2018年3月27日 08:15
仕事柄、筆者は、アメリカの大手IT企業を訪れることが多い。会社風土はそれぞれで、違いを見ているとなかなか面白い、と思う点は少なくない。
3月上旬、筆者が訪れていたのはNetflixだ。いくつか記事も執筆したので、お読みになった方もいるかも知れない。同社はロサンゼルスとロスガトス(サンフランシスコ近郊、いわゆるシリコンバレーにある)に拠点があって、今回はその両方を訪れた。ロサンゼルス・オフィスは初訪問だが、ロスガトスには、これで都合3回目の訪問となる。
アメリカのIT企業にありがちな文化として、「そこら中にカフェテリアスペースがあり、自由に飲食できる」というものがある。これはNetflixも同じ。ロサンゼルスの場合もロスガトスの場合にも、各フロアの階段に近いところに、大量の食べ物と飲み物が置かれている。もちろん、食堂は別にある。以前Netflix社員に、「この会社の利点は、絶対飢えないことだが、欠点は太ること」と言われたが、さもありなん、という気がする。
変わった仕組みとして、備品の管理がある。写真は、ケーブルやキーボードなどの備品が入った「自販機」だ。といっても、売っているわけではない。社員は自由に中からとりだして使っていい。返す必要もない。さらには書類処理も必要ない。そこで厳密な管理を行うことによって効率が下がったり、管理コストが発生したりすることを省く方が効果的、という判断があるからだ。
社員は社内であれば、好きな場所で働いていい。時間も決められてない。社員はIDカードをもっていて、それで社内に出入りするのだが、それは「働いている時間を管理する」ためのものではなく、単にドアをあけるためのカギとしての役割しかない。唯一あるルールは、「定められた仕事をこなす」ということをベースにした評価システムだ。
会社によって風土は違う。だから、「Netflixのような働き方が素晴らしいので日本全国に広めよ」という気はない。しかし、「働くのはなんのためか」「仕事の仕方を評価するとはどういうことなのか」「働きやすいとはどういうことなのか」ということを、訪れるたびに考えるきっかけにはなる。
管理のための管理のコストをなくすことこそ、いわゆる「働き方改革」の最初のステップではないか、と、自己裁量で働いているフリーランスの筆者は考えてしまうのである。
なお、会社の風土は会議室の名前にあらわれる、と筆者は思っている。そこにある種の思い入れが出てくるからだ。Netflixの場合には、会議室などの名前はすべて「映画」や「Netflixオリジナル作品の名前」になっている。オリジナル作品は増え続けているので、そのうち、みなオリジナル作品の名前になってしまうのでないか……と思っている。この命名ルールは、アメリカだけでなく、日本のオフィスでも同じである。
筆者が知る別の会社のルールとしては、Evernoteは「古今東西のゲームの名前」を会議室名にしていて、アップルは「おもちゃの名前」を会議室名にしている。Amazonは有名な川の名前が会議室名だ。
なお、この種のルールがある会社で働く人々に聞いてみると、「よく使う会議室については、とてもわかりやすいのだが、あまりつかったことのない会議室だと、どうしても会議室名が覚えられないことがある」のが難点なんだとか。まあ、確かに。
小寺・西田の「金曜ランチビュッフェ」
本稿はメールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」からの転載です。
コラムニスト小寺信良と、ジャーナリスト西田宗千佳がお送りする、業界俯瞰型メールマガジン。
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2018年3月23日 Vol.166 <春はケジメの季節号>
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02 余談【西田】
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