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シャープは8Kと5G、AIoTを事業の柱に。鴻海と120型4Kテレビや8Kパソコン開発
2019年6月11日 18:08
シャープは11日に事業方針説明会を開催。戴正呉会長兼社長らが登壇し、8Kと5Gを活用したエコシステムの構築など、今後の事業変革への取り組みについて説明した。また、鴻海と共同開発している4Kテレビや8Kパソコン、240Hzゲーミングディスプレイなども紹介した。
8Kと5G、AIoT展開。商品のBtoB比率は50%へ大幅拡大
取締役兼副社長執行役員の石田佳久氏は、同社の目指す姿として、「8K+5G Ecosystem」と「AIoT(AI+IoT) World」の実現について紹介。
これまで示してきたビジョン「8KとAIoTで世界を変える」に、新たに「5G」も加えたことについて、石田氏は「日本は北米や韓国に比べて(5Gで)少し遅れているが、日本のオペレーター(通信事業者)も本腰を入れて5Gを進めている。我々も先陣を切って、5Gハンドセットや、関連する技術を投入したい」と述べた。
コア技術の柱として、「8Kエコシステム」、「スマートビジネス」、「ICT」の3つのセグメントに分けて運営。重点を置く分野としては、産業、セキュリティ、スマートオフィス、エンターテインメント、ヘルス、オートモーティブ、教育、スマートホームの8つを挙げた。
石田氏は「ハードウェアはユニークなものを作ることが評価されてきたが、我々だけではなく鴻海と一緒になったことで、鴻海の技術を取り込みながらハードウェアを強くしたい」として、8Kカムコーダーや小型8Kビデオカメラ、ヘルシオホットクックなどで両社のシナジーが成果となっていることを紹介。白物家電については「クラウドにつなげて生活を豊かにする取り組みを進めてきたが、これをさらに横へつなげながら価値を上げたい」と説明。事業変革の今後の方向性について「8Kエコシステム、ICT、スマートビジネスをバラバラに行なうのではなく、協調しながら成長していきたい」とした。
具体的な事業変革の一つとして、「プラットフォームサービス」や「アプリケーション」の強化を挙げており、従来の同社商品事業のうちBtoBは35%だが、これを早期に50%まで伸ばすという方針を説明。戴社長は、BtoB 50%という割合について「通過点」として、さらにビジネス向けを拡大していく意向を示した。
液晶事業の今後の方針についての質問には、戴社長が「テレビだけではなく、もっとBtoBにも頑張っていきたい。液晶ディスプレイは、2年半に渡り黒字だったが、それに満足しておらず、もっと色々な領域へ拡大できる。例えばゲーミング、eスポーツ、ギャンブル、車載にも使われている」と述べた。
BtoB比率を上げることについて「コンシューマー事業が縮小するからなのか?」という質問に対して石田氏は「業界全体として、ハードウェアの付加価値が下がっていく方向にあるが、コンシューマやめるかというと絶対やめない。鴻海と一緒になったことで、さらに付加価値を高めた新しいデバイスや技術、商品を、提供できる。5Gなど、業界内でもいいポジションを確保できる」とした。
「GAFAに無いデータが我々にある」
「AIoT World」の取り組みの一つとして、5月20日に発表した新たなスマートホームサービス「COCORO HOME」を紹介。テレビやエアコン、スマートフォンなどの機器が、他社サービスを含めて連携するのが特徴で、現在はセコム、KDDI、関西電力が協力することが決定している。
同社のAIoTプラットフォームにおいて、石田氏は大阪・堺データセンターの重要性を強調。「GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)は非常に大量の個人データを持っているが、そういった会社がどうあがいてもアクセスできないデータがそこ(堺データセンター)にたまっている。例えば電子レンジを(シャープ製品の利用者が)どういう使い方をしているか、どんな時にどのボタンを押したかなどのデータが蓄積されている。さらに、我々が持っていない他社の機器として、シャッターやドアホン、宅配ボックスなども同じプラットフォームにつないでいただければ、新しいサービス、価値を提供できる」とした。
グローバル展開については、これまで注力してきた日本、ASEAN、欧州に加え、今後は中国と米州の売上拡大に向けても積極的に推進。
2016年から2017年への売上高推移は日本市場が1.1倍、ASEANが1.6倍、欧州が1.4倍に成長している。中国については、今後テレビなどの“量から質”への転換を加速、白物家電事業の本格展開を目指す。また、米州では既報の通り「AQUOS」ブランドを買い戻すことでテレビ事業に再参入し、ブランドビジネスを本格展開することを説明した。
世界的に懸念される米中貿易摩擦の影響については、「我々にとってはリスクではなく商機」と説明。これは、同社が中国の拠点で生産するアメリカ向け製品の比率が全体の中で低いためだという。