米アップルのiPod担当者が語る、新shuffleの進化
「世界最小」への取り組み、ボイスオーバー機能の狙い
アップルが、第3世代のiPod shuffleを3月11日から発売した。第2世代のiPod shuffleに比べて、筐体を約半分に小型化。それでいながらも、容量を4GBに拡張し、最大1000曲を収録できるようになった。一方で、電源と再生モードの切替操作以外は、付属しているイヤフォンのコントロールボタンで行なう仕組みとしたこと、ボイスオーバー機能により、音声での楽曲紹介などの機能を搭載したのも大きな特徴だ。
第3世代のiPod shuffleは、どんな狙いで開発されたのか。来日した米アップル ワールドワイドプロダクトマーケティングiPod担当、ショーン・エリス氏にインタビューした。
■ コントロール部の変更で、約半分のサイズに
--第3世代のiPod shuffleの最大の特徴はどこにありますか。
エリス:先週、投入した新しいiPod shuffleは、世界最高の操作性を持つ、世界最小のミュージックプレーヤーです。まず、これまでのiPod shuffleを振り返ってみましょう。第1世代のiPod shuffleは、直感的に使えて、使い勝手がいいという評価をいただきました。シャッフルの機能が気に入ったという人や、シャッフル機能によって、これまで忘れていた音楽を再発見できるようになったという人も多かったです。そして、第2世代のiPod shuffleでは、クリップをつけました。
従来からの直感的な操作性を維持しながら、世界で最小のミュージックプレーヤーであり、同時に最もウェアラブルなプレーヤーとなりました。こうした進化を踏まえて、次のiPod shuffleでは何をするのか。進化のヒントは、iPhoneで実現していたヘッドフォン(イヤーパッド)でのコントロール機能でした。
iPhoneの場合は、ヘッドフォンのコントローラで電話に出たり、切ったり、音楽の再生のコントロールができるようになっている。そこで考えたんです。iPod shuffleのコントロール部分を本体から取り外して、ヘッドフォンのコントロールに内蔵してみようと。iPod shuffleのヘッドフォンでは、再生や一時停止、ボリューム調整、プレイリストの切り替えが可能となっています。これによって、iPod shuffleの本体をさらに小型化できた。体積は、第2世代のiPod shuffleに比べて、半分近くになっています。
縦長の形状を採用 | iPod shuffleの初代(左)と第2世代(右)モデル |
--小型化するために、コントロールをヘッドフォンに搭載したのではなく、ヘッドフォンにコントロール機能を搭載したから、小型化できたと。
コントローラ部 |
--iPod shuffleは、初心者が最初のiPodとして購入するケースが多い製品です。コントロール部分が見えないことに対する不安感はないでしょうか。
エリス:操作は至ってシンプルです。ヘッドフォンのコントロールは、中央のボタンと、その前後にある+と-のボタンだけで操作できます。中央のボタンを1回クリックすると再生/一時停止、2回クリックすると次の曲を再生、3回クリックすると前の曲を再生できる。また、リモコン中央のボタンを長押しすると、曲名とアーティスト名を音声で紹介します。第2世代のiPod shuffleも、最初はボタンを見て操作する人が多いですが、使い慣れると、クリップで好きなところにiPod shuffleをつけて、あとは見ないで操作する人が多い。これと同じです。その点では気にしていません。
--小型化していると、iPod shuffleを目立つところにつけることができなくなりますね。ユーザーにとって、満足度のひとつが減るのでは(笑)。
エリス:小型化して目立たないという指摘はおもしろいですね。しかし、どうも、第2世代よりも目立たせて付けているという人が多いですね(笑)。ジャケットの襟の部分に付けたり、裏面のアップルのロゴマークの方を、わざと外側に見せて付けている人もいますね。
--ブラックとシルバーの2色の展開ですが、カラーバリエーションが少ないですね。ほかのカラーはどうですか。
エリス:最も人気が高い2色で投入できたことは良かったと思っています。ただ、今日の段階では、カラーバリエーション展開については、話すことができません。
カラーはシルバーとブラック | 背面にクリップを装備 | パッケージ |
■ ボイスオーバー機能を付けた理由
--iPod shuffleでは、新機能として「ボイスオーバー(VoiceOver)」機能を搭載しています。これはどんな狙いからつけたものですか。
エリス:iPod shuffleは、小型化する一方で、大きくなった部分もある。それは、4GBに拡張し、最大1,000曲を収録できるようになったという点です。1,000曲あれば、楽曲の管理は大切になりますからね。iPod shuffleの大きな進化として、プレイリストのシンク機能があります。
そして、第3世代のiPod shuffleで新機能として搭載した「ボイスオーバー(VoiceOver)」機能も、音楽を楽しむ、あるいは管理性を高めるという点で大きな進化となります。ボタン操作だけで、楽曲の名前、アーティストの名前を教えてくれるこの機能によって、初めてユーザーに直接話しかけてくれるミュージックプレーヤーが完成しました。
まず、初めてiPod shuffleをシンク化する際には、ボイスオーバーキットと呼ばれるバンドルソフトウェアが、iTunesにダウンロードされます。このボイスオーバーキットには2つの機能があります。ひとつは、iTunesライブラリーを見て、言語を分析する機能。iPod shuffleでは、英語、日本語のほか、チェコ語、オランダ語、フランス語、ドイツ語、ギリシャ語、イタリア語、中国語(北京語)、ポーランド語、ポルトガル語、スペイン語、スウェーデン語、トルコ語の14言語に対応しています。クラシックではドイツ語、イタリア語多いですが、この発音を聞いてもなんだかわかりません。聞く人それぞれにあわせた言語を、プレイリストから自動的に選択します。
もうひとつの機能は、オーディオクリップのテキストから音声合成する機能です。小さいサイズのテキストファイルを作成し、これを楽曲データとともに、iTunesからiPod shuffleに転送する。
こうした言語の分析や音声合成ファイルの作成などといった負荷がかかる作業は、MacやPCで行なうことになります。
--英語は流ちょうに聞こえますが、日本語の音声はかなりロボット的な印象ですね。
エリス:ボイスオーバーキットは、MacとPCで利用できますが、Mac OS X Leopardのユーザーに限って、アレックスというエンジンを利用できます。これは、世界最高のテキスト・トゥ・スピーチ機能だといえます。英語に限定されますが、アレックスによって、英語は大変流ちょうに聞こえるわけです。Macユーザーだけが利用できる機能です。他の13言語に関しては、Macでも、PCでも同じものです。日本語をはじめとする他の言語の機能強化については、今日の段階ではお話しできません。
--ボイスオーバー機能を使って、今後、なにか面白い使い方ができるでしょうか。
エリス:例えば、アイデアのひとつとして、プレイリストにパーソナルメッセージを入れて、プレゼントするというような使い方もできるといいですね。ただし、これは、その機能を実現するというわけではありませんよ(笑)。
--第2世代のiPod shuffleも同時に販売していますが。これはどうしてですか。
Apple Storeのshuffle販売コーナー |
エリス:第2世代のiPod shuffleのうち、2GBモデルの生産を終了しますが、1GBの製品は49ドルで、引き続き販売していきます。より低い価格帯で、限られた機能でもいいから、iPod shuffleを使いたいという人に対しての製品です。第3世代のiPod shuffleでは、機能を削ることがなく、100ドルを切る価格(日本では8,800円)で投入できたことが大きな意味があります。この価格でイノベーティブな技術を提供できました。
また、Macとの親和性が高いことで、他のポータブルオーディオには実現できない機能の大きな進化が図っている。ボイスオーバー機能も、Macとの親和性によって実現できたものです。第3世代のiPod shuffleで、世界最小ながらも、機能を一切削ぎ落としていない性能の高さを、ぜひ体感してください。
(2009年 3月 18日)
[Reported by 大河原克行 ]