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シャープ戴正呉新社長が社員にメッセージ「早期の黒字化を」。信賞必罰の鴻海流制度も

 シャープ新社長に就任した戴正呉(たい せいご)氏は22日、シャープの社員向けホームページにおいて、従業員に対してのメッセージを発信した。戴社長は、「この出資は買収ではなく投資であり、シャープは引き続き独立した企業」と位置づけ、その観点から、鴻海からシャープの組織の一員となるのが戴氏一人であることを説明する一方、「私の使命は、短期的には、一日も早く黒字化を実現し、シャープを確かな成長軌道へと導き、売上・利益を飛躍的に拡大していくこと。中期的な使命としては、次期社長となる経営人材を育成・抜擢するとともに、積極果敢にチャレンジする企業文化を創造すること」とした。

シャープの戴正呉新社長(写真は4月2日撮影)

 さらに、「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」、「コスト意識を大幅に高める」、「信賞必罰の人事を徹底する」という3つの方針を掲げ、信賞必罰の人事では、「収益を上げれば、従業員に還元する」という姿勢を打ち出し、ストックオプションや営業インセンティブ制の導入により、「高い成果を上げた従業員を高く処遇する体系にする」一方で、「挑戦を避け、十分な成果を出せない場合には、マネージャーは降格するなど、メリハリの効いた仕組みを導入する」と、鴻海流の社内制度を導入する考えを示した。

早期黒字化を実現し、輝けるグローバルブランドを目指す

 8月12日に、鴻海精密工業が、シャープへの出資を完了したのに伴い、鴻海傘下でのシャープの再建がスタート。前任の高橋興三氏が社長を退き、8月13日に開催された取締役会を経て、鴻海精密工業副総裁の戴正呉氏が社長に就任した。

 戴新社長は、8月13日付けで、「104年の歴史を誇る世界的な企業であるシャープの再建に向け、大きな責任を担うことを誇りに思い、その責務を全力で果たしていく」とのコメントを発表するとともに、8月22日に役職員に対して自らの方針を表明する予定を明らかにしていた。

 シャープの従業員に向けて、戴社長がメッセージを発信するのは、今回が初めてのことになる。

 メッセージは、「早期黒字化を実現し、輝けるグローバルブランドを目指す。」のタイトルで、社員向けホームページで公開された。

 戴社長は、「私は、鴻海で30年以上にわたり、生産、営業、経営管理など、様々な分野の仕事を経験し、半導体をはじめとした電子部品、コンシューマーエレクトロニクス、IT機器などの事業拡大を牽引してきた。また、日本企業との仕事も数多く経験し、日本に駐在したこともある。これからシャープの皆さんと一緒に、本格的に仕事ができることを大変嬉しく思う」とし、短期的な目標に掲げた黒字化達成には、鴻海との戦略的提携が鍵となることを指摘。「両社の強みを活かした幅広い協業を加速し、大きなシナジーを生み出せるよう、私が先頭に立って取り組む」と述べた。

 さらに、「まず始めに皆さんにお伝えしたいこと」としてあげたのが、シャープの創業者である早川徳次氏の「まねされる商品をつくれ」の精神や、経営理念や経営信条などの「創業の精神」を引き続き根幹とすることだ。

 また、独自技術の証である「特許」や、信用の蓄積の証である「ブランド」を強化する姿勢を打ち出し、「優良な特許を次々と生み出せるような独自特長技術の開発や、それを活かした既存事業の拡大や新規事業の創出に向けて、シャープ本来の強みである技術開発の領域へ積極的に投資していく」とした。

 ブランドについては、「いま一度、ブランドを私たち自身で磨き上げ、グローバルで輝かせたいと考えている。そのためには、まず、私たち全員がお客様の気持ちに寄り添い、お客様一人ひとりが自分らしさを実現できる商品やサービスを提供する姿勢を持ち続け、シャープらしいオリジナリティあふれる価値を実現していくことが必要。シャープがこのようなブランドであり続けることを世界中のお客様に約束するメッセージを、今後、グローバルに発信していく」と述べた。

 シャープの事業の方向性としては、「人に寄り添うIoT」を目指すことを強調。「ユーザーの身の回りの機器が連携し、一人ひとりの好みや状況に合わせて、自動的に作動したり、知りたい情報をタイムリーに提供するなど、身近な機器が繋がってユーザーの生活全体に寄り添っているような、シャープならではのIoTの世界、『スマートホーム』、『スマートオフィス』を実現していく」とした。

 「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」、「コスト意識を大幅に高める」、「信賞必罰の人事を徹底する」という3つの方針においては、以下のように説明。

 「ビジネスプロセスを抜本的に見直す」では、シャープは商品企画・開発・販売に経営資源を集中する一方で、調達・生産は鴻海グループが全面的にサポートすることで、サプライチェーンの改革を目指すほか、事業推進体制を刷新するとともに、ビジネスユニットを単位として収益責任を明確にする「分社化経営」を推進。コーポレート部門のプロフィットセンター化を進め、最終的には「ゼロ・オーバーヘッド化」を目指すことにより、いままでのような形の「本社」を無くすとした。また、「経営管理、法務審査や権限規定などの業務の仕組み、研究開発やITの取り組み方針など、これまでのしがらみにとらわれない改革を推し進め、効率を最大化していきます」。

 「コスト意識を大幅に高める」では、「事業所を訪問した際、現場にはコスト削減の余地が多数あった」と指摘。「自らコントロールできるコスト削減は、売上拡大より容易に成果を上げることができる」としながら、コスト力を高めることによって売上拡大を加速する正のサイクルへと、一刻も早く転換すること、徹底した原価低減はもとより、今後は各種資産の有効活用や過剰な設備の撤廃など、さまざまな観点からコスト意識を高め、費用対効果を追求するという。

 「信賞必罰の人事を徹底する」では、信賞必罰を原則とし、年齢、性別、国籍に関係なく、成果を上げた人には、処遇やポストでしっかり報いる制度にすることを明言。「人事評価についても、業績に基づき、公明正大、公正な評価を行う」とした。

 役割等級制度を、マネージャー(管理職)に続いて、一般社員にも導入することも明らかにした。

 また、8月16日以降の給与減額見合い分を手当として、9月23日給与から支給。だが、「マネージャーについては、信賞必罰の考え方に基づいて、成果を上げている人を対象に支給する」と、早くも鴻海流の仕組みを採用することを示した。

 最後に戴社長は、「依然として赤字が続く厳しい経営状況にある。鴻海グループとしてはシャープに大きな投資をし、全面的に支援していくが、経営再建の担い手は皆さん一人ひとり。新しいシャープを自ら創っていく気概を強く持ち、それぞれの業務において主
体的に変革に取り組んでほしい。構造改革や鴻海グループとの連携が進むなかで、皆さんは大きな変化に直面し、戸惑いや不安を感じられているかもしれない。しかしそれらの変化はすべて、1日も早く黒字化するためであり、再生を果たして喜びを共に分かち合うた
めでもある」とし、「皆さんと私は仲間です。一緒に困難を乗り越え、早期の黒字化を果たしましょう!」と呼びかけた。