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デノン、DDFA採用のUSB DACヘッドフォンアンプや新フラッグシップヘッドフォン披露
2016年10月22日 18:46
ディーアンドエムホールディングスは22日、「秋のヘッドフォン祭」においてデノンブランドの新フラッグシップヘッドフォン「AH-D7200」を紹介。さらに、DDFAを使ったヘッドフォンアンプを内蔵した、小型USB DACヘッドフォンアンプ「DA-310USB」も参考出品した。
AH-D7200
「AH-D7200」は2017年1月中旬発売で、価格はオープンプライス、店頭予想価格は10万円前後。2006年発売の「AH-D7000」を発展させたモデルで、デノン50年の技術、ノウハウを結集させたという。
これまでの流れについて、国内営業本部 マーケティンググループの宮原利温氏は、「7000を踏襲しているが、(デザインが大きく変わった)D7100を否定しているわけではなく、それを経て生まれたのがD7200。D7100は外観的にこれまでの流れとはギャップがあったが、販売数量的にも悪くはなく、音質にも高い評価をいただいた。フォルム的には(昔のものに)回帰したように思えるかもしれないが、中身はネジ一本に至るまで、すべてのパーツを新たに設計し直した」という。
50mm径のフリーエッジ・ナノファイバードライバーを搭載。スピーカーのドライバと同様に、振動板の外周に柔らかいエッジを備え、振動板全体を平行に動かす「フリーエッジドライバ」となっており、入力信号に対して正確かつ歪の少ないサウンドと量感豊かな低音再生を実現できるという。
振動板の素材は、軽量かつ高剛性で適度な内部損失を備えるナノファイバー、ボイスコイルは、振動系の反応性を高めるために軽量なCCAWボイスコイルを採用している。
振動板について、宮原氏は、「D7000からナノファイバーを使っており、現在まで培ってきた経験やノウハウがあり、他社と較べても高い技術力を持っていると自負している。企業秘密ではあるがパルプをナノファイバーにある比率で投入する事で、音質の面で優れた振動板になる」という。
再生周波数帯域は5Hz~55kHz、感度は105dB/mW、最大入力は1,800mW、インピーダンスは25Ω。
ハウジングには、木目が美しく耐久性にも優れる天然のアメリカン・ウォールナット材を採用。音質に影響を与える不要な振動を抑え、クリアかつ緻密なサウンドを得るために試作と解析、試聴を繰り返し、形状、厚み、仕上げに至るまで入念なチューニングを行なったという。ハンガー部は、軽量かつ堅牢なアルミダイキャストを採用している。
ハウジングの素材について、宮原氏は、「様々な木材を検討したが、今まで使っていたマホガニーと比べて、ウォルナットの方が鳴きが少なかった。最新の音楽フォーマットを表現するには、ウォルナットが優れていると判断した。見た目も、マホガニーは研磨していくと木目が出にくいが、ウォルナットは綺麗な木目が楽しめる。その質感を活かすために、あえて光沢処理かけず、マットな仕上げにしている」という。
音のチューニングは現在も進められており、“デノンの音の門番”であるサウンド マネージャーの山内慎一氏が、入念なチェックを行なっているとのこと。
ケーブルは左右両出しの着脱式で、ヘッドフォン側のプラグは3.5mmモノラルミニ、アンプ側はステレオ標準。導体には7N OFC(99.99999% 無酸素銅)を採用し、ケーブル長は3m。
なお、今後予定しているオプションとして、KIMBER KABLE製の交換ケーブルも参考展示。導体に銅を使ったものと、銀コートしたものの2種類が試作されており、銅のものは約10万円程度のイメージ。銀コートタイプはさらに高価になるという。
発表会にはオーディオ評論家の岩井喬氏も登壇。私物のAH-D5000を持参し、ウッドハウジングの魅力を紹介。D7200のサウンドについては、「デノンらしいリッチなサウンドを追求していると同時に、より自然な解像感も実現している。ウォールナットのハウジングは、マホガニーと低音の出方も違い、より“締める”方向になった。広い空間が楽しめる製品になっている」と、音の傾向を語った。
DA-310USB
年内の発売を予定しているUSB DAC搭載ヘッドフォンアンプ「DA-310USB」も披露された。11月上旬には正式発表する予定で、価格は未定だが、7万円程度のイメージだという。
2014年に発売された「DA-300USB」の後継機種として開発されているもの。デノンの「デザイン」シリーズのラインナップとして、外観が変化したほか、一回り大きくなっている。ただし、縦置き、横置きの両方に対応できるのは従来と同じ。外形寸法は180×180×65mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約1.5kg。
大きく進化したのはヘッドフォンアンプ部。デノンは「DRA-100」など、従来からCSR(現Qualcomm)のデジタルアンプソリューション「DDFA」(Direct Digital Feedback Amplifier)を使ったスピーカー用アンプを手がけているが、そのDDFAを用いたヘッドフォンアンプを搭載している。
2月に発売したヘッドフォンアンプ内蔵のネットワークプレーヤー「DNP-2500NE」(20万円)にもDDFAが使われており、その回路に相当するものをDA-310USBも搭載している。
これにより、ソースの入力から出力までをデジタルのまま処理でき、アナログ変換を繰り返す事での音質の劣化を防止。また、DDFAはデジタルアンプながら、フィードバックシステムを備えているのが特徴で、「原音をロスなく再生できる」という。
また、このフィードバックシステムが音質に悪影響のあるDCオフセットをキャンセル。DCオフセット除去に必要なカップリングコンデンサが不要となるため、コンデンサ固有の色付けが無く、可聴域下限までフラットに伸びた周波数特性を実現したという。
設計担当の飯原氏は、「DDFAが優れているのはフィードバック。フィードバックが無くても忠実な音は出せないことはないが、大電流を流しつつ、周波数によってインピーダンスが変わるようなヘッドフォンでは、フィードバックは非常に有効な技術」だと解説。
DDFAを手がける、Qualcommのマーケティング担当の大島氏も登壇。「新DDFAチップは、我々のハイファイオーディオエンジニア達の叡智を集結したもの。スタジオレコーディングエンジニアでゴールデンイヤーの人も開発に参加している。機能の集積が進むと、難易度も上がるのだが、その分野では世界的なエンジニアもこのチップには携わっている。1チップ化した事で、消費電力の面でも優れている」という。
DA-300USBユーザーからの声を受けて、ドライブ力も向上。300~600Ωの高インピーダンスヘッドフォンを余裕をもってドライブできるようにしたほか、3段階のゲイン切り替え機能も搭載。デジタルボリュームは0.5dBステップで調整でき、ギャングエラーも排除している。
独自のデータ補完アルゴリズムを用いて、データをハイビット/ハイサンプリング化して処理する「Advanced AL32 Processing Plus」も搭載。DACマスタークロックデザインも取り入れ、単品コンポのNEシリーズにも採用された高音質カスタム部品なども投入している。
DACはバーブラウンの「PCM1795」を採用、デジタルフィルタを外部に用意する事で、最新のフォーマットにも対応。USB DACとしてはDSD 11.2MHz、PCM 384kHz/32bitまでサポート。PCからのノイズの影響を防ぐためのデジタル・アイソレーション回路も投入している。
入力端子はUSBに加え、光デジタル×2、同軸デジタル×1を装備。USB以外は192kHz/24bitまでの入力に対応する。
電源はACアダプタを使用。飯原氏は、「ACアダプタだとスイッチング電源になり、ノイズを懸念する方もいるかもしれない。しかし、310では内部にリニア・レギュレータを用意し、そこで電源をもう一度安定化しており、スイッチングのノイズはほとんど排除している」という。