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パイオニア株式会社は19日、日本放送協会(NHK)と共同で、小型・超高感度な撮像デバイス「HEED冷陰極HARP撮像板」の開発に成功したと発表した。これにより、照明を使わずに夜間でもカラー撮影などができる業務用ビデオカメラの実用化や、民生用カメラへの応用も期待される。 HEED冷陰極HARP撮像板は、NHKが中心となって開発したHARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)膜と、パイオニアが‘97年に発明したHEED(High-efficiency Electron Emission Device)の利点を組み合わせたという新撮像デバイス。画素サイズは50×50μmで、画素数は約5万画素(256×192ドット)。CCDの約20倍の感度を有するという。 HARP膜は入射光を電荷に変換し、それを膜の内部で増倍することで、高い感度が得られる光電変換膜。NHKではHARP膜と熱電子源とを組み合わせたHARP撮像管を開発し、カメラへ搭載。CCDを大幅に上回る超高感度を活かして、夜間の緊急報道や、オーロラ撮影などに使用してきた。 パイオニアのHEEDは、電界により真空中に電子を放出させる「冷陰極型」の独自電子放出素子。フィラメントを利用する熱電子放出に対して熱を必要としないため冷陰極と呼ばれており、高速応答や、低い駆動電圧で安定的に電子を放出できるなどの特徴がある。同社では、半導体プロセスを導入し、画素の微細化やLSIによる駆動回路との一体化を実現した「アクティブ駆動型HEED冷陰極アレー」を開発している。
今回開発されたHEED冷陰極HARP撮像板は、これらのデバイスの特徴を組み合わせたもので、HARP膜とアクティブ駆動型HEED冷陰極アレーを、向かい合わせで近接配置した構造を採用している。 このため、撮像板自体の大きさが、従来の撮像管の10分の1となる、1cm以下になる。さらに駆動用回路も内蔵しているため、外部回路を必要とせず、カメラの小型化が可能になる。さらに、低電圧で電子ビームを放出できるHEED冷陰極アレーの特性も持っているため、消費電力も低減できる。 パイオニアはこれらの利点を総合し、「報道現場などで求められている、小型で機動性が高く、かつ超高感度なカメラの実用化に目処をつけるとともに、将来ハンディカメラや車載用暗視カメラ、防犯用監視カメラなど、民生用製品への応用が期待される」としている。
また、HARP膜はX線に対しても感度を有しているため、X線像の超高感度撮影にも対応可能。「医療用への応用や、バイオロジー、センシングなど、様々な分野での活用も期待できる」という。今後は画素の高精細化を行ない、早期の実用化を目指す。
□パイオニアのホームページ
(2005年5月19日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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