォンに比べ、設計はかなり複雑かつデリケートなのは明白だ。それゆえ、製品選びにあたっては従来のイヤフォンのように音質だけを見るのではなく、それ以外の部分も丹念にチェックする必要がある。接続がブツブツ切れる、音が左右でズレるなどの不具合があれば、どれだけ音が良くても使い続ける意欲をなくしてしまうからだ。

 また購入後に何らかの使いづらさを感じても、それが同種の製品に共通する問題なのか、それとも機種固有の不具合なのか、複数の製品を経験するまでは判断しにくい。そんなこともあり、まずは入門用として手頃な予算の範囲内で、ただし実用レベルに達していない製品は除外した上で、これだ! という1台を探している人は多いのではないだろうか。

 今回は技適を取得しており、かつAirPodsと同等もしくは低価格で購入できることを条件に、音質よりも使い勝手の面にフォーカスし、4つの製品をAirPodsと比較し、その特徴をチェックしていく。なお実売価格は9月2日時点のもので、いずれもAmazonにおける価格(AirPodsのみApple Storeにおける価格)を掲載している。

今回評価する5製品。左からVAVA「VA-BH002」、M-SOUNDS「MS-TW1」、SOL REPUBLIC「AMPS AIR」、ERATO「MUSE5」、Apple「AirPods」

左右分離型イヤフォン、チェックすべきポイントとは

 最初にチェックすべきポイントをざっと確認しておこう。致命的に使えない製品はすでに今回の評価対象からは省いているが、同種の製品では必ずつきまとう問題であるため、知っておいて損はないはずだ。あまり興味がない人は飛ばして先の製品評価へと進んでもらって構わない。

 ひとつは再接続のしやすさだ。ワイヤレスイヤフォンではデバイスとの接続しやすさは重要なポイントだが、左右分離型の場合、初回の接続のしやすさよりもむしろ2回目以降、再接続のしやすさのほうが重要だ。というのも、音楽を聴くためにイヤフォンを取り出して電源を入れ、そこからつながったりつながらなかったりすると、かなりのストレスだからだ。初回の設定は多少複雑でも、2回目以降にすんなりつながることのほうがユーザとしてはより重要で、機器の完成度も上と言っていいだろう。

 左右ピースの接続性も重要なポイントだ。左右どちらかのピースが親機となってデバイスからの音声を受け取り、もう一方のピースに飛ばす連携がうまくいかないと、片方からしか音が聴こえない状況になる。ごく稀につながらなくなる程度だったり、あるいは本体のボタン操作だけで復旧できるならまだしも、一旦ケースに戻したり、最悪の場合はペアリングからやり直さなくてはいけないようでは、継続して使うのは難しい。

 よく似た問題として、左右ピースはきちんと接続されているにも関わらず、音楽再生中に瞬間的に一方からの音が途切れることがある。電波状況などにも依存する問題だが、一曲を聴き終わるまでに何度も音声が途絶えるようだと、鑑賞に集中するのが難しくなる。安価な製品ほどこの傾向が強いので要注意だ。ちなみにデバイスを手に持ったまま腕を振って歩くと再生が途切れがちになるのは、多くの製品に共通する傾向で、個別の不具合ではないようだ。また電子レンジを使用すると途切れるのも、2.4GHz帯の機器共通の症状だ。

 リモコン機能も製品の差が出やすいポイントだ。現行製品のほとんどは本体ボタンでの再生/一時停止に対応しているが、スキップ(早送り)はサポートする製品としない製品があり、音量調節ともなるとほとんどの製品がサポートしない。有線イヤフォンのようにケーブルにリモコンをつけられないので機能は絞られて当然なのだが、スキップくらいはできてほしいという人もいれば、いちいち耳元に手をやるくらいならデバイス側で操作するので不要という人もいるだろう。利用スタイルによって評価が分かれる点だ。

 ケースも重要なチェックポイントだ。左右分離型イヤフォンの多くは収納ケースが充電器を兼ねており、左右ピースを収納すると自動的に充電が行なわれる。これによって約2~4時間という短い再生時間をカバーしているわけだが、きちんと差し込まれたか直感的に判断しづらく充電が失敗しがちだったり、イヤフォン本体がコンパクトでもケースが巨大でかさばる製品も多い。

 では、実際に製品を評価していこう。製品の試用はiPhone SE(iOS 10.3.3)をメインに行なっている。AndroidについてはNuAns NEO [Reloaded](Android 7.0)で検証し、iPhoneと挙動が大きく異なる場合にその違いを追記している。評価は主に音楽再生、動画視聴の用途に絞り、通話機能および音声アシスタントとの連携機能は対象外としているのでご了承いただきたい。

実売4999円で入門機としてイチオシ、VAVA「VA-BH002」

 最初に紹介するのはVAVAの「VA-BH002」だ。実売4,999円というリーズナブルな価格で、今回紹介する中では突出して安価だ。重量は4g、連続再生時間は3時間、付属ケースによる充電可能回数は3回、Bluetoothバージョンは4.1。コーデックなどについての情報は公開されていない。

VAVA「VA-BH002」

 本体は、後述のM-SOUNDS「MS-TW1」ほどではないが十分にコンパクト。樹脂製だが透明なパーツを使用するなどしておりチープさは感じない。ケースから取り出すことで自動接続するギミックはなく、手動で右ピース→左ピースの順に電源を入れる必要があるため、それら機能を備える他製品に比べて一手間余計にかかる。ちなみに右ピースが親機、左ピースが子機で、左右ピースのペアリングはLEDを見ながら行なう。

 本体でできる操作は再生と一時停止のみで、スキップに対応しないのは使い勝手の面でややマイナスだ。ちなみにダブルタップはリダイヤルに割り当てられており、オフにすることもできないので、誤って押すといきなり電話をかけ始めて困ることになる。

 持ち歩きを前提としたケースもコンパクトで、丸みがあることからポケットなどに入れた際にひっかかることなく、携帯性は非常に高い。ただしピースを収納する際、後述のM-SOUNDS「MS-TW1」やSOL REPUBLIC「AMPS AIR」のようにマグネットで吸着するのではなくピースを物理的に差し込むだけなので、LEDの点灯をきちんと確認しないと、充電ミスが比較的起こりやすい。今回の試用中にも実際にミスをしたことがあったので、注意したほうがよいだろう。

本体ケース

 過去に接続したことがあるデバイスを記憶しており、切り替えて使用できるのはメリットのひとつなのだが、意図しない側のデバイスに再接続に行ってしまい、本来のデバイスにつながったと勘違いして再生を開始したところ内蔵スピーカーから鳴り出した……といった場合もあり、逆に使い勝手を悪くしている印象がある。スムーズに切り替えるためにはBluetooth機能自体のON/OFFで制御するのがいちばん手っ取り早いようで、少々考えものだ。

 ネックとなるのは音質で、今回紹介している他製品に比べると、全体的に音がこもって聴こえる。価格は安いものの、音質の差は価格相応にある印象だ。いっぽう動画再生時の音の遅延は、M-SOUNDS「MS-TW1」やSOL REPUBLIC「AMPS AIR」とはほぼ同等で、皆無ではないものの最小限に抑えられている。こちらは価格の割には健闘している印象だ。

装着例

 1万円以下というセグメントで競合製品となるM-SOUNDS「MS-TW1」に比べると、音質や機能面では価格相応と感じる部分も多いが、カジュアルユースであれば問題なく、価格も安価なことから、入門機としてイチオシといえるだろう。

1万円以下ながら完成度の高い実力派、M-SOUNDS「MS-TW1」

 前述のVAVA「VA-BH002」のライバルとなるのが、エムエスシーがM-SOUNDSブランドで販売している「MS-TW1」だ。今回紹介する中ではVAVA「VA-BH002」に次いでリーズナブルな、実売で1万円を切る価格が特徴だ。重量は4g、連続再生時間は2~2.5時間、付属ケースによる充電可能回数は3回、Bluetoothバージョンは4.2、コーデックはSBCにのみ対応する。

M-SOUNDS「MS-TW1」

 本体は今回紹介している中ではもっとも軽く、小ぶりながらつまみやすく、耳に装着した状態でのボタン操作も行ないやすい。本体でできる操作は再生と一時停止に加え、ダブルクリックによるスキップにも対応している。これらの操作は左右のピースどちらでも可能なので、空いている側の手で操作できるのはありがたい。

 右ピースが親機、左ピースが子機となっており、ケースから取り出すと自動的に再接続が行なわれるとともに、デバイスとの接続も行われる。ケースから取り出して耳への装着が終わる頃には再接続が完了して音楽再生が始められる状態になっているので、手動で電源をオンにしなくてはいけない製品に比べ、使い勝手はすこぶる良好だ。

 本製品のセールスポイントは音質で、1万円以下とは思えないクリアな音が特徴だ。高音が若干シャリシャリと聞こえるきらいはあるが、VAVA「VA-BH002」の始終こもった音とは雲泥の差で、音の広がりが感じられる。ちなみに動画再生時の音の遅延は、皆無ではないが最小限に抑えられている。VAVA「VA-BH002」や後述のSOL REPUBLIC「AMPS AIR」とはほぼ同等の印象だ。

本体ケース

 ケースは底のあるデザインで据え置き時の安定性は高い。丸みを帯びている他製品に比べてポケットの中で存在を意識しやすいが、小柄なためそうストレスにはならない。またピースをマグネットで吸着させて収納する仕組みゆえ、接点のズレによる充電ミスはまず起こらない。日本語のみのクイックスタートガイド、リファレンスガイドが付属しているのも強みで、初心者はもちろん中級者のニーズにも対応できる、完成度の高い製品と言えるだろう。

装着例

 唯一と言っていいウィークポイントは、iOSデバイスとの組み合わせでは、最小音量にしてもそこそこの音量があること。筆者は耳に負担にならないよう、ボリュームをかなり絞り込んで聴くことが多いのだが、本製品は今回紹介しているカナル型4製品の中では最小音量が突出して大きく、もう一段階下げようとするとミュートになってしまう有様だ。iPhoneのミュージックであれば「音量を自動調整」をオンにすることでやや緩和されるが、静かな部屋で聴く用途が中心ならば、このことは念頭に置いておいたほうがよさそうだ。

デザイン性も高くバランスが取れた、SOL REPUBLIC「AMPS AIR」

 3番めに紹介するのがSOL REPUBLICの「AMPS AIR」だ。重量は6g、連続再生時間は3時間、付属ケースによる充電可能回数は15回、Bluetoothバージョンは4.1、コーデックはSBCのみの対応となる。

SOL REPUBLIC「AMPS AIR」

 ピースのサイズは「MS-TW1」よりは一回り大きく、冒頭で紹介したVAVA「VA-BH002」とはほぼ同等なのだが、デザインは高級感もあるほか、ボタンもくぼみがあり指先で操作しやすい。耳へのフィット感が高い割には圧迫感は少なく、非常によいバランスを保っているように感じる。モールド加工された左側の「L」と右側の「R」が読み取りにくいのが若干気になるくらいだ。

「MS-TW1」と同様、ケースから取り出すと自動的に電源が入り再接続が行われるので、耳に装着する頃には再生を始められる状態になっている。ちなみに先に紹介した2製品は右側のピースが親機の扱いだったが、本製品は左ピースが親機に当たる。左右のピースはケースから取り出した時点で再接続される仕組みだ。ただし再接続の成功率は今回紹介している他製品と比べるとやや低く、ケースに戻して再トライを行わなくてはいけないことも多い。

 本体でできる操作は再生と一時停止のみで、スキップもできないのは使い勝手の面でややマイナスだ。また両ピースのボタンを同時にダブルクリックしてのペアリングなど、あまり他に例のない操作体系を採用しているため、説明書が手元にない環境では、うっかり意図しない操作を行った時に元の状態に戻そうとしても、他の製品に比べ苦労する印象だ。

 音質は今回紹介している中ではAirPodsに次いでトップクラスの出来。音作りはM-SOUNDS「MS-TW1」に近いが、こちらのほうがやや低音が強めで、全体のメリハリも効いている。動画再生時の音の遅延は、前述のVAVA「VA-BH002」や「MS-TW1」とほぼ同等で、皆無ではないが最小限に抑えられている印象だ。

装着例

 特徴的なのはケースで、卵型のボディに大容量バッテリーを搭載しており、USB Aコネクタにケーブルをつなぐことで簡易なモバイルバッテリーとしても使えてしまう。それゆえ重量は実測131g(左右ピース込)とスマホ並にあり、ポケットに入れるとズシリと来る。本製品の携行によってモバイルバッテリーの持ち歩きが不要になるのは利点といえば利点だが、利用者が本製品にそれを求めているかは疑問で、好みが分かれる部分と言えそうだ。

3Dサラウンド対応で奥行きを感じるサウンドが特徴、ERATO「MUSE5」

 4番めに紹介するのがERATOの「MUSE5」だ。重量は8g、連続再生時間は4時間、付属ケースによる充電可能回数は3回、Bluetoothバージョンは4.1、コーデックはaptX、AAC、SBCに対応する。このほか防水対応(IPX5)であることも特徴だ。

ERATO「MUSE5」

 ここまで紹介した3製品に比べるとピースのサイズはかなり大きく、重量も8gとそこそこある。フィット感は高いのだが、それはその大きさゆえ脱落しないよう装着時に耳の奥まで押し込もうとしがちなことも要因の一つで、それゆえ圧迫感を感じやすい。サイズが大きいことから、周囲から見た時も耳に装着しているのがはっきり分かってしまう。デザイン性を考慮した他製品に比べると少々やぼったい印象だ。

 本製品はSOL REPUBLIC「AMPS AIR」と同様、左のピースが親機に相当し、そこから右ピースが連携する形になる。ケースから取り出しても自動的に再接続は行われず、電源を手動で入れてやる必要がある。ただし再接続は早く、ストレスはたまりにくい。

 3Dサラウンド対応をうたっており、今回紹介しているカナル型の4製品の中ではもっとも音の奥行きが感じられる。モードは3D有効→ワイド3D有効→無効と切り替えられるのだが、なかでもワイド3Dは耳のすぐ近くまで音が迫ってくる印象で、すべての音源が遠くで鳴っているかのような他製品とは一線を画する。ちなみにモードの切替は左ピースのボタンの4回連続クリックという特殊な方式で、クリックの間隔が一定でないと反応しなかったりと、少々コツを必要とする。

 ネックとなるのが音の遅延だ。動画再生時の音の遅延は今回紹介する中でもっとも顕著で、特にAndroidではコーデックの関係なのか遅延の幅が大きい。画面と音声がぴったり合っていなければ困る用途ではかなり厳しい印象で、実質的に音楽再生用と言えそうだ。

 また、少々疑問符がつくのがケースだ。本体サイズの関係でケースも大柄になるのは仕方ないとして、他製品のようにヒンジで開閉するのではなく上蓋を完全に取り外す構造ゆえ、外出先での出し入れが煩雑だ。またピースをきちんとはめ込むとLEDが点灯する仕組みなのだが、マグネットなどで吸着する構造ではなく、また正しくセットした状態でもイヤフォンが若干傾いた状態で収納されるため、他製品に比べると充電ミスは起こりやすい印象だ。

ケース
上蓋を完全に取り外す構造のため、充電ミスが起きやすい

 またリモコン機能は、スキップ・バックに加え音量調整にも対応するなど高機能なのだが、スキップと音量大が右、バックと音量小が左と左右別々のピースに割り当てられているほか、スキップ・バックは長押し、音量調節は二度押しと、あまり一般的でない操作体系ゆえ馴染みにくい。デバイスをバッグから出さずに操作できることが条件であれば本製品が唯一の選択肢となる可能性はあるが、前述の3Dサラウンド機能の切り替えも含め、後継製品ではもう少し直感的なインターフェイスを望みたい。

装着例

ブームの火付け役となったオープンエア型、APPLE「AirPods MMEF2J/A」

 昨今の左右分離型イヤフォンの火付け役となったAppleの「AirPods」も、最後にざっと紹介しておこう。重量は4g、連続再生時間は5時間、コーデックはAACとSBCに対応。ケース併用で24時間以上の再生が可能とされている。

Apple「AirPods」

 本製品はここまで紹介したカナル型の4製品と異なり、耳に引っ掛けるオープンエア型のイヤフォンだ。それゆえ長時間装着した場合も耳への圧迫感は少ないが、音漏れもあり、また脱落もしやすい。本製品の脱落を防ぐ各種アクセサリがサードパーティから大量に発売されており、それらを利用するのもひとつの手だが、装着したままでは本体をケースに戻せなくなってしまうのが悩ましいところだ。

 接続はケースを開けて取り出すだけで完了し、再接続時の手間のかからなさでは他製品を圧倒している。ちなみに本製品はAndroidでも利用できるが、そちらではケース背面のボタンを長押しして通常のペアリング作業を行なうことになるので、iOSデバイスと組み合わせた場合は、連携性のよさは享受できない。

AirPodsのケース部
引き出すと電源がONに

 本体にボタン類は一切ないが、iOSデバイスではBluetoothのメニューから本体をダブルタップした時の操作に「再生/一時停止」を割り当てられるので、機能的にはカナル型の4製品と遜色ないことができる。このほか、Siriを利用すれば音量調節などにも対応する。

 イヤフォンを外すと自動的に再生が停止する設計や、ペアリング情報をiCloudで共有できる点など、作り込みでは他の製品を圧倒しているが、評価を分ける大きなポイントとなるのが、オープンエア型であることだろう。iPhoneユーザーで、純正のEarPodsを使っていたユーザーは本製品を歓迎するだろうし、カナル型以外は考えられず、純正イヤフォンは長らく開封したことすらないという人は、ほかの選択肢を求めることになるだろう。

装着例

まとめ:切り口ごとのおすすめ製品を紹介

 以上カナル型4製品+AirPodsという計5製品を紹介したが、冒頭にも述べたようにいずれも最低限の使い勝手はクリアしており、明確に選外となる製品はない。あとは求めるポイントと予算に応じて、好みの製品を選ぶことになるだろう。AirPodsを除いた4製品について、切り口ごとのおすすめ製品を紹介して本稿の締めとしよう。

 まず、音質のよさを求めるのであればSOL REPUBLICの「AMPS AIR」が筆頭で、次点がERATO「MUSE5」、M-SOUNDS「MS-TW1」となる。価格ではVAVA「VA-BH002」が突出しているが、音質なども含めたトータルのコスパでは「MS-TW1」が上回るというのが筆者の評価だ。

 本体の軽さではM-SOUNDS「MS-TW1」にSOL REPUBLIC「AMPS AIR」、VAVA「VA-BH002」が続く。単体での再生時間(公称値)はERATO「MUSE5」の4時間が最長だが、ケースと組み合わせた再生時間ではモバイルバッテリーとしても使える「AMPS AIR」が突出している。初心者向けのわかりやすさという点では、操作性が洗練されている「MS-TW1」がもっともお勧めしやすい。

 ニッチな切り口ではどうだろうか。リモコン機能の充実度では音量調整も可能なERATO「MUSE5」が頭一つ抜けており、防水機能が必須であればこちらもやはりERATO「MUSE5」が候補になる。動画鑑賞でも使えることを条件にするならば、完全な遅延なしというのは難しいものの、VAVA「VA-BH002」、M-SOUNDS「MS-TW1」、SOL REPUBLIC「AMPS AIR」から選んでおくのが無難だろう。

 以上、AirPodsよりも低価格で購入できることを条件に、4つの製品の評価をお届けしたが、1万円前後の左右分離型イヤフォンの市場はいまやレッドオーシャンと化しており、本稿の執筆中にも新しい製品がいくつか発表されている。旧製品の陳腐化も激しく、1年前にもてはやされた製品が、すでに型落ちの製品として扱われていることも少なくない。

 逆に言うと、現在流通している中で1~2年後に残っている製品は決して多くはないはずで、それゆえあまり多額の予算をかけるのではなく、今回紹介したようなAirPods以下の価格帯で、まずは左右分離型イヤフォンの特性を知るところから始めてもいいのではないだろうか? 本稿が購入の一助になれば幸いだ。

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山口真弘