プレイバック2015

VRは映像、音声の視聴スタイルを変革しちゃう、かもよ!? by 日沼諭史

 すでにガンガン楽しんでいる人がいる一方で、今ひとつピンと来ていない人も多いであろうジャンルの1つが、(スマホを使った)「VR」ではないだろうか。360度の映像を目の前のディスプレイに表示し、自分の頭の向きに応じて映像の視界も変化するVRは、数年前に発表されたOculus RiftというVRヘッドセットによって、VRの大きな可能性を改めて認識させることになった。2015年は、その流れが本格的にスマートフォンにも波及した年だったように思う。

スマホで楽しめるVRが盛り上がっている

 スマートフォンでVRを体験するには、基本的にはスマートフォンの画面を2分割して表示するアプリと、スマートフォン本体を差し込んで眼前で固定するVRスコープ(ハコスコ)と呼ばれるアイテムが必要になる。昨今のスマホVRの盛り上がりは、VRを手軽に利用可能にするこのVRスコープの存在が大きい。Googleが提供しているダンボール製のCardboardのように、1,000円程度で安価に入手できるVRスコープや、Gear VRのような特定端末向けのVRスコープなど、バリエーションも徐々に増えてきている。

1000円前後で購入できてしまうGoogle Cardboard
最初は完全な箱状
ガワを外して
手順通りに折り返したり
畳み込んだりするだけで
完成
スマートフォンを差し込んで使う
YouTubeが360度動画に対応。映像の右下にCardboradアイコンが見えていればVR表示に切り替えられる

 それと同時に、VRコンテンツが充実してきているのも見逃せない。YouTubeやFacebookが360度動画の配信に対応したことで、視聴はもちろんのこと自分でVR動画をネットにアップロードして知り合いに共有できるようになった。最近ではニコニコ動画をVRに対応させた「niconicoVR」もスタートしたばかり。「VRを楽しもうにも、コンテンツが少ない」という状況は解消されつつある。

 VRコンテンツを作るための環境も整った。その代表格がデジタルカメラRICOH THETAシリーズだろう。これ1台あれば、視界360度の全天球映像を簡単に撮影してVRコンテンツ化できる。さらにGoogleも「Cardboard カメラ」アプリをリリースし、VRコンテンツをスマートフォン単体で撮影できるようにした。他人が作ったVRコンテンツで満足できなければ、自分でオリジナルのVRコンテンツを作る、なんてことも可能になったわけだ。

簡単に360度動画を撮影できる「RICOH THETA S」
スマホ単体でVR映像を撮影できる「Cardboard カメラ」。ただし全天球ではなく、左右360度のパノラマ写真をVRコンテンツ化するようなイメージだ

 VRコンテンツは、スマートフォンで利用する場合、2画面に分割して同時処理することから、ハードウェアには高い性能が求められる。現在のハイエンドスマートフォンであればある程度スムーズな再生は可能だが、いかんせん画面を2分割するために解像感が失われ気味、という課題はある。

 高解像度・高画質のVR映像を実現するまではもう少し待たなければならないかもしれないが、2016年には大幅に処理性能がアップした次世代チップセット「Snapdragon 820」が登場予定であり、ディスプレイも進化し続けていることを考えれば、いずれ映像品質に関わる課題も時間が解決してくれるはずだ。

1画面を2分割して表示するため、今のところ解像感がやや失われ気味。スマホにも高性能が要求されるという課題がある

 また、Snapdragon 820は仮想的なサラウンドオーディオにチップレベルで対応する。VRスコープとヘッドフォン(スピーカー)を組み合わせれば、映像とサウンドの両面から圧倒的な没入感が得られそうだ。このような技術・仕組みを応用することで、ライブコンサートの会場にいるかのような音楽体験もできるに違いない(すでに似たような取り組みを行っているところもあるようだが)。いずれはハイレゾ音源のデータと並んで、ハイレゾ音声+高解像度映像がセットになったVRコンテンツがダウンロード提供されるような未来もあるのでは、とすら思えてしまう。

 そんなこんなで、先日「RICOH THETA パーフェクトガイド」というVRスコープ付き解説本が発売されたのに合わせ、本誌でVRコンテンツの楽しみ方を紹介した。THETA Sも間違いなく2015年のヒットアイテムの1つだが、今や誰でも気軽にVRコンテンツにアクセスできることを考えると、むしろ必要最小限の投資ですぐにVRを楽しめるVRスコープやその周辺の動きこそが、個人的には2015年の注目のアイテム・出来事だと思った次第。

「RICOH THETA パーフェクトガイド」の付属VRスコープとTHETA S

 というわけで、これからVRを試してみたいという人には、iPhoneもしくはTHETAを持っているなら「RICOH THETA パーフェクトガイド」(の付属VRスコープ)を、AndroidスマートフォンユーザーならGoogle Cardboardをおすすめしたい。ちなみに、これほどまでに「RICOH THETA パーフェクトガイド」をおすすめしても、筆者は本の制作には一切関わっていない。せめて24日からスタートした連載「日沼諭史の体当たりばったり!」で、2016年はいろいろパワーアップを図っていくのでどうぞよろしくお願いします、という宣伝で締めくくりたい。

VRでいつもこんな風にエンジョイしている
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(VRスコープ付録付)
RICOH THETA
パーフェクトガイド
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日沼諭史

Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、現在は株式会社ライターズハイにて執筆・編集業を営む。PC、モバイルや、GoPro等のアクションカムをはじめとするAV分野を中心に、エンタープライズ向けサービス・ソリューション、さらには趣味が高じた二輪車関連まで、幅広いジャンルで活動中。著書に「GoProスタートガイド」(インプレスジャパン)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。